icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻5号

2023年04月発行

雑誌目次

特集 どこまで変わるの? 腎細胞癌診療の進歩 企画にあたって

どこまで変わるの? 腎細胞癌診療の進歩 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.307 - P.307

 腎細胞癌に対する薬物治療に複合免疫療法が導入されたインパクトは大きく,期待とは裏腹に戸惑いもありました.最初の複合免疫療法はニボルマブとイピリムマブの併用療法であり,免疫関連有害事象への対応について経験を重ね,慣れてきたところで,分子標的薬(TKI)と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が導入されました.ペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法とアベルマブとアキシチニブの併用療法が同時に承認されました.さらに最近になって,ニボルマブとカボザンチニブの併用療法とペムブロリズマブとレンバチニブの併用療法が承認されました.次々に現れてくるファーストラインの治療法に対する正直な印象は,「どこまで変わるの?」ではないでしょうか.

 本特集の意図としては,多様化した複合免疫療法への理解を深めるだけでなく,腎細胞癌を取り巻く「環境の変化」にもスポットを当てたいと考えたからです.それは,腎細胞癌のWHO分類が大きく変わったことに代表されます.新たに,遺伝子異常での分類が取り入れられました.ゲノムの研究成果が反映されたのです.複合免疫療法の臨床と並行して理論的根拠に関する基礎研究が活発に展開されています.特に腎細胞癌では,その特殊な免疫環境が注目されています.

〈診断〉

腎細胞癌の遺伝子異常

著者: 佐藤悠佑

ページ範囲:P.308 - P.315

▶ポイント

・腎癌のWHO分類には,形態学的な所見に基づく分類に加え,分子病態に基づく分類も取り入れられている.

・淡明細胞型腎細胞癌では,VHL遺伝子の異常と低酸素誘導因子(HIF)の蓄積が生じている.

・生じている遺伝子異常のパターンにより,がんの悪性度や予後が規定されると考えられている.

最新の病理分類―WHO分類のここが変わった

著者: 都築豊徳

ページ範囲:P.316 - P.321

▶ポイント

・WHO/ISUP核異型度評価の対象は,淡明細胞型腎細胞癌と乳頭状腎細胞癌のみである.

・乳頭状腎細胞癌の異型度評価として行われてきた2段階評価(Type1,Type2)は廃止された.

・分子生物学的所見による分類が新規に作成された.

腎細胞癌の免疫微小環境

著者: 田中伸之 ,   大家基嗣

ページ範囲:P.322 - P.326

▶ポイント

・「複合がん免疫療法」の成功に免疫微小環境の理解は欠かせない.

・腎細胞癌の免疫微小環境は,ほかの免疫感受性腫瘍と異なり,「腫瘍内のCD8T細胞密度の高いほうが予後が悪い」という点で異質性が際立つ.

・腎細胞癌の遺伝子変異は挿入・欠失が多いため,ネオアンチゲン増加と関連するTMBが,通常は低く推定される.

最新の画像診断

著者: 秋田大宇 ,   有田祐起 ,   八木文子 ,   陣崎雅弘

ページ範囲:P.328 - P.334

▶ポイント

・腎囊胞性腫瘤の評価に有用なBosniak分類が改訂され(Bosniak分類version 2019),各クラスの画像所見がより明確に規定された.またMRIの所見も組み込まれた.

・Bosniak分類version 2019では,読影者の経験によらず,読影者間の一致率の上昇や特異度の向上が報告されている.

・ACD-associated RCCの診断はダイナミックCTが中心となるが,腫瘍の造影効果がきわめて弱いことも多く,注意深い読影を要する.また拡散強調像を用いた非造影MRIが有用なことがある.

・ACD-associated RCCの診断に造影超音波検査が有用であるが,腎腫瘍に対する造影超音波検査は保険適用ではない.

〈手術療法〉

ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術

著者: 高木敏男

ページ範囲:P.336 - P.341

▶ポイント

・適切なポート配置がスムーズな手術に通ずる.

・ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)適応の限界を知ることも大切である.

・新たなデバイスでのRAPNの報告もある.

部分切除か全摘か―最新のエビデンス

著者: 日向信之

ページ範囲:P.342 - P.346

▶ポイント

・腎部分切除術は臨床病期T1の腎細胞癌に対する標準治療である.

・pT3aにupstageする腫瘍において,腎部分切除術が腎摘除術と比較して同等以上の再発率,生存率を示すエビデンスが増加しつつある.

・腎部分切除術後の再発率は切除断端陽性により増悪する.

Cytoreductive nephrectomyの現状

著者: 田中一

ページ範囲:P.348 - P.354

▶ポイント

・近年,薬物治療の進歩に伴い,転移性腎細胞癌における腫瘍減量腎摘除(CN)の位置付けが変化している.

・CNは,薬物治療に先行して施行されるimmediate CNと,薬物治療導入後に待機的に施行するdeferred CNに分けられる.現在,immediate CNの適応は,全身状態良好,予後良好,転移巣が少数かつ小さい一部の症例に限られる.薬物治療を先行させたうえで,適切な症例選択に基づくdeferred CNが検討される.

