icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科78巻11号

2024年10月発行

雑誌目次

特集 そうだったのか腎移植―泌尿器科ジェネラリストを目指そう! 企画にあたって

そうだったのか腎移植―泌尿器科ジェネラリストを目指そう! フリーアクセス

著者: 篠田和伸

ページ範囲:P.815 - P.815

 近年泌尿器科学におけるサブスペシャリティ分野の発展はめざましいものがあります.その分野を専門とする医師にとっては,診療を実践すればするほど知識が深まり,興味がより深まっていくという好循環が生まれますが,専門としない医師にとっては,より複雑化するサブスペシャリティ分野は,とっつきにくいものになっているのではないでしょうか.

 20数年前,入局する診療科を選ぶ際,開腹手術から腹腔鏡,内視鏡,血管手術という多様な術式があり,全身管理ができ,それでいて内科学的な知識も習得でき,マイナー外科ではあるがジェネラリストを目指せるという奥深い泌尿器科の魅力に惹かれて入局を決意したのを想い出します.腎移植医療には,ジェネラリストを目指す医師にとって重要なエッセンスが数多と散りばめられています.ロボット腹腔鏡全盛時代において,それでも泌尿器科にとっては依然として必須の技術である泌尿器科開放手術に必要なあらゆる手技を学べる大変貴重な機会を与えてくれます.

〈基礎編〉

腎移植におけるSDGs① 変わりつつある日本の腎代替療法

著者: 高上紀之 ,   酒井謙

ページ範囲:P.816 - P.820

▶ポイント

・日本の腎代替療法は血液透析がほとんどを占め,腹膜透析・腎移植が少ない.

・厚生労働省は診療報酬改定を重ね,腹膜透析・腎移植を増加させる方針をとっている.

・生体腎移植が多くを占める日本において,今後のさらなる腎移植数増加のためには臓器提供数の増加が必要である.

腎移植におけるSDGs② 理想的なチーム医療とは

著者: 谷澤雅彦 ,   櫻井裕子 ,   田中真純

ページ範囲:P.822 - P.825

▶ポイント

・腎移植医療は医師以外の多職種の役割が非常に多い.

・腎移植はチーム医療によって遂行できる医療である.

・腎移植のSDGsを満たしていくためには,移植外科医・内科医だけでは難しく,他職種を含めたチーム医療で取り組まないと達成できない.

よくわかる移植免疫学―拒絶反応発症のメカニズム

著者: 堀田記世彦 ,   岩原直也 ,   広瀬貴行

ページ範囲:P.826 - P.832

▶ポイント

・T細胞関連型拒絶は免疫抑制薬の発達により,予後良好となった.

・急性抗体関連型拒絶反応は術前から存在するドナー特異的抗体によって引き起こされ,急激に腎機能が悪化し,時に移植腎廃絶となる.

・慢性抗体関連型拒絶反応は術後新規に発生したドナー特異的抗体によって引き起こされ,緩徐に移植腎機能障害を来す.有効な治療はなく,移植後晩期の腎機能廃絶の原因として最も多い.

よくわかる免疫抑制薬

著者: 齋藤満

ページ範囲:P.834 - P.840

▶ポイント

・各免疫抑制薬の特徴や特有な副作用を把握し,患者の背景や全身状態にあわせた投与調整,用量調整を行う.

・治療薬物モニタリング(TDM)が必要な薬剤では,適切な時期に実施することで十分な治療効果および安全性の確保につながる.

〈実践編〉

腎移植の術前検査と適応判断

著者: 井上高光

ページ範囲:P.842 - P.850

▶ポイント

・レシピエントに全身麻酔が安全にかけられ手術できるか,やや過剰になる術後輸液に心臓が耐えうるか,通常の免疫抑制法で拒絶を防げるか,をまずは短期的に評価する.

・相対条件として,活動性の感染症や悪性腫瘍の有無,年齢,顕著な合併症の有無,原疾患,免疫学的リスク,糖尿病,血管の石灰化,尿路,精神的不安定性の評価を行う.

・生体腎移植の場合,ドナーの心身の健康,とりわけ腎機能が腎提供後に生涯担保できるかが,生体ドナーの適応を決める重要なポイントである.

各腎移植における免疫抑制療法の違いについて―標準プロトコールから脱感作療法まで

著者: 田﨑正行

ページ範囲:P.852 - P.859

▶ポイント

・腎移植における免疫抑制療法のプロトコールはさまざま検討されているが,カルシニューリン阻害薬,ミコフェノール酸モフェチル,ステロイドによる維持免疫抑制療法を凌駕するレジメンは今のところ存在しない.重要なことは,患者の状態により最適な薬剤を選択することである.

・ABO不適合腎移植における脱感作療法で重要なことは,移植前に抗血液型抗体を十分に除去し,かつ腎移植後の抗血液型抗体産生をあらかじめ抑制しておくことである.

・ドナー特異的抗体陽性腎移植において,リツキシマブ,免疫グロブリン大量静注療法(IVIG),抗体除去療法が使用可能である.そのプロトコールは,いまだ確立しておらず今後のデータの蓄積が重要である.

