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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科78巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 泌尿器腹腔鏡手術ガイドラインを紐解く―EBMに基づいた手術選択

副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術―単孔式および副腎部分切除に関して

著者: 今村有佑 ,   坂本信一 ,   市川智彦

ページ範囲:P.6 - P.10

▶ポイント

・腹腔鏡手術は良性副腎腫瘍における第一選択の標準術式として確立されている.

・単孔式腹腔鏡手術は従来の腹腔鏡手術に劣らないと思われるが,症例数が少ないこと,前向き研究が少ないことよりエビデンスレベルは低い.

・副腎内分泌疾患における腹腔鏡下副腎部分切除術は,全摘除術と比較し優劣は明確でないが,周術期の優位性,症状持続や再発の可能性について十分なインフォームド・コンセントが必要である.

腹腔鏡下腎摘除術―cT2およびcT3での腹腔鏡下腎摘除術,ロボット支援手術との比較に関して

著者: 矢津田旬二 ,   神波大己

ページ範囲:P.12 - P.15

▶ポイント

・cT2およびcT3に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術(LRN)は豊富な経験をもつ施設,術者で行うことが推奨されている.

・ロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術(RRN)はLRNと比較して弱く推奨された.

・今後はcT2やcT3に対するRRNの報告が増えてくることが予想される.

腎部分切除術―腎部分切除術におけるロボット支援手術,高難度腎癌に対するロボット支援手術に関して

著者: 髙原健 ,   白木良一

ページ範囲:P.16 - P.21

▶ポイント

・腎癌に対する腎部分切除術においてロボット支援手術を弱く推奨する.

・高難度腎癌に対する腎部分切除術においてロボット支援手術を弱く推奨する.

・ロボット支援腎部分切除術(RAPN)の適切な適応と安全な施行のためには,3D-CTによる画像診断や術中の適切なナビゲートが有用である.

*本論文中,[▶動画]マークのあるものにつきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年12月末まで公開).

ハイリスク上部尿路上皮癌に対する腎尿管全摘除術―ロボット手術は開腹手術や腹腔鏡下手術を越えるのか?

著者: 近藤恒徳

ページ範囲:P.22 - P.31

▶ポイント

・上部尿路上皮癌に対する腎尿管全摘除術では,ランダム化比較試験によりT3以上の局所進行がんでは腹腔鏡手術のがん制御が劣ることから,『泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン2020年版』では推奨されていない.

・しかし,腹腔鏡手術に慣れた術者による局所進行がんに対する手術では開腹手術と手術成績に大きな差がないことから,症例を選んで行うことが推奨されている.

・ロボット手術によりリンパ節郭清,膀胱カフ切除の体腔鏡下で開腹手術を同様のがん制御で行える可能性があり,今後エビデンスの蓄積によりガイドラインの推奨が変わってくる可能性が期待される.

ドナー腎摘除術―単孔式手術や細径鉗子使用手術

著者: 萩生田純 ,   中川健

ページ範囲:P.32 - P.36

▶ポイント

・単孔式ドナー腎採取術は摘出創を傍腹直筋や臍部に置き,単一創もしくは細径ポートを1本追加して行われていることが多く,施設によりアプローチや使用器具はさまざまである.

・単孔式や細径鉗子使用手術は従来の腹腔鏡手術に劣らず,整容性や疼痛の点で優れると考えられるが,優位性に関するエビデンスに乏しく熟練した術者によって行うことが弱く推奨された.

腎盂形成術―ロボット支援手術に関して

著者: 水野健太郎 ,   西尾英紀 ,   安井孝周 ,   林祐太郎

ページ範囲:P.38 - P.43

▶ポイント

・本邦では保険収載後,ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術の手術件数が増加している.

・『2023年版技術認定取得者のための内視鏡外科診療ガイドライン』1)では,「腎盂尿管移行部通過障害の患者に対してロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術を行うことを弱く推奨する〔推奨度の強さ : 弱い推奨,エビデンスの確実性 : C(弱い)〕.」という推奨文が決定された.

・患者背景,術式,治療成功の定義の違いなど,文献によるばらつきを十分に考慮し,結果を解釈する必要がある.

膀胱全摘除術―腹腔鏡下手術およびロボット支援手術,腸管を用いた尿路変向の体腔内手術,clinical T3の局所進行膀胱癌に対する腹腔鏡手術(LRC)/ロボット支援腹腔鏡手術(RARC)に関して

著者: 山口徳也 ,   森實修一 ,   武中篤

ページ範囲:P.44 - P.51

▶ポイント

・2012年に腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC),2018年にロボット支援膀胱全摘除術(RARC)が本邦においても保険収載され,膀胱全摘除術の標準術式となりつつある.

・Hybrid尿路変向法は体腔外尿路変向法(ECUD),体腔内尿路変向法(ICUD)の利点を生かしつつ,再建した尿路の後腹膜化手技の点でも有効な可能性がある.

・局所進行膀胱癌に対するLRC, RARCの有用性を検討した報告は限られており,施設や術者の経験,個々の症例に応じて,慎重に適用や方針を検討すべきである.

