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雑誌目次

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臨床泌尿器科77巻10号

2023年09月発行

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特集 徹底攻略! 副腎腫瘍2023―泌尿器科医が知っておくべき重要ポイント 企画にあたって

徹底攻略! 副腎腫瘍2023―泌尿器科医が知っておくべき重要ポイント フリーアクセス

著者: 井川掌

ページ範囲:P.755 - P.755

 本誌での副腎疾患の特集は2018年以来5年ぶりとなります.この間,副腎腫瘍の診断・治療に関してさまざまな進歩があり,今回の特集では副腎腫瘍に焦点を絞って特集を組みました.例えば身近なところでは,診断に関してアルドステロン測定系の変更や血中メタネフリン分画測定の保険収載,遺伝子診断の進歩,治療に関してはロボット支援手術やMIBG I-131による核医学治療,ラジオ波焼灼術などの保険適用など,特にここ数年はこれまでで最も多くの話題があったのではないでしょうか.また,これに並行して診療ガイドラインや取扱い規約の発行や改訂も進んでおり,興味と期待がもたれます.

 副腎腫瘍,例えば内分泌活性腫瘍は決して多い疾患ではなく,いわゆる臨床試験に基づくエビデンスに乏しい疾患群ですが,一方,個々の症例でユニークな病態を呈する場合も多く,症例ごとにさまざまな臨床判断を要求されることがあります.また,近年悪性腫瘍に対して集学的治療を施行する機会も増加傾向にあります.このように副腎腫瘍は泌尿器科医にとって深い理解が求められる重要な疾患領域の1つであり,日頃から最新の情報に触れておく必要があります.

〈診断〉

副腎病理診断アップデート

著者: 中村保宏 ,   島田洋樹

ページ範囲:P.756 - P.761

▶ポイント

・「WHO分類2022」により副腎皮質・髄質病変の新しい病型分類とterminology,また各疾患での病理学的評価方法の変更点が示された.

・原発性アルドステロン症の病理診断において,CYP11B2免疫染色の重要性が明示された.

・副腎悪性腫瘍である副腎皮質癌や褐色細胞に関し,これまでの病理診断基準や転移・再発予測に関する評価方法が見直された.

原発性アルドステロン症と褐色細胞腫・パラガングリオーマの新しい内分泌学的検査

著者: 立木美香 ,   成瀬光栄

ページ範囲:P.762 - P.764

▶ポイント

・血漿アルドステロン濃度の測定法がRIA法からCLEIA法へ変更となり,『原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021』では判定基準が一部変更された.

・褐色細胞腫・パラガングリオーマの機能診断において,血中遊離メタネフリン分画は従来の尿中メタネフリン分画と診断精度は同等である.

遺伝学的知見に関する最近の進歩

著者: 與那嶺正人 ,   竹越一博

ページ範囲:P.766 - P.771

▶ポイント

・腫瘍の発生の原因となる遺伝子の変化(病的バリアント)には,生殖細胞系列病的バリアントと体細胞病的バリアントがある.

・各副腎腫瘍において,生殖細胞系列病的バリアントと体細胞病的バリアントの検出率やドライバー遺伝子が異なる.

・最新のゲノム解析技術によって各副腎腫瘍の成因について解明が進んでいるものの,バリアント情報に基づく副腎腫瘍の個別化医療は,遺伝性腫瘍の診断を除いていまだ限定的である.

画像診断のコツと最近の進歩:CTとMRIを中心に

著者: 馬場康貴 ,   吉浦敬 ,   金尾健人 ,   小山政史

ページ範囲:P.772 - P.777

▶ポイント

・最近のCT装置は高性能化が進み,高解像度で高速なスキャンが可能になっている.また,DE-CTなど新しい技術の開発も進んでおり,CT値から組織解析を念頭に置いた画像解析が得られるようになっている.

・MRIによる機能画像診断の技術も進んでおり,腫瘍の血流動態や代謝活動など,より詳細な情報を得ることができるようになっている.

