文献詳細
交見室
文献概要
私は内視鏡関連の仕事を色々としてきたが,そのなかでオリンパス社と協力して開発したTURisシステムが最高の優れものであったと自負している.2002年に基礎的検討結果1)を,そして2003年に臨床成績2)を報告し,そこで初めてTURis(TUR in saline)という言葉を使った.TURisシステムが世界中で徐々に広まるのを見守りつつ,本誌交見室でも「TURisはbipolarではない」3)「TURBTは視野方向30度スコープで行おう」4)など意見を述べてきた.
一方,ただ1つ心配してきたのは「膀胱腫瘍に対し灌流液に生理食塩水を使って大丈夫か?」ということであった.TURis開発前のconventional TURを経験されていた方はご存知かと思うが,TURP実施時には非溶血性灌流液(ウリガール,ソルビトール,グリシン,グルコースなどの等張液)を使用していたが,TURBT時にはあえて滅菌蒸留水を使用していた.それは,切除時に遊離した腫瘍細胞が滅菌蒸留水に接して破壊され,腫瘍の播種,転移を防止するうえで役立つと考えられていたからである5).生理食塩水を使うということは,この理屈に反することになる.しかしTURisでは,TURPの最大の問題である低Na血症が回避でき,TURBT時の閉鎖神経反射も少なく,何よりもループ全体に放電発熱が起きて腫瘍切除がスムーズにできるという利点を有しており広く普及してきた.
一方,ただ1つ心配してきたのは「膀胱腫瘍に対し灌流液に生理食塩水を使って大丈夫か?」ということであった.TURis開発前のconventional TURを経験されていた方はご存知かと思うが,TURP実施時には非溶血性灌流液(ウリガール,ソルビトール,グリシン,グルコースなどの等張液)を使用していたが,TURBT時にはあえて滅菌蒸留水を使用していた.それは,切除時に遊離した腫瘍細胞が滅菌蒸留水に接して破壊され,腫瘍の播種,転移を防止するうえで役立つと考えられていたからである5).生理食塩水を使うということは,この理屈に反することになる.しかしTURisでは,TURPの最大の問題である低Na血症が回避でき,TURBT時の閉鎖神経反射も少なく,何よりもループ全体に放電発熱が起きて腫瘍切除がスムーズにできるという利点を有しており広く普及してきた.
参考文献
1) Shiozawa H, et al : A New Transurethral Resection System : Operating in Saline Environment Precludes Obturator Nerve Reflexes. J Urol 168 : 2665-2667, 2002
2) 三木 誠, 他 : 閉鎖神経反射を起こさない新TURシステム (TURis) の開発とその臨床応用. 日泌会誌94 : 671-677, 2003
3) 三木 誠 : TURisはbipolarではない. 臨泌68 : 176, 2014
4) 三木 誠 : TURBTは視野方向30度スコープで行おう (硬性鏡使用時は視野方向・視野角を意識しよう). 臨泌72 : 86-87, 2018
5) 小柴 健 : 経尿道的膀胱腫瘍切除術の研究. 日泌会誌55 : 843-868, 1964
掲載誌情報