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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科76巻8号

2022年07月発行

雑誌目次

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド 企画にあたって

泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド フリーアクセス

著者: 溝脇尚志

ページ範囲:P.513 - P.513

 泌尿器腫瘍の治療において放射線治療は多くの重要な役割を担っておりますが,この10数年間における放射線治療領域における技術革新は特に目覚ましいものがあります.強度変調放射線治療,画像誘導放射線治療,小線源治療や粒子線治療はすでに臨床現場に広く普及し,国内からの長期成績も多数報告されるようになりました.最近では,定位放射線治療が前立腺癌と腎臓癌に対して保険収載され,実臨床への普及と治療データの蓄積が進んでいます.また,前立腺癌を対象とした新規のRI内用療法製剤の開発も進んでおります.

 一方,治療戦略面におきましても,膀胱温存療法に関する知見の蓄積に加えて,前立腺癌に対する寡分割照射やオリゴ転移に対する転移指向性治療などの新たな治療アプローチが開発され実臨床への展開が始まっております.さらに,前立腺癌に対する背景抑制広範囲拡散強調画像やPSMA PET/CTを代表とする新規画像診断モダリティが,診断のみならず治療戦略立案においてきわめて有用性が高いことが明らかとなりつつあり,薬事承認や臨床現場への普及が待たれる状況です.

〈前立腺癌〉

前立腺癌に対する画像誘導強度変調放射線治療と寡分割照射のインパクト

著者: 二瓶圭二

ページ範囲:P.514 - P.518

▶ポイント

・欧米の比較試験で寡分割照射の通常分割照射に対する非劣性が証明された.

・本邦でも多施設共同第Ⅱ相試験により,寡分割照射の安全性と有効性が確認された.

・IMRTとIGRTを利用した寡分割照射が治療選択肢のひとつとなった.

前立腺癌に対する根治的定位放射線治療

著者: 鶴貝雄一郎 ,   武田篤也 ,   江里口貴久

ページ範囲:P.520 - P.525

▶ポイント

・体幹部定位放射線治療(SBRT)は,1回大線量を病巣に集中照射して照射回数4〜5回と,従来に比べて大幅に少ない回数で治療が完遂する治療法である.

・第Ⅲ相試験や第Ⅱ相試験のpooled analysisで,他治療に遜色ない治療成績と安全性が報告されている.

・連日照射は必須ではなく,患者の体の状態や都合に応じて,週1〜3回照射も可能である.

泌尿器腫瘍に対する粒子線治療の現状と将来展望

著者: 石川仁 ,   若月優 ,   森慎一郎

ページ範囲:P.526 - P.532

▶ポイント

・粒子線治療は,X線と比較して線量集中性が良好であり,イメージガイド下の高精度照射技術を応用することで,今まで以上に安全な高線量投与が可能となった.

・前立腺癌に対する粒子線治療は,寡分割照射法に有利な放射線治療として保険診療で行われている.

・腎癌に対する粒子線治療は,大きな腫瘍に対しても定位照射を可能とする有望な治療である.

前立腺癌に対する高線量率組織内照射(HDR)の長期成績と最新状況

著者: 吉岡靖生

ページ範囲:P.534 - P.541

▶ポイント

・高線量率組織内照射(HDR)は,小線源治療特有の線量集中性と1回大線量の超寡分割照射の2つの特性を併せもつ.

・HDRブーストでは外照射の前後にHDR 15Gy/1回が,HDR単独療法では27Gy/2回(2回刺入)が標準的な線量分割となりつつある.

骨転移に対する定位放射線治療

著者: 伊藤慶

ページ範囲:P.542 - P.545

▶ポイント

・骨転移に対する定位放射線治療の適応は,オリゴ骨転移,有痛性骨転移,転移性脊髄圧迫の3つである.

・いずれの対象においても有望な成績が示されており,期待された治療法である.

・ただし,標準治療と直接比較したデータがない,もしくは第Ⅲ相試験で相反した結果が得られているため,絶対的な標準治療ではない.

オリゴ転移前立腺癌に対するmetastasis-directed therapy

著者: 吉田宗一郎 ,   藤井靖久

ページ範囲:P.546 - P.552

▶ポイント

・オリゴ転移癌は,限局癌と多発転移癌の中間的な状態であると考えられている.

・オリゴ転移前立腺癌に対して,去勢抵抗性前立腺癌を含め,転移病変に対する標的治療が検討されるようになっている.

・オリゴ転移癌の分類についての検討が進んでおり,オリゴ転移前立腺癌に対する治療アプローチの最適化に期待される.

前立腺癌の骨転移における背景抑制広範囲拡散強調画像(DWIBS)の経験

著者: 境野晋二朗

ページ範囲:P.554 - P.561

▶ポイント

・進行前立腺癌において背景抑制広範囲拡散強調画像(DWIBS)は,PSAの推移と連動して活動性のある転移を描出できる撮像法である.

・治療介入により,CT検査では造骨性骨転移と治療効果による良性石灰化が混在した状態になり,活動性のある転移を評価することは困難である.

・放射線治療のような局所治療をする場合にDWIBSでの評価を検討する.

前立腺癌再発・転移診断・治療におけるPSMA PET/CTの有用性

著者: 尾谷知亮 ,   中本裕士

ページ範囲:P.562 - P.566

▶ポイント

・前立腺特異抗原(PSMA)は前立腺癌に過剰発現し,進行期やホルモン抵抗性の前立腺癌での発現の増加が知られている.PSMA阻害剤を68Gaや18Fで標識したPET製剤が開発され,近年その有用性が報告されている.

・PSMA PET/CTは,再発前立腺癌に対して高い病変検出能を誇る.骨シンチグラフィやMRIよりも前立腺癌病変の検出に優れるとする報告がある.

・PSMA PET/CTの集積は前立腺癌に特異的ではなく,種々の良悪含めた腫瘍性病変,神経節,骨への非特異的な集積が知られており,読影に際して留意する必要がある.

骨転移に対する塩化ラジウム-223(223Ra)治療の現状と課題

著者: 細野眞

ページ範囲:P.568 - P.571

▶ポイント

・塩化ラジウム-223(223Ra)は,骨転移を伴う去勢抵抗性前立腺癌に対する治療用放射性医薬品として,全生存期間の延長と良好な忍容性を示す.

・QOLを保つ治療であり,用いるタイミングに制約は少なく,より早期の使用が予後改善につながると考えられている.

・アルファ線治療は,高い生物学的効果で腫瘍を制御しつつ免疫機能を温存するポテンシャルをもち,今後の発展がおおいに期待される.

前立腺癌に対する177Lu-PSMA核医学治療の現状と課題

著者: 高野祥子 ,   上村博司 ,   幡多政治

ページ範囲:P.572 - P.579

▶ポイント

・前立腺特異的膜抗原(PSMA)をターゲットとした核医学治療が,セラノスティクスとして注目されている.

・数多くのPSMA治療薬の開発と適応拡大に向けた臨床試験が進んでおり,国内でも今後承認が期待される.

・非密封の放射性核種であるが故の規制や安全管理上の注意点も多く,これに対応できる設備と人材の確保が必要となる.特別措置病室が法制度上正式に認められるなど,改善に向けた取り組みが進められている.

〈腎細胞癌・膀胱癌〉

腎細胞癌に対する定位放射線治療

著者: 大西洋

ページ範囲:P.580 - P.586

▶ポイント

・腎細胞癌は頻度の高い癌の1つである.一般的な標準治療は手術的切除であるが,高齢者や合併症により手術が困難な症例も多く,また片腎症例での残腎切除は慢性的な腎機能障害を来す.

