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増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド 1 尿路・性器の感染症 寄生虫感染症
リンパ系フィラリア症
著者: 鶴﨑俊文1
所属機関: 1日本赤十字社長崎原爆病院泌尿器科
ページ範囲:P.51 - P.54
文献購入ページに移動リンパ系フィラリア症は,Wuchereria bancrofti(バンクロフト糸状虫),Brugia malayi(マレー糸状虫),Brugia timori(チモール糸状虫)の3種類のいずれかによる感染症である.その90%以上はバンクロフト糸状虫が関与している.蚊が感染した宿主(人)を刺してミクロフィラリア(小幼虫)に感染し,蚊の体内で感染性を持つ幼虫となり,感染した蚊が人を刺すことで体内に侵入し,さらにリンパ系に移動し成虫となり,何千ものミクロフィラリアを生み,感染伝播のサイクルを循環させる.現在,アフリカや東南アジアなどを中心に世界の58か国で1億2000万人以上が感染し,約4000万人がこの疾患による外観の変形,機能障害を患っている.日本では新規の患者の発生はないが,海外で感染した症例や,以前感染し慢性期の症状を有する症例は少数存在する.
リンパ系フィラリア症は,無症候期,急性期,慢性期がある.急性期は細菌の二次感染に関連する発熱や,リンパ管炎・リンパ節炎などを起こし,慢性期には四肢・乳房・生殖器のリンパ浮腫から象皮病を起こす.特にバンクロフト糸状虫では乳び尿(または血乳び尿)やフィラリア性(乳び性)陰囊水腫を来すこともある.
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