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雑誌目次

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臨床泌尿器科75巻4号

2021年04月発行

雑誌目次

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

企画にあたって フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.7 - P.7

 多くの医師にとって,一人前になるために避けて通れない「登竜門」ともいえる業務の1つが当直ではないでしょうか.泌尿器科の場合は,数年に1回遭遇するかどうかといった救急疾患や,泌尿器科手術特有の術後出血や血尿などへの迅速な対応を求められることもありますので,特に後期研修をスタートしたばかりの先生方におかれましては,不安も多く気苦労が絶えないのではないかと思います.当直時に知っておくべき対応は非常に多岐にわたりますが,そのためには日々経験を積みながら謙虚に学んでいくほかに近道はありません.

 そこでこのたび,経験豊富な執筆陣にご協力いただき,当直を行う際に役立つ実践的な一冊を目指して,いざという時に備えて日頃から学習できるように「泌尿器科当直医マニュアル」を発行いたします.本企画では,大きく〈外来編〉と〈入院編〉に分けて,当直時に遭遇する可能性のある疾患・トラブルなどについて,「主な症状」「鑑別診断」「診断・治療手順」「入院の際の判断基準※外来編の場合」「上級医師(他科医師)にコンサルトする際の判断基準」「緊急時の処方・点滴例」「緊急時に必要な処置」と,体系立てて解説しています.また,選択すべき検査から治療までの流れが可視化できるよう,適宜フローチャートもつけました.時間的余裕のない場合には,これをさっと見ていただくだけでも知識の整理に役立てていただけるかと思います.

総論

泌尿器科当直医の心得

著者: 篠島利明 ,   朝倉博孝

ページ範囲:P.10 - P.13

確実に押さえておきたいポイント
☞致命的であったり,性機能,排尿機能に与える影響が大きい救急疾患に対しては,普段から情報を収集し,将来遭遇したときに備えておく.
☞尿管結石の触れ込みでやってきた側腹部痛患者には,致命的な他科疾患が潜んでいる可能性に留意する.
☞施行可能な状況であれば,造影CTを含めたCT,ドプラエコー,尿道・膀胱造影検査を行う手間を厭わない.

尿検査の基礎的知識

著者: 篠島利明 ,   朝倉博孝

ページ範囲:P.14 - P.17

確実に押さえておきたいポイント
☞泌尿器科救急における尿検査は,尿路感染症の診断において必須かつ有用である.
☞検尿で尿中に有意に白血球が存在し(膿尿),定量培養で有意の尿中細菌を証明することが尿路感染の診断となる.
☞定性検査や培養検査において,偽陽性や偽陰性の原因となる要因や病態を理解しておく必要がある.

緊急時の超音波検査の基礎的知識

著者: 中村祐基 ,   吉田宗一郎

ページ範囲:P.18 - P.22

確実に押さえておきたいポイント
☞超音波検査は泌尿器科領域において,主に側腹部痛や血尿,陰囊内のスクリーニング検査として広く用いられる基本的な画像検査である.
☞非侵襲的でリアルタイムでの観察が可能であることに加え,カラードプラ法により血流の評価も可能であるため,緊急時の検査としても有用である.
☞客観性や再現性に乏しいために検者の技術が要求され,正常像の把握といった知識も必須である.

緊急時のCT検査の基礎的知識

著者: 中村祐基 ,   吉田宗一郎

ページ範囲:P.23 - P.27

確実に押さえておきたいポイント
☞緊急時のCT検査は,結石診断を含む急性腹症,術後合併症,外傷の精査などが適応となる.
☞造影剤を使用する場合には,腎機能低下やビグアナイド系糖尿病薬内服に注意し,施行する場合にも適切な副作用予防を行う.
☞造影CT検査では,評価病変によって適切なタイミングでの撮影を選択する必要がある.

外来編 緊急対応を要する疾患・トラブル

腎外傷

著者: 柳雅人

ページ範囲:P.30 - P.34

絶対に見逃してはいけないポイント
☞造影CTでの造影剤の血管外漏出像はCT撮影時点での活動性の出血を示しており,治療方針の決定を左右する重要な所見であるため,見落とさないようにする.
☞尿漏は初回の造影CTでは見逃されやすい.尿漏を否定できない場合は,後日でも排泄相を含む造影CTを行うのが無難である.少なくとも腰痛を伴う熱発を来した際は,尿漏による膿瘍形成を念頭に排泄相を含めた造影CTを行う.
☞膿瘍を放置すると尿管や腎周囲の繊維化を引き起こし,尿管閉塞や遅発性の高血圧を引き起こすため,早期の治療介入が必要である.

