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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻13号

2023年12月発行

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特集 落ち着け,慌てるな! 泌尿器外傷マネジメント 企画にあたって

落ち着け,慌てるな! 泌尿器外傷マネジメント フリーアクセス

著者: 井上幸治

ページ範囲:P.1049 - P.1049

 泌尿器科領域の外傷は,意外と守備範囲が広く,多くは緊急対応が要求されます.また本外傷は,骨盤外傷,腹部外傷と合併することもあり,他科との連携や,外傷の程度によってはより高次の医療機関への搬送も考慮しなくてはなりません.また,医原性の尿路損傷への対応も重要な課題です.

 わが国においては,『腎外傷診療ガイドライン2016年版』からの発展形として,昨年『泌尿器外傷診療ガイドライン2022年版』が発行され,この分野の診療の標準化が期待されます.ただ,遭遇する頻度はそう多くはないため,多くの泌尿器科医は,初期対応含め実は不安を抱えながら診療にあたっているのではないかと推察します.今回泌尿器外傷を特集するというお話をいただきましたが,そういう理由もあってタイトルは【落ち着け,慌てるな! 泌尿器外傷マネジメント】にしました.

〈総論〉

泌尿器科医に役立つ救急専門医からみた外傷初期診療の基本

著者: 須田秀太郎 ,   関根和彦

ページ範囲:P.1050 - P.1055

▶ポイント

・外傷初期診療は,primary survey(PS),secondary survey(SS),tertiary survey(TS)の順に進む.

・PSでは,A(Air way)・B(Breathing)・C(Circulation)の生理学的安定化が目標であり,A・B・Cの安定化なしに先へ進んではならない.

・SSではすべての外傷の解剖学的評価を行う.

・TSで繰り返し隠された損傷を検索し,見落としを回避する.

泌尿器科医に役立つ救急専門医からみた腹部外傷の基本

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.1056 - P.1060

▶ポイント

・腎泌尿器損傷は腹部外傷の1つであり,解剖学的な局所の損傷形態と循環状態を鑑みながら治療方針を決定する.

・外傷で時に線溶亢進型の凝固障害が生じることがあり,頻繁に確認が必要である.

・止血手段として観血的止血術と画像下治療(IVR)とがあるが,1つの方法に固執しない.

泌尿器科医に役立つ救急専門医からみた骨盤外傷の基本

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1062 - P.1071

▶ポイント

・骨盤骨折は動静脈損傷を合併すると出血性ショックに陥り致死的となるため,迅速な治療が必要である.

・骨盤骨折に伴い膀胱損傷や尿道損傷を合併することがある.特に手術を要する骨盤骨折に合併する膀胱損傷は,骨折の管理の観点から積極的な修復が望ましい.

〈各論―腎外傷〉

腎外傷の総論と診断

著者: 柳雅人 ,   西村泰司 ,   近藤幸尋

ページ範囲:P.1072 - P.1078

▶ポイント

・本邦の腎外傷はほとんどが鈍的外傷であり,他臓器損傷を合併することが多い.

・腎外傷の診断には造影CTが有用である.また本邦ではJAST分類が広く用いられている.

・腎外傷では尿漏が見落とされやすい.特に重症の腎外傷では尿漏の合併を念頭に置くべきである.

腎外傷の治療

著者: 田村芳美 ,   石尾典子 ,   清水孝倫 ,   根井翼

ページ範囲:P.1080 - P.1086

▶ポイント

・循環動態が落ち着いていれば,損傷度や受傷原因のみならず小児も含めて,NOMの適応である.

・遷延する尿溢流に対する治療選択は,処置の利点・欠点も理解したうえで症例ごとに十分に検討する.経カテーテル動脈塞栓術(TAE)の適応は画像所見や全身状態のみならず,抗凝固療法薬内服の有無・施設の画像下治療(IVR)施行体制なども考慮して決定する.

・持続的な血行動態不安定,AAST分類GradeⅤの血管損傷または穿通性外傷,NOMの破綻,腎盂尿管移行部(UPJ)断裂はOMの適応である.

〈各論―膀胱・尿道・精巣・陰茎外傷〉

膀胱外傷

著者: 杉原亨

ページ範囲:P.1088 - P.1092

▶ポイント

・交通外傷などで肉眼的血尿や骨盤骨折があれば積極的に膀胱外傷を疑い,膀胱造影検査を行う.

・膀胱外傷のうち,腹膜外破裂は尿道カテーテル留置による保存的治療が,腹膜内破裂の場合は原則外科的修復術が推奨される.

・保存的治療であっても4週間経過しても膀胱穿孔が閉鎖しない場合は,外科的修復術を検討する.