腎移植の標準術式と血管吻合のバリエーション

著者: 岩見大基

ページ範囲:P.860 - P.865

▶ポイント

・腎移植手術は,血管吻合,尿路吻合,骨盤内手術操作といった泌尿器外科医にとって重要な一連の手技が含まれる手術で,若手医師にとって良いトレーニングとなる.

・血管の取り扱いおよび吻合にはnon-touch techniqueや,良好な視野確保,適切な運針とほどよい張力の結紮が重要である.

・腎移植の移植部位や血管の吻合部位は慎重に行われるべきで,画像評価と綿密な準備が鍵となる.

腎移植後合併症におけるトラブルシューティング

著者: 原田浩

ページ範囲:P.866 - P.873

▶ポイント

・まず,腎移植後の正常の経過を普段から知っておく.

・異常と判断したら,できる限りの診断ツールを駆使して何が起きているかを知ることが必要である.

・原因として拒絶反応や薬剤性が否定され,血管系や尿路系あるいはそれ以外の外科的合併症であれば,エンドウロロジー,開放手術を含めた修復手術を行う.

腎移植の周術期管理

著者: 山田保俊 ,   見附明彦 ,   榎田英樹

ページ範囲:P.874 - P.877

▶ポイント

・移植直後は収縮期血圧140〜160mmHgを目標に管理する.

・点滴量は尿量に対応した量(おっかけ)で対応することが基本である.

・移植専門施設と一般泌尿器病棟を比べると,スタッフの対応力に差があることを考慮したクリニカルパスを作成する.

腎移植後拒絶反応―診断と治療

著者: 土本晃裕

ページ範囲:P.878 - P.887

▶ポイント

・腎移植の拒絶反応は,Banff分類による腎組織診断に準拠してT細胞関連型拒絶と抗体関連型拒絶に分類される.

・免疫抑制治療の進歩により,急性拒絶は減少しているが,症候性の抗体関連型拒絶,慢性活動性T細胞型拒絶はいまだに治療抵抗性かつ予後不良である.

・服薬遵守などの予防治療に加え,早期の診断と治療介入が重要である.

よくわかる移植後感染症

著者: 西田隼人 ,   土谷順彦

ページ範囲:P.888 - P.895

▶ポイント

・腎移植後の代表的日和見感染症として,サイトメガロウイルス感染症,EBウイルスによる移植後リンパ増殖性疾患,ニューモシスチス肺炎,BKウイルス腎症などがある.

・腎移植後の感染症への対策として,移植前のドナーとレシピエントの感染症に関する術前評価が重要である.

・腎移植患者においてワクチン接種は推奨されているが,腎移植後に生ワクチンを接種することはできない.

腎移植後維持期外来診療における診療のポイント

著者: 石川里紗 ,   長浜正彦

ページ範囲:P.896 - P.901

▶ポイント

・腎移植患者は必ず3剤の免疫抑制薬を服用しており,他剤との相互作用や易感染性に注意する.

・移植後3〜6か月間は感染予防薬を服用しているため,その使用状況を確認する.

・移植腎は右(左)下腹部に位置し,腸骨内・外動脈および静脈に吻合しているため,大腿部からの中心静脈挿入や心臓カテーテル検査の際には配慮する.

・移植腎の尿管は短く逆流しやすいため,尿路感染症が起こりやすい.

・片腎かつカルシニューリン阻害薬(CNI)を服用しているため,腎機能が血行動態の影響を受けやすい.

・元は腎不全患者(透析患者)であり,動脈硬化のハイリスク集団である.

症例

術前CTで診断困難であった腎マトリックス結石

著者: 川畑遼 ,   福田哲央 ,   田尻下紘直 ,   松崎純一

ページ範囲:P.903 - P.907

 症例は63歳女性.左腎結石に伴う急性複雑性腎盂腎炎で,前医にて6Frの左尿管ステントを留置加療後,当院紹介となった.腹部CTで13×10mmの左腎結石を認めた.経尿道的尿管砕石術(TUL)で既知の結石のほかに白色の軟らかい結石を認め,肉眼的所見からマトリックス結石と診断した.TULではマトリックス結石の除去は困難であった.マトリックス結石に対して内視鏡併用腎内手術(ECIRS)を施行した.ECIRS後1か月の腹部CTで残石や水腎症は認めなかった.腹部CTでマトリックス結石の存在が診断困難であった1例を報告する.

--------------------

目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.813 - P.813

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.911 - P.911

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.912 - P.912

 歴史の教科書には肖像画が数多く掲載されていますが,他の肖像画とは一線を画す肖像画があります.機会があればぜひご覧いただきたい,私の一推しは「伝源頼朝像」です.

 コロナ禍の2020年8月に初めて京都国立博物館で目にした時の感動は未だに忘れることはできません.とにかく大きい.装束は幾何学的なデザインで,太刀を差して笏も描かれていますが,限界まで削ぎ落とされたシンプルな構成になっています.肖像画は富と栄華を強調するため,装飾的なのが普通ですから,方向性が全く逆です.三英傑の肖像画を思い浮かべても,人物の性格は表現できているのでしょうが,芸術性を考えると,「伝源頼朝像」には及びません.むしろ「伝源頼朝像」は個性を表現しないようにして深い精神性を表現しているように感じました.この点においても方向性が逆です.鎌倉時代の肖像画が特殊なのか,それとも作者が特殊なのか,疑問が湧き上がりました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら