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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科73巻9号

2019年08月発行

雑誌目次

特集 ここまで見える! 泌尿器科における可視化の進歩

企画にあたって フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.593 - P.593

 「五感を研ぎ澄ます」という言葉があります.人間のもつ感覚をフルに使って行動することでありますが,そのなかでも「視覚」は非常に大切な感覚です.実際に物が見えなかったり見えにくかったりしますと,想像力を働かせてそれを補うこととなります.

 医療においては,触診や聴診などにより実際に見えていない箇所を想像して,診察を行ってきました.例えば尿管結石ですと,腎部など疼痛部位の触診を行って叩打痛があることを確認し,それに検尿による赤血球の増多などの客観的な裏付けを得て,診断に至るわけです.それに加えて,X線やCTで石灰化像を認めれば診断の完成です.検査や手術においても,「これは正常」と「違いそうだ」という,今までの経験を用いた医療が行われてきました.そして生検などを行い,確定診断としていたわけです.これでは見えにくいものに対しての想像力豊かな経験者に勝ち目はありません.

〈機器の発達〉

8K超高精細画像の医療応用―泌尿器科手術における医療用画像の進歩

著者: 青木久恵 ,   森俊幸 ,   日向信之

ページ範囲:P.594 - P.598

▶ポイント

・内視鏡手術において視覚情報の質は手術の精度に大きく影響するため,画像の高精細が求められる.

・解像度は7680×4320ピクセル,画素数は標準のHD(2K)の16倍にあたる3300万画素であり,これまで認識できなかったレベルまで観察が可能となっている.

・8Kを用いることにより,特に重要な骨盤神経叢の神経線維,膀胱頸部の筋繊維も高精細画像にて明瞭に視認され,より安全で手術の高度化が得られると考えられる.

超音波による可視化の現況

著者: 棚橋善克

ページ範囲:P.599 - P.607

▶ポイント

・超音波ドプラ法は,腎血管性病変や腫瘍の鑑別診断に有用である.

・超音波造影剤(コントラスト・ハーモニック法)で組織の性状も識別可能であるが,ソナゾイド®は泌尿器科疾患で保険適用になっていない.

・シアウェーブ・エラストグラフィを用いて,前立腺硬度の定量的評価が可能である.

最新の前立腺MRI:PI-RADS®

著者: 後藤吉弘

ページ範囲:P.608 - P.614

▶ポイント

・PI-RADS® version 2は,前立腺MRIの撮像と読影の標準化を目的としている.

・辺縁領域癌はDWIにおけるスコアリング,移行領域癌はT2強調画像によるスコアリングを行い,臨床的に意義のある前立腺癌の検出の向上を目指す.

PET/CT検査による泌尿器腫瘍の病変検出能および腫瘍活性評価能

著者: 福嶋善光 ,   汲田伸一郎

ページ範囲:P.615 - P.625

▶ポイント

・FDG-PET/CTは前立腺癌,腎癌の病期診断,悪性度評価,治療効果判定,再発診断に有効である.

・PSMA-PET/CTは前立腺癌,腎癌の病変検出能がFDG-PET/CTに比し高い.

・半導体PET/CT装置は従来のアナログ装置に比し空間分解能,S/N比,コントラスト分解能が高く,病変検出能,腫瘍活性評価能が高い.

〈光力学による可視化〉

筋層非浸潤性膀胱癌に対するNBIを用いた診断と治療

著者: 松尾光哲 ,   井川掌

ページ範囲:P.626 - P.630

▶ポイント

・NBIは白色光から手元のスイッチの切り替えのみで何度でも繰り返し観察できる.

・NBIは膀胱癌を描出するための診断技術ではないので,所見の判別のためには,日々観察を行うことが重要である.

・NBIは尿細胞診などの併用により,膀胱癌の除外スクリーニングとして有用である.

