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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻12号

2023年11月発行

雑誌目次

特集 即,実践! 小児の下部尿路機能障害の診療

発育・成長と排尿機能の確立

著者: 橘田岳也 ,   和田直樹 ,   柿崎秀宏

ページ範囲:P.944 - P.949

▶ポイント

・新生児や乳児の排尿は膀胱の伸展に伴って反射性に誘発されると考えられていたが,今日では機能的な橋―脊髄経路を介して排尿が起こることが判明している.

・排尿量,膀胱容量は年齢とともに増加し,排尿頻度,残尿,排尿中断回数は年齢とともに減少する.

・新生児や乳児では下部尿路機能が成熟過程にあり,正常・異常の区別が明確に確立されていないため,検査の解釈には注意が必要である.

小児下部尿路機能の評価

著者: 赤井畑秀則 ,   佐藤雄一 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.950 - P.954

▶ポイント

・小児の下部尿路機能を評価する際,客観的評価が重要となる.

・下部尿路機能の検査には侵襲の高いもの,被曝を伴うものがある.施行すべき検査を熟考し,必要最低限の検査で完結するように努めなければならない.

・しかし,必要だと判断した際には,侵襲の高い検査・被曝を伴う検査もきちんと必要性を説明したうえで施行すべきである.

昼間尿失禁の診療フロー

著者: 春名晶子 ,   中井秀郎

ページ範囲:P.956 - P.962

▶ポイント

・尿失禁では,神経因性下部尿路機能障害や先天性尿路疾患と切迫性尿失禁を早期に鑑別する必要がある.

・便秘や宿便が排尿機能に影響を及ぼすので,早期から治療を要する.

・昼間尿失禁の基本治療は,ウロセラピーである.ウロセラピーを行っても改善しない場合,薬物治療の併用が検討される.ウロセラピーは,①十分な情報提供,②行動療法,③生活指導,④排尿日誌,⑤定期的な激励と支援,の5項目からなり,手術や薬剤に並ぶ,小児泌尿器診療の第三のツールである.

小児の過活動膀胱の診断と治療

著者: 水野健太郎 ,   西尾英紀 ,   林祐太郎

ページ範囲:P.964 - P.972

▶ポイント

・小児の過活動膀胱では,尿意切迫感や頻尿を呈する.切迫性尿失禁を伴うことも伴わないこともある.

・それらの症状の原因が下部尿路の器質的疾患の場合があるので,問診や身体診察,排尿観察や画像診断で見逃さないよう心掛ける.

・過活動膀胱と診断したら,一次治療として排尿・排便日誌を用いた行動療法を開始する.それが無効な場合に二次治療を考慮する.

Dysfunctional voidingの病態と診断

著者: 日向泰樹

ページ範囲:P.974 - P.977

▶ポイント

・機能障害的排尿(DV)は,神経学的に正常な小児における排尿時の尿道括約筋弛緩障害を主とする病態である.

・尿失禁,尿路感染症症例などに潜在しており,便秘,膀胱尿管逆流(VUR)を合併することがある.

・筋電図併用の尿流量測定が診断に有用である.

Dysfunctional voidingに対するウロセラピー

著者: 市野みどり ,   北原梓 ,   下島雄治

ページ範囲:P.978 - P.982

▶ポイント

・Dysfunctional voidingの治療の中心はウロセラピーである.

・標準的ウロセラピーには,情報提供,行動療法,生活指導,排泄の記録,支援と励ましが含まれる.

・行動療法とは,排尿指導,排便指導,生活指導である.

小児下部尿路の器質的疾患の診断と治療

著者: 石井啓一 ,   木村薫 ,   西原千香子

ページ範囲:P.984 - P.990

▶ポイント

・下部尿路器質的疾患が進行することにより,腎機能障害に移行することがありうる.

・通過障害の程度はさまざまで,発現症状としては胎児期の羊水過少から年長児まで続く遺尿症や尿路感染症などである.

・保存的治療で症状が改善しないときは,精査目的だけでも小児専門医へコンサルトを依頼する.

夜尿症の診断と治療

著者: 内藤泰行 ,   井上裕太 ,   浮村理

ページ範囲:P.992 - P.997

▶ポイント

・夜尿症診療では,夜尿だけの単一症候性夜尿症と,昼間の下部尿路症状を伴う非単一症候性夜尿症に分けて考える.

・『夜尿症診療ガイドライン2021』には,エビデンスに基づいた各々のアルゴリズムが示され,これに従って診療を進めることが推奨される.

・抗コリン薬は,単一症候性夜尿症の夜尿そのものに対して,その単独治療の有効性は否定されているために単剤投与は推奨されていない.

小児の中枢性排尿障害の診断と治療

著者: 東武昇平 ,   野口満

ページ範囲:P.998 - P.1002

▶ポイント

・注意欠如多動症(ADHD)には昼間尿失禁や夜尿症が合併することがある.

・ダウン症には膀胱の収縮不全による排尿障害が合併することがある.

・原疾患に対する薬物治療が排尿障害に対しても有効である可能性がある.

小児二分脊椎での尿路管理

著者: 後藤大輔 ,   鳥本一匡 ,   藤本清秀

ページ範囲:P.1004 - P.1009

▶ポイント

・二分脊椎の尿路管理の目的は,腎機能の保持,症候性尿路感染の防止,尿禁制の獲得である.

・腎機能障害の危険因子は,排尿筋過活動,排尿筋括約筋協調不全,膀胱尿管逆流,低コンプライアンス膀胱(<10mL/cmH2O),排尿筋漏出時圧高値(>40cmH2O)である.

・適宜,尿検査,腹部超音波検査や尿流動態検査を行い,必要に応じて清潔間欠導尿,薬物療法などで対応する.

小児の間欠導尿管理における注意点と盲点

著者: 里地葉

ページ範囲:P.1010 - P.1016

▶ポイント

・小児先天性疾患のなかには排尿障害を伴うものがあり,腎機能温存および症候性尿路感染症予防,尿禁制の獲得のため間欠導尿を必要とすることがある.

・患児の成長に応じて,排尿管理・指導,生活支援のあり方を柔軟に変更していく必要がある.

・思春期は排尿管理不良から腎機能障害を引き起こすハイリスクな時期であることを十分に認識し,準備・対応していく必要がある.

小児の尿路変向・下部尿路再建術

著者: 佐藤裕之

ページ範囲:P.1018 - P.1023

▶ポイント

・小児の尿路変向は,先天的構造異常や機能異常の評価を十分に行ってから選択をする必要がある.

・小児の尿路変向は,年齢や行動様式を考慮したうえで行い,QOLを考慮してさらなる尿路変向を必要とする可能性がある.

企画にあたって

即,実践! 小児の下部尿路機能障害の診療 フリーアクセス

著者: 野口満

ページ範囲:P.943 - P.943

 小児の下部尿路機能障害では,頻尿,尿失禁,尿勢不良,尿路感染症などが受診契機となることが多い.このため,彼らは日常の泌尿器科外来にやって来る.小児下部尿路機能障害での受診はめずらしいものではなく,泌尿器科医である限り避けては通れない.小児下部尿路機能障害の原因は,先天的な解剖学的・器質的疾患,二分脊椎症,脳性麻痺などの神経因性によるもの,さらには神経疾患がない小児特有の行動異常などで起こる非神経因性下部尿路機能障害など多彩である.一方,排尿自立が確立される4〜5歳までは,患児の排尿状況が病的であると判断されにくい場合も多く,小児ならではの診療アプローチも必要となる.

 小児下部尿路機能障害のなかには,難治性尿路感染や腎機能障害のリスクがあるものが存在し,先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract : CAKUT)を合併している場合は,AYA(adolescent and young adult)世代以降に末期腎不全に陥ることも少なくはない.このような先天性尿路器質性疾患においては,すみやかに診断を行い,適切な外科的治療が望まれる.

小さな工夫

超細径軟性鏡を用いた膀胱留置カテーテル挿入法

著者: 齋藤智美 ,   小野芳啓

ページ範囲:P.1025 - P.1026

膀胱留置用カテーテルの挿入困難時の対処法には多くのさまざまな工夫と選択肢がある.なかでも,軟性膀胱鏡で尿道内を観察しつつ膀胱に到達し,ガイドワイヤーを挿入してこれをガイドに先端開口型カテーテルを留置する方法はすでに広く行われている.今回,ご経験された方もおられると思うが,直視型の超細径軟性鏡をガイドとして用いた留置カテーテル挿入法を選択肢の1つとして改めて紹介する(図1a).

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.941 - P.941

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1031 - P.1031

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.1032 - P.1032

 われわれの周囲のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には笑ってしまうようなフェイク情報が溢れています.シャンプーで洗うだけでその後は一生白髪がなくなったり,皮膚に塗るだけでシミがとれて美白になったりの広告がSNSのそこかしこにみられます.フェイクニュースは虚偽報道であり,マスメディアやソーシャルメディアなどの媒体において事実と異なる情報を報道すること,またはそのような報道そのものを表します.初めから虚偽であることを認識したうえで行う架空の報道や,推測を事実のように報道するなど,故意のものについては捏造報道といわれることもあるようです.外来などで健康食品やがん治療の補助食品などなど患者さんが目にしたり耳にしたものを先生方に質問されることも日常的にあると思います.こういったフェイク情報には困ったものです.

 今年も9月14日にユニークな奥深い研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」が発表されました.イグ・ノーベル賞は1991年にイスラエルの科学関係雑誌「The Journal of Irreproductive Results(再現不能な結果雑誌)」の編集者エイブラハムズによって創設されたノーベル賞のパロディで,現在は米国の化学雑誌が主催しています.これも創設時はフェイクっぽい賞だったのですが,現在ではユニークな研究を対象にしているようです.今年のイグ・ノーベル賞では,日本の研究者による「箸やストローで電流を流して味覚を変える」が「栄養学賞」を受賞しました.日本人研究者の受賞は実に17年連続となります.以前から電流刺激で味覚が変動することが知られていましたが,食事の際にその効果を活用できるように食器に電流を流すことを思いついたことからこの研究は始まっています.微弱な電流が流れるストローや箸を使って飲み物や食べ物を口にすると,塩味が強まったり,味に変化が出ることを確認し味覚を変える手法として論文化しています.これにより,減塩食が苦もなく食べられたりする時代が来るかもしれません.これらにより満腹感の得られる箸などができれば,胃のスリーブ手術の必要もなくなるかもしれません.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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