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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科74巻13号

2020年12月発行

雑誌目次

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

企画にあたって フリーアクセス

著者: 髙橋聡

ページ範囲:P.1013 - P.1013

 このたび,「臨床泌尿器科」編集委員会のご高配を賜り,「コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御」というテーマで,各領域の文献を熟知されている先生方にご執筆をお願いした.ご執筆された先生方は,ようやく完成した「尿路管理を含む泌尿器科領域における感染制御ガイドライン(改訂第2版)」の共同執筆者でもある.

 このコロナ禍において,改めて認識されたのが感染制御の重要性ではないだろうか.標準予防策はもちろん,飛沫感染予防と接触感染予防についても認識を改めた泌尿器科医は少なくないだろうと想像する.ただし,たとえコロナ禍ではないとしても,感染制御に関する知識はもっておくべきであり,これらの知識は診療においても大いに役立つと考える.

〈泌尿器科医として押さえておきたい感染制御の基礎知識〉

標準予防策と経路別予防策

著者: 石川清仁

ページ範囲:P.1014 - P.1017

▶ポイント

・標準予防策の基本は,医療従事者の手指の衛生管理,手袋などの使用,および医療従事者を保護するための個人防護具の着用である.

・尿はいかなる処置においても飛散する可能性があるため,原則的に手袋とガウンの着用は必須となり,マスクやフェイスシールドは顔面に飛散する処置に限定される.

・院内で水平伝播する可能性のある耐性菌については,無症候性保菌者にも接触感染予防策が求められる.

職業感染対策

著者: 荒川創一

ページ範囲:P.1018 - P.1021

▶ポイント

・職業感染対策は臨床に従事するあらゆる医療者に共通する課題である.

・日常的に留意すべき対象は,針刺し・血液体液曝露によるウイルス感染としての,B型肝炎ウイルス(HBV)感染,C型肝炎ウイルス(HCV)感染,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染と,伝播力が強い4種流行性疾患(麻疹,風疹,水痘,流行性耳下腺炎),および結核である.

・免疫獲得できるウイルス感染は,ワクチン接種が必須である.

HBV再活性化への対応

著者: 速見浩士

ページ範囲:P.1022 - P.1025

▶ポイント

・抗がん化学療法や免疫抑制薬により,肝細胞内の残存B型肝炎ウイルス(HBV)遺伝子からHBVが複製され,B型肝炎が再活性化される.

・HBV既往感染例でのHBV再活性化によるde novo B型肝炎は,高率に劇症肝炎を発症する.

・泌尿器科領域では,抗がん化学療法,分子標的薬治療,腎移植などがHBV再活性化のリスクである.

尿路性器結核・BCGへの対応

著者: 安田満

ページ範囲:P.1026 - P.1029

▶ポイント

・結核菌群のうち,結核菌とウシ型結核菌はヒトに感染力をもつ.ウシ型結核菌を弱毒化したBCGもヒトに感染する可能性がある.

・尿路性器結核患者の尿に感染性はないが,標準予防策を行い,排膿を伴う場合は接触感染予防策も行う.

・BCGの調製時には個人用防護具(PPE)を装着する.BCG注入後の尿は次亜塩素酸ナトリウムにて処理し廃棄する.

〈泌尿器科臨床における感染制御の実際〉

尿路内視鏡の洗浄・消毒・滅菌

著者: 濵砂良一

ページ範囲:P.1030 - P.1035

▶ポイント

・尿路内視鏡の再処理には,高水準消毒および滅菌が必要である.

・尿路内視鏡に対する高水準消毒は過酢酸またはグルタラールによる消毒法を,滅菌はエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌法や過酸化水素プラズマ滅菌法を用いる.オートクレーブは硬性内視鏡に用いる.

・内視鏡は使用直後に,体液や血液で汚染された表面やチャンネルを洗浄する.

