特集 免疫チェックポイント阻害薬って何?─基礎から理解するがん治療のトレンド
企画にあたって
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著者:
大家基嗣1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.15 - P.15
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われわれの前に急に現れた新規のがん治療薬,「免疫チェックポイント阻害薬」とは一体どんな治療薬なのでしょうか? 理解するためには,“免疫編集(immunoediting)”という概念を知る必要があります.がんは発生・進展する微小環境で,免疫編集を経て顕在化しています.免疫編集とは,生体に備わった免疫の活性化機構と抑制機構によって成立します.がんの排除には活性化機構が作動するのですが,同時に過剰な免疫反応を抑える抑制機構も作動します.この抑制機構の主体をなす分子であるCTLA-4とPD-1に対する抗体(免疫チェックポイント阻害薬)を使用して抑制を解除し,本来の活性化機構を取り戻そうとする治療です.つまり,免疫編集を経た状態から編集前の状態に戻す治療といえますが,それに用いる治療薬が免疫チェックポイント阻害薬というわけです.
免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できるがんと期待できないがんも明らかになってきました.この過程で注目されてきたのがネオアンチゲンです.次世代シーケンサーの登場によって個々のがんにおける変異の多寡が明らかになり,変異の結果として細胞表面に提示されるがん抗原(ネオアンチゲン)が多いがんほど効果が期待できるという考え方です.