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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科68巻3号

2014年03月発行

特集 神経因性膀胱

企画にあたって

著者: 百瀬均1

所属機関: 1星ヶ丘厚生年金病院泌尿器科

ページ範囲:P.195 - P.195

文献概要

 神経因性膀胱という単語は,一般の泌尿器科医が日常臨床で用いることの多い単語の1つではないかと思われます。しかし,その用いられ方はひと通りではなく,まったく異なる2種類の意味で用いられているのが実際のようです。

 本来,神経因性膀胱という単語は,「下部尿路機能を制御している中枢から末しょうに至る神経経路のいずれかに障害が生じたことにより,下部尿路機能障害をきたしている」という「病態」を指すものであり,この語意に従えば下部尿路機能障害と神経障害の存在がそれぞれ独立して確認され,さらに両者の間に因果関係が存在する場合にのみ用いることのできる単語であるといえます。実臨床においては,この因果関係を証明することは困難であり,厳密にはほとんどの神経因性膀胱は「疑い」であるといわざるを得ませんが,その意味がわかって用いるのであればなんら問題はありません。一方,臨床の場で良く耳にする神経因性膀胱という言葉は,「原因がよくわからず,治療法もわからない排尿障害」という「状態」に対して用いられていることが多いようです。皮肉な見方をすれば,この「状態」とは患者の状態であると同時に,その患者に対する診察者の状態でもあるわけです。私を含めて神経疾患に合併した排尿障害を有する多数の患者を診てきた者は,後者の意味で神経因性膀胱という単語を用いることに抵抗があります。しかし,実際の臨床の場では,原因のわからない排尿障害患者が少なからず存在することも事実です。このような患者に対して対症的な治療を行う場合には,なんらかの保険診療病名が必要とされることから,神経因性膀胱に替わるよい病名を創り出す必要性を感じています。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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