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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻6号

2023年05月発行

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特集 ここだけは押さえておきたい 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療のポイント 企画にあたって

ここだけは押さえておきたい 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療のポイント フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.403 - P.403

 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は,ご承知の通り指定難病になっており,患者さんの著しい苦痛は言うまでもありません.泌尿器科医であれば,日常診療において遭遇することがある疾患です.しかしその病態は明らかになっておらず,正確な診断も容易ではなく,特に治療には難渋することが多い疾患です.本号では,「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療のポイント」というタイトルで特集を組ませていただきました.

 まず,上田朋宏先生には,間質性膀胱炎の定義について詳しくご執筆いただきました.南里正晴先生には,間質性膀胱炎の指定難病の概要,申請方法,診断基準,問題点等,指定難病申請における注意点をご執筆いただきました.

〈定義・指定難病・病因〉

間質性膀胱炎の定義

著者: 上田朋宏 ,   吉村直樹

ページ範囲:P.404 - P.410

▶ポイント

・間質性膀胱炎(IC)は,膀胱痛を主訴とする疾患で膀胱に特異的な炎症領域(ハンナ病変)を伴う疾患として定義されてきた.

・膀胱痛そのものが膀胱だけでなく骨盤全体や全身状態からも影響を受けることから,きわめてheterogeneousな病態で適切なphenotypingが必要とされる疾患である.

・膀胱中心性の間質性膀胱の定義・診断には,①膀胱痛の確認,②(膀胱)病変の評価,③(膀胱)病変が膀胱痛の原因であることの証明の3ステップが重要であると考えられる.

指定難病の概要と問題点

著者: 南里正晴 ,   松尾学

ページ範囲:P.412 - P.416

▶ポイント

・2015年1月より間質性膀胱炎(ハンナ型)(HIC)のうち日本間質性膀胱炎研究会作成の重症度基準で重症の基準を満たすものが指定難病となった.

・指定を受けた患者は医療費の補助のほかにさまざまなサービスを受けることができ,医療機関は難病外来指導管理料を算定することができる.

・泌尿器科専門医であれば必要書類を提出するだけで難病指定医になることができる.

病因・遺伝子解析

著者: 秋山佳之

ページ範囲:P.418 - P.421

▶ポイント

・間質性膀胱炎(ハンナ型)(HIC)と膀胱痛症候群(BPS)は遺伝子発現,病理所見がまったく異なる別個の疾患である.

・HICは炎症性疾患であり,免疫学的異常を伴う.

・間質性膀胱炎(IC)・BPSの診断・治療では,ハンナ病変の有無を確認することが必須である.

〈診断〉

間質性膀胱炎の症状と検査所見

著者: 吉崎宇蘭 ,   新美文彩

ページ範囲:P.422 - P.428

▶ポイント

・間質性膀胱炎(IC)の代表的な症状は,蓄尿により増悪する下腹部・膀胱・陰部の疼痛と頻尿である.

・下部尿路症状や骨盤痛を来す,すべての疾患が鑑別の対象となる.

・特異的な所見は膀胱鏡によるハンナ病変の存在であり,これがある場合は「間質性膀胱炎(ハンナ型)」,ない場合は膀胱痛症候群(BPS)と診断される.

バイオマーカー

著者: 小川輝之 ,   齊藤徹一 ,   皆川倫範

ページ範囲:P.430 - P.433

▶ポイント

・間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)において一般的に診断・治療に利用できるバイオマーカーはいまのところ存在しない.

・研究の段階では成長因子,免疫関連物質,マイクロバイオーム,MRIなどその候補がいくつか報告されている.今後の成果が期待される.

膀胱鏡所見

著者: 大塚篤史 ,   三宅秀明

ページ範囲:P.434 - P.441

▶ポイント

・膀胱鏡検査は,「ハンナ病変の検出」ならびに「混同しうる各種疾患・病態(特に膀胱悪性腫瘍)の除外」のために有用な検査である.

・問診や検査所見から間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)を疑う場合には,積極的な膀胱鏡検査を検討する.

・ハンナ病変は,淡紅色を呈しその境界は比較的はっきりしており病変部は平坦かつ平滑である.ハンナ病変周囲の毛細血管は,病変中心部に向かって集簇(しゅうぞく)する.

*本論文中、[▶動画]マークのあるものにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月末まで公開)。

病理所見

著者: 古田昭 ,   五十嵐太郎 ,   木村高弘

ページ範囲:P.442 - P.445

▶ポイント

・ハンナ型間質性膀胱炎(HIC)と膀胱痛症候群(BPS)の鑑別は膀胱鏡所見でなされるのが前提であり,組織検査は必須ではないものの,それらの鑑別や病態の把握には重要である.

・HICでは,主として粘膜固有層のリンパ形質細胞浸潤による膀胱の上皮剝離,血管新生,線維化がみられる.

・BPSでは,有意な炎症所見はみられず,膀胱上皮もよく保たれている.

〈治療〉

保存的治療・薬物治療

著者: 大岡均至

ページ範囲:P.446 - P.451

▶ポイント

・間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)に対する根治的な治療法は現在のところ存在せず,個々の症例に最適な多面的アプローチを駆使して,患者のQOLを維持するように努める.

・本疾患の理解にUPOINT systemは有効である.

