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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科76巻11号

2022年10月発行

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特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう! 企画にあたって

限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう! フリーアクセス

著者: 杉元幹史

ページ範囲:P.769 - P.769

 わが国でもPSA検査の普及,人口の高齢化,食生活の変化によって前立腺癌患者は増加しています.われわれが継続して行ってきた啓発活動によって,前立腺癌に対する世間の関心が高まったことも大きな要因でしょう.もはや前立腺癌はcommon disease,国民病といっても過言ではないと思います.当然,われわれ泌尿器科にとって,前立腺癌は実臨床の現場では避けては通れない悪性腫瘍のひとつです.

 近年,インターネットやSNSの一般化によって,いつでもだれでもが欲しい情報に簡単にアクセスできる環境が整ってきました.このことが,医師と患者の関係に少なからず影響を及ぼすようになっています.すなわち,生半可なup dateされていない知識では患者からの信頼が得られないという厳しい時代になりました.われわれは試されています.そして今こそ真価が問われているのです.

〈診断〉

臨床上有意癌検出のためのPI-RADS v2.1とわかったうえで活用する前立腺MRI

著者: 髙橋哲

ページ範囲:P.770 - P.777

▶ポイント

・PI-RADSはすべての前立腺癌ではなく,臨床上有意癌の検出を目的とする.

・辺縁領域は拡散強調画像とADCマップ,移行領域はT2強調画像で主に評価を行う.

・過形成結節や前立腺炎の早期濃染を有意の造影効果とみなさない.

・Bi-parametric MRIは3テスラMRIがあり経験豊かな放射線科医のいる施設にて実施する.

MRI-TRUS融合画像ガイド下前立腺標的生検

著者: 小路直

ページ範囲:P.778 - P.783

▶ポイント

・MRI-TRUS融合画像ガイド下前立腺標的生検による臨床的に意義のある癌の検出率は,系統的生検(10〜12か所)よりも高い.

・MRI-TRUS融合画像ガイド下前立腺標的生検は,癌局在診断にも有用であり,個別化診療への応用が期待される.

泌尿器科医が押さえておくべき病理ミニマム知識(前立腺)

著者: 渡邊麗子

ページ範囲:P.784 - P.791

▶ポイント

・生検時は,採取部位と検体の照合を徹底し,取り違えを未然に防ぐ工夫を励行する.

・ホルマリン固定液に検体を浸漬するまでの時間が短いほど,検体の核酸品質が向上する.

・治療歴がある場合は,その内容を病理依頼票へ記載すること.

限局性前立腺癌における遺伝子診断の意義と将来性

著者: 赤松秀輔

ページ範囲:P.792 - P.796

▶ポイント

・前立腺癌は発癌の段階からドライバーとなる遺伝子異常が異なり,サブタイプに分かれる.

・限局性前立腺癌の多くは前立腺内に多発し,各病巣の遺伝的性質は異なる.

・今後,より詳細に限局性前立腺癌のゲノムについて解明することで,手術期の補助療法を層別化するなど治療を最適化できる可能性がある.

〈監視療法・FT〉

監視療法の現状と近未来のあり方

著者: 加藤琢磨 ,   杉元幹史

ページ範囲:P.798 - P.802

▶ポイント

・監視療法の本邦の普及は十分ではなく,監視療法の運用は適格症例の3割程度に留まる.

・患者は共有意思決定(SDM)を望んでいる.患者への病状と治療方法に対する十分な説明は,監視療法の活用につながる.

・監視療法の適切な運用は,過剰診断,過剰治療の回避のみならず,医療経済にも好影響を及ぼす.

Focal therapy(癌標的化局所治療)

著者: 浮村理 ,   藤原敦子

ページ範囲:P.804 - P.808

▶ポイント

・Focal therapy(FT)は,癌制御とQOL維持とを両立する新たな治療戦略の柱となる.

・Expertが薬事承認・保険収載に向けて臨床試験を実施している段階にある.

・FTを成功裏に受けた患者では,臨床的にactive surveillance(AS)下の状況より良好な状況にdown stageしている可能性がある.

〈ホルモン治療〉

限局性前立腺癌に対する一次ホルモン療法(PADT)の意義と適応

著者: 関根芳岳 ,   鈴木和浩

ページ範囲:P.810 - P.814

▶ポイント

・限局性前立腺癌に対する一次ホルモン療法(PADT)に対する考え方は,アジアと欧米とでは大きく異なる.