手術場での感染対策

著者: 小林加直 ,   武藤雅幸 ,   重松慶紀

ページ範囲:P.1036 - P.1039

▶ポイント

・手術時の手洗いは,抗菌性石鹸(スクラブ剤配合のクロルヘキシジン製剤,ポビドンヨード製剤)と流水による手洗い,または擦式消毒用アルコール製剤によるラビング法が推奨されている.両者に手術部位感染(SSI)の発症率の差はなく,現在ではラビング法が普及しつつある.

・手術用手袋は,SSI対策や職業感染の観点から二重装着が望ましい.

・術野の皮膚消毒薬にSSI発症率の差はないが,その特徴を把握したうえで,アレルギーや術野部位に応じて適切に使用することが重要である.

抗菌カテーテルの効果と適応

著者: 東郷容和 ,   山本新吾

ページ範囲:P.1040 - P.1043

▶ポイント

・14日以内の短期使用で,銀合金コーティングカテーテルは有意に無症候性細菌尿の頻度が低いとした報告はされているが,症候性尿路感染症における優越性は報告されていない.

・1か月を超える長期使用で,症候性尿路感染症または無症候性細菌尿の頻度を低下させる報告はされていない.

・抗菌薬を含浸させたカテーテルの有用性を示した報告はあるが,本邦では販売されていない.

カテーテル関連尿路感染症対策

著者: 和田耕一郎

ページ範囲:P.1044 - P.1047

▶ポイント

・長期の尿路カテーテル留置症例に細菌尿は必発であり,無症候であればカテーテル関連無症候性細菌尿として抗菌薬は投与しない.

・発熱などの症状を呈した状態をカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)とし,カテーテル交換と細菌学的検査の後に抗菌薬投与を開始する.

・CAUTIの予防策は,不要なカテーテル留置の回避と留置期間の短縮であり,医療者は清潔操作と標準予防策を徹底する.

泌尿器科検査時の感染対策

著者: 亀井潤

ページ範囲:P.1048 - P.1051

▶ポイント

・尿路検査では,尿路に対する無菌操作と適切な滅菌器具の使用を心がける.

・尿は感染性のある体液なので,手指衛生と個人防護具の使用を徹底する.

・上部尿路に対する検査では,可能な限りmaximal barrier precautionsにて行うことが望ましい.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策

著者: 髙橋聡

ページ範囲:P.1052 - P.1055

▶ポイント

・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路は飛沫感染と接触感染である.

・感染リスクの評価が検査前に必要である.

・核酸増幅法では,検査時点でSARS-CoV-2のRNAが検出されるかどうかが判定される.

綜説

限局性前立腺癌における骨盤内リンパ節郭清術の現状と次世代への考察

著者: 藤本直浩

ページ範囲:P.1005 - P.1012

要旨

 限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術時の骨盤内リンパ節郭清術(PLND)は,主に中間〜高リスク群の多くの症例で施行されているが,PLNDによる治療成績の改善は示されておらず,その臨床的意義は明らかではない.しかし,PLNDは最も有効なリンパ節転移診断方法であることは疑いがなく,また,PLNDが価値ある治療手段となる可能性は十分にある.そのために考慮すべきこととして,PETをはじめとする画像診断技術の進歩,および生検組織の分子生物学的検討によるPLNDを必要とする患者群の選択や郭清すべきリンパ節の同定,摘出リンパ節における遺伝子プロファイリングや蛋白発現などの情報を術後の経過観察や補助療法に活用することなどが挙げられる.

症例

Raoultella ornithinolyticaによる下部尿路感染症

著者: 根本勺

ページ範囲:P.1057 - P.1059

 71歳男性.他院入院中に,尿道カテーテルを留置.抜去後も排尿時痛などが遷延していると当院初診.尿検査にて膿尿があり,下部尿路感染症と診断し,セフジトレンピボキシルを投与.尿培養検査でRaoultella ornithinolyticaが陽性であった(106CFU/mL).

