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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻7号

2023年06月発行

雑誌目次

特集 泌尿器病理 鳥瞰図―近未来の泌尿器腫瘍へズームイン

腎癌:淡明細胞型腎細胞癌の病理学的総説と予後予測因子

著者: 大江知里 ,   中本喬大 ,   吉田崇

ページ範囲:P.484 - P.490

▶ポイント

・淡明細胞型腎細胞癌はVHL遺伝子異常を反映した組織形態を示し,繊細で豊富な血管網を背景に淡明や好酸性の腫瘍細胞が増殖する.

・CA9はVHL/HIF経路に関連する蛋白で,細胞膜にびまん性に陽性を示すと淡明細胞型腎細胞癌としての診断的価値が高い.

・血管網が消失する組織構築では免疫系の遺伝子発現が高く,予後不良と関連する.

腎癌:非淡明細胞型腎細胞癌の病理

著者: 大橋瑠子

ページ範囲:P.492 - P.501

▶ポイント

・組織型ごとに臨床像が異なるため,WHO2022に基づき診断し,特に淡明細胞型腎細胞癌と非淡明細胞型腎細胞癌を確実に鑑別することは重要である.

・分子生物学的に定義された腎癌では分子生物学的所見が診断に必須である.

・WHO2022では乳頭状腎細胞癌のType 1/2の亜分類が廃止され,oncocytic and chromophobe renal tumorの取扱い変更が行われた.

膀胱癌:WHO2022と腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約での変更点

著者: 南口早智子

ページ範囲:P.502 - P.509

▶ポイント

・尿路上皮異形成は,上皮内癌の前癌病変であるが,低い診断者間一致率と臨床的対応も未確定なため診断項目から除外された.

・高異型度尿路上皮癌(HGUC)における種々の組織分化,肉腫様亜型,小細胞神経内分泌癌は多寡にかかわらず診断名として記載する.組織亜型は占拠率も含め必ず記載する.

・パリ分類はHGUCを対象にした4分類の国際的尿細胞診報告様式である.

上部尿路上皮癌:膀胱の尿路上皮癌と似て非なる病態

著者: 都築豊徳

ページ範囲:P.510 - P.516

▶ポイント

・同じ尿路上皮癌でも上部尿路癌と膀胱癌では組織像や予後などの病態が異なる.

・分子生物学的所見も上部尿路癌と膀胱癌では異なる.

・各種薬物に対する奏効性も上部尿路癌と膀胱癌では異なる.

前立腺癌:WHO2022と取扱い規約での変更点

著者: 仙波玲美 ,   内田克典

ページ範囲:P.518 - P.525

▶ポイント

・前立腺癌取扱い規約第5版では,WHO2016ですでに導入されていた導管内癌(IDC-P),グレードグループ(GG)分類が新しく採用された.

・IDC-Pは予後不良因子として非常に重要である.また,GGはGleason score(GS)を代替する分類法である.

・WHO2022では悪性度評価の問題点が提示された.

前立腺神経内分泌癌の分類と病理所見

著者: 林博之 ,   河野眞司

ページ範囲:P.526 - P.532

▶ポイント

・前立腺の神経内分泌癌に,小細胞神経内分泌癌,大細胞神経内分泌癌,混合型神経内分泌腫瘍,治療関連前立腺神経内分泌癌がある.

・診断はHE染色による形態学的評価を基本として治療歴を加味し,補助的に免疫染色を用いる.

・神経内分泌腫瘍成分にGleason scoreは適用されない.

精巣腫瘍:胚細胞腫瘍の基本知識

著者: 宮居弘輔

ページ範囲:P.534 - P.539

▶ポイント

・精巣胚細胞腫瘍は,腫瘍発生・細胞起源に基づき,GCNISとの関連性の有無によって分類される.

・卵黄囊腫瘍と奇形腫はGCNIS非関連胚細胞腫瘍の思春期前型,GCNIS由来胚細胞腫瘍の思春期後型に分けられる.

・奇形腫,思春期後型には癌や肉腫などの体細胞型悪性腫瘍が発生し,胚細胞腫瘍の標準化学療法に抵抗性を示す.

陰茎癌:WHO2022で何が変わったか

著者: 寺本祐記

ページ範囲:P.540 - P.545

▶ポイント

・WHO2022では組織分類が簡略化されHPV感染の有無の重要性が強調されている.

・p16免疫染色がハイリスクHPV感染のサロゲートマーカーとして有用だが,評価の際には“block-positive”のみを陽性としなければならない.

泌尿器科医が知っておくべき後腹膜腫瘍:高分化型脂肪肉腫と脱分化型脂肪肉腫

著者: 柴瑛介 ,   久岡正典

ページ範囲:P.546 - P.551

▶ポイント

・後腹膜に発生する脂肪性腫瘍では悪性の可能性を念頭に置くべきである.

・高分化型脂肪肉腫は完全切除が難しく局所再発しやすいが,原則として転移することはない.

・高分化型脂肪肉腫が脂肪への分化を失うとともに,種々の間葉系組織への分化を示す領域を伴って,転移能を獲得した腫瘍へと進展したものが脱分化型脂肪肉腫である.