腎細胞癌に対する5-ALAを用いた光力学診断の応用

著者: 西本紘嗣郎 ,   城武卓 ,   小山政史

ページ範囲:P.632 - P.639

▶ポイント

・最近われわれは,腎細胞癌における5-ALAを用いた光力学診断による発光の程度と臨床的・病理的要素との関連性について報告した.

・本稿では,5-ALAからヘム合成に至る生化学と,光力学診断が有用と推測される腎細胞癌について概説した.

膀胱癌に対する5-ALAを用いた光力学診断

著者: 福原秀雄 ,   花﨑和弘 ,   井上啓史

ページ範囲:P.640 - P.645

▶ポイント

・ALA-PDDは膀胱癌において,特に平坦病変や微小病変の検出に優れている.

・ALA-PDDは診断精度のみならず,治療効果の改善効果も示す.

・ALA-PDD実施時は偽陽性を念頭に置いて,TURBTに臨む必要がある.

泌尿器癌に対するICG蛍光造影法を用いたセンチネルリンパ節の同定

著者: 三井要造 ,   中島耕一 ,   小林秀行

ページ範囲:P.646 - P.649

▶ポイント

・センチネルリンパ節の評価は,癌の診断・治療において重要である.

・ICG蛍光造影法を用いることで,泌尿器癌のセンチネルリンパ節をリアルタイムで簡便に検出できる.

・ICG蛍光造影法による泌尿器癌のリンパ節検出率は高いが,リンパ節転移の診断率は低い.

〈細胞の可視化〉

CTCの可視化と遺伝子検査

著者: 桶川隆嗣

ページ範囲:P.650 - P.655

▶ポイント

・CTCの臨床応用には,治療選択の補助診断や予後予測マーカーが考えられる.

・CTCクラスターはCTC全体の2〜5%を占め,CTC単独よりもはるかに癌転移を引き起こしやすい.

消化管における超・拡大内視鏡観察の実際―ここまで見える生体内細胞観察

著者: 南ひとみ ,   井上晴洋 ,   中尾一彦

ページ範囲:P.656 - P.662

▶ポイント

・2000年代初頭より生体内で行う超・拡大内視鏡が臨床応用され,リアルタイムでの内視鏡的病理診断が可能となってきた.

・現在ではAIとの併用により,高いクオリティが担保されるようになっている.

〈AIによる可視化〉

前立腺MRI画像のAI診断

著者: 石岡淳一郎 ,   藤井靖久

ページ範囲:P.664 - P.671

▶ポイント

・AIによる医用画像解析技術の中核をなすものは,畳み込みニューラルネットワークを用いたディープラーニングである.

・わが国や米国で,前立腺MRIのコンピュータ支援診断アルゴリズム開発が進められており,診断精度も向上しつつある.

症例

排尿障害を来した巨大膀胱内反性乳頭腫

著者: 上宮健太郎 ,   仁田有次郎 ,   岡村太裕 ,   岩田裕之 ,   前田覚 ,   森川洋二

ページ範囲:P.673 - P.675

 84歳男性.2009年排尿障害にて受診.近医で加療を受けていたが,2015年肉眼的血尿を認め当院紹介.膀胱鏡にて三角部に巨大な腫瘍性病変,MRIにて60mm大の腫瘍性病変を認め,膀胱癌cT1N0M0の診断にてTURBTを施行した.切除組織は内反性増殖を示し,腫瘍表層を尿路上皮が被覆,細胞異形に乏しく内反性乳頭腫と診断した.以降外来で膀胱鏡を行っているが再発は認めていない.内反性乳頭腫は30mm程度までの報告が大半を占め,60mmを超える報告例はない.

学会印象記

「第114回AUA」印象記

著者: 田岡利宜也

ページ範囲:P.676 - P.677

2019年5月3〜6日にシカゴで開催された“114th AUA Annual Meeting”には,世界120か国から7991演題が投稿された.これは同年3月にスペイン・バルセロナで開催された“34th Annual EAU Congress”の80か国,5500演題を大きく上回るもので,改めて泌尿器科領域における世界最大級の学術集会であることが示された.その採択率は33.5%で,2675演題の採択数に,1万5770人の学会参加者を集めて,学会会場であるMcCormick Placeは熱気に満ちていた.