・免疫チェックポイント阻害薬におけるCNの意義については,現時点で十分なエビデンスがなく,今後の検討が待たれる.

〈薬物治療〉

複合免疫療法―ニボルマブ+イピリムマブ

著者: 城武卓

ページ範囲:P.356 - P.362

▶ポイント

・がん免疫サイクルに基づいて免疫チェックポイント阻害薬の作用機序を理解する.

・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は,従来の標準的治療より幅広くかつ持続的な治療効果が期待される.

・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は,単剤療法と比べて高率に重篤な副作用が発現するため,そのリスクマネジメントが重要である.

複合免疫療法―ペムブロリズマブ+アキシチニブ/ペムブロリズマブ+レンバチニブ

著者: 玉田聡 ,   井口太郎

ページ範囲:P.364 - P.371

▶ポイント

・免疫チェックポイント阻害薬―チロシンキナーゼ阻害薬(ICI-TKI)療法は総じて奏効率が高く,PD率が低いため多くの患者に有益である.

・臨床試験結果の数字の大小で治療方針を決定するわけではなく,個々の患者に最適な治療方法を選択する.

・免疫関連有害事象だけではなくTKI特有の有害事象に対処する方法を学ぶ.

複合免疫療法―アベルマブ+アキシチニブ/ニボルマブ+カボザンチニブ

著者: 大庭康司郎

ページ範囲:P.372 - P.377

▶ポイント

・アベルマブ+アキシチニブ療法およびニボルマブ+カボザンチニブ療法は,未治療転移性腎細胞癌に対する一次治療として保険収載されている.

・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の併用による相加効果および相乗効果が期待できる.

・治療効果に比例して急性増悪(AE)のリスクがあるため,対象患者の選択に十分な検討が必要である.

逐次療法

著者: 高橋正幸 ,   金山博臣

ページ範囲:P.378 - P.387

▶ポイント

・一次治療がニボルマブ+イピリムマブ併用療法の場合,逐次療法では,どのVEGFR-TKIも高い有効性が示されている.

・一次治療が免疫チェックポイント阻害薬+血管内皮細胞増殖因子受容体―チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI)の場合,カボザンチニブやスニチニブの有効性が示されている.

・今後,逐次療法として免疫チェックポイント阻害薬+VEGFR-TKIやHIF-2阻害薬などの新しい治療法が期待されている.

VHL遺伝子変異を標的とした創薬―HIF-2α阻害薬の開発

著者: 桐澤崇宏 ,   今井亨 ,   中村英二郎

ページ範囲:P.388 - P.393

▶ポイント

・これまでの研究で淡明細胞型腎細胞癌においてHIF-2がドライバーとして働くことが明らかとなった.

・現在,HIF-2α阻害薬であるbelzutifanのmccRCCにおける臨床開発が進められている.

綜説

腎移植成績向上に向けたstrategy

著者: 内田潤次 ,   町田裕一

ページ範囲:P.299 - P.306

要旨

 末期腎不全に対する腎代替療法として透析療法と腎移植がある.生命予後改善効果,医療費削減効果,QOL改善効果より腎移植が最も優れた腎代替療法である.移植医として末期腎不全患者が腎移植の恩恵を受けるために,腎移植適応拡大,腎移植成績向上を目指さなければならない.現在,腎移植における免疫抑制薬としてカルシニューリン阻害薬を凌駕し,腎移植成績向上をもたらす新しい免疫抑制薬は出現する気配がない.現状で腎移植成績向上の施策として,高齢社会を迎えた現在,腎移植成績向上のためには一般人口と同様に健康寿命の延長を考慮し,フレイル,サルコペニア対策が必要と考える.また,大部分が慢性腎臓病(CKD)患者である腎移植レシピエントにはCKD治療薬であるSGLT2阻害薬の応用が移植腎成績向上へつながる期待がもてる.

--------------------

目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.297 - P.297

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.397 - P.397

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.398 - P.398

 大晦日はどちらかというと「紅白歌合戦」ではなく「笑ってはいけない」を見ていた家族にとって,番組の終了は行動変容をもたらしました.久しぶりに「紅白歌合戦」を最初から最後まで見ました.初めて聞く曲が多く,新鮮でした.懐かしいアーティストも登場して,飽きることがなかったです.特に紅白ならではと言える豪華アーティストの共演もあって,NHKの工夫と努力を感じた次第です.その中でも桑田佳祐さんが率いる「時代遅れのRock'n Roll Band」は異彩を放っていました.メンバーは野口五郎さん,世良公則さん,Charさん,そして佐野元春さんでした.永遠に若い「オジサマ」達は皆さん「カッコいい」のですが,特に佐野元春さんのカッコよさは私のハートを揺さぶりました.

 私は,宴会の席で打ち解けるために,「どういうタイプの方が好みですか? 芸能人では?」と聞いてみます.10年ほど前のことです.とある出版社の女性は,「佐野元春です.コンサートに必ず行っています.メチャクチャかっこいいです」と答えました.意外な回答を得たことで,その後の会話は盛り上がり,しっかりと記憶に残った訳です.先日も初対面の女性医師に同じ質問をしたところ,「キムタク」という返事が返ってきました.会話は盛り上がりませんでした.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら