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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科76巻9号

2022年08月発行

雑誌目次

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心 企画にあたって

前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心 フリーアクセス

著者: 浮村理 ,   堀内大介

ページ範囲:P.607 - P.607

 前立腺肥大症手術に関する特集が本誌に最後に企画されてから約5年が経過しました.この間,蒸散術や核出術の進歩は著しく,長期治療成績も蓄積され,その普及が進んだといえるのではないでしょうか.加えて,経尿道的前立腺吊上げ術に使用されるUroLiftシステムの適正使用指針が策定され,TUVPといった術式が出てくるなど,新しい選択肢も注目されてきており,泌尿器科手術の中でも明らかな進化を遂げている領域であるといえます.

 しかし,臨床現場に目を向けると,昨今の高齢化社会において,認知症,抗血栓療法,巨大前立腺肥大症,排尿筋低活動などさまざまな合併症や患者背景を有する症例にもしばしば遭遇し,術者にとって新たな学びの機会が繰り返されることも決して少なくないのではないでしょうか.

〈術式の本心〉

すぐ導入したくなるTUEB

著者: 萩生田純 ,   中川健

ページ範囲:P.608 - P.611

▶ポイント

・機器の準備や止血操作の慣れ,術中に経尿道的前立腺切除術(TURP)への切り替えが容易な点などから経尿道的バイポーラ前立腺核出術(TUEB)は導入しやすい手術である.

・細目に止血をし,クリアな視野で核出を行う.

・6時方向の剝離は膀胱背側への穿孔のリスクがあるため5時方向を目標とし,頸部に到達したら6時方向へ力を加えるようにして剝離する.

すぐ導入したくなるTUVP

著者: 伊藤悠城 ,   槙山和秀 ,   小林一樹

ページ範囲:P.612 - P.615

▶ポイント

・レーザー手術との比較においてTUVPの一番のメリットが,導入時のコストであると考えている.

・すでに多くの施設でバイポーラTURシステムの導入が進んでおり,そのような施設では新規高額機器購入の必要性は一切なく,オーバル電極の購入のみで明日からでも経尿道的前立腺蒸散術が可能となる.

・今後,本邦だけではなく,高価な医療機器の利用が困難である発展途上国などでも容易な普及が期待される.

HoLEPは難しいのか?

著者: 遠藤文康

ページ範囲:P.616 - P.620

▶ポイント

・ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)の習得の現実を,ラーニングカーブに関する文献を基に解説する.また,各国の状況を紹介し,日本におけるHoLEPの問題点を展望する.

多岐にわたる経尿道的前立腺レーザー蒸散術―どれがいいの? PVP,CVP,ThuVAP,それぞれの特徴

著者: 桑原勝孝

ページ範囲:P.622 - P.626

▶ポイント

・世界的な実績やカテーテル留置期間の短さを考慮するならば,経尿道的光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)が選択となる.

・止血能力重視ならば,接触式前立腺レーザー蒸散術(CVP)が推奨される.

・経済性重視の場合,ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)がよい.

〈周術期・術後の本心〉

日帰り手術のコツ

著者: 加藤忍 ,   渡邉肇

ページ範囲:P.628 - P.635

▶ポイント

・日帰り手術の成功のコツは,患者の選択,安全な手術手技,および術中の確実な止血である.

・手術手技の選択については,手術時間が短く,術中・術後に出血しない,術後尿閉が発症しにくい手技が求められる.

・患者の選択では前立腺体積は90mL以下,米国麻酔学会(ASA)スコア2以下,および抗血栓療法の中止が可能な患者が望ましい.

排尿筋低活動(DU)を伴う患者の治療適応

著者: 堀内大介 ,   浮村理

ページ範囲:P.636 - P.640

▶ポイント

・前立腺肥大症(BPH)手術の目的は膀胱出口部閉塞(BOO)の解除であるが,排尿筋低活動(DU)とBOOは臨床像が似通っており両者が混在する症例も存在する.

・DUの診断には内圧尿流測定(PFS)が必要とされてきたが症状,超音波所見,尿流測定からも推定できる.

・DUを伴うBPH患者に対する外科的治療は一定の効果が得られる報告が多い.

前立腺体積別の治療選択―巨大前立腺肥大症(BPH)に対する選択肢

著者: 設樂敏也

ページ範囲:P.642 - P.645

▶ポイント

・巨大前立腺肥大症(BPH)の治療として,おもに開腹術,核出術,蒸散術がある.

・治療法の選択には以下の5点が参考になる.

 ①手術時間 : 開腹≦核出≦蒸散,②出血量 : 蒸散<核出≪開腹,③バルーン留置期間 : 蒸散≦核出≪開腹,④入院期間 : 蒸散<核出≪開腹,⑤再発のリスク : 核出<開腹≪蒸散.

認知症患者の治療選択

著者: 奥野博

ページ範囲:P.646 - P.652

▶ポイント

・本邦では4人に1人が65歳以上.本格化する高齢社会において,認知症患者も増加していくと推計されている.

・認知症患者の排尿トラブルは,本人ばかりではなく家族にも大きな影響を及ぼす.

・認知症患者に対する手術療法において周術期の血尿のコントロールを図り,カテーテル自己抜去を防ぐためにできるだけ早期抜去を目指し,また認知症悪化を防ぐために早期退院を目指す必要がある.

・手術選択においては,安全で低侵襲かつカテーテル早期抜去を目指すには,凝固層が浅く組織の一過性の浮腫が少ない術式が望まれる.

・カテーテル早期抜去が可能なHo:YAGレーザー,532nmレーザーを用いた内視鏡手術,早期退院(日帰り手術)やカテーテル留置なしが可能な術式として,経尿道的前立腺吊り上げ術などがよい選択肢と考えられる.

抗血栓療法は継続してよいか? もしくは中止すべきか?

著者: 野村博之

ページ範囲:P.654 - P.658

▶ポイント

・過ぎたるはなお及ばざるがごとし(深掘りや過剰出力は避けるべし).

・勝つ可からざるは己にあり(凝固止血が難しい場合は電気凝固に切り替えるべし).

・水の低きに就くがごとし(蒸散面は段差および勾配のないバリアフリーを目指すべし).

術後尿道狭窄に対する対応

著者: 堀口明男 ,   新地祐介 ,   田部井正

ページ範囲:P.660 - P.668

▶ポイント

・前立腺肥大症(BPH)手術後の尿道狭窄は,亀頭部尿道,陰茎陰囊境界部,近位球部尿道,膀胱頸部に好発し,部位により治療法が異なる.

・内尿道切開や尿道ブジーなど経尿道的治療の効果はきわめて限定的であり,根本的な解決には開放手術による尿道形成術が必要である.

・患者とのトラブルを防ぐため,BPHの手術適応を厳格にし,術後に尿道狭窄が起こりうることを術前に十分説明しておくことが肝要である.

前立腺レーザー手術の術後長期成績

著者: 黒松功

ページ範囲:P.670 - P.673

▶ポイント

・経尿道的前立腺切除術(TURP),光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP),ツリウムレーザー前立腺核出術(ThuLEP)の単施設での術後成績には比較的長期(10〜12年)の報告がある.

・TURPとのランダム化比較試験(RCT)で5〜7年の比較的長期の比較試験があるのは,ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)とPVPのみである.

・新規レーザー手術の成績では,使用機器の出力などの違いによって成績が異なる可能性があり,評価に注意が必要である.

書評

臨床研究のピットフォールとは?―臨床研究21の勘違い―福原俊一,福間真悟,紙谷司 著 フリーアクセス

著者: 香坂俊

ページ範囲:P.675 - P.675

 Critical Appraisalはしばしば「批判的吟味」と訳される.医療の現場では「論文やエビデンスを簡単に使用するな!」という否定的なニュアンスで用いられることが多いが,個人的には「エビデンスを構築してくれた研究者達に敬意を払いつつも,油断はしない」というように,すこし柔らかいニュアンスでとらえても良いのではないかと考えている.

 このCritical Appraisalであるが,以前は研究を嗜む人たちのための高尚な技能のような位置付けで,学会などで壇上の先生方の意見などを伺いながら,なるほどこういうふうに考えるのかなどと構えていればよかった.しかし最近は,わりとキャリアの早い時期に「身につけなくてはならない技術」という位置付けになってきている(ちょうど問診・診察やカルテ記載の技法のように).

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.605 - P.605

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.679 - P.679

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.680 - P.680

 人間というか,おじさん方の感性は,アメリカをはじめとした欧米も日本も変わらないようである.小職は,コロナ前は,海外出張の飛行機の上で映画を何本か見ていたので年間では10本ぐらいは観ていた.よって映画館に足を運ぶことはここ10年以上皆無であった.しかし映画を観に行こうという決断をしたが,おじさんおばさんの心を擽ったのは「トップガン」であった.前日である土曜日の夜にウェブ上で予約したが,日曜の昼間の部は大変混んでいたので,朝8時25分スタートしか予約ができなかった.それも2席隣り合わせの席はなく,離れた席を予約し出かけて行った.

 その映画は,小職が医師に成りたての頃にヒットした「トップガン」の続編である.前作を観たあとに,アメリカ泌尿器科学会がサンディエゴで行われた際には後輩とトップガンカフェに出かけて行ったことを思い出した.あのKAWASAKIのバイクは続編でも健在であった.この「トップガン・マーベリック」の北米での累計興行収入が,2012年公開の「アベンジャーズ」を超えて歴代9位にランクインしたそうだ.その額であるが,6億2380万ドル(約842億1300万円)と桁外れである.日本でも大ヒットを記録しているが,累計動員は580万人で累計収入は92億円のようである.普段映画を観ないおじさんたちが,喜んで映画を観に行った結果である.このようにアメリカでもおじさんが中心の観客だったのでしょうか.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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