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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科73巻6号

2019年05月発行

雑誌目次

特集 これだけは押さえておきたい! 泌尿器腫瘍に対する抗がん剤の基本

企画にあたって フリーアクセス

著者: 三浦裕司

ページ範囲:P.337 - P.337

 泌尿器腫瘍には,腎癌,尿路上皮癌,前立腺癌,精巣腫瘍など,多岐にわたる腫瘍が含まれています.さらに,これらの腫瘍に対する薬物療法には,殺細胞性化学療法,ホルモン療法,分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬など,さまざまな種類が含まれます.このため,泌尿器科医および泌尿器腫瘍内科医は,薬物療法マネジメントの基礎についてしっかりと学ぶ必要があると考えます.

 本特集の内容は,これから薬物療法を学び始める若手の泌尿器科医,泌尿器腫瘍に興味をもつ若手の腫瘍内科医をメインの読者対象とした構成になっております.最初に,化学療法を学びたい若手泌尿器科医と,泌尿器腫瘍を学びたい若手腫瘍内科医が研修を積んでいくにあたり,現在どのような問題点があり,今後どのような未来が期待されるのかについて,若手医師の本音を聞き出すための座談会を企画しました.次に,薬物療法の基本である殺細胞性化学療法について,その実施にあたり必須となる知識の解説に多くの誌面を割かせていただきました.すなわち,制吐薬の使用方法,発熱性好中球減少症(FN)のマネジメント,G-CSFの使い方,術前・術後化学療法の考え方,relative dose intensityを保つことの重要性についてなどです.これらの知識は腫瘍内科医のトレーニングの際に,最初に学び身につけるべきものであり,ぜひこれから薬物療法を学び始める泌尿器科の先生方にも共有してもらいたいと思っています.さらに分子標的薬では,効果と副作用のバランスをとるための用量調整についての考え方を,免疫チェックポイント阻害薬では,免疫関連有害事象という特徴的な副作用のマネジメントについて,泌尿器腫瘍における事例を中心に読者が学べ,実臨床に役に立つような内容になるよう努めました.

座談会

泌尿器科医と腫瘍内科医のコラボレーション—現状と将来の展望について

著者: 北村寛 ,   茂田啓介 ,   大木遼佑

ページ範囲:P.338 - P.345

北村(司会) 「泌尿器科医と腫瘍内科医のコラボレーション―現状と将来の展望について」をテーマに,10年後,20年後に,それぞれの科の臨床の第一線に立たれているはずのお2人,茂田先生と大木先生にご参集いただきました.

 最初に茂田先生,先生が泌尿器科医を志したきっかけを聞かせていただけますか.

茂田 非常に曖昧な理由ながら,すでに学生の頃から泌尿器科志望は決めておりました.1つは,全身を診れるということですね.泌尿器科は一見,臓器が限定されているように思われますが,疾患は感染から腫瘍まで非常に多岐にわたっており,その初診から最後まで,1人の方をずっと診ることができるという意味でも,かなり魅力的な科だと思いました.

 もう1つは,手術にかなり熟練できるということと,ロボット手術ができる点です.学生時代に,これから「ダ・ヴィンチ」というロボットが出てきて,その技術は泌尿器科がリードしていくのだというお話をうかがって,非常に将来性のある科だなぁと思っておりました.

北村 なるほど.では,大木先生,先生が腫瘍内科を目指されたきっかけを教えていただけますか.

大木 学生時代は,血液内科に興味をもっていました.腫瘍内科という診療科があるのを知ったのは,初期研修のマッチング先を探したときでした.そして,血液内科の強い虎の門病院へ見学に行ったときに臨床腫瘍科を回って,そこで初めて腫瘍内科が選択肢に入ってきたのです.血液疾患ももちろん面白いと思ったのですが,臓器横断的に癌を診ることができる腫瘍内科がすごく魅力的に感じられたのと,臨床腫瘍科でとても歓迎していただいたということもあって,最終的に腫瘍内科をやろうと決めました.

〈抗がん剤治療〉

制吐薬

著者: 橋本浩伸

ページ範囲:P.346 - P.349

▶ポイント

・化学療法誘発性悪心・嘔吐は,制吐薬の開発により成績が向上しているものの十分とはいえず,新規制吐療法の開発が必要である.

