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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科77巻8号

2023年07月発行

雑誌目次

特集 泌尿器がん薬物療法の副作用―支持療法を知らずして行うべからず!

G-CSF製剤の使い方

著者: 三浦裕司

ページ範囲:P.580 - P.587

▶ポイント

・感染症発症のリスクは,「好中球減少の深さと長さ」による.

・無熱性好中球減少症の場合,感染兆候がなく全身状態が良好であれば,経過観察が基本である.

・G-CSF投与の基本は一次予防投与である.

発熱性好中球減少症

著者: 二尾健太 ,   草場仁

ページ範囲:P.588 - P.592

▶ポイント

・発熱性好中球減少症(FN)は時として致死的となる重篤な合併症であり,迅速な評価と治療開始が求められる.

・FNの治療は入院・静注抗菌薬投与による全身管理が基本である.しかしMASCCスコアやCISNEスコアを参考に重症化リスクを評価し,低リスクと判断された患者においては外来治療が考慮される.

・FNの診断基準は絶対的ではなく,個々の患者背景を考慮した慎重な対応を行うことががん薬物療法を安全に実施するために重要である.

制吐療法

著者: 齊藤光江

ページ範囲:P.594 - P.598

▶ポイント

・化学療法誘発嘔気・嘔吐のマネジメントの基本は制吐薬の予防投与である.

・化学療法剤には,嘔吐事象を誘発するリスク別に高度,中等度,低度,最小度の催吐性に分類されており,リスク別に制吐療法が推奨されている.

・化学療法投与後,早期(24時間以内)の嘔吐事象はセロトニンに,遅発期(24時間後以降)の嘔吐事象はサブスタンスPにより引き起こされるため,これらの受容体拮抗薬が制吐薬として使用されている.

CIPNの予防と治療

著者: 古川孝広

ページ範囲:P.600 - P.606

▶ポイント

・米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドラインのアップデートでは,デュロキセチンが唯一化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の推奨治療である.

・2023年にがん薬物療法に伴う末梢神経障害ガイドラインが発刊された.

・CIPNに対して予防と治療に区別して対応策を検討する必要がある.

がん薬物療法に伴う皮膚障害

著者: 髙橋聡

ページ範囲:P.608 - P.614

▶ポイント

・マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群は高頻度にみられる皮膚障害で,適切な予防とケアが重要である.

・免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害は,頻度が高く,発現が早く,程度は軽いことが特徴である.

・Stevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症を疑う場合は,早急に皮膚科専門医と連携し,治療を開始する必要がある.

がん薬物療法に伴う粘膜炎

著者: 中村路夫

ページ範囲:P.616 - P.619

▶ポイント

・粘膜炎を来しやすい薬物について整理する.

・粘膜炎のリスク因子について知る.

・粘膜炎になる前の予防も重要である.

がん患者における貧血

著者: 田中朝志

ページ範囲:P.620 - P.623

▶ポイント

・泌尿器系がんでの貧血合併率は他のがん種と同様に高い.

・がん患者における貧血に機能的鉄欠乏が影響していることがあり,鉄状態の評価が重要である.

・世界の100か国以上でがん化学療法に伴う貧血に対して赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の適応があるが,負の側面が注目され慎重に使用されている.

がん疼痛マネジメント―泌尿器科疾患を念頭に

著者: 熊野晶文

ページ範囲:P.624 - P.629

▶ポイント

・痛みは主観的なものであり,客観的な評価は難しいことを十分に認識しておく必要があり,患者ごとに詳細な評価を行い,鎮痛薬を選択することが重要である.

・がん疼痛には侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛があり,両者が混合していることが多いが,性状の違いを認識していることは重要である.

・鎮痛薬の副作用の発現頻度を減らすためにも腎機能や肝機能には留意し,少量から開始することを心がける.

・オピオイドの副作用対策は症状マネジメントのほか,オピオイドの減量,オピオイドスイッチング,投与経路の変更などを考慮する.

がん関連倦怠感

著者: 足立誠司

ページ範囲:P.630 - P.636

▶ポイント

・倦怠感は,患者から訴えられにくい症状であり,医療者の問診が大切である.

・倦怠感は,身体的,精神的,認知的倦怠感があり,多次元で捉える必要がある.

・がん関連倦怠感のアセスメントおよびマネジメントは,医療ケアチームで行うことが重要である.

irAEの管理

著者: 高見澤重賢 ,   内野慶太

ページ範囲:P.638 - P.642

▶ポイント

・泌尿器領域で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬は,イピリムマブ,ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アベルマブがある.

・免疫チェックポイント阻害薬に特徴的な免疫関連有害事象(irAE)によって,自己免疫疾患様の多彩な症状を引き起こす.

・irAEに対する治療の基本はステロイドで免疫過剰状態を抑えることである.

「医者ガチャ」から患者を救う緩和ケア

著者: 井上彰

ページ範囲:P.644 - P.649

▶ポイント

・緩和ケアは患者・家族のQOL維持のため抗がん治療の有無にかかわらず不可欠な医療であり,主治医独りで問題を抱え込まず多職種で連携することが重要である.

