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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科78巻13号

2024年12月発行

雑誌目次

特集 知ってますか? ED診療の最前線

企画にあたって

知ってますか? ED診療の最前線 フリーアクセス

著者: 福原慎一郎

ページ範囲:P.1009 - P.1009

 EDに対する治療薬として非常に有効であるPDE5阻害薬の承認後20数年を経過し,医療をとりまく環境は一変している.ED診療ガイドラインについては2008年に第1版が発刊後,最新版として第3版が2018年に発刊されて現在ED診療の手引きとして用いられているが,発刊後はや6年が経過し,EDにかかわる事象も変化をしてきている.

 この20数年,PDE5阻害薬がゴールデンスタンダードであることには変化がなく,残念ながら効果や利便性の面で,PDE5阻害薬を凌駕するものは世に出てきていない.それだけED診療においてPDE5阻害薬が優れた薬剤であることでもあるが,それゆえに,まずはPDE5阻害薬による治療を行うことが一般的になり,裏に隠された病態を探るための検査がおろそかになったり,PDE5阻害薬が効かない場合にとたんに何もできなくなってしまうといったことが一般日常診療ではよくある場面になってきているかと思われる.

〈EDの病態,検査〉

EDの疫学とリスクファクター

著者: 水野隆一 ,   菊地栄次

ページ範囲:P.1010 - P.1014

▶ポイント

・EDの疫学は結果が異なるところがあるが,加齢は共通のリスクファクターであり,日本では有病率が高い.

・EDのリスク因子としてさまざまな因子が明らかにされている.

・EDの発症には血管や神経の障害が関与し,生活習慣改善や治療法の進歩が予防や治療に寄与しているため,最新情報の把握が重要である.

EDの臨床検査について

著者: 小林皇

ページ範囲:P.1016 - P.1020

▶ポイント

・EDの初期検査は,リスクファクターを考慮した一般採血と症状を把握する質問紙を使用した評価を行う.

・夜間睡眠時勃起を測定しEDの分類の鑑別を行う.簡便な方法としてエレクトメーター法がある.

・プロスタグランジンE1海綿体注射は血管系の評価として本邦で承認されている.

EDの労災認定などに必要な検査について

著者: 坂元史稔 ,   小谷俊一

ページ範囲:P.1022 - P.1026

▶ポイント

・EDの労災認定などには,リジスキャンによる夜間陰茎勃起現象(NPT)検査,神経学的検査,プロスタグランジンE1(PGE1)試験のすべてが必要である.

・リジスキャンによるNPT検査は実施可能施設がきわめて少ないが,生理的勃起を測定評価できる有用な手段である.

・PGE1試験は非生理的ではあるが,性的興奮や陰部神経の支配によらず海綿体血管系の評価に有用である.

〈EDの治療〉

ロボット支援神経温存前立腺全摘除術

著者: 本田正史 ,   森實修一 ,   武中篤

ページ範囲:P.1028 - P.1035

▶ポイント

・手術支援ロボットが導入されて以降,前立腺癌に対する手術手技は大きな変化を遂げている.

・ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)では悪性度,占拠部位,術前勃起機能に応じて神経温存術式の選択が可能である.

・神経温存RARPは,開放手術と比較して術後勃起機能および尿禁制の有意な改善が報告されている.

骨盤内手術後の陰茎リハビリテーション

著者: 小川総一郎 ,   丹治亮 ,   佐藤雄一

ページ範囲:P.1036 - P.1040

▶ポイント

・骨盤内手術,特に前立腺全摘除術や膀胱全摘除術,直腸癌手術などは,EDを引き起こすことが報告されている.その機序には神経損傷や血流不全,平滑筋のアポトーシスなどが関与する.

・前立腺全摘除術後のEDに対しては,PDE5阻害薬や陰圧式勃起補助具,PGE1海綿体注射を用いた陰茎リハビリテーションが効果的であるとされており,早期介入の重要性が指摘されている.

・PDE5阻害薬の投与量や使用方法,陰圧式勃起補助具の効果,PGE1海綿体注射の長期的な効果についてはさらなる研究が必要とされているが,現状の治療法ではED改善の可能性が示されている.

PDE5阻害薬による治療

著者: 千葉公嗣 ,   三宅秀明

ページ範囲:P.1042 - P.1047

▶ポイント

・PDE5阻害薬はEDの治療において中心的な柱となっている.

・EDの治療としてまず最初に検討されることが多いが,一部の症例では投与に注意を要する.

・EDが原因の男性不妊症症例に対しては,投与期間と施設の限定はあるが保険処方が可能である.

PDE5阻害薬以外の内科的治療(サプリメント・テストステロン補充・漢方薬など)による治療

著者: 天野俊康

ページ範囲:P.1048 - P.1053

▶ポイント

・PDE5阻害薬以外のEDに対する内科的治療として,シトルリンなどのサプリメントの有効性の報告が散見される.

・低テストステロンのあるEDに対しては補充療法が勧められるが,勃起に対するテストステロンの直接的な作用や有効性など,さらなる検討が必要である.

