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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科68巻11号

2014年10月発行

画像診断

超音波による膀胱血流評価の実際

著者: 水関清1

所属機関: 1社会医療法人函館博栄会函館渡辺病院内科

ページ範囲:P.879 - P.883

文献概要

 背景 近年,動脈硬化を基盤とした膀胱血流の低下が,下部尿路症状の発現に関与することや,前立腺肥大症の病態には,閉塞の有無を問わず膀胱虚血が影響していることが,動物実験の結果などから,徐々に明らかとなってきた。

 しかしながら,日常臨床の場で膀胱血流を簡便に評価することは困難である。わずかに,超音波造影剤(レボビストTM)使用下で,カラー・ドプラ法による上膀胱動脈の血流を観察したとする報告がみられるが,現在この造影剤は供給停止となっている。

 一方で,ここ数年の超音波診断装置の機能は,特に中級機以上の機種でその性能の向上には著しいものがある。従来機では観察が困難であった,体腔内深部の血管の同定や,その血流プロファイルの解析も可能となってきた。

 体外式超音波診断装置を用いた膀胱血流の観察 健常成人男性ボランティア5例を対象として,超音波造影剤非使用下で,二次元の超音波断層面におけるリアルタイム血流マッピングの手法を用いて上膀胱動脈を描出し,その血流波形の解析を行った。描出にあたっては,装置の条件を細かく設定し,適切な感度を保つことに注意を払いつつ,総腸骨動脈から内腸骨動脈を経て上膀胱動脈に至るという解剖学的条件を十分に念頭に置いたうえで,その走行を丹念に追跡した。

 上膀胱動脈の血流パターン 描出率は100%であり,全例において血流パターンの解析も実施可能であった。上膀胱動脈の血流は,収縮期のみに血流が認められる1相性のパターンを呈し,最高流速は22.6±1.32cm/秒,最高流速と最低流速の差を最高流速で除した値であるResistive Indexは,1.0となった。

 これらの結果は,腹部大動脈からの三次分枝であり,筋型動脈でもある上膀胱動脈の性質をよく反映したものと考えられた。

参考文献

1)Greenland J and Brading A:The effect of bladder outflow obstruction on detrusor blood flow changes during the voiding cycle in conscious pigs. J Urol 165:245-248, 2001
2)Azadzoi K, Turcan T, Siroky M, et al:Atherosclerosis-induced chronic ischemia causes bladder fibrosis and non-compliance in the rabbit. J Urol 161:1626-1635, 1999
3)和田直樹:前立腺肥大症患者の膀胱血流障害について—造影超音波検査を用いた検討.旭川医科大学研究フォーラム11:68-69,2010
4)Wada N, Watanabe M, Kita M, et al:Analysis of bladder vascular resistance before and after prostatic surgery in patients with lower urinary tract symptoms suggestive of benign prostatic obstruction. Neurourol Urodyn 31:659-663, 2012
5)辻本文雄:腹部カラードプラ入門.学研メディカル秀潤社,東京,p36,1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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