尿道外傷

著者: 田部井正

ページ範囲:P.1094 - P.1099

▶ポイント

・外的尿道損傷の主な受傷起点は,騎乗型もしくは骨盤骨折に伴うものの2つである.

・尿道損傷が疑われた際は膀胱瘻により尿ドレナージを行う.

・続発する尿道狭窄に対しては待機的に尿道形成術を行うが,専門施設もしくはエキスパート支援下での手術が望ましい.

精巣外傷

著者: 高尾徹也

ページ範囲:P.1100 - P.1103

▶ポイント

・精巣鈍的外傷では超音波検査が有効である.精巣破裂の特徴的な所見は,白膜の連続性が消失していることと精巣実質の内部エコーが不均一であることである.

・精巣破裂の場合には,早期の手術が推奨されている.デブリードメントと白膜修復術が推奨され,可能であれば精巣温存が望ましい.

陰茎外傷

著者: 山辺史人 ,   永尾光一 ,   中島耕一

ページ範囲:P.1104 - P.1110

▶ポイント

・性行為中にポキッと音がしたなどの患者の訴えや,皮下血腫によりナスのような陰茎の状態の場合,陰茎折症を考える.

・保存的治療で改善のない虚血性持続勃起症に対してはTシャントを考慮する.

・陰茎外傷は比較的まれだが,早急な診断,処置を要するものが多い.

〈各論―医原性損傷〉

医原性尿管損傷

著者: 飯島和芳 ,   加藤晴朗

ページ範囲:P.1112 - P.1117

▶ポイント

・医原性尿管損傷は婦人科手術で最も多い.

・術中に損傷が疑われた場合,逆行性尿管造影が診断に有用だが,体位などで検査が不可能な場合は排泄性色素の使用も有用である.術後に尿管損傷が疑われる場合には造影CTと逆行性腎盂尿管造影を行う.

・診断までの時間,損傷の場所と程度により修復方法は異なる.

医原性腎仮性動脈瘤

著者: 井口亮

ページ範囲:P.1118 - P.1122

▶ポイント

・経皮的腎生検・経皮的腎瘻造設術・経皮的腎砕石術・尿路内視鏡手術・腎部分切除術などの医療行為が医原性腎仮性動脈瘤(医原性RAP)の原因となりうる.

・肉眼的血尿・背部痛・貧血が3徴であり,RAPの破裂は致死的な出血につながるおそれがある.

・ダイナミックCTで診断され,治療の第一選択は経カテーテル的動脈塞栓術である.

医原性尿道外傷

著者: 八木橋祐亮

ページ範囲:P.1124 - P.1129

▶ポイント

・尿道カテーテル挿入時のトラブルでは,盲目的操作を繰り返さない.

・尿道カテーテルを挿入できない場合,膀胱鏡下での観察か膀胱瘻造設を選択する.

・医原性尿道外傷が発生した場合,将来的に尿道狭窄が起こりうることを患者に説明する.

綜説

前立腺癌に対する小線源治療の現状と展望

著者: 深貝隆志

ページ範囲:P.1037 - P.1046

要旨

 前立腺癌に対する組織内照射(以下,小線源治療)はその高い治療効果が証明され,限局性前立腺癌の標準治療の1つとして各国の診療ガイドラインにも記載されている.しかし世界的にも,国内でも症例数は減少しつつあることが報告されている.小線源治療もしくは小線源治療+外照射治療に関する治療成績と他の根治治療である手術,外照射の治療成績を比較した報告は数多くみられており,その成績は他の治療方法よりも劣るものではない.特に高リスクがんに対して小線源治療+外照射治療+ホルモン療法は,他の治療法よりも有効である可能性を示す報告もみられている.ここでは前立腺癌に対する小線源治療の現状と治療成績について紹介してみたい.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1035 - P.1035

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1133 - P.1133

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.1134 - P.1134

 昨年から福島県医師会の常任理事を拝命しています.月に2回の常任理事会に出席していますが,医師会の活動は私が予想していたよりもはるかに多岐に渡り,各種委員会報告や協議事項が盛りだくさんで,会議についていくのがやっとです.そんな中,医師会でも問題になっているのが,「医師の働き方改革」です.先日福島県医師会広報副委員長として,福島県医師会と地元新聞社との懇談会に出席しましたが,そこで大きな話題になったのも「医師の働き方改革」でした.

 第88回日本泌尿器科学会東部総会(北海道大学 篠原信雄会長)のパネルディスカッション「若手医師への提言 : 望ましいワークライフバランスとは?」において,「Academic physicianの育成のあり方」というお題をいただき,発表をさせていただきました.2024年4月の「医師の働き方改革」が目前に迫るなか,若い医局員たちに,診療業務の傍らいかに研究や学会発表や論文作成を促すか,非常に難しいテーマです.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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