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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻1号

2023年01月発行

雑誌目次

特集 もう悩まない! 小児泌尿器科疾患へのファーストタッチ

腎盂尿管移行部通過障害―先天性水腎症に対するファーストタッチ

著者: 守屋仁彦 ,   日向大樹 ,   久保太郎 ,   田辺和也

ページ範囲:P.6 - P.12

▶ポイント

・先天性水腎症に対するファーストタッチとしては,水腎症の程度とともに尿管・膀胱の状態について超音波検査にて評価する.

・尿管拡張や膀胱の異常などを伴う際には腎盂尿管移行部通過障害以外の疾患も念頭に置き,精査を進める必要がある.

・腎盂尿管移行部通過障害と診断された場合には,自然消失の可能性を念頭に置きながら超音波検査と核医学検査を併用しフォローする.

腎外傷―側腹部打撲と血尿に対するファーストタッチ

著者: 濱野敦

ページ範囲:P.14 - P.18

▶ポイント

・小児においては,体格や解剖学的特性から,成人に比し鈍的外傷により腎外傷を来しやすい.受傷機転は成人では交通外傷が最多であるのに対し,小児では転倒・転落が多い.

・腎盂尿管移行部閉塞による水腎を代表とする先天性腎尿路奇形を合併していることが成人に比し多い.

・バイタルサインの基準が成人と異なり不明確であり,評価が難しい.

膀胱尿管逆流―有熱性尿路感染症に対するファーストタッチ

著者: 松岡弘文 ,   宮﨑健 ,   羽賀宣博

ページ範囲:P.20 - P.26

▶ポイント

・有熱性尿路感染症患児の3分の1余りに膀胱尿管逆流(VUR)を合併する.水腎や急性巣状細菌性腎炎(AFBN)など認めた場合は初回からVCUGの適応である.

・VURの治療方針は,VURのグレードや腎実質障害ばかりでなく,1歳前の乳児期か排尿自立後かなどの年齢的要素と,膀胱腸機能障害(BBD)の有無や二次的要因の有無などの3要素から考える.

・VUR診断に留まらず,逆流性腎症(RN)合併の有無,進行性RNの評価が必要である.

排尿障害―遷延性排尿や努責排尿に対するファーストタッチ

著者: 東武昇平 ,   野口満

ページ範囲:P.28 - P.33

▶ポイント

・小児泌尿器科外来では患児本人が症状を訴えるケースはさほど多くない.

・尿流量測定,検尿,外陰部視診,腎膀胱超音波検査,排尿時膀胱尿道造影を行う.

・小児の推定膀胱容量や残尿の定義を押さえておく.

蓄尿障害―昼間尿失禁に対するファーストタッチ

著者: 市野みどり

ページ範囲:P.34 - P.42

▶ポイント

・尿失禁の診療において,過活動膀胱(OAB)と先天性尿路異常や神経因性下部尿路機能障害(NLUTD)を早期に鑑別する必要がある.

・小児尿失禁の原因は,OABが最多である.

・小児のOABの初期治療は,行動療法で,定時排尿と排便管理が重要である.

尿道下裂―尿道下裂に対するファーストタッチ

著者: 西尾英紀 ,   水野健太郎 ,   林祐太郎

ページ範囲:P.44 - P.51

▶ポイント

・尿道下裂に対するファーストタッチは,尿道口の位置の確認と陰茎彎曲の程度の評価である.的確に診断をし必要な検査を行って,適切な時期の手術に備えればよい.

・尿道下裂が停留精巣を合併し,さらに精巣を触れない場合には性分化の障害を疑って,染色体検査や内分泌検査,画像診断,さらに内視鏡検査,組織学的診断を検討する.

・偶然に発見されるような軽度の尿道下裂の手術適応の有無について,整容性と機能性の両面で説明できるようにしておく.

尿道脱・陰唇癒合・Skene管囊胞―女児外陰部疾患に対するファーストタッチ

著者: 松本富美 ,   矢下博輝 ,   大嶋浩一 ,   松井太 ,   矢澤浩治

ページ範囲:P.52 - P.56

▶ポイント

・女児外性器異常を診る際は,まず直腸肛門奇形や性分化疾患の合併がないか確認する.

・特徴的な外観を識別し,重篤な合併症を有する疾患との違いを把握する.

・陰唇間腫瘤(interlabial mass)を呈する疾患は,尿路由来か性路(腟)由来か,もしくは前庭部の分泌腺由来かを鑑別する.

包茎―小児包茎に対するファーストタッチ

著者: 吉野薫 ,   久松英治 ,   田島基史

ページ範囲:P.58 - P.62

▶ポイント

・小児の包茎の多くは生理的で思春期までに包皮翻転可能となるので,無症状例の治療は不要である.

・包皮を無理に翻転すると嵌頓包茎や瘢痕化のリスクがあるため,無理な包皮翻転はしない.

・思春期前の小児の包茎における絶対的手術適応は,用手整復できない嵌頓包茎(緊急),包皮輪が瘢痕化した病的包茎(排尿障害を伴う場合は準緊急)である.

小陰茎・埋没陰茎―小さな陰茎に対するファーストタッチ

著者: 杉多良文 ,   桂大希 ,   原田淳樹

ページ範囲:P.64 - P.69

▶ポイント

・陰茎が小さいことを主訴に来院する男児(肥満を除く)のほとんどは埋没陰茎である.

・埋没陰茎は亀頭付近のみが体表から出ているため小さく見えるが,亀頭の近位側に正常の大きさの陰茎海綿体を触知する.

