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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科71巻12号

2017年11月発行

画像診断

突発性腎動脈解離による腎梗塞

著者: 松岡香菜子1 赤井畑秀則1 小島祥敬1

所属機関: 1福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座

ページ範囲:P.1024 - P.1026

文献概要

 症例 : 54歳,男性.

 主訴 : 左下腹部痛.

 既往歴 : 高血圧症,食道癌手術.

 家族歴 : 特記なし.

 現病歴 : 2016年11月,突然左下腹部痛が出現し,当院救急外来を受診した.

 現症 : 身長173cm,体重53kg,体温36.8℃,血圧150/99mmHg,脈拍72/分整,左肋骨脊柱角に叩打痛なし.

 検査所見 : 心電図では心房細動などの不整脈を認めなかった.初診時の血液生化学検査では軽度炎症反応高値(WBC 10,100/μL,CRP 0.46mg/dL)を認めるのみで,LDH,肝・腎機能,凝固機能を含め異常値を認めなかった.

 腹部造影CT検査 : 動脈層で左腎に楔状の造影不良域と左腎動脈に解離と思われる造影不良域,上腸間膜動脈に剝離内膜(intimal flap)を認めた(図1a).冠状断では血栓を伴う左腎動脈解離とintimal flapを認めた(図1b).3D再構築画像では,左腎動脈本幹から前後に分枝する境界に解離性腎動脈瘤が存在し,左腎動脈前枝の血流が途絶していた(図2).

 臨床経過 : 画像所見より,左腎動脈解離による左腎梗塞と診断し緊急入院した.解離性大動脈瘤に続発しない限局性の腎動脈解離はいまだ治療方針が確立されておらず,重篤な高血圧や急速な腎不全の進行を認めなかったため,入院後はニカルジピン持続静注による血圧コントロールとヘパリン1万単位/日による抗血小板療法を行った.血圧は130/90mmHg程度で安定し,発熱や疼痛の増強は認めなかった.第7病日のCT検査では解離腔の増大を認めず,腎機能はCr 1.06mg/dLで安定した.第10病日にはニカルジピンをアジルサルタン20mg/日内服へ,ヘパリンをアスピリン100mg/日内服へ変更し,経過良好のため第14病日に退院した.

参考文献

1) 沖 貴士, 足立浩幸, 田原秀雄, 他 : 突発性腎動脈解離に伴う腎梗塞の1例. 泌尿紀要57 : 611─614, 2011
2) 前鼻健志, 西田幸代, 進藤哲也, 他 : 特発性腎動脈解離の1例. 泌尿紀要54 : 1─4, 2008
3) Im C, Park HS, Kim DH, et al : Spontaneous Renal Artery Dissection Complicated by Renal Infarction : Three Case Reports. Vasc Specialist Int 32 : 195─200, 2016
4) Misrai V, Peyromaure M, Poiree S, et al : Spontaneous dissection of branch renal artery─is conservative management safe and effective? J Urol 176 : 2125─2129, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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