腎梗塞

著者: 山下慎一

ページ範囲:P.35 - P.38

絶対に見逃してはいけないポイント
☞腎梗塞は突然の側腹部痛や腰痛で発症することが多く,尿管結石との鑑別が重要である.
☞腎梗塞が疑われた場合は,腎梗塞の原因を十分に検索する.
☞腎梗塞の再発予防には原疾患の治療が大事であり,原疾患を扱う診療科にすみやかにコンサルトして治療方針を考慮する.

急性腎盂腎炎・敗血症

著者: 安田満

ページ範囲:P.39 - P.44

絶対に見逃してはいけないポイント
☞致命的となりうる尿路性敗血症を見逃してはならない.また,基礎疾患の有無も初期抗菌薬の選択に重要で必要な情報となるため,必ず検索を行う.
☞尿検査において膿尿および細菌尿を認めたとしても,ほかの熱源検索も必ず行う必要がある.

急性前立腺炎

著者: 森健一

ページ範囲:P.47 - P.50

絶対に見逃してはいけないポイント
☞尿閉および前立腺膿瘍の有無.
☞血圧低下などの敗血症を疑う所見.
☞腎不全,免疫抑制剤・抗がん剤内服,糖尿病,高齢などの感染防御機能低下の有無.

尿管結石・疝痛発作

著者: 岡田真介 ,   森川弘史

ページ範囲:P.51 - P.55

絶対に見逃してはいけないポイント
☞尿路結石治療の目的は,疼痛からの緩和,尿路感染の改善と予防,そして腎機能の保護である.排石が確認されるまで定期的に経過観察を行う必要があることを,患者にしっかりと伝える.
☞迅速に施行できる超音波検査を用いて水腎症の有無,腹部単純CTで結石を確認する.ほかの緊急性を要する疾患の鑑別,除外を必ず行う.
☞禁忌となる疾患につき注意し,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)により早期の疼痛の緩和に努める.尿管閉塞に伴う腎機能低下,膿腎症の併発に留意する.

肉眼的血尿・膀胱タンポナーデ

著者: 佐々直人

ページ範囲:P.56 - P.58

絶対に見逃してはいけないポイント
☞肉眼的血尿は,腎臓・尿管・膀胱・前立腺・尿道での出血である.緊急性の有無の判断が最も重要である.
☞血尿が高度であれば,膀胱内で凝血塊を形成し,尿閉となる.尿閉のなかでも,血尿に伴うものを“膀胱タンポナーデ”と呼ぶ.
☞患者からすれば「尿をしたくても出せない」苦痛な症状であり,適切な緊急的対処と治療戦略を立てられるようにする.

膀胱外傷(骨盤骨折)

著者: 飯島和芳

ページ範囲:P.59 - P.61

絶対に見逃してはいけないポイント
☞骨盤骨折患者に肉眼的血尿を認めた場合,膀胱外傷を疑い膀胱造影を行う.
☞腹膜内膀胱破裂では,修復術を要する.
☞腹膜外膀胱破裂では,膀胱カテーテル留置による保存的治療が可能であるが,膀胱頸部損傷,骨片による膀胱壁の穿破,直腸・腟損傷合併,また骨盤骨折の手術を行う場合には,修復術を行う.

男性の尿道外傷(骨盤骨折)

著者: 堀口明男 ,   尾島健一郎 ,   新地祐介

ページ範囲:P.62 - P.66

絶対に見逃してはいけないポイント
☞骨盤骨折の患者を診療する際には,外尿道口からの出血や肉眼的血尿がなくても,尿道外傷の可能性を常に念頭に置く.
☞尿道外傷が確認されたらすみやかに尿道カテーテルを留置,もしくは膀胱瘻を造設して尿のドレナージを図る.
☞尿道カテーテル挿入が困難な場合には,無理をせず膀胱瘻造設を選択する.