・IC/BPSに対する保存療法・薬物療法は,重要な治療戦略の1つではあるが,その効果は限定的であることも認識しておくべきである.

膀胱内注入療法

著者: 大川瑞穂 ,   中島耕一

ページ範囲:P.452 - P.458

▶ポイント

・ハンナ型間質性膀胱炎(HIC)と膀胱痛症候群(BPS)は類似した症状を呈するが,病因が異なる疾患であり,治療前に両者を鑑別し,病型に応じた治療戦略をたてることが重要である.

・単一治療で効果不十分なケースでは,個々の患者の症状に応じて複数の治療を組み合わせて行う.

・保険適用となっているHICに対する膀胱内注入療法は,ジメチルスルホキシド(DMSO)のみである.

膀胱水圧拡張術

著者: 山本恭代 ,   高橋正幸 ,   金山博臣

ページ範囲:P.460 - P.464

▶ポイント

・ハンナ病変や膀胱粘膜の変化を見落とさないよう,膀胱をよく観察しながら,拡張する.

・膀胱破裂に細心の注意を払って拡張する.生理食塩水の注入速度が急に速まるときは,破裂を疑う.

・80cmH2Oにこだわらない.より低い圧でも拡張可能である.

*本論文中、[▶動画]マークのあるものにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月末まで公開)。

ハンナ型間質性膀胱炎手術(経尿道)

著者: 巴ひかる

ページ範囲:P.466 - P.471

▶ポイント

・経尿道的切除(TUR)または経尿道的凝固術(TUC)では完全なハンナ病変の切除が重要と考えられ,術前の膀胱鏡において膀胱拡張前にハンナ病変の位置や広がりを確認することが大切である.

・TURもTUCも効果はほぼ同等であるが,TURで膀胱穿孔が多い傾向があり,TUCでは凝固が深くなり過ぎることに注意する.

・TURまたはTUCにより80%以上の症例で症状の改善を認めるが,30か月以内に30〜75%が再発する.再手術で症状の改善を認めることが多い.

*本論文中、[▶動画]マークのあるものにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月末まで公開)。

書評

トップジャーナルへの掲載を叶えるケースレポート執筆法―向川原充,金城光代 著 フリーアクセス

著者: 廣澤孝信

ページ範囲:P.473 - P.473

 臨床のベッドサイドにはさまざまな学びがあります.しかし多くの場合,日常診療の多忙さから学術的なアウトプットとしての集合知よりも,無意識も含む現場レベルの経験として蓄積される場合が多いのではないでしょうか.ケースレポート(症例報告)のエビデンスレベルは必ずしも高くはありません.また,多忙な臨床業務の合間にアウトプットとして形にするのは決して容易なことではないでしょう.しかし本書でも述べられている通り,ケースレポートには執筆を通じて疾患の理解を深め,自らの臨床能力を高められる意義があります.アクセプトされれば学びを読者と共有でき,報告した症例の重要性を再認識させてくれることでしょう.

 私は,大学の総合診療科に所属する医師として,医学生から後輩,同僚までさまざまなレベルの方々の相談を受けたり指導したりする立場にあり,ケースレポートの執筆や発表もコラボレーションしてきました.こうした経験から,ケースレポートを書くための着想を得る時点から,執筆,投稿,受理までの全体の流れを示して伝える難しさを感じていました.その全体像を見事に示してくれるのが本書です.例えば,臨床経験と執筆経験を「2×2」で図式化して,執筆スケジュールを例示した図をはじめ,数々の掲載図によって,頭で漠然と考えている内容が明快に図式化・言語化されるので,とても役に立ちます.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.401 - P.401

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.477 - P.477

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.478 - P.478

 スポーツ熱というのはすごいものがある.サッカーワールドカップ時には,三笘の1mmという言葉が生まれたり,テレビをつければどの局もワールドカップ,ワールドカップであった.年が変わりこの春にはWBCが予選を国内で,準決勝からアメリカで行われていたが,優勝の期待からかサッカーワールドカップ以上の盛り上がりを示したような気がします.例えばヌートバー選手のペッパーミルのパフォーマンスが流行り,合羽橋の調理道具屋さんのペッパーミルがバカ売れしたりで盛り上がりました.中でもやはり大谷選手は別格のようでした.対戦チームも敬意を払っていましたし,彼の行動も紳士的で非常に好感の持てるものでした.

 大谷選手は日本チームでの練習中において,打席練習で日本チームの他の選手と比較しても別格のようでした.彼の打球の速さに他の選手からも羨望の声が出ていたようでした.大谷選手の凄さの声が,日本チームの中でいかなる時においても多数上がっていたそうです.一方でダルビッシュ選手は,チームでの年配者としてチームのまとめ役であったり,若い選手の教育係として球種に関してアドバイスしていたようです.自分が非常に興味深かったのは,ダルビッシュ選手による大谷選手の評価です.彼曰く大谷選手の打球の速さや投手としての活躍は当然であるとのことです.野球選手にとって最も大切なことは,プレー以前の体を作ることであると言っています.普段から基礎的トレーニングにより身体作りをしっかりすることが大切なようです.身体作りの基礎としての良いサプリメントを含めた食事をして体作りをしていたかが大切であるそうです.つまり試合の前の練習以前に戦える体をいかに作るかが大切です.ですからバリーボンズのようにドーピングしてまでも良い体を作り活躍したいと考えてしまうわけです.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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