・解剖学的異常を認めない陰茎は,陰茎伸展長を測定し,−2.5SD以下であれば,小陰茎と診断する.

持続勃起症―持続勃起症に対するファーストタッチ

著者: 佐々木ひと美 ,   市野学 ,   白木良一

ページ範囲:P.70 - P.76

▶ポイント

・持続勃起症は性的刺激がなく勃起状態が持続する病態であり,大きく虚血性・非虚血性に分類される.

・4時間以上持続する虚血性持続勃起症に対しては緊急処置が必要である.

・診断には超音波検査や陰茎海綿体の血液ガス分析などが必要なこともあるため,早急に小児泌尿器科医への紹介が必要である.

停留精巣―陰囊内容の欠損で来院した患児に対するファーストタッチ

著者: 佐藤裕之

ページ範囲:P.78 - P.82

▶ポイント

・停留精巣に対するファーストタッチは,十分な触診による精巣の触知である.精巣を触知できるか,できないのか? その点から大きく治療・検査方針が変わるため,触知できうる精巣をしっかり触知することが重要である.

・精巣が触知できない場合,①生下時は触知できたのか,②家族が触知したことはあるのか,③定期健診で指摘はされていたのかを確認する.この状態により検査の方針が大きく異なる.

・非触知精巣の問題点と診断意義を説明し,手術的確認も必要であることを理解してもらう必要がある.

精巣捻転症―陰囊内容の有痛性腫脹に対するファーストタッチ

著者: 岩佐俊 ,   浅沼宏 ,   大家基嗣

ページ範囲:P.84 - P.91

▶ポイント

・精巣捻転症は,診断・治療の遅れが精巣の喪失につながる緊急性の高い疾患である.

・急性陰囊症の迅速な診断・治療のためには,ファーストタッチとして正確な問診,身体診察,検査が要求される.

・精巣温存のためには,早期診断・治療のみならず発症後の早期受診を促す啓発も重要である.

陰囊水腫―陰囊水腫に対するファーストタッチ

著者: 石井啓一

ページ範囲:P.92 - P.96

▶ポイント

・当然のことながらまずは丁寧な問診と視診,触診から始める.的確に診断できていれば早急な対処を要することは少ない.

・外来での必須検査アイテムは超音波検査であり,適したプローベを用意しておくほうがよい.乳幼児は寝かすだけで号泣することがあり,養育者とともにうまくなだめてよく観察することが大切である.

・治療として特に大切であることは,小児では陰囊穿刺,吸引は原則禁忌であることである.根治手術は全身麻酔を要するが非常に有効な術式がある.

陰囊内出血―陰囊内出血に対するファーストタッチ

著者: 西中一幸 ,   上原央久

ページ範囲:P.98 - P.103

▶ポイント

・陰囊内出血は超音波検査所見であり,主訴は陰囊腫脹,陰囊皮膚色調変化,陰囊痛のため精巣捻転を念頭に置いて診察を行う.

・新生児の陰囊内血腫は,副腎出血を鑑別診断に入れて腹部超音波検査を必ず施行する.

・精巣外傷による精巣破裂に対しては早期手術を施行する.精巣捻転の5%は精巣外傷に起因にすることを覚えておく.

企画にあたって

もう悩まない! 小児泌尿器科疾患へのファーストタッチ フリーアクセス

著者: 林祐太郎

ページ範囲:P.5 - P.5

 「臨床泌尿器科」では,これまでに小児泌尿器科については,2016年に「VURと先天性水腎症」,2017年に「性分化疾患」,2018年に「停留精巣」,2020年に「小児泌尿器科オープンサージャリー」が特集されました.さらに泌尿器科全般を扱う企画の中でも,必ず小児泌尿器科疾患は組み込まれてきました.

 今回「臨床泌尿器科」の編集部から,先天性泌尿器科疾患(小児泌尿器科疾患)の患児が来院したときに,小児泌尿器科を特に専門としていない読者(泌尿器科医)が,どのようなファーストタッチをすればよいか,わかりやすく解説する特集を組んでもらえないかとのご依頼をいただきました.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.3 - P.3

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.109 - P.109

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.110 - P.110

 第36回日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会総会は近畿大学の植村天受教授が会長で,先生のモットーである「とことんやる」を実践した,個性のエッジが効いた独自性満載のプログラムでした.早朝からの聴講と座長を終え,秋晴れの午後にフラッと兵庫県立美術館を訪れました.ラフな格好でホテルに戻る途中に,小島委員と出会しました.「先生,遊んできたのでしょう.」とニッコリ.私もニッコリ微笑んですれ違いました.

 美術館を訪れるのは趣味の一つです.皆さんにお薦めすると,「とっかかりがない.よくわからない.」という返事が返ってきます.私が夢中になったきっかけは,中学時代に読んだ高階秀爾著『名画を見る眼』(岩波新書)です.名著ですが,1969年の刊行ですので,最近のお薦めとしては,山田五郎氏の『西洋絵画の見方入門』(宝島社:2022年発行)です.作家ごとのエピソードが満載で,読んでいて楽しいです.圧巻は「ピカソ」の章で,ピカソが影響を受けた作家として,ポール・セザンヌとアンリ・ルソーが挙げられていました.セザンヌの章のタイトルは「絵のヘタさを逆手に取って近代絵画の父になった偉人」,ルソーの章のタイトルは「唯一無二の天然画家」です.ピカソはヘタな絵に影響を受けて新境地を開いたと書かれていました.確かにキュビズムはセザンヌの影響を受けていると言われています.セザンヌの絵がヘタかと言われると,そうとは思えないのですが,ルソーの絵は確かにヘタウマです.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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