急性尿閉

著者: 大塚篤史 ,   三宅秀明

ページ範囲:P.67 - P.70

絶対に見逃してはいけないポイント
☞急性尿閉は膀胱内に貯留した尿を体外に排出することが困難な状態であり,すみやかに膀胱内の尿を体外へ排出させる処置(導尿や膀胱瘻造設)が必要となる.
☞全身状態不良,有熱性尿路感染症,両側水腎症を伴う腎後性腎不全,多量の血塊ないし高度な肉眼的血尿,下部尿路損傷を有する場合,入院加療を検討する.
☞尿道は非常に繊細で容易に医原性損傷を来すため,愛護的な操作により尿閉を解除できるよう最大限の配慮を払う.

陰茎絞扼症

著者: 小林憲市 ,   河内明宏

ページ範囲:P.71 - P.74

絶対に見逃してはいけないポイント
☞絞扼物の除去は救急対応を要する.待機しても何も改善しないうえ,絞扼期間が長いと,重篤な合併症の頻度が高まる.
☞緊急対応下では,可能な限り陰茎温存を目指す.完全に壊死に陥ることはまれである.
☞絞扼物除去後も注意深い観察をする.局所症状と全身症状は一致しない.
☞発症原因についてはきちんと確認する.特に未成年症例の場合,他人の悪戯や虐待を見逃してはいけない.

嵌頓包茎

著者: 小林憲市 ,   河内明宏

ページ範囲:P.75 - P.78

絶対に見逃してはいけないポイント
☞嵌頓解除は救急対応を要する.待機しても何も改善しないうえ,時間が経過するほど整復の難易度が上がる.
☞ただし,処置は時間をかけてゆっくりと行う.焦って行う必要はない.
☞整復時の疼痛は強いため,事前に十分に説明する.

持続勃起症

著者: 江夏徳寿

ページ範囲:P.79 - P.83

絶対に見逃してはいけないポイント
☞虚血性持続勃起症では,発症してから24時間以内で海綿体洗浄+α作動薬注入にて改善することが多いが,24時間を超えてくると組織の虚血に伴う線維化が進行する.そのため,シャント増設術により勃起が解除された後に性機能障害を来す可能性が高い.
☞持続勃起症患者が受診した際は確実に虚血性かどうかの診断を行い,虚血性であればすみやかに治療を開始することが必要である.

陰茎外傷(尿道損傷・陰囊外傷を含む)

著者: 佐々木春明 ,   橋本湧 ,   山岸元基

ページ範囲:P.84 - P.87

絶対に見逃してはいけないポイント
☞陰茎単独での損傷はまれであるので,尿道,海綿体,陰囊内の確認を必ず行う.
☞交通外傷に伴う場合は,腹部〜骨盤部CTを行う.
☞会陰部打撲では尿道損傷のほかに,後日持続勃起症が発生することがあるのであらかじめ説明する.

陰茎折症

著者: 近藤宣幸

ページ範囲:P.88 - P.91

絶対に見逃してはいけないポイント
☞陰茎折症は緊急疾患であるが,的確な診断と早期の対応により治癒可能であることを認識する.
☞勃起時に外力が加わったことや,「ポキッ」という異常音(cracking sound)が聞こえたか否かを必ず聴取して,その場合には緊急手術を勧める.

亀頭包皮炎

著者: 久松英治

ページ範囲:P.92 - P.94

絶対に見逃してはいけないポイント
☞排尿障害の原因となる閉塞性乾燥性亀頭炎(BXO)を見逃さない.
☞BXOを伴う場合,炎症が落ち着いたら環状切除術が必要である.

急性陰囊症(精巣捻転)

著者: 守時良演 ,   水野健太郎 ,   林祐太郎

ページ範囲:P.95 - P.99

絶対に見逃してはいけないポイント
☞カラードプラ超音波検査で精巣への血流が同定された場合,精巣捻転の可能性は減り,垂捻転や精巣上体炎などが想定できるが,検査までの歩行や臥床により精巣の捻れが偶然に軽減,解消した可能性は否めない.適切なインターバルで観察することが必須である.
☞停留精巣では精巣捻転が起こりやすいとされ,術前の停留精巣の患児が鼠径部痛を訴えた場合には,鼠径ヘルニアとともに本症を疑うようにする.
☞精巣捻転が長時間続くと,精巣への血流が遮断され壊死に陥る.発症から数時間以内に解除されることが望ましい.

