臨床泌尿器科67巻6号

2013年05月発行

症例

肝からの浸潤を呈した副腎エキノコックス症

著者： 渡辺絢子¹ 松田博幸¹ 三橋公美¹ 中川隆公² 高橋秀史³

所属機関： ¹札幌社会保険総合病院泌尿器科 ²札幌社会保険総合病院外科 ³札幌社会保険総合病院病理診断科

ページ範囲：P.443 - P.446

文献概要

55歳，男性。検診エコーにて右副腎腫瘍を指摘され受診。CTにて肝と癒着した5.5cm大の副腎腫瘍あり。肺にも多数の小結節を認めた。副腎腫瘍の鑑別を行い，MRIや血清抗体検査などから副腎エキノコックス症と診断し，手術を施行した。世界において，副腎のエキノコックス症の報告はこれまで2例のみである。肝からの浸潤を伴った右副腎腫瘍の場合，居住地や画像診断などから，エキノコックス感染症を鑑別に挙げる必要がある。

参考文献

1）Kutikov A, Crispen PL and Vezzo RG：Adrenal lessions. Campbell-Walsh Urology, 10th ed. edited by Wein AJ, Kavoussi LK, Novick AC, et al. Saunders, Philadelphia, pp1715-1721, 2011

2）加藤祐司，柿崎秀宏：多房性囊胞性病変および北海道居住歴より，エキノコックスが疑われる患者です．対処について教えてください．臨泌62：334-337，2008

3）砂原正男，神山俊哉，佐藤直樹，他：下大静脈閉塞を伴った多包性肝エキノコックス症2切除例の検討．日消外会誌37：165-170，2004

4）川中正憲：国立感染症研究所　感染症発生動向調査．週報48，2001

：a rare clinical entity. Urol Int 67：310-312, 2001

6）丸　晋太朗，山下　登，信野祐一郎：多包性副腎エキノコックス症の1例．日泌尿会誌98：643-645，2007

7）Kamishima T, Harabayashi T, Ishikawa S, et al：Alveolar hydatid disease of the adrenal gland：computed tomography and magnetic resonance imaging findngs. Jpn J Radiol 27：225-228, 2009

8）佐藤直樹，内野純一：肝エキノコックス症．別冊日本臨床　領域別症候群7：51-53，1995

9）佐藤直樹，内野純一，神山俊哉，他：多包性肝エキノコックス症の長期予後．肝胆膵37：1012-1030，1998