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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科70巻1号

2016年01月発行

雑誌目次

特集 決定版! 過活動膀胱─All about OAB

企画にあたって フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.9 - P.9

 International Continence Societyにより,過活動膀胱(OAB)の定義が定められてから,10年以上が経過しました.今日では,一般内科医や患者さんにも浸透し,定着しつつあります.わが国においては,2005年にOABの診療ガイドライン初版が,2015年4月には第2版が刊行され,診断・治療の道筋がつけられています.しかしながら,まだまだ解決されていない課題が山積されています.

 OABは症状のみで診断されるため,診断が簡便であることが利点とされます.しかし,そこには大きな落とし穴が存在します.病因や病態生理が置き去りにされたまま診断や治療がされているという現状です.すなわち,“木を見て森を見ず”になりかねません.OAB症状の背景に存在する疾患の本質を理解することなく,診断が行えてしまうことは,間違った治療につながる可能性がありますし,ともすれば医学の発展の妨げになります.また安易な診断は,医療の商業化を招いている可能性があります.OABを引き起こす病因や病態生理は患者ごとに異なり,これを一緒くたに扱うことはできません.また,既存の治療法に抵抗性のOAB患者も多く存在し,これらに対する治療はいまだ確立していません.

〈発症メカニズム〉

加齢・動脈硬化と過活動膀胱

著者: 赤井畑秀則 ,   相川健 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.10 - P.14

ポイント

・加齢に伴って動脈硬化が進行する.

・動脈硬化による慢性虚血が膀胱過活動の一因である.

・生活習慣病の予防がOABの予防につながる可能性が考えられる.

過活動膀胱を発症する神経疾患

著者: 榊原隆次 ,   舘野冬樹 ,   矢野仁

ページ範囲:P.16 - P.21

ポイント

・OABは,高齢の男性・女性で高頻度にみられることから,高齢症候群の1つともいわれる.

・原因としては,下部尿路を支配する中枢の虚血が最近注目されており,白質型多発脳梗塞という(かくれ脳梗塞ともいわれる).

・治療としては,認知症の副作用に注意しながら,中枢移行の少ない抗コリン薬を選ぶとよい.

〈診断〉

過活動膀胱の診断・評価に必要な検査

著者: 住野泰弘

ページ範囲:P.22 - P.28

ポイント

・OABは尿意切迫感を必須とした症状症候群である.

・その診断,評価のためにはまず,問診,病歴聴取,検尿,残尿検査などの基本評価を行い,感染症や悪性腫瘍など他疾患を除外したうえで治療を進めていく.

・難治性OABの場合には,適宜膀胱鏡検査や尿流動態検査など種々の追加検査を行い,ほかの要因についても探索していく必要がある.

過活動膀胱の尿中バイオマーカー

著者: 原綾英 ,   横山光彦 ,   永井敦

ページ範囲:P.30 - P.34

ポイント

・OABの尿中バイオマーカーのなかで,最も研究がされているのがNGFである.

・いまだ確立されたOABの尿中バイオマーカーはない.

・尿中バイオマーカーは,OABの治療効果判定および補助診断に活用できる可能性がある.

過活動膀胱における尿流動態検査の位置づけ

著者: 松川宜久 ,   後藤百万

ページ範囲:P.36 - P.41

ポイント

・尿流動態検査はOABの診断・治療には必須の検査ではないが,重症例・治療抵抗症例ではその評価のために有用な検査である.

・OABに特徴的な尿流動態検査所見は,膀胱不随意収縮と膀胱容量の低下である.

・OAB症例では,排出障害(下部尿路閉塞・膀胱収縮障害)を合併する症例もみられるため,その治療に配慮する必要がある.

〈標準的治療〉

過活動膀胱に対する行動療法の有用性

著者: 西野好則

ページ範囲:P.42 - P.46

ポイント

・OABの治療には薬物療法と行動療法がある.

・行動療法は副作用もなく,低侵襲で,第一選択治療とするのが望ましい.しかし,診療報酬に反映されないこともあり,患者への指導が十分に行われず,その結果,継続できないため,薬物療法に比べて治療人口が極端に少ないのが現状である.

・保険収載され,標準化された行動療法が生まれることが,現状の打破となる.

標準的薬物治療─薬剤の使い方のコツと注意点

著者: 吉田正貴

ページ範囲:P.48 - P.53

ポイント

・OABの治療薬剤のなかで,有用性や安全性について最も検討がなされているのは抗コリン薬であり,β3アドレナリン受容体作動薬も処方可能である.

・女性OAB患者の第一選択薬は抗コリン薬あるいはβ3作動薬である.また,前立腺肥大症のない男性患者においても抗コリン薬あるいはβ3作動薬の単独療法は比較的安全に使用できるが,排尿症状の悪化や残尿の増加には注意が必要である.

・軽度の認知症を有する高齢者においても,抗コリン薬の有効性と安全性は確認されており,抗コリン薬の投与は可能であるが,認知機能悪化の例も報告されていることから,注意深い投与が必要である.

男性過活動膀胱患者に対する治療ストラテジー

著者: 松本成史

ページ範囲:P.54 - P.57

ポイント

・前立腺肥大症に伴う男性OAB患者に対しては,初期治療としてα1遮断薬やPDE5阻害薬を中心とした薬物治療を行う.