精巣外傷

著者: 笠原瑞希 ,   山辺史人 ,   中島耕一

ページ範囲:P.100 - P.102

絶対に見逃してはいけないポイント
☞著明な陰囊内血腫で陰囊が緊満している場合は,手術適応を考慮する.
☞陰囊内に精巣を認めない場合は,精巣転位症を疑う.

フルニエ壊疽

著者: 阿南剛

ページ範囲:P.103 - P.108

絶対に見逃してはいけないポイント
☞フルニエ壊疽は急速に進行する壊死性筋膜炎で,早期診断・早期治療が重要な緊急疾患である.
☞治療は早期のデブリードマンが基本であり,安易な保存的加療は行わない.
☞フルニエ壊疽の診断にはLRINECスコア,フルニエ壊疽の重症度判定にはFGSI,UFGSIスコアが有用である.

カテーテルトラブル:腎瘻・膀胱瘻

著者: 杉野善雄

ページ範囲:P.109 - P.111

絶対に見逃してはいけないポイント
☞腎瘻・膀胱瘻のトラブルが生じた患者を診察する際は,敗血症性ショックなどの重篤な合併症を来す可能性を考えて治療を計画する.
☞腎瘻・膀胱瘻抜去時は,まず迅速に再留置を試みる.

カテーテルトラブル:尿管ステント

著者: 杉野善雄

ページ範囲:P.112 - P.114

絶対に見逃してはいけないポイント
☞尿管ステントのトラブルが生じた患者を診察する際は,見た目が落ち着いている患者でも急変する可能性を常に考えながら対応する必要がある.採血や画像データを確認したうえで,病歴を適切に把握し,全身状態の異常を見逃さないように気をつけて治療方針を決めることが重要である.
☞尿管ステント閉塞時は,ガイドワイヤーが通らないことも多々あり,腎瘻造設やセカンドステント留置といった次の方針も考えておく.迷ったときは上級医に相談する.

腎移植後患者の発熱・感染症

著者: 田邉起 ,   堀田記世彦

ページ範囲:P.115 - P.118

絶対に見逃してはいけないポイント
☞免疫抑制状態であるため,重症化する可能性があることを認識する.
☞日和見感染では,特にサイトメガロウイルス(CMV)感染症に注意する.
☞身体所見に乏しいことがあるため,一般検査や画像検査は積極的に行う.

緊急対応を要するがん薬物療法の副作用

腎細胞癌に対する分子標的薬

著者: 森田順

ページ範囲:P.119 - P.126

絶対に見逃してはいけないポイント
☞分子標的薬で起こりうる有害事象を普段から把握しておくことはもちろんのこと,患者や家族にも常日頃から理解してもらえるよう説明することが重要である.
☞分子標的治療薬単独療法でも,出血や穿孔を伴う消化器疾患や心不全など重篤な有害事象を常に意識する.
☞免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用療法においては,分子標的治療薬による有害事象プロファイルが多いが,自己免疫疾患関連有害事象(irAE)の可能性も常に念頭に置いた医療連携が必要である.

腎細胞癌に対する免疫チェックポイント阻害薬

著者: 森田順

ページ範囲:P.127 - P.131

絶対に見逃してはいけないポイント
☞自己免疫疾患関連有害事象(irAE)の重大な副作用の初期症状は,倦怠感などの不定愁訴で始まるものも多く,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)にて治療中または治療後の患者が救急外来を受診した際には,十分な診察・検査を行い,早期発見に努めることが最も重要である.
☞少しでもirAEが疑われる際は,上級医や他診療科へのコンサルトを躊躇せず,ステロイドの使用も含め早期に適切な対処を心がけていく必要がある.

膀胱癌に対するBCG療法

著者: 井上省吾

ページ範囲:P.132 - P.135

絶対に見逃してはいけないポイント
☞2日以上持続する発熱や高度の膀胱刺激症状を認める場合,BCG療法を中止後,全身状態に応じて抗結核薬など抗菌薬の投与を検討する.
☞尿道炎・結膜炎・関節炎を3徴とするReiter症候群は,頻度が低いが重篤な合併症であり,泌尿器科領域以外の部位についても,注意深い観察が重要である.