・EDの保険適応を有する漢方薬はあるが,作用メカニズム,臨床効果など,さらなるエビデンスの蓄積が求められる.

陰圧式勃起補助具による治療

著者: 竹澤健太郎 ,   上田倫央 ,   野々村祝夫

ページ範囲:P.1054 - P.1057

▶ポイント

・陰圧式勃起補助具はPDE5阻害薬無効の勃起障害に対する第一選択療法である.

・長らく使用可能なデバイスが入手できない状況が続いたが最近新しいデバイスが医療機器承認を取得し使用可能となった.

・治療成功の鍵は絞扼リングが握っている.

PGE1陰茎海綿体注射の位置づけ―これまでとこれから

著者: 大平伸 ,   原綾英 ,   永井敦

ページ範囲:P.1058 - P.1063

▶ポイント

・ED診療ガイドラインにおいてEDに対する第二選択治療としてプロスタグランジンE1(PGE1)陰茎海面体注射が記載されており,日本性機能学会主導の多施設共同研究においてPGE1陰茎海綿体自己注射の長期的な有効性と安全性が示されている.

・日本におけるPGE1陰茎海綿体注射の位置づけとして,現時点では診断の目的に限った使用が保険適応を有しており,治療目的での承認は得られていないのが実状である.

・PGE1陰茎海綿体注射は,EDに悩むカップルのおおいなる福音となることに加え,日本における社会問題の1つである少子高齢化対策に一定の役割を担う可能性が期待できる.

低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)によるED治療

著者: 白井雅人 ,   辻村晃

ページ範囲:P.1064 - P.1068

▶ポイント

・低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)は,衝撃波を使用して血管新生を促進し,特に血管性EDに有効であることが示されている.

・ED治療として,ED1000とRENOVAを比較した研究では,どちらのリソトリプターも効果があり,RENOVAは治療回数が少ないにもかかわらず高い患者満足度を示した.

・Li-ESWTは副作用が少なく,将来的にEDの新たな標準治療法としての可能性がある.

陰茎プロステーシス移植による治療について

著者: 三井要造 ,   永尾光一 ,   小林秀行

ページ範囲:P.1070 - P.1077

▶ポイント

・陰茎プロステーシス移植術はEDに対する重要な治療選択肢の1つであり,ほかのED治療が無効か適応外の場合に検討される.

・外科的知識・手技の向上やデバイス技術の発展により,陰茎プロステーシスの治療効果と安全性は向上している.

・現在,本邦では認可製品が正式輸入できない状況であり,世界水準のED治療を実践するためにも再認可が望まれる.

虚血性勃起障害に対する血行再建手術

著者: 川西泰夫 ,   三宅毅志

ページ範囲:P.1078 - P.1083

▶ポイント

・若い患者では下腹壁動脈を用いた陰茎血行再建手術によって70〜90%の患者に良好な長期成績が得られる.

・血管合併症のない若い患者は経皮血管形成術による治癒が期待できる.

・虚血性勃起障害の患者の半数が初診時にすでに虚血性海綿体機能障害を合併している.虚血性海綿体機能障害は可逆的である可能性がある.

学会印象記

「第31回日本排尿機能学会」印象記

著者: 林祐太郎

ページ範囲:P.1084 - P.1085

第31回日本排尿機能学会が,福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座教授,小島祥敬会長のもと,2024年9月5日〜7日に,郡山市ビッグパレットふくしまで開催されました.

 福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座は,白岩康夫先生が第1回日本神経因性膀胱学会,故山口脩先生が第14回日本排尿機能学会の会長をされており,今回が3回目の主催ということで,教室の排尿機能の研究・臨床における伝統が脈々と伝承されていることが示され,大変意義深い学会でした.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1007 - P.1007

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1089 - P.1089

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.1090 - P.1090

 早いもので今年も残すところあと1か月となりました.師走を彩る年末恒例の一大イベントのひとつに「今年の漢字」があります.「今年の漢字」は,公益財団法人日本漢字能力検定協会が主催する,その年の世相を表す漢字一文字を選ぶイベントで,奇しくも私が泌尿器科医になった1995年に開始されました.その年をイメージする漢字一文字の公募を行い,最も応募数の多かったものを「今年の漢字」として清水寺で発表することになっています.毎年12月12日に発表されますので,本号が皆様のお手元に届く頃かと思います.清水寺の奥の院舞台にて,清水寺の森清範貫主による揮毫により発表され,本堂での一般公開を経て,本尊の千手観世音菩薩に奉納されるとのことです.

 さて先日,第31回日本排尿機能学会を主催させていただきましたが,学会テーマを東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故が発生した2011年の「今年の漢字」である「絆」としました.清水寺の森貫主に福島復興の想いを手紙にしたため,学会でのご講演と,ポスター用に「絆」の揮毫をダメ元でお願いしたところ,二つ返事でご快諾いただきました.加えて森貫主のご厚意で,学会の当日に会場で「絆」の文字をリアルタイムに揮毫いただけることになりました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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