・初期治療でも,OABが残存する場合は,残尿などに十分注意しながら抗コリン薬やβ3作動薬を追加投与する.

・前立腺体積が大きいものに対しては,5α還元酵素阻害薬を併用することによりOABの症状改善が期待できる.

骨盤臓器脱に伴う女性過活動膀胱患者に対する治療ストラテジー

著者: 嘉村康邦 ,   藤﨑章子 ,   下稲葉美佐

ページ範囲:P.58 - P.63

ポイント

・POP患者は高率にOABを伴うため,女性OAB患者の診断にあたってはPOPの有無を常に念頭に置くべきである.

・POPに伴うOABの原因は主に膀胱出口部閉塞とされるが,膀胱壁伸展や尿道求心路亢進などの他因子も考えられている.

・POP修復術によるOABの改善率は高いが,術前にその治療効果を推測するのは難しい.

〈難治性過活動膀胱に対する治療〉

難治性過活動膀胱といかに向き合うか

著者: 関戸哲利

ページ範囲:P.64 - P.70

ポイント

・難治性OABの暫定的な定義は,「一次治療である行動療法および各種抗コリン薬(経口薬・貼付薬)やβ3作動薬を含む薬物療法を単独ないし併用療法として,少なくとも12週間の継続治療を行っても抵抗性である場合」である.

・OABに対する一次治療の有効性は,「切迫性尿失禁回数の50%以上の改善」や「患者評価による有効性」をもって暫定的に判断され,これを満たさない場合が「抵抗性」に該当する.

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の現状と未来

著者: 藤村哲也

ページ範囲:P.72 - P.77

ポイント

・薬物療法が無効な重症な切迫性尿失禁を呈する症例にはボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法(BTX)を考慮する.

・治療は,①自費診療である,②基本的に入院し,手術を行うこと,③治療効果がないこともあること,治療効果が一時的であることを十分患者に理解してもらう.

神経変調療法の現状と未来展望

著者: 山西友典 ,   加賀勘家 ,   布施美樹

ページ範囲:P.79 - P.84

ポイント

・本邦でOABに対し,保険適用となっている神経変調法には,干渉低周波療法と磁気刺激療法がある.

・OABに対する効果のメカニズムは,主に仙髄領域の求心路刺激による排尿反射の抑制によると考えられている.

・将来使用が予想される治療法に仙髄神経電気刺激法と経皮的(後)頸骨神経刺激療法がある.

過活動膀胱に対する外科的治療とその適応

著者: 野口満

ページ範囲:P.85 - P.90

ポイント

・膀胱拡大術は,保存的治療に抵抗性のOABに対する外科的治療である.

・膀胱拡大術は,膀胱容量の増大,膀胱コンプライアンスの是正および排尿筋過可動のコントロールに貢献できる.

・膀胱拡大術は,全身状態,下部尿路機能,腸管などの評価のみならず,患者が手術内容を十分理解したことを確認し行われる.

知っていると役立つ泌尿器病理・46

症例 : 60代・男性

著者: 永田耕治 ,   清水道生

ページ範囲:P.3 - P.6

症例 : 60代・男性

 10年ほど前から陰囊にしこりを触れていたが,2年ほど前から増大し,最近下着と擦れて出血がみられるため来院.1.5cm大の有茎性桑実様腫瘤を陰囊に認めた.図1は摘出病変の弱拡像で,図2,3はその代表的な組織像である.

  1 .この病変の真皮乳頭部で増殖している細胞は何か.

交見室

超音波で尿道を診る─ソノウレスログラフィーの有用性

著者: 水関清

ページ範囲:P.92 - P.93

高齢社会の進展とともに,排尿障害にまつわる訴えは増加し,総合診療外来の場においてもその傾向は明らかである.なかでも,下部尿路症状(lower urinary tract symptom : LUTS)は遭遇する頻度の高い症候であり,その適切な鑑別診断と泌尿器科医との連携は,プライマリ・ケアの重要な任務の1つである.

 LUTSは,排尿筋収縮不全(incomplete contraction : IC)・排尿筋過活動(detrusor overactivity : DO)・下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction : BOO)などの要因からなる症候群であり,総合診療医の立場での診断支援ツールとして有用なのは,国際前立腺症状スコア(international prostate symptom score : IPSS)や過活動膀胱症状質問票(overactive bladder symptom score : OABSS)などの問診票の活用とならんで,経腹壁的超音波検査法である.

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次号予告 フリーアクセス

著者:

ページ範囲:P.91 - P.91

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.96 - P.96

 福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚が報じられました.福山さんはずっと浮いた話がなかったので,誰しもが驚きました.マルチな才能を発揮され,シンガーソングライター,俳優として活躍されていますが,もう1つの顔をお持ちです.それはフォトグラファーとしての一面です.

 2001年に東京の湾岸エリアにある晴海に,複合商業施設「トリトンスクエア」がオープンし,私は隣接するマンションに引っ越しました.開設の記念にトリトンスクエアが舞台の写真を募集していて,応募したところ運良く入選し,選者の先生を囲んでの入選者の食事会がありました.お勧めの写真スポットや旅行で撮った写真の話など,ずいぶんと盛り上がりました.選者の篠利幸先生はイタリアが大好きで,イタリア旅行がきっかけで写真家になったとおっしゃっていました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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