尿路上皮癌に対する抗がん剤・免疫チェックポイント阻害薬

著者: 井上省吾

ページ範囲:P.136 - P.142

絶対に見逃してはいけないポイント
☞抗がん剤治療はさまざまな臓器毒性を起こし,特に発熱性好中球減少症(FN)は,重症化の危険性が高く,適切な対処法を熟知しておく必要がある.
☞免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連副作用(irAE)において,重大な副作用の初期症状は,疲労・倦怠感など不定愁訴が多い.
☞irAEでは重症度を早急に判定し,他科専門医への紹介やステロイド投与を検討するなど,早期発見と迅速な治療介入が重要である.

去勢抵抗性前立腺癌に対する抗がん剤

著者: 井口太郎 ,   平山幸良 ,   加藤実

ページ範囲:P.143 - P.145

絶対に見逃してはいけないポイント
☞発熱性好中球減少症(FN)患者の初期治療はガイドライン内でまとめられている.FNの治療は初期診断・治療を誤ると重大な結果を引き起こすことになる可能性があるために,熟知しておく必要がある.
☞ラジウム223投与中の患者に対応する際,投与1週間以内の場合は糞尿にラジウム223が含まれるため,救急外来での尿の取扱には注意が必要である.

去勢抵抗性前立腺癌に対する新規アンドロゲン剤

著者: 井口太郎 ,   加藤実 ,   玉田聡

ページ範囲:P.146 - P.150

絶対に見逃してはいけないポイント
☞エンザルタミド・アパルタミド・ダロルタミドの副作用として,痙攣発作,血小板減少,皮膚障害などが起こることがあり,注意が必要である.
☞エンザルタミド・アパルタミド・ダロルタミドでは,疲労・倦怠感,食欲不振,関節痛などの副作用が起こることもあるが,これらは一時的な休薬や減量で軽快することが多いため,投与継続は可能である.
☞アビラテロンの副作用として,低カリウム血症や肝機能障害が起こることがあり,注意が必要である.

入院編 術後合併症

術後疼痛

著者: 馬嶋剛

ページ範囲:P.152 - P.154

絶対に見逃してはいけないポイント
☞術後疼痛は,創部由来であることが通常だが,何らかの合併症が生じている場合もある.
☞想定される鑑別疾患を網羅できるように頭をフル回転するとともに,1人で抱え込まず,上級医に相談することも大切である.

術後せん妄(注意力障害・意識障害)

著者: 松本純弥

ページ範囲:P.155 - P.159

絶対に見逃してはいけないポイント
☞せん妄の治療には抗精神病薬が必要だが,安全性には問題があり注意が必要である.
☞せん妄の多くは不眠が関わるうえ,通常の睡眠導入剤・精神安定剤はむしろせん妄を引き起こす要因になる.
☞ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬をはじめとしたGABA作用薬がせん妄の要因になりうる.
☞ベンゾジアゼピン系を避けたつもりで,非ベンゾジアゼピン系と呼ばれるゾルピデムなどのZ薬を選んでしまう可能性があるが,これはGABA作用薬であるため,ベンゾジアゼピンと本質的には変わりなく,処方を避ける必要がある.
☞Z薬以外にも,エチゾラム・ブロチゾラムも厳密にはベンゾジアゼピン骨格を有しないが,作用はベンゾジアゼピンと同様であり,これらも避ける必要がある.

術後脳梗塞(しびれ・麻痺・痙攣)

著者: 舘野冬樹 ,   榊原隆次

ページ範囲:P.160 - P.165

絶対に見逃してはいけないポイント
☞術後に突発的に出現した意識障害や片麻痺や感覚障害,痙攣などがある場合,中枢性合併症を疑い積極的に緊急検査を行う.
☞痙攣や意識障害は中枢性器質的疾患だけでなく,全身性疾患(代謝性疾患や感染症など含む)の可能性もあり,一般検査を含めた全身検索が必要である.
☞的確に重症度を判別し,既往症や基礎疾患,手術侵襲を統合し,上級医や専門医にコンサルトする.