・体幹部定位放射線治療は,高い局所制御が低侵襲で得られる治療法として汎用されており,腎癌に対しても高い局所制御が安全に得られることが多く報告されている.

・本稿では,腎細胞癌に対する定位放射線治療の方法と成績を論じる.

膀胱癌に対する膀胱温存療法の現状と課題

著者: 木村友和 ,   西山博之

ページ範囲:P.588 - P.594

▶ポイント

・膀胱温存療法は根治を目的として行う経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT),化学療法,放射線療法によるTrimodal therapyである.

・膀胱温存療法のよい適応は,cT2-3N0M0,単発,尿路上皮癌の単一組織型,併存上皮癌(CIS)なし,水腎症なし,前立腺部尿道や頸部以外である.

・近年,免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた新たな膀胱温存療法が開発されており,今後の結果が待たれている.

書評

緩和ケアレジデントマニュアル 第2版―森田達也,木澤義之 監修/西智弘,松本禎久,森雅紀,山口崇 編 フリーアクセス

著者: 柏木秀行

ページ範囲:P.596 - P.596

 レジデントマニュアルシリーズと聞けば,「片手で持てて,ポケットに入るけど,ちょっと厚めのマニュアルね」と多くの人がイメージする.そのくらい,各領域に抜群の信頼性を備えた診療マニュアルとして位置付けられ,定番中の定番だろう.そんなレジデントマニュアルに,緩和ケアが仲間入りしたのが2016年であった.初版も緩和ケアに関わる幅広い論点を網羅していたが,さらに充実したというのが第2版を手にとっての感想である.

 緩和ケアもここ数年で大きく変化した.心不全をはじめとした非がん疾患をも対象とし,今後の症状緩和のアプローチが変わっていくような薬剤も出てきた.こういったアップデートをふんだんに盛り込んだのが第2版である.緩和ケアに関するマニュアルも増えてきたが,網羅性という点において間違いなく最強であろう.そう考えると分厚さも,「これだけのことを網羅しておいて,よくこの厚さに抑えたものだ」と感じられる.

チーフレジデント直伝! デキる指導医になる70の方法―研修医教育・マネジメント・リーダーシップ・評価法の極意―野木真将,橋本忠幸,松尾貴公,岡本武士 著 フリーアクセス

著者: 小杉俊介

ページ範囲:P.597 - P.597

 「指導医」と聞くと「自分なんか指導医とはまだ言えないし」と思われる若手医師も多いと思います.しかし,研修医1年目であっても学生が実習に来ることもあるし,研修医2年目は1年目から気軽に相談を受けることは日常茶飯事だと思います.このように若手医師もいろいろなシチュエーションで実は「指導(教育)」をしています.

 しかし,本邦では,例えば厚労省が行っている指導医講習会も卒後7年目以降の医師が主な受講対象者となり,若手の医療者が「指導」について体系的に学ぶ場はあまりなく,「指導」については教わることなく見様見真似で行っていることが多いと思います.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.511 - P.511

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.601 - P.601

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.602 - P.602

 言葉が社会を変えたのか? それとも社会が変わったから言葉が注目されるのか? どちらかわからないのですが,「ダイバーシティ」という言葉は現在を表現しています.泌尿器科の人気の裏にもこの言葉が潜んでいる気がしています.「ダイバーシティ」が泌尿器科を選ぶ医師の背中を押しているかもしれません.

 私が医学生であった頃,専門の診療科を選ぶ指標は極端にステレオタイプでした.勉強ができるのは「内科」,ガチッとした体格で体力に自信があるのは「外科」,スポーツ万能の細マッチョは「整形外科」といった感じです.同級生には個性が強い者が多く,基礎の教室に行った者,厚生省に入省した者もいる中で,個性のダイバーシティに見合うほど,専門科目のダイバーシティはある筈はなく,自分の個性に合いそうな科を求めてポリクリを回り,出会ったのが「泌尿器科」でした.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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