〈治療〉

ロボット支援副腎摘除術

著者: 山口徳也 ,   森實修一 ,   武中篤

ページ範囲:P.778 - P.784

▶ポイント

・ロボット支援副腎摘除術は2022年4月より保険収載された.ロボット支援副腎摘除術は腹腔鏡下副腎摘除術とほぼ同様の手術手技で実施可能あり,腹腔鏡手術と比較し,入院期間短縮,出血量減少などの利点が報告されている.

・経腹膜アプローチは手術操作腔が広い利点がある一方で,後腹膜アプローチは手術時間の短縮や術後疼痛の軽減などの利点が報告されている.

・副腎皮質癌などの副腎悪性腫瘍に対するロボット支援手術は保険適用とはなっていない.

副腎部分切除術

著者: 武田利和

ページ範囲:P.786 - P.791

▶ポイント

・外科的治療を要する副腎腫瘍は,①内分泌機能性腫瘍,②悪性腫瘍,③悪性の可能性の否定できない腫瘍である.

・副腎腫瘍に対する外科的治療の標準術式は,患側副腎の全摘術であり,腹腔鏡下副腎摘除術である.

・正常副腎温存を目的に腹腔鏡下副腎部分切除術が試みられている.

薬物治療アップデート

著者: 田辺晶代

ページ範囲:P.792 - P.797

▶ポイント

・エサキセレノンは新規のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で,ミネラルコルチコイド受容体以外のステロイド受容体に結合しないため,性ステロイド受容体を介した副作用がない.

・コルチゾール合成酵素阻害薬であるオシロドロスタットは,酵素阻害作用が強く,半減期が長く効果持続時間が長いため,副腎不全に注意が必要である.

・カテコールアミン合成酵素阻害薬であるメチロシンは,α受容体遮断薬,β受容体遮断薬のみで病態のコントロールが困難な場合に併用する.

副腎腫瘍に対するRFA

著者: 山門亨一郎 ,   高木治行 ,   角谷美樹 ,   小山英則 ,   兼松明弘 ,   山本新吾

ページ範囲:P.798 - P.805

▶ポイント

・副腎はIVR(interventional radiology)が介入しにくい臓器の1つであったが,近年,悪性腫瘍や機能性副腎腺腫に対するアブレーション治療が脚光を浴びている.

・アブレーション治療には,化学アブレーションのエタノール注入療法やエネルギー・アブレーションのラジオ波焼灼術(RFA)やマイクロウエーブ凝固療法,凍結療法がある.

褐色細胞腫・パラガングリオーマに対する核医学治療

著者: 國田優志 ,   森博史 ,   絹谷清剛

ページ範囲:P.806 - P.812

▶ポイント

・治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)の治療として,ライアットMIBG-I131静注を用いた核医学治療が保険診療可能となった.

・ライアットによる治療後に131I-MIBGシンチグラフィを撮像することによって,123I-MIBGシンチグラフィと同様に病変の集積の程度や分布を把握することが可能である.

・ライアットの複数回投与法は奏効率を向上させ,過剰カテコールアミンの抑制に有用である.

〈ピックアップ〉

国内外の副腎腫瘍に関わるガイドラインの現状

著者: 蘆田健二 ,   永山綾子 ,   野村政壽

ページ範囲:P.814 - P.821

▶ポイント

・副腎癌の早期診断に向けた日常診療ガイドラインが作成されるとともに,遺伝子診断・メタボローム解析など新たな取り組みが始まっている.

・コルチゾール産生腫瘍は,予後を見据えた病型診断がガイドラインで示されているが,今後両側性腫瘤への手術を含めた治療法の選択が課題として残っている.

・ガイドラインに沿った原発性アルドステロン症の診断治療が患者予後の改善につながること期待される.

・潜在悪性,遺伝性の多い褐色細胞腫/傍神経節腫の診断と患者予後の改善に向けた治療法のガイドラインが策定されてきている.

副腎皮質癌の最新の知見

著者: 馬越洋宜

ページ範囲:P.822 - P.826

▶ポイント

・内分泌検査,画像検査,病理検査を組み合わせて副腎皮質癌の診断を行う.