術後心筋梗塞・重症不整脈(胸痛・胸部違和感)

著者: 上田希彦

ページ範囲:P.166 - P.170

絶対に見逃してはいけないポイント
☞致死的になりうる術後心筋梗塞,不整脈を見逃してはならない.心電図変化がなくても術後心筋梗塞は否定できない.
☞術後心筋梗塞の発症2時間以内ではトロポニンTは陰性になることもあり,陰性の場合は12誘導心電図とともに数時間後の再検を行う.
☞重症肺血栓塞栓症でもトロポニンTは陽性になることがある.

術後肺血栓塞栓症・無気肺・肺炎(呼吸困難・胸痛)

著者: 齋藤好信

ページ範囲:P.171 - P.176

絶対に見逃してはいけないポイント
☞急性の胸痛,呼吸困難は生命に直結する疾患の発症を念頭に迅速に対応する.
☞優先的に鑑別する疾患は,虚血性心疾患,急性大動脈解離,肺血栓塞栓症である.
☞酸素分圧が正常でもA-aDO2の開大に注意が必要である.

間質性肺炎・胸水貯留(呼吸困難・SpO2低下)

著者: 坂本晋 ,   本間栄

ページ範囲:P.177 - P.182

絶対に見逃してはいけないポイント
☞重篤な呼吸不全を伴い致命的となる間質性肺炎急性増悪,薬剤性肺障害,大量胸水は見逃してはならない.
☞胸部画像上びまん性の肺病変を呈する呼吸不全患者の原因は多岐にわたり,間質性肺炎のみならず,心疾患,腎不全などによる肺水腫などの迅速な鑑別が必要となる.
☞新型コロナウイルス(COVID-19)感染蔓延地域においては,発熱者はCOVID-19の鑑別が最優先となる.

術後急性腹症(穿孔・腸閉塞・イレウス)

著者: 永仮邦彦 ,   石崎陽一 ,   嵩原一裕

ページ範囲:P.183 - P.189

絶対に見逃してはいけないポイント
☞致命的となりうる消化管穿孔を見逃してはならない.また,基礎疾患の有無やステロイド内服などの把握も重要で必要な情報となるため,必ず検索を行う.
☞腹部理学的所見で腹膜刺激症状である反跳痛や筋性防御,板状硬の状態を見逃さないようにする.
☞画像所見においてX線所見でみられるfree air,CT検査所見でのみ確認できるfree airやbeak sign,whirl sign,大量の腹水,腸管壁の造影消失などが大切である.

術後下肢静脈血栓症(深部静脈血栓症)

著者: 横山泰孝

ページ範囲:P.190 - P.194

絶対に見逃してはいけないポイント
☞手術後の下肢静脈血栓症は,時に重篤な術後経過を引き起こす肺血栓塞栓症(PTE)の発生母体であり,血栓ができないように予防することが最重要である.
☞術後に中枢型かつ遊動性を認める深部静脈血栓症(DVT)を認めた場合には,抗凝固療法や下大静脈フィルターの必要性について,ただちに循環器内科専門医へコンサルトする.

術後出血(開放手術・腹腔鏡手術後の血圧低下)

著者: 井上高光 ,   成田伸太郎

ページ範囲:P.195 - P.198

絶対に見逃してはいけないポイント
☞致命的になる術後の大量体内出血(動脈性出血)を見逃さない.
☞頻呼吸および意識変容が,初期で最も重要な兆候である.四肢や顔面の皮膚所見にも注意する.
☞ドレーンからの出血や血算値低下がなくても,術後大量出血を否定してはならない.
☞疑ったら赤血球輸血の緊急準備,ラインの確保と大量輸液とCTを最優先で急ぐ.

術後血尿(経尿道的前立腺手術・膀胱腫瘍手術後の血尿)

著者: 福多史昌

ページ範囲:P.199 - P.202

絶対に見逃してはいけないポイント
☞出血性ショックの有無.
☞膀胱損傷,前立腺被膜損傷による灌流液の尿路外への溢流の有無.

TUR症候群

著者: 濱川隆 ,   梅本幸裕 ,   安井孝周

ページ範囲:P.203 - P.206

絶対に見逃してはいけないポイント
☞経尿道的手術中あるいは手術後に,生あくび,嘔吐,意識障害,血圧低下,徐脈などを来した場合,TUR症候群を疑う.
☞迷走神経反射,敗血症,大量出血,高位麻酔,心血管疾患,脳卒中なども同様の症状を来す場合があり,鑑別診断が重要である.
☞低ナトリウム血症,低血漿浸透圧がみられ,中枢神経症状を伴う場合は,高張食塩液(3%食塩水)の投与を行う.

