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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科67巻4号

2013年04月発行

特集 泌尿器科診療ベストNAVI

Ⅱ 疾患・病態の診療 9 その他の疾患 膀胱疾患

109 膀胱瘤

著者: 野崎哲夫1 布施秀樹1

所属機関: 1富山大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.305 - P.306

文献概要

1 概念・病因

 膀胱瘤は膀胱底部が腟前壁に覆われたまま膨隆し腟前壁から突出した状態で,高度になると腟口より膀胱底部が会陰部に脱出する。従来は突出した部位によって膀胱瘤,子宮脱,直腸瘤など,別々の疾患として取り扱われてきたが,近年は骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)と総称するようになってきた。骨盤内臓器は本来あるべき位置で支持固定され,なおかつ排尿や排便時にはそれら臓器がうまく変形・変位しなければ正常な機能を保つことができない。この骨盤内臓器を支える重要な働きをしているのが骨盤底筋群である。骨盤底筋群は前方の恥骨と後方の尾骨との間にあるハンモック状の筋肉群であり,腟がその中央に位置する。骨盤底筋を形成する筋肉は生理学的に他の骨格筋と異なり,排泄時以外では緊張した状態を常に保ち,骨盤筋膜のネットワークによって骨盤内臓器を牽引支持している。骨盤臓器脱は骨盤内臓器を支持している靱帯や筋膜,骨盤底筋群の脆弱化を原因とした骨盤内臓器の支持不良により生じる。そのため骨盤臓器脱に対する基本的治療の方針は,解剖学的な異常を改善することにより機能を改善に導くことである1)

 骨盤臓器脱は妊娠・経腟分娩・肥満・便秘・神経筋疾患に,加齢に伴う変化が加わることで各支持機構が破綻し発症する。主な症状としては,膀胱下垂感,会陰部違和感,過活動膀胱,腹圧性尿失禁などがある2)。しかし,さらに高度の膀胱瘤になると,腟口からの腫瘤の脱出・脱出腟粘膜のびらん・出血・痛み,そして排尿困難や尿閉を呈する。軽症では腫瘤は用手的に整復可能だが,重症例では整復してもすぐに再脱出する。

参考文献

1)Petros PE:The female pelvic fioor, function, dysfunction and management according to the integral theory. Springer, Heidelberg, pp18-20, 2004
2)Herschorn S:Vaginal reconstructive surgery for sphincteric incontibence and prolapse. ln:Campbell-Walsh Urology, 9th ed. edited by Kavoussi LR, Novick AC, Partin AW, et al. Saunders Philadelphia, pp2187-2233, 2007
3)高橋 悟:骨盤臓器脱に対するtensi11n-free vaginal mesh(TVM)手術.臨泌62:271-280,2008
4)竹山政美,木村俊夫:女性骨盤底の解剖.In:TVMテクニック―骨盤臓器脱メッシュ手術の新スタンダード,金原出版,東京,pp1-14,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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