 一方,日本からのearly registration数は,2018年にサンフランシスコで開催された同学術集会の294人と比較して,約半数の157人と公表された.採択された演題数も186で,例年度よりも少なかった.この背景には,学会会期と重なったゴールデンウィークがあろう.私はゴールデンウィークを考慮せず演題投稿し,Moderated Poster Sessionで採択されたほか,AUA/JUA International Affiliate Society Meeting(Joint Meeting)のパネリストも仰せつかり,4月後半の日本泌尿器科学会総会が終わるまで発表できることを喜んでいた.しかし,その準備は大変で,ゴールデンウィークの前半をその作業で費やし,後半の発表につなげる過程で子どもから向けられた“冷淡な視線”に何度か後悔の念を抱かずにはいられなかった.

「第114回AUA」印象記

著者: 徳山尚斗

ページ範囲:P.678 - P.679

今回東京医科大学から,大野芳正主任教授,ニューヨークに留学経験がありアメリカンな食事が大好きな橋本剛講師,旅行先でも筋トレを怠らないストイックな佐南静香助教とともに,2019年5月3〜6日にシカゴで開催された第114回米国泌尿器科学会(AUA Annual Meeting 2019)に参加させていただきました.シカゴは私にとっては今回初めて訪れる街でした.その頃,日本は夏を感じるくらいの気候でしたが,Windy Cityと呼ばれる名の通り,到着時からシカゴは気温7℃くらいで寒く,しかも雨風が続き,5月であってもコート着用は必須といった印象を受けました.

 開催前日の夜は,すでに到着していた橋本先生,佐南先生とシカゴ発祥のステーキハウスであるモートンズにてビールとステーキをいただきました.機内食を減らし,カロリーを気にしていた佐南先生も,カロリーを度外視した橋本先生のアメリカンな注文に巻き込まれ,デザートまできちんと注文し,1人あたり3000kcalくらいは摂取したでしょうか.帰りのタクシーでカロリーゼロ理論を必死に唱えながら,それぞれホテルの部屋に戻りました.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.591 - P.591

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.683 - P.683

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.684 - P.684

 夏休みになりましたが,東日本のわれわれとしては東医体の季節でもあります.すみません,西日本の先生方にとっては西医体ですね.なぜ小職が東医体を連想するかと言いますと,この春から医学部水泳部の顧問に就任したからです.小職は水泳部出身ではないのですが,大学の決まりとして教授職のみが部長および顧問になれるようで,前任の教授が退職して顧問が不在になったため,水泳部OBより小職に白羽の矢が立った次第です.その際の水泳部OBのコメントは,「昨年の東医体では優勝したクラブなので,ぜひお願いいたします」というもので,それを聞いてびっくりしました.と言いますのも,本学にはプールがないのです.「プールがないのによく優勝したな」というのが実感です.よっぽど外のプールを借りて練習したのでしょう.

 先日テレビを見ていると,北海道や沖縄県出身者はカナヅチが多いということでした.北海道や沖縄県の人は海に慣れ親しんでいるものの,海は泳ぐ場所ではなく海辺でBBQをする場所であるようです.水泳の教育を行うのは主に小・中学校ですが,そのプール設置率の高い都道府県は東京都や埼玉県で,北海道や沖縄県は低いようです.小職は東京都出身ですが,小学校や中学校では夏の体育の授業は水泳であり,学校内の水泳大会に始まり区単位の水泳大会が毎年あった記憶があります.埼玉県に関しては,「海のない県であるため,海に行った際に他県に負けないように」と,埼玉県出身のタレントが冗談交じりに述べておりました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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