・泌尿器腫瘍で汎用されるシスプラチンを含む抗がん剤治療の標準制吐療法は,5-HT3RA+NK1RA+DEXの3剤併用療法である.

・今後の研究結果によって,オランザピンを含んだ制吐療法が標準となる可能性がある.

FNのマネジメントとG-CSFの使い方

著者: 内野慶太

ページ範囲:P.350 - P.355

▶ポイント

・FNはがん化学療法における「緊急症」である.

・発症,重症化のリスク評価を行い,すみやかに抗菌薬による治療を開始する.

・G-CSF製剤の適正使用には,一次予防的投与,二次予防的投与,治療的投与がある.

術前・術後化学療法の考え方:膀胱癌

著者: 成田拓磨 ,   大山力

ページ範囲:P.356 - P.360

▶ポイント

・シスプラチンを含む多剤併用術前化学療法の有用性が,複数の無作為化比較試験において証明されている.

・術前化学療法において推奨されるレジメン・コース数については,明確なエビデンスが存在しない.

・術前化学療法に比べると術後化学療法のエビデンスは乏しく,術前化学療法の施行を優先すべきである.

カバジタキセルの臨床試験データにみるFNとG-CSF使用の考え方

著者: 木村高弘

ページ範囲:P.362 - P.365

▶ポイント

・カバジタキセルは,ドセタキセル抵抗性のmCRPCに対し有意に全生存期間を延長する化学療法剤である.

・好中球減少症やFNなどの重篤な血液毒性の頻度が高く,国内第I相臨床試験では,グレード3以上の好中球減少が100%,FNが54.5%に認められた.

・G-CSF製剤の一次予防的投与や導入時用量を20mg/m2に減量することで,有害事象が軽減される可能性が示唆されている.

進行性胚細胞腫瘍に対するBEP療法においてRDIを高く維持することの重要性

著者: 河野勤

ページ範囲:P.366 - P.373

▶ポイント

・BEP療法は,単剤で胚細胞腫瘍に有効な3種の薬剤を組み合わせ,なおかつDLFを腎毒性,骨髄毒性,肺毒性に分散しえた点で理想的な併用化学療法である.

・RDIは,PDIに対するADIの割合である.

・BEP療法ではRDIを高く維持することが重要である.

〈分子標的治療〉

腎癌に対する分子標的薬のマネジメント

著者: 岸田健

ページ範囲:P.374 - P.377

▶ポイント

・分子標的薬治療は完治を目指す治療ではなく,効果と副作用のバランスを考慮した使用が求められる.ただし,免疫チェックポイント阻害薬との併用により完治が目指せる可能性が出てきており,その立ち位置は変わりつつある.

・副作用を患者にも理解してもらい,予防とともに早期に休薬・減量を含む副作用対策をすることが有効性を維持する秘訣である.

・副作用対策には看護師や他科と連携しチームを組んでマネジメントを行う.

〈免疫チェックポイント阻害療法〉

泌尿器腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬のマネジメント

著者: 近藤千紘

ページ範囲:P.378 - P.382

▶ポイント

・進行腎癌・尿路上皮癌における免疫チェックポイント阻害薬は,生存期間延長を期待できるキードラッグである.

・前立腺癌や副腎癌においてMSI-High固形癌として免疫チェックポイント阻害薬の適応となる症例が存在する.

・副作用は細胞障害性抗がん剤や分子標的薬と比べて少ないが,自己免疫疾患様の病態や内分泌代謝異常に注意する.

腎細胞癌における免疫環境

著者: 北野滋久

ページ範囲:P.384 - P.391

▶ポイント

・主ながん種のなかで,腎細胞癌における体細胞変異数はあまり多くないが,フレームシフト変異(insertion and deletion)の頻度が高く,免疫系に認識されやすい変異蛋白がつくられやすいと考えられ,腫瘍内に浸潤しているリンパ球が多いと報告されている.

・しかしながら,ほかの多くのがん種とは異なり,腫瘍内に浸潤しているリンパ球数が多いほうが予後不良の傾向が報告されている.

・その原因として,腫瘍からのVEGFの産生能が高いため,腫瘍内に免疫抑制細胞が多く誘導され,腫瘍浸潤リンパ球の細胞障害能が低下していることが示唆される.

