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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科71巻11号

2017年10月発行

雑誌目次

特集 透析療法のNew Concept─各種ガイドラインに基づく診療のポイント

透析導入基準の考え方

著者: 花房規男

ページ範囲:P.880 - P.885

▶ポイント

・腎不全症候の有無が透析導入時期を考慮するうえで重要である.

・透析を導入すべき腎機能に関する明確な値は存在しないが,GFR<15mL/分/1.73m2で導入が考慮される.

・腎不全症候があっても保存的に経過観察可能な場合はGFR 8mL/分/1.73m2未満で透析導入を考慮する.腎不全症候がない場合も2mL/分/1.73m2未満で透析導入を行う.

・腹膜透析ではGFR<6mL/分/1.73m2で導入が勧められる.

血液透析での適正な透析量の決定法

著者: 鈴木一之

ページ範囲:P.886 - P.890

▶ポイント

・血液透析が適正かどうかの評価には,月1回以上,シングルプールモデルの尿素透析量(spKt/V)を確認する必要がある.

・目標はspKt/Vで1.4以上であり,適切なダイアライザの選択と,血液流量,透析時間などの設定が必要である.

・透析時間はspKt/Vと独立した生命予後関連因子であり,1回4時間以上の治療が推奨される.

標準的なドライウェイトの設定法

著者: 猪阪善隆

ページ範囲:P.892 - P.895

▶ポイント

・体液量が適正であり透析中の過度の血圧低下を生ずることなく,かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重をドライウェイトと定義する.

・透析中に著明な血圧低下がなく,高血圧がないこと,浮腫や肺うっ血がないことに加え,心胸郭比を参考にドライウェイトを設定する.

・ANP,BNP,下大静脈径や生体電気インピーダンス法による体液量評価,プラズマリフィリングなどがドライウェイト設定のための参考となる.

治療モード・スケジュールの組み立て方

著者: 友雅司

ページ範囲:P.896 - P.900

▶ポイント

・施設透析ではHD,HDFとも週3回(1回4時間),血流量200〜250mL/分が標準である.

・HDではhigh flux membrane dialyzerの使用が多い.

・HDFではオンライン前希釈HDFの施行が多い(平均置換液量40L).

・オンライン前希釈HDFは導入時から選択すべきか検討する.

・I-HDF,AFBFは循環動態の安定に有効である.

・回数増加,治療時間延長は有用性があるが,施設透析では制約がある.

透析液水質基準の概要とその効果

著者: 峰島三千男

ページ範囲:P.902 - P.907

▶ポイント

・わが国の透析施設の68.3%が超純粋透析液基準を満たしており,透析患者の死亡率低下に寄与している.

・化学的汚染物質のなかには生体への障害が明らかにされているものもあり,同物質に対する管理が重要である.

・各透析医療機関は透析用水作製装置に関する基準を遵守し,透析液の水質確保に努めなければならない.

〈バスキュラーアクセス(VA)作製手技のポイント〉

AVF(arteriovenous fistula)

著者: 長沼俊秀 ,   武本佳昭

ページ範囲:P.848 - P.852

▶ポイント

・AVFを含めたVA手術においては,術前や周術期のコンディショニングやアセスメントが重要である.

・穿刺がしやすく,のちの管理のしやすいAVFを作製するべきである.

・術後のスパスム(血管攣縮)には十分留意する.

AVG(arteriovenous graft)

著者: 久木田和丘 ,   石黒友唯 ,   谷山宣之

ページ範囲:P.853 - P.857

▶ポイント

・現在臨床で使用されているものはE-PTFEとポリウレタングラフトの2種類である.

・AVGは慢性維持透析患者のVAとしてはAVFに次ぐものとされる.

・移植部位は上肢の前腕をはじめ,大腿まで可能である.

動脈表在化法─ガイドラインに基づく診療のポイント

著者: 室谷典義 ,   白鳥享 ,   杉原裕基

ページ範囲:P.858 - P.862

▶ポイント

・動脈表在化は通常の内シャントが何らかの理由で作製できない症例で選択されるVAである.

・欠点は毎回,表在静脈の穿刺が必要となる点である.

・動脈表在化のメリットは心負荷がないことである.

・心不全を有する高齢者に適したVAである.

カフ型・非カフ型カテーテルの挿入術

著者: 宮田昭

ページ範囲:P.863 - P.872

▶ポイント

・カテーテルの留置手技では,エコーや透視を用いた穿刺針,ガイドワイヤーなどの位置確認と安全への配慮が重要である.

・カテーテルには多くの種類があるので,それぞれの患者に必要な機能を考慮した製品の選択が必要である.

・世界に例をみない本邦の超高齢社会では,今後カテーテルが血液透析に果たす役割が拡大すると考えられる.