・抗がん治療中から緩和ケア専門家と連携して適切にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を導入することが望ましい.

・終末期にはせん妄対策を重視するとともに,過剰な輸液を控えるなど「引き算の医療」を心がける.

J-SUPPORTについて

著者: 藤森麻衣子 ,   野口菜穂 ,   内富庸介

ページ範囲:P.650 - P.654

▶ポイント

・日本がん支持療法研究グループ(J-SUPPORT)は支持療法,緩和治療,心理社会的ケアの新規治療開発,検証,普及に関する質の高い研究を,患者・市民参画(PPI)を含むオールジャパン体制で実施・支援している.

・承認研究19件中7件の成果論文が公開され,3件は成果がガイドラインや政策提言に反映され,社会への普及・実装につながっている.

・今後,さらに経験や知見を重ね,人材育成や多くのステークホルダーの参画により開発や実装を推進する.

企画にあたって

泌尿器がん薬物療法の副作用―支持療法を知らずして行うべからず! フリーアクセス

著者: 北村寛

ページ範囲:P.579 - P.579

 泌尿器がんの薬物療法は,殺細胞性抗がん薬,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬,抗体薬物複合体,内分泌療法薬,アンドロゲン受容体経路標的薬など多岐に渡っています.本誌第74巻第10号(2020年9月号)では,①各種抗がん薬の作用機序,②化学療法,分子標的療法および免疫療法の副作用,③各泌尿器がんの薬物療法,という構成で薬物療法の実践に役立つ特集が組まれました.しかし,その後新たな作用機序の薬剤や併用療法が登場し,副作用管理はますます複雑になってきています.

 がん薬物療法を行う際に各種診療ガイドラインを参考にされていると思いますが,多くの場合,疾患ごとのガイドラインを参照するに留まっているのではないでしょうか.実は国内外でがん支持療法に関するガイドラインも多数発行されており,本来はこういったガイドラインも熟読して薬物療法を行わなければなりません.しかし,薬物療法だけでなく手術や検査も行わなければならない泌尿器科医にとっては,なかなかそこまで手が回らないのが実情と思います.

症例

骨盤内および両側副腎の同時性異所性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫

著者: 小田侑希 ,   福井真二 ,   家村友輔 ,   星野永 ,   安川元信

ページ範囲:P.655 - P.658

 64歳男性.左腰背部痛で当科を受診.CTで骨盤内腫瘍と左水腎症,および両側副腎腫瘍を認めた.経会陰的骨盤内腫瘍生検および左尿管ステント留置術を施行した.病理組織学的検査の結果CD5陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma : DLBCL)と診断した.EPOCH-R療法を3コース施行するも末梢神経障害が生じたためCHASE-R療法に変更した.2コース施行後のCTでの評価では部分奏効であった.

学会印象記

「第38回EAU」印象記

著者: 柏木英志

ページ範囲:P.660 - P.661

初めまして.九州大学泌尿器科の柏木英志と申します.

 第38回欧州泌尿器科学会総会(The 38th Annual EAU Congress : EAU23)が2023年3月10〜13日にイタリアのミラノで開催されました.この総会に参加することができましたので,その印象記をご報告させていただきます.

「第110回日本泌尿器科学会総会」印象記

著者: 三宅牧人

ページ範囲:P.662 - P.664

「やはり総会は春がよい」.

 神戸ポートピアアイランドの心地よい海風がそよぐなか,あらためて思った.第110回日本泌尿器科学会総会が,前回(第109回総会2021年12月7〜10日 於 : 横浜)に続いて,現地開催形式で2023年4月20〜23日に神戸で開催された.春の開催は第107回総会(2019年4月18〜21日 於 : 名古屋)以来なんと4年ぶりである.会場に入り,まずお出迎えしていただいたのは,いたる所に設置された大会長 野々村祝夫教授の案内パネルである(写真1左).このお心遣い,会場は広いが迷うはずもない.学会初日から多くの参加者が集う.数年ぶりの春の現地開催となった本学会を楽しんでおられるみなさんの姿が印象的であった.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.577 - P.577

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.669 - P.669

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.670 - P.670

 人生はもちろん連続しているのですが,10代と20代の人生は違うし,ましてや50代の人生は全く違います.同じ自分なのに振り返ると違う自分に出会うとともに変わらない自分も見えてきます.2022年7月号編集後記で取り上げた「分人主義」(平野啓一郎 : 私とは何か―「個人」から「分人」へ.講談社,2012)の影響を受けて,一生も分割できるのではないかと考えるようになりました.予期しない自分に出会った鮮烈な経験は30代におとずれました.

 私は高校卒業まで京都で過ごしました.食卓に納豆が出てきたことは一度もなく,家族全員納豆が食べられませんでした.浅沼宏准教授(慶應義塾大学)と一緒に過ごしたレジデント時代,彼はお寿司屋さんでの締めにいつも納豆巻きを注文していました.ある時,「絶対に美味しいから食べてみて」と薦められ,本来なら断ったのでしょうが,酔いが回っていて,トライしてみたところ,美味しいのにびっくりしました.それ以来,納豆は大好物です.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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