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雑誌目次

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臨床泌尿器科77巻2号

2023年02月発行

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特集 徹底解説! 過活動膀胱(OAB)の診療ストラテジー 企画にあたって

徹底解説! 過活動膀胱(OAB)の診療ストラテジー フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.123 - P.123

 私が本誌編集委員を仰せつかってから,過活動膀胱の特集を企画せていただいたのは2016年「決定版! 過活動膀胱―All about OAB」,2020年「これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ」に引き続き,今回で3回目です.

 過活動膀胱診療ガイドライン第2版が2015年に刊行されてから,昨年7年ぶりに第3版が刊行されました.287ページにもわたる超大作で,非常に充実した内容になっています.しかしながら,ご多忙の先生方には,本ガイドラインを隅々まで熟読することは難しいかと思います.そんな先生方のために,本ガイドラインの要点をより簡単に,そして見方を若干変えて,本特集を企画させていただきました.まず三井貴彦先生に,過活動膀胱診療ガイドライン改訂第3版のポイントを,アルゴリズムを中心に概説いただきました.過活動膀胱の発症メカニズムについては,基礎研究と臨床研究の観点から,相澤直樹先生と宮里実先生にご執筆いただきました.また過活動膀胱の標準的治療については,藤原敦子先生に総論的にまとめていただき,前立腺肥大症,女性骨盤臓器脱,高齢者,小児,低活動膀胱とターゲットを絞って,秦淳也先生,三輪好生先生,橘田岳也先生,内藤泰行先生,竹澤健太郎先生にそれぞれご執筆していただきました.最後は難治性過活動膀胱です.古田昭先生に難治性過活動膀胱の定義と治療方針について総論的にご執筆いただいたのち,ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法と仙骨神経刺激療法について,これらの治療の経験が豊富な舟橋康人先生と鍬田知子先生にご執筆いただきました.

〈総論〉

過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]のポイント

著者: 三井貴彦

ページ範囲:P.124 - P.130

▶ポイント

・多くの新しいエビデンスが蓄積された過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]には,診療のストラテジーを示す診療アルゴリズムをもとに,最近の重要な課題であるフレイルや認知機能低下,さらに難治性過活動膀胱に対する治療法について記載されている.このように,実臨床に役立つ最新のエビデンスが詰まったガイドラインであるので,日常診療の手引きとして役立てていただきたい.

〈過活動膀胱の発症メカニズム〉

膀胱知覚と尿意切迫感

著者: 相澤直樹

ページ範囲:P.132 - P.137

▶ポイント

・膀胱知覚はメカノセンサーや尿路上皮により,緊密に制御されている可能性がある.

・過活動膀胱(OAB)の必須症状である尿意切迫感のみを直接抑制する作用機序をもつ治療オプションは,いまだ存在していない.

・尿意切迫感の発生要因として,排尿筋と尿路上皮にそれぞれ由来する機序が考えられている.

過活動膀胱の発症メカニズム

著者: 宮里実 ,   芦刈明日香

ページ範囲:P.138 - P.144

▶ポイント

・過活動膀胱(OAB)の病因は,神経因性,非神経因性の2つに大別される.

・神経因性は明らかな神経因性疾患に起因するものと考えられ,脳疾患,脊髄疾患,馬尾・末梢神経疾患に分類される.

・非神経因性は,明らかな神経疾患が同定されない発生メカニズムとして,酸化ストレスが上流に位置する病態として存在する.

〈過活動膀胱の標準的治療〉

過活動膀胱に対する行動療法と薬物治療

著者: 藤原敦子

ページ範囲:P.146 - P.152

▶ポイント

・過活動膀胱(OAB)の保存的治療として行動療法と薬物療法がある.

・行動療法は,過活動膀胱診療ガイドラインで一次治療法とされており,すべての患者に対し実施すべきである.

・薬物療法は,前立腺肥大症(BPH)のあるなしで治療選択肢が変わりうる.

・抗コリン薬を使用する際には他科からの薬も含めた抗コリン負荷に注意を要する.

前立腺肥大症に合併する過活動膀胱患者に対する治療

著者: 秦淳也 ,   松岡香菜子 ,   赤井畑秀則 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.154 - P.159

▶ポイント

・前立腺肥大症(BPH)に合併する過活動膀胱(OAB)治療の中心は薬物療法である.

・薬物療法の第一選択はα1遮断薬およびPDE5阻害薬が推奨される.

・薬物の併用療法も症状に応じて有効な選択肢となる.

女性骨盤臓器脱に伴う過活動膀胱に対する治療

著者: 三輪好生 ,   山口茜

ページ範囲:P.160 - P.164

▶ポイント

・骨盤臓器脱(POP)患者には過活動膀胱(OAB)を高率に合併するが,手術により約半数が消失する.また,術後新たなOABを12%で認める.

・手術適応のあるPOPに対してはOAB治療に先行して手術療法を行う.

・POP手術後の混合性尿失禁に対する治療方針はどちらの尿失禁が優位かによって異なってくる.

高齢過活動膀胱患者に対する治療

著者: 橘田岳也 ,   和田直樹 ,   柿崎秀宏

ページ範囲:P.166 - P.173

▶ポイント

・高齢者に対しても過活動膀胱(OAB)の治療を安全かつ効果的に行い,QOLを改善することができる.