*本論文中,[▶動画]マークのあるものにつきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年12月末まで公開).

前立腺全摘除術―機能温存を最大化するための術式

著者: 秦淳也 ,   星誠二 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.52 - P.57

▶ポイント

・腹腔鏡下/ロボット支援前立腺全摘除術における合併症には尿失禁と勃起機能障害がある.

・腹腔鏡下/ロボット支援前立腺全摘除術における尿失禁防止術は,骨盤内構造の温存,再建,補強の3つの術式に分類される.

・腹腔鏡下/ロボット支援前立腺全摘除術における勃起機能および尿禁制温存に対して,神経温存手術の有用性が示されているが,適応は考慮する必要がある.

腹腔鏡下仙骨腟固定術―腟式手術との比較およびロボット支援手術との比較

著者: 持田淳一

ページ範囲:P.58 - P.62

▶ポイント

・骨盤臓器脱(POP)の外科的治療法の1つである腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)の位置づけを確認する.

・POPは高齢者に多い良性の機能性疾患であるため,術式の利点や欠点を考慮し,患者ニーズにフィットした治療選択が重要である.

膀胱尿管逆流手術―腹腔鏡下膀胱内手術に関して

著者: 上仁数義 ,   小林憲市 ,   河内明宏

ページ範囲:P.64 - P.69

▶ポイント

・腹腔鏡下膀胱内手術は,膀胱内アプローチによる尿管膀胱新吻合術(UCN)で,膀胱尿管逆流(VUR)と巨大尿管が適応疾患である.

・術後逆流消失率は開放UCNと同等で,特徴的な合併症としてポート関連トラブル5%,open conversion 3.9%であった.術後在院は3.41日であった.

・膀胱尿管逆流に対して腹腔鏡下膀胱内手術を弱く推奨する.

腹腔鏡下尿膜管切除術

著者: 矢西正明 ,   木下秀文

ページ範囲:P.70 - P.75

▶ポイント

・良性尿膜管疾患に対して腹腔鏡下尿膜管切除術(LapUR)を行うことを弱く推奨する.

・良性尿膜管疾患に対して単孔式腹腔鏡下手術(LESS)またはreduced port surgery(RPS)による尿膜管切除術を行うことを弱く推奨する.

・比較的まれな疾患であることから,LapURは単施設での後ろ向き観察研究がほとんどでエビデンスレベルが低くなっているため,本邦において多施設での前向き試験での検証が望まれる.

*本論文中,[▶動画]マークのあるものにつきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月末まで公開).

企画にあたって

泌尿器腹腔鏡手術ガイドラインを紐解く―EBMに基づいた手術選択 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.5 - P.5

 月日の流れおよび医学の進歩は非常に速いものです.泌尿器科領域では2012年に前立腺癌でロボット手術が保険適用になってから,腎部分切除および膀胱全摘が2018年までに保険収載されています.2020年には腎盂形成および仙骨腟固定術,2022年には腎盂尿管全摘,腎摘および副腎摘除までロボット手術の適応が拡がっています.日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会では2020年に泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン2020年版を発刊しました.このガイドラインは,腹腔鏡とロボット手術をまとめてガイドライン化したものです.時代は「腹腔鏡が常識」から「ロボット支援手術が常識」に変化してきています.

 今回,日本内視鏡外科学会の「技術認定取得者のための内視鏡外科診療ガイドライン」改訂に伴い,泌尿器科領域も改訂を行っています.泌尿器科領域は,すでに2020年に腹腔鏡とロボット手術を中心に改訂を行っているため,ロボット手術におけるより臨床に沿った疑問に答える形式となっています.つまり現状ではロボット手術は通常で行われている中で,ステージの高いものなどでのエビデンスを検討し,推奨グレードを決定しています.

症例

大腸癌術後の精索転移

著者: 生駒弘明 ,   阪野里花 ,   小林隆宏 ,   坂倉毅 ,   河野奨 ,   安井孝周

ページ範囲:P.77 - P.80

 81歳男性.3年前にS状結腸癌とその肝転移に対し,S状結腸切除術・肝部分切除術を施行し,術後経過観察中であった.3か月前からの左無痛性陰囊腫大にて当科受診,左精索に硬い腫瘤を触知した.CEA,CA19-9は軽度上昇していた.精索腫瘍を疑い,左高位精巣摘除術を施行した.病理組織学的所見は中分化管状腺癌で,S状結腸癌の転移と診断した.術後2か月で新たに肝転移が指摘され,術後4か月で他因死した.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.3 - P.3

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.85 - P.85

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.86 - P.86

 新年明けましておめでとうございます.昨年の10月に行われました第61回日本癌治療学会総会を成功裡に終えることができました.大会長として厚く御礼申し上げます.

 第61回の学術集会のテーマは,「がん診療,一気通貫―力を合わせて,相乗効果―」でした.近年のがん診療の発展は目覚ましいものがあります.新規治療薬の開発,ロボット支援腹腔鏡下手術に代表される手術療法の進歩,革新的な診断方法の開発,ゲノム医療に代表される個別化治療など枚挙に暇がありません.これらすべてを先導しているのが泌尿器科ではないでしょうか.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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