術中迅速診断:泌尿器科医が知っておくべき術中迅速診断の手引き

著者: 川上史

ページ範囲:P.552 - P.556

▶ポイント

・泌尿器科医と病理医の対話,情報共有が質の高い術中迅速診断を可能にする.

・術中迅速診断は原則として「結果により術式が変わる可能性がある場合に行う検査」で,濫用は御法度である.

・泌尿器科手術の術中迅速診断は世界的に減少傾向にあり,適応を絞り,患者の最大限の利益を考える.

泌尿器領域悪性腫瘍における腫瘍免疫および血管新生

著者: 高原大志

ページ範囲:P.558 - P.562

▶ポイント

・腎細胞癌,膀胱癌は免疫チェックポイント阻害薬が有効なことが多い.

・免疫チェックポイント阻害薬と,チロシンキナーゼ受容体阻害薬の併用療法が近年注目を浴びている.

・免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する方法の確立が必要である.

遺伝子検索:病理診断と遺伝子診断

著者: 宮城洋平

ページ範囲:P.564 - P.568

▶ポイント

・現在の病理組織学的分類は,TCGA大規模マルチオミクス解析をベースとする分子分類と高い相関を示す.

・病理診断はAIや大規模マルチオミクス解析の情報を取り入れ精緻化し,臓器横断的治療に直結する遺伝子解析を加える形で進むと予想される.

・泌尿器科医は,検査,研究に供される試料の質の重要性を認識し,その担保に適切な役割を果たすべきである.

企画にあたって

泌尿器病理 鳥瞰図―近未来の泌尿器腫瘍へズームイン フリーアクセス

著者: 都築豊徳

ページ範囲:P.483 - P.483

 泌尿器腫瘍の治療の実施において,病理診断は非常に重要な役割を担っています.病理診断の規範はWHOから出版される成書が現状の規範であり,診断カテゴリーの確立やおのおのに対する診断基準が示されています.2022年にWHO第5版(WHO2022)が発刊され,新たな規範が提示されることになりました.WHO2022の出版は今後の泌尿器腫瘍の診断および治療に大きく影響を与えることから,今回の企画を立案するに至りました.

 今回の企画ではWHO2022で取り上げられた疾患単位,特に注目すべき変更点が記載された項目を中心に取り上げてみました.WHO2022とは別に,泌尿器病理を理解して頂くうえで重要と考えた項目も取り上げ,それらの解説を行って頂きました.さらには,術中迅速診断のような日常業務に直結する内容から最近注目を集めている分子生物学的知見,特に腫瘍免疫や遺伝子に関する学術的な内容まで幅広く解説して頂きました.これにより今回の特集号のみで現在の泌尿器病理の全体が俯瞰できるように工夫を行いました.病理は難しいと思われがちですので,内容も平易にして,泌尿器の先生方が理解しやすいように工夫をしております.最後に,今回の執筆陣は次世代を担う若手の先生にその多くを担当して頂きました.新しい時代に即した内容が盛り込めたと自負をしております.

書評

《ジェネラリストBOOKS》―高齢者診療の極意―木村琢磨 著 フリーアクセス

著者: 大滝純司

ページ範囲:P.569 - P.569

 数年前からハンセン病療養所で非常勤医師として勤務する機会をいただいています.入所されている方の平均年齢はおよそ90歳で,ハンセン病は全員がすでに治癒しており,診療はいわゆるmultimorbidityへの対応が中心です.想像を絶する過酷な人生を歩んでこられた方のケアに携わることから得られる学びはとても多いのですが,超高齢者の診療の難しさをいつも実感しています.

 本書の著者である木村琢磨氏は,国立病院や大学で高齢者への診療や在宅ケアに従事しながら,その特徴について発信しつづけておられます.これまでに『日本医事新報』や『Medical Tribune』に連載された内容を再構成して書き下ろしも追加したという本書には,高齢者を診る際の,エビデンスはもちろんですが,実践に裏付けられた知恵や工夫が数多く明示されています.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.481 - P.481

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.573 - P.573

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.574 - P.574

 SNSの普及には目覚ましいものがあります.当講座でもささやかなホームページ(HP)を開設し常に情報発信をしているのですが,最近の若者はHPをほとんど見ないそうです.そこで数年前からFacebookも始めました.ただ,Facebookを見る世代は今や30歳代以降で,若者が好むSNSはTwitterやInstagramが一般的のようです.

 現在,日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会で広報委員長を拝命しているのですが,学会Twitterを昨年から開始しました.若い泌尿器科医の情報入手手段はHPではなくTwitterとのことで始めたのですが,現在のところHP上の新着NEWSに限定してTwitterで流し,HPにリンクさせて情報発信をしています.しかしながら,現在のフォロワーの数は200人に満たない状況です.幅広い年齢層が在籍している会員にSNSを普及させることの難しさもありますが,そもそもSNSに慣れていない私があれこれ考えること自体が限界です.そこで現在広報委員会では,20歳代から30歳代前半を中心とした小委員会を作り,SNSの充実を図ろうとしています.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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