・身体機能が衰えている高齢者,抗コリン作用負荷の大きい患者,明らかな認知症高齢者においては,抗コリン薬の投与の際には慎重な対応が必要である.

・高齢の難治性過活動膀胱(rOAB)患者に対する治療は,年齢のみではなく,尿排出障害の有無など患者ごとに検討すべきである.

小児過活動膀胱に対する診断と治療

著者: 内藤泰行 ,   安食淳 ,   浮村理

ページ範囲:P.174 - P.178

▶ポイント

・小児の過活動膀胱(OAB)の診断では,排尿・排便日誌や質問票と同様に病歴聴取が重要で,患児と保護者双方からしっかりと情報を得ること,便秘の存在を見逃さないことである.

・治療では,抗コリン薬は,ウロセラピーや定時排尿,便秘の治療を行っても効果が不十分な症例に検討される.

低活動膀胱を伴う過活動膀胱患者に対する診断と治療

著者: 竹澤健太郎 ,   上田倫央 ,   野々村祝夫

ページ範囲:P.180 - P.183

▶ポイント

・低活動膀胱(UAB)と過活動膀胱(OAB)の併存する病態を表す用語として,DHICやCOUB,排尿筋低活動を伴う排尿筋過活動(DO-DU)などが提唱されている.

・下部尿路症状(LUTS)を有する高齢者におけるCOUB/DO-DUの有病率は男性で約10〜30%,女性で約5〜15%と報告されている.

・COUB/DO-DUに対する確立された治療法はない.

〈難治性過活動膀胱に対する治療〉

難治性過活動膀胱の定義と治療ストラテジー

著者: 古田昭 ,   五十嵐太郎 ,   木村高弘

ページ範囲:P.184 - P.187

▶ポイント

・難治性過活動膀胱(rOAB)とは,一次治療を12週間以上行っても治療抵抗性である場合と定義されている

・rOABに有効な治療法として,ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法と仙骨神経刺激療法があり,現在どちらも保険適用となっている

・われわれ泌尿器科医は,rOABに対する治療手技をきちんと習得しなければならない

難治性過活動膀胱に対するボツリヌス療法

著者: 舟橋康人

ページ範囲:P.188 - P.193

▶ポイント

・薬物療法不応性の難治性過活動膀胱(rOAB)に対しても,ボツリヌス療法により切迫性尿失禁が約2割で消失し,約6割で半減する.

・効果持続期間は症例によりさまざまであり予測は難しいが,平均4〜9か月ほどである.

・副作用として排尿障害が懸念されるが,尿閉により間欠導尿を要する症例は約1〜6%ほどである.また導尿を要したとしても,切迫性尿失禁のある状態よりQOLは高い印象がある.

難治性過活動膀胱に対する仙骨神経刺激療法

著者: 鍬田知子 ,   加藤稚佳子 ,   竹山政美

ページ範囲:P.194 - P.199

▶ポイント

・仙骨神経刺激療法(SNM)は比較的低侵襲で可逆性のある治療法であり,長期成績も良好である.

・すべての難治性過活動膀胱(rOAB)患者に適応があり,特に重複失禁や低活動膀胱を併存する患者にはよい適応である.

綜説

進行性前立腺癌に対する薬物療法の現状と展望

著者: 井上貴博

ページ範囲:P.115 - P.121

要旨

 初診時に転移を認める進行性前立腺癌の治療は,LHRHアゴニスト/アンタゴニストまたは外科的去勢術が基本的な治療薬・方針であったが,その予後は必ずしも良好ではなく,多くは2年程度で難治性の去勢抵抗性前立腺癌に変異して,死に至る.この去勢抵抗性前立腺癌への変異メカニズムに基づいてさまざまな薬剤の開発が進み,その有用性が種々の臨床試験で証明されてきた.さらにはそうした薬剤を初期治療から投与することの有用性も示されている.大きく様変わりしてきている進行性前立腺癌の薬物療法を概説する.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.113 - P.113

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.203 - P.203

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.204 - P.204

 みなさん,防災訓練はされておりますでしょうか.先日当院でも防災訓練を行いました.というのは,東日本大震災のあと今後30年以内に70%の確率で首都直下型地震が起こると言われています.首都直下型地震では東京を中心に甚大な被害が想定されていますから,東日本大震災後には多くの企業や病院でその対策を講じているわけです.我々も防災訓練を行ってはおりますが,本当に認識できているのかマニュアルはあるにしても実際にどう動いていいのかは実感が湧かないものです.

 我々の防災訓練では,東京に直下型の地震震度7が13時に起こった想定で行いました.本防災訓練は当院の救命救急センターの医師の複数で監修してもらいました.というのも彼らは,東日本大震災時のDMATとして,現地に赴き医療を行っていた経験があるので監修してもらったわけです.その日は院長が不在であったため,小職が本部長役になってしまいました.本部長は各職務のリーダーを集めて「防災・災害対策本部の設置宣言」をすることから始まります.その際に,病院の責務としての役割の前にまず病院職員や外来および入院患者の安全の確保から入りました.その中で手術中の患者の対応や病院の医療機器の停電時の運行状況などを確認していきます.その他の報告としては,栄養課にてライフラインが切れた時のために緊急食および水を3日分確保していることが報告されました.また患者が外来に押し寄せているとの対応を迫られる場面もありました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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