ESWL後被膜下血腫

著者: 樋口雅俊 ,   山下真平 ,   原勲

ページ範囲:P.207 - P.209

絶対に見逃してはいけないポイント
☞ESWL後に徐々に増悪する疼痛や鎮痛薬が無効な疼痛を認める症例では,被膜下血腫の可能性を念頭に置いたうえでリスク因子の聴取や画像検査を行わなければならない.
☞意識レベルやバイタルレベルの悪化を認める症例では,適切な初期対応を行い全身状態の安定に努める.それと同時に,すみやかに止血術を行う必要がある.

術後コンパートメント症候群

著者: 新保正貴 ,   服部一紀

ページ範囲:P.210 - P.213

絶対に見逃してはいけないポイント
☞砕石位での術後の疼痛は,まずはコンパートメント症候群の可能性を想起する.処置にゴールデンタイムのある緊急疾患である.
☞腫脹に合わない疼痛,特に筋肉を伸ばして強い疼痛を来す場合,しびれがある場合は,一過性のものとして経過観察を行うのは不可である.
☞患肢のしびれ,緊満腫脹,筋力の低下を見逃さない.

仮性動脈瘤(腎部分切除術・腎外傷・腎生検・経皮的腎瘻造設術後の肉眼的血尿)

著者: 蓼沼知之 ,   槙山和秀

ページ範囲:P.214 - P.216

絶対に見逃してはいけないポイント
☞排尿困難,ショック様症状の出現に注意し,仮性動脈瘤が疑われたら早急に腹部造影CT検査を行う.
☞仮性動脈瘤と診断したら担当の医師に相談し,血管造影検査を依頼する.

尿管損傷・膀胱損傷(外科・産婦人科手術後のドレーン排液増加)

著者: 松﨑洋吏 ,   坪内和女 ,   羽賀宣博

ページ範囲:P.217 - P.220

絶対に見逃してはいけないポイント
☞尿路損傷かリンパ漏かの確認のために,排液の成分分析を行う.
☞腎機能が許せば排泄相までの造影CTを行い,尿管損傷か膀胱損傷かを確認する.
☞尿管損傷は逆行性腎盂造影にて損傷の部位と範囲を確認し,ステント留置を試みる.膀胱損傷は,膀胱造影にて腹膜内損傷か腹膜外損傷かを判断し治療方針を決める.

術後創部感染

著者: 嶋田修一 ,   千葉大豪 ,   伊藤明宏

ページ範囲:P.221 - P.223

絶対に見逃してはいけないポイント
☞手術部位感染(SSI)は発症予防が何よりも重要である.SSI発症時には重症度の評価を行い,すみやかに対応することが重要である.
☞深部切開創SSI,臓器・体腔SSIを疑った場合は,すみやかに熱源検索,培養検査,抗菌薬投与など精査加療を行う.
☞自科で対応困難な場合は,他科コンサルトをためらわない.

処方・処置に伴う合併症・トラブル

薬剤性腎不全

著者: 渡辺裕輔 ,   岡田浩一

ページ範囲:P.224 - P.227

絶対に見逃してはいけないポイント
☞腎機能障害の原因として薬剤性を鑑別に挙げる.薬剤性腎障害には4つのパターンがある.
☞薬剤性腎障害では被疑薬を中止するとともに,腎排泄性薬剤の減量・中止も考慮する.
☞薬物療法に抵抗性の高カリウム血症,体液過剰,代謝性アシドーシス,尿毒症症状を呈した場合は,透析療法の適応になる.

腫瘍崩壊症候群

著者: 黒部匡広 ,   河合弘二 ,   宮崎淳

ページ範囲:P.228 - P.231

絶対に見逃してはいけないポイント
☞化学療法開始後に腎不全,不整脈,痙攣などが出現したら,腫瘍崩壊症候群を疑う.
☞腫瘍崩壊症候群の死亡率は約40%と高く,適切なリスク評価と予防処置で発症を防ぐことが肝要である.
☞固形腫瘍のなかでも精巣腫瘍は腫瘍崩壊症候群の発症リスクが高く,注意が必要である.

造影剤・抗がん剤・抗菌薬などによるアナフィラキシーショック

著者: 竹村弘司 ,   三浦裕司

ページ範囲:P.232 - P.236

絶対に見逃してはいけないポイント
☞全身状態が急激に悪化する可能性があるため,迅速な対応が必要である.
☞二相性反応のリスクがあるため,全身状態が安定した後も慎重な経過観察が必要である.
☞抗がん剤による投与後反応には,アレルギー反応とinfusion reactionが含まれる.

抗がん剤化学療法中の発熱・悪心・嘔吐

著者: 河嶋厚成 ,   野々村祝夫

ページ範囲:P.237 - P.242

絶対に見逃してはいけないポイント
☞化学療法中に「①好中球数が500/μL未満,または好中球数が1000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少することが予想される場合で,かつ②腋窩温37.5℃以上の発熱を生じた場合」,発熱性好中球減少症(FN)を疑う.
☞MASCCスコアを始めとするFN重篤化リスクをいち早く評価し,発熱から60分以内に適切な治療を開始する.
☞FNに対する初期治療は,βラクタム系抗菌薬の単独投与を行う.
☞化学療法中の悪心・嘔吐は,重症度と発症原因を適切に評価し,原因に応じた制吐薬を迅速に使用する.

抗がん剤化学療法中の吃逆

著者: 楠原正太 ,   近藤千紘

ページ範囲:P.243 - P.246

絶対に見逃してはいけないポイント
☞特定の化学療法やデキサメタゾンを起因とする吃逆が多い.
☞時にQOLを著しく落とす恐れがあり,その場合は物理的な対応・薬物療法を考慮する.

尿道カテーテルによる膀胱刺激症状

著者: 芦刈明日香 ,   宮里実

ページ範囲:P.247 - P.250

絶対に見逃してはいけないポイント
☞尿道カテーテル留置中の膀胱刺激症状の原因として,単純なカテーテル由来の刺激症状か,カテーテルの閉塞や位置異常がないかを鑑別する.
☞尿道カテーテルによる膀胱刺激症状への対応によっては,今後の患者の治療コンプライアンスの悪化につながりうるため,適正な処置・症状緩和が必要である.

外来・病棟での愁訴・トラブル

抑うつ状態・うつ病

著者: 大坪天平

ページ範囲:P.252 - P.254

絶対に見逃してはいけないポイント
☞病棟にて反応が鈍い,説明が入っていかない,指示に従わないなどがある場合,抑うつ状態・うつ病を疑う.
☞抑うつ状態・うつ病の鑑別として,認知機能の低下,軽度の意識変容(せん妄)が重要である.

脱水症・熱中症

著者: 三宅康史

ページ範囲:P.255 - P.258

絶対に見逃してはいけないポイント
☞熱中症は,必ず脱水症を伴っている.
☞熱中症は,環境や筋肉運動に伴う体温の上昇によって,臓器の高温と虚血から臓器障害を生じる.
☞高温多湿な環境にいることで起こる古典的熱中症と,加えて筋肉運動によって体内でさらに熱を産生することで起こる労作性熱中症とがある.
☞熱中症の診断,重症度分類には,日本救急医学会分類2015が用いられ,緊急度により軽症からⅠ度,Ⅱ度,Ⅲ度の3段階に分類される.
☞応急処置・治療の基本は,安静,全身冷却,水分・電解質の補給である.

悪心・嘔吐

著者: 井上泉

ページ範囲:P.259 - P.262

絶対に見逃してはいけないポイント
☞随伴症状を加味して,緊急度や重症度の高い疾患を鑑別診断する.
☞薬剤による嘔吐も多くあることを念頭に,服薬・既往歴の問診を行う.
☞女性の場合は,妊娠の可能性を考慮する.

かゆみ(皮膚瘙痒症・蕁麻疹・薬疹)

著者: 栁田のぞみ ,   田中暁生 ,   秀道広

ページ範囲:P.263 - P.265

絶対に見逃してはいけないポイント
☞全身の皮膚の紅斑に加えて,眼瞼結膜や口腔内,陰部の粘膜にびらんを認めた場合は,重症薬疹の可能性を念頭に置く.

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ページ範囲:P.4 - P.6

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ページ範囲:P.270 - P.270

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臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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