PTA(percutaneous transluminal angioplasty)

著者: 佐藤隆 ,   小野木健詞 ,   坪井正人

ページ範囲:P.873 - P.879

▶ポイント

・本邦における腎代替療法の97%以上は血液透析であり,バスキュラーアクセスの機能を維持することは重要な問題である.

・PTAはアクセス狭窄に対し低侵襲・比較的簡便な治療法であり,広く普及を遂げている.

・PTA最大の欠点である再狭窄に対して有効な手技・デバイスは未だ存在せず,早急な対応が望まれる.

〈合併症への対応策〉

腎性貧血

著者: 林晃正

ページ範囲:P.908 - P.912

▶ポイント

・腎性貧血治療開始においては,ESA反応性を低下させる因子を十分に検索し,年齢や心血管合併症など患者個々の病態を考慮し,ESAや鉄剤を適切に使用する.

・成人のHDならびにPD患者の場合,維持すべき目標Hb値はそれぞれ10g/dL以上12g/dL未満,11g/dL以上13g/dL未満である.

・鉄補充の基準値は従来通り血清フェリチン値100ng/mL未満かつTSAT20%未満であるが,絶対的鉄欠乏の可能性がある場合(血清フェリチン値50ng/mL未満),ならびに血清フェリチン値100ng/mL未満またはTSAT20%未満で炎症などの病態が認められない場合,鉄補充を考慮する.

・血清フェリチン値300ng/mLは鉄過剰である可能性が高い.

MBD(mineral and bone disorder)

著者: 角田隆俊

ページ範囲:P.913 - P.919

▶ポイント

・CKD-MBDとは,①Ca,P,PTHなどの検査値異常,②骨の異常,③血管石灰化の3つの異常の組み合わせによって構成される.

・試薬の多様性が進めば日本の至適PTHの設定も正常上限の〜倍というように示される可能性が示唆される.

・内科的治療によって至適PTHにコントロールできない場合もしくは高いPTHによってP,Caのコントロールがつきにくい場合には内科的治療に拘泥せずPTxを考慮すべきである.

血管石灰化─CKD-MBD診療ガイドラインに基づいた管理

著者: 辻本吉広 ,   庄司哲雄

ページ範囲:P.920 - P.926

▶ポイント

・血管石灰化は慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)という概念のなかで予後に影響する重要な因子である.

・CKD-MBDについて日本透析医学会,KDIGOからそれぞれ診療ガイドラインが発行されている.

・石灰化の出現と進行予防を目指すべく,リスク因子の管理を行う.そのなかでもP,Ca,PTHの管理は重要であり,特にCa非含有P吸着薬の果たす役割は大きいと期待されている.

専門医のための泌尿器科基本手術

腹腔鏡下膀胱全摘除術 : 男性患者の場合

著者: 稲元輝生

ページ範囲:P.928 - P.930

ポイント

・腹腔鏡下での膀胱全摘除術は,その低侵襲性から開腹手術に比較して術後の腸運動の回復の早さや創部痛が少ないという重要なメリットがある.

・術前の腸管処理に関しては,伝統に従って術前3日前よりプルゼニドの投与を開始し,前日にマグコロールPによる処理を行う.

・本手術を行う環境は整っており,正確な操作を理解したうえで,鍛錬を積むことが肝要である.

腹腔鏡下膀胱全摘除術 : 女性患者の場合

著者: 日向信之 ,   藤澤正人

ページ範囲:P.931 - P.936

ポイント

・膀胱癌は生物学的にaggressiveであり,腹腔鏡下膀胱全摘除術では腫瘍学的に厳格な操作が求められる.

・本手術においてはリンパ節郭清における内腸骨血管の露出が操作のkey stepとなる.

・ロボット支援膀胱全摘除術では開腹手術と比較して同等の腫瘍学的成績が報告されつつあり,今後の普及が期待される.

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バックナンバーのご案内 フリーアクセス

ページ範囲:P.940 - P.940

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.941 - P.941

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.942 - P.942

 高橋悟教授(日本大学)が会長を務められた第30回日本老年泌尿器科学会では,先生らしい艶のある企画がありました.NHKの番組『ドキュメント72時間』のディレクターの招請講演です.ヒトは誰一人をとっても同じでない.悲喜こもごもの人間模様が伝わってくる番組です.これまでの作成経験から森あかりさんが興味深いコメントをされました.

 「この女性は歌舞伎町のクラブのNo.1ホステスです.本来なら幸せなはずなのに,すごく不機嫌で,どうして?と思いたくなります.一方,この高齢の女性は重い病気で入院になった当日の様子です.不安でいっぱいのはずなのに,この屈託のない笑顔です.この矛盾といいますか,何が幸福で何が不幸かわからなくなります」.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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