連載 医薬系プレゼンテーションの技術―知れば,学べば,必ず上達!・第12回

言語テクニック(バーバルテクニック)①

著者: 井上貴昭

ページ範囲:P.1061 - P.1065

言葉が心を動かす

 さあ,今回はoral presentationの第2弾“言語テクニック”だ.プレゼンテーションと聞くと,“言葉を使って上手に話す”というイメージを持っている方がおそらく多いだろう.“話し上手はプレゼンテーションが上手!!”これは,たしかに間違いではない.ただ,それだけではダメなことはこの連載で今まで話してきた通りである.だが,上手く話すことは,聞き手に伝えるためにはとても大切なことだ.

 少し思い返してみよう.

書評

泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識―「臨床泌尿器科」編集委員会 編 フリーアクセス

著者: 伊藤明宏

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 泌尿器科は,新生児から高齢者まで全ての年齢層を対象としており,扱う領域は,悪性疾患,尿路性器感染症,腎機能障害,腎移植,下部尿路機能障害,内分泌疾患,性機能障害,小児・女性泌尿器など,多岐にわたります.教育病院,市中病院,民間病院,クリニック,それぞれの施設やそれぞれの地域において特徴的な医療を行っており,泌尿器科疾患の全範囲に常に触れているわけではありませんので,全ての最新知見に精通している泌尿器科医は決して多くないと思います.一方,診療ガイドラインの改訂や取扱い規約の改訂は,以前よりも間隔が短くなっており,各自の守備範囲としている領域においても,全ての改訂内容をフォローできている専門医は決して多くはないことと思います.インターネットが身近に利用できる環境が整い,検索すれば最新情報を入手することは可能ですが,あまりなじみのない領域ではキーワードすら思いつくことができず,自分の知識をアップデートするのはなかなか容易ではないのが現実ではないでしょうか.

 本書では泌尿器科診療の全ての領域にわたって,最新情報として押さえておくべきポイントについて,それぞれの専門家がコンパクトにまとめて記載しています.セッションの冒頭で,以前の常識(平成の常識)と現在の常識(令和の常識)がコラムとしてピックアップされています.これまでの常識について,「確かにそうであった」とうなずきながら読むことで,読者はここで安心することができます.そして,これまでの診断や治療の変遷を踏まえて読み進めることで,新しい常識を吸収しやすくなっているのが,本書の特色だと思います.診療ガイドラインや取扱い規約が改訂されて多数出版されていますが,本書では現在の常識として改訂ポイントをピックアップして記載しているので,最新の知見と改訂ポイントを一読で確認することが可能です.本邦の各種診療ガイドラインにおいて,EAUやNCCNガイドラインのような小まめなアップデートは,現実的には困難です.そのような現状ですが,次の診療ガイドラインが出版される前に,WHO分類のアップデートに伴う知見や海外のエビデンスを基にした知見など,すでに日常診療として実践されていることが多々あります.また,新規治療薬の国内承認が相次ぎ,用法追加承認もしばしば行われています.診療ガイドラインでは追いついていない治療方法についても,本書では新しい常識として取り上げられており,up to dateの診療を患者に提供する際の根拠として利用することが可能です.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1003 - P.1003

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1069 - P.1069

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.1070 - P.1070

 本学も対面での学生の講義が再開されました.先日大学1年生130人の前で,人体機能概論の講義をしました.毎年,福島県内の高校生に出前講義をしているためか,私のことをすでに知っている学生が10人ほどいたことは,モチベーションupにつながりました.私の講義を聴いたのは4回目という学生もいました.

 毎年1年生への講義では,主に前立腺癌に対するロボット支援手術の話をするのですが,今回は2時間の講義時間をいただいたので,私の専門の1つである小児泌尿器科疾患に対する腹腔鏡手術やロボット支援手術の話も加えました.講義の後に学生に感想文を書いてもらったのですが,小児医療に関する話に対する感想が多くみられ,正直その反響の大きさに驚きました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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