・根治切除の可否,ステージ分類,Ki-67 indexより治療方針を決定する.

・副腎皮質癌の治療の要は初回手術における腫瘍の完全切除である.

両側副腎皮質大結節性過形成

著者: 鈴木佐和子 ,   横手幸太郎

ページ範囲:P.828 - P.832

▶ポイント

・両側副腎皮質大結節性過形成は両側副腎に複数の大小不同の結節を有し,特徴的な病理所見を呈する.

・副腎皮質に存在する受容体異常やARMC5遺伝子異常が病態に深く関与する.

・クッシング症候群は手術が第一選択であり,顕性クッシング症候群は両側副腎摘出術が,潜在性クッシング症候群は片側副腎摘出術や副腎温存術が個々の症例に応じて検討される.

交見室

泌尿器科いろはかるた

著者: 三木誠

ページ範囲:P.834 - P.834

 コロナ禍の正月に考えました.

 若手泌尿器科医だけでなく,研修医や学生にも泌尿器科を身近に感じてもらえるとよいかと思っています.

学会印象記

「AUA2023」印象記

著者: 松岡香菜子

ページ範囲:P.836 - P.837

American Urological Association(AUA)が主催する第118回AUA Annual Meeting 2023が2023年4月28日〜5月1日にシカゴで開催されました.泌尿器科7年目で初めてのAUAでしたが,4月から夫とペンシルベニア州に研究留学させていただいていることもあり,夫をFamily Badgeに登録し,一緒に参加して参りました.会場はMcCormick Placeというミシガン湖に面した大きな会場で,廊下からは海のような湖を眺めることができます.会場の外は肌寒く,時折霧雨が降ったり止んだりと,湖畔からの風が吹くためか変わりやすい天気でWindy Cityを存分に体感する日々となりました.

 今回の学会で私は下部尿路機能に関する基礎研究1題,臨床研究2題の計3演題を発表させていただきました.3演題ともにModerate Poster Sessionという形式の発表で,ポスター前で見に来てくれた方とお話した後に壇上で短い発表をするという形式でした.3演題のうち,一番印象に残った発表は入局当時より研究させていただいている利尿適応性という排尿記録の解析によって明らかになる蓄尿期の恒常性維持機能の1つに関する研究です.沢山の方がポスターの前で足を止めてくださり,いろいろと質問やご意見をいただくことができました(写真1).英語でのコミュニケーションの難しさは相変わらずでしたが,言い換えてくださったり,ゆっくり話をしてくださったりと,申し訳ないと思いながらも,その優しさがとても嬉しかったですし,良い経験になりました.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.753 - P.753

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.841 - P.841

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.842 - P.842

 新型コロナウイルス第9波に突入したようです.それを横目に世の中はコロナ前の日常に戻っています.私自身,学生や初期研修医との交流も復活しつつあります.先日,日本アンドロロジー学会第42回学術大会(梅本幸裕会長)が名古屋で開催されましたが,泌尿器科実習を選択してくれた医学部の女子学生2人を,実習の一環として学会に連れて行きました.学会が週末に重なっていたこともあり,空いた時間を利用して,医局員と学生を連れて名古屋観光に繰り出すことにしました.行きたい場所を尋ねたところ,まさかの「名古屋港水族館」との回答でした.イルカやシャチのショーを見て,3時間どっぷり水族館に浸かり,帰りは名古屋の繁華街の栄に寄り,サーティーワンでアイスクリームを食べ,ポストコロナの非日常を満喫してきました.

 クラブ活動も解禁されました.私は剣道部の顧問をしているのですが,コロナ禍では,顧問らしいことは何一つしてあげることができませんでした.先月新入生歓迎コンパが3年ぶりに開催され,剣道部員と久しぶりに顔を合わせることができました.お酒の勢いもあり,剣道部員に乞われ稽古の見学と焼肉パーティーを約束してしまいました.翌週稽古を見学しましたが,その迫力に圧倒され,すがすがしい気持ちになりました.そのまま勢い余って,東日本医科学生総合体育大会(東医体)の応援に行くことも約束してしまいました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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