〈付録〉

泌尿器腫瘍に対する抗がん剤の標準治療2019(表)

著者: 大木遼佑

ページ範囲:P.392 - P.393

表1 腎癌

一次治療

IMDCリスク分類 最も推奨されるレジメン 代替レジメン

favrable スニチニブ/パゾパニブ ニボルマブ+イピリズマブ

intermediate/poor ニボルマブ+イピリズマブ スニチニブ/パゾパニブ/テンシロリムス

二次治療

前治療 最も推奨されるレジメン 代替レジメン

VEGFR阻害薬 ニボルマブ アキシチニブ

免疫チェックポイント阻害薬 アキシチニブ その他のVEGFR阻害薬

三次治療以降

ニボルマブ,使用していないVEGFR阻害薬,エベロリムス,臨床試験などを考慮

* : スニチニブ,パゾパニブ,アキシチニブ,ソラフェニブの中から選択し逐次治療を行う.

原著

経会陰的前立腺生検におけるレボフロキサシン250mg予防内服の臨床的有用性の検討

著者: 陳内博之 ,   豊田真史 ,   須田篤博 ,   安藤志帆 ,   有澤千鶴

ページ範囲:P.395 - P.400

 経会陰的前立腺生検前の予防的抗菌薬として国内のガイドラインではレボフロキサシン(LVFX)500mg内服を推奨している.東京都保健医療公社東部地域病院泌尿器科では加齢に伴う腎機能低下を考慮して通常量より減量したLVFX 250mg予防内服下にて経会陰的前立腺生検を施行しており,この臨床的有用性について検討した.その結果,調査期間内に前立腺生検を施行した178症例で,感染症を3症例認めたが,それに伴う入院期間延長や再来院した症例はなかった.単施設でのランダム化されていない後ろ向き調査であるが,これまで報告されたことのないLVFX 250mgを経会陰的前立腺生検前に予防内服することの有用性を示唆する結果であった.

GC療法による膀胱癌術前抗がん剤治療の有効性の検討―術前抗がん剤の効果による予後予測

著者: 蓼沼知之 ,   村岡研太郎 ,   軸屋良介 ,   橋爪章仁 ,   安井将人 ,   水野伸彦 ,   梅本晋 ,   河合正記 ,   岸田健

ページ範囲:P.401 - P.407

 膀胱癌に対して根治的膀胱全摘除術を施行した96例について,GC療法によるNACの有効性を検討した.NAC施行群は60例,未施行群は36例であった.DFS,OSはNACの有無で有意差は認めなった.NAC施行群においてダウンステージを認めた症例は,それ以外と比べDFS,OSともに有意に良好な成績であった.多変量解析の結果,NACによるダウンステージがDFS,OSを予測する独立因子であった.

症例

過活動膀胱と腹圧性尿失禁の症状を呈した胃癌膀胱転移

著者: 加藤久美子 ,   浅井健太郎 ,   鈴木省治 ,   服部良平

ページ範囲:P.409 - P.412

 59歳女性.10か月前から頻尿,混合性尿失禁が悪化し,薬物療法で改善せず紹介された.前医での尿沈渣,細胞診は異常なく,排尿日誌で最大1回排尿量が100mLと減少していた.膀胱鏡で頂部に外からの浸潤所見を認め,膀胱生検で7年前に手術した胃癌の膀胱転移と診断された.膀胱転移は比較的まれだが,薬剤抵抗性・進行性の過活動膀胱症状では,尿所見が正常でも膀胱鏡や超音波検査を行う意義がある.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.335 - P.335

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.417 - P.417

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.418 - P.418

 非常に長いゴールデンウィークを皆様はいかに過ごされたでしょうか.今年の5月で新元号となりましたが,平成は小職の人生においては泌尿器科ど真ん中の30年間でした.

 平成の最初には,結石治療が大きく変わり,硬性の尿管鏡が使われたり,PNLが行われ始めました.また,ドルニエ社によるESWLにおけるプラグ式の開発を皮切りに,メンブレン式が開発され,その後fTULなどの進化もあり,結石治療は平成の間に低侵襲化がなされたと思います.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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