・根治療法の適応があるものの,期待余命などの点から,手術,放射線が治療選択とならない場合,PADTは選択肢の1つになりうる.

・循環器疾患の既往のある症例に関しては,PADTによる循環器疾患発症リスクへの注意が必要である.

〈手術〉

拡大切除術の意義と適応

著者: 三浦徳宣 ,   雑賀隆史

ページ範囲:P.816 - P.822

▶ポイント

・非転移性超高リスク前立腺癌(VHRPCa)/局所進行前立腺癌は70〜80%に被膜外進展を来しており,multimodal treatmentの1つとしての拡大前立腺全摘除術が考慮される.

・VHRPCa/局所進行前立腺癌であっても,拡大摘除することで50〜70%の症例でSpecimen-confinedに摘除可能である.

・eRALPの主なメリットは,①優れた局所コントロール,②正確な病理診断,③過剰治療の回避の3つである.

ロボット支援下前立腺全摘除術におけるリンパ節郭清の意義と適応

著者: 矢西正明 ,   木下秀文

ページ範囲:P.824 - P.828

▶ポイント

・リンパ節郭清(PLND)は診断的意義があり,中・高リスク前立腺癌に対して広く行われている.

・PLNDの実施の有無においては,各種ノモグラムを用いるのがよい.

・PLND実施による合併症の発生頻度やQOLに与える悪影響は,許容範囲である.

〈放射線治療〉

局所進行性前立腺癌に対する外部放射線治療の実際(粒子線治療も含む)

著者: 相澤理人

ページ範囲:P.830 - P.836

▶ポイント

・外部放射線治療は,局所進行前立腺癌に対する主要な治療手段の1つと位置づけられている.

・近年,寡分割照射の臨床導入,併用ホルモン治療やリンパ節転移を伴う症例への治療に関する新たなエビデンス報告,粒子線治療の保険収載など,本分野における変化は著しい.

・根治的外部放射線治療は,今後もさらに中心的な役割を担っていくものと考えられる.

小線源治療(LDR)

著者: 門間哲雄

ページ範囲:P.838 - P.843

▶ポイント

・小線源治療(LDR)は,尿失禁忌避,性機能温存,短期入院などを希望する症例に勧められる.

・LDRは,著明な前立腺肥大症(BPH)を有したり,IPSS高値など排尿症状の悪い症例には勧められない.

・LDRを勧めるにあたり,晩期有害事象,リスク分類などについて十分な説明や検討が必要である.

〈高齢者・その他〉

高齢者限局性前立腺癌治療

著者: 成田伸太郎

ページ範囲:P.844 - P.850

▶ポイント

・高齢者は多様で個別的な診断・治療戦略が必要である.

・監視療法および待機療法は高齢者限局性前立腺癌において重要な選択肢となる.

・手術療法および放射線治療の成績はおおむね良好で,適切な症例を選択すれば有効な選択肢である.

腫瘍内科医(臨床腫瘍科医)として限局性前立腺癌治療を俯瞰する

著者: 竹村弘司 ,   三浦裕司

ページ範囲:P.852 - P.856

▶ポイント

・限局性前立腺癌において,監視療法(active surveillance)が選択肢の1つとなる.

・Oligometastasesに対する局所治療が病勢コントロールを改善しうる.

・転移性前立腺癌でも局所治療が生存率を改善するケースがある.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.767 - P.767

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.859 - P.859

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.860 - P.860

 京都で開かれていた研究会で,職場の女性二人と偶然居合わせました.「午後に時間があるので,折角だから観光をしたい,お勧めのスポットはどこですか?」と聞かれたところ,待っていましたと言わんばかりに,お庭はこの寺院,仏像だとこの寺院と,一気呵成に私のお勧めスポットを,宗派も言及しながらお伝えしました.メモを取る風もなく,大丈夫かな?と思って二人を会場から送り出しました.

 後日,職場で,「結局どこに行ったの?」と尋ねたところ,「八坂神社に行きました.良かったです」とのこと.実のところを言うと私は八坂神社に通じる神宮道の散策を勧めたのであって,神社の参拝を勧めたわけではなかったのですが,「やはりそうか」と合点がいきました.女性は「パワースポット」に目がないからです.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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