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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科78巻3号

2024年03月発行

雑誌目次

特集 今こそ考えよう! 尿路結石の再発予防

メタボリック症候群の生活・食事指導は尿路結石の再発予防に有用か?―食事指導,生活指導を再考する

著者: 出口龍良 ,   山下真平 ,   原勲

ページ範囲:P.170 - P.175

▶ポイント

・尿路結石症はメタボリック症候群の一疾患である.

・メタボリック症候群に対する予防法は,尿路結石の再発予防のための生活・食事指導と共通点が多い.

・メタボリック症候群との関連が深い尿路結石症の再発予防には,①飲水指導,②栄養食事指導,③身体活動の促進の3つが重要である.

夜間頻尿も踏まえた適切な飲水の仕方は?

著者: 阿波裕輔 ,   野積和義 ,   野積邦義

ページ範囲:P.176 - P.181

▶ポイント

・飲水指導は,尿路結石症患者には飲水負荷,夜間頻尿患者には飲水制限となる.

・過度の飲水負荷による血液粘稠度の変化は日内変動の範囲内であり,排尿回数を増やすのみで,夜間頻尿患者に対しては推奨されない.

・夜間頻尿を有する尿路結石症患者への飲水指導は,日中の間に可能な範囲で飲水を多くしてもらい,夕方以降は飲水を制限する.

薬剤・サプリメントによる予防は?

著者: 森田展代 ,   宮澤克人

ページ範囲:P.182 - P.187

▶ポイント

・高リスク患者に対する薬物療法は,再発予防としてきわめて重要な治療である.

・シュウ酸カルシウム結石の再発予防薬として保険適用があるのはマグネシウム製剤のみである.

・治療選択や治療効果判定には,定期的な検尿や尿化学検査が重要である.

24時間蓄尿は必要か.随時尿じゃだめなの?

著者: 杉野輝明

ページ範囲:P.188 - P.192

▶ポイント

・尿路結石症の増加傾向と再発リスクの高さに対処するため,尿路結石患者には24時間蓄尿検査を含む包括的な評価が必要である.

・24時間蓄尿検査は尿路結石の原因特定,再発リスク評価,食事指導,薬物治療に重要で,結石の増大や再発率の改善に寄与する.

・随時尿では24時間尿の代替にはならず,尿路結石の診断と管理において24時間蓄尿検査は不可欠であり,医師と患者の協力が重要である.

再発を減らすために外科的治療でこころがけることは?

著者: 岡田真介 ,   井上貴昭 ,   濵本周造

ページ範囲:P.194 - P.199

▶ポイント

・外科的手術で治療対象となる結石と同側の上部尿路に存在する結石すべてを一期的に除去することを目指す.

・臨床経過と画像検査所見から手術環境を予測し,できるだけよい手術環境で行えるよう準備する.

・合併症なく完全結石除去を達成するために手術手技と知識の習得は必須である.

無症候の対側腎結石に対する治療は?

著者: 芳生旭辰

ページ範囲:P.200 - P.205

▶ポイント

・無症候性腎結石に対し積極的治療をすることにより,将来における結石関連事象の発生を予防する.

・どのようなタイミングで,どのような術式で対側腎結石を治療するべきか考慮する.

・上部尿路結石に対する一期的な両側同時治療は,その効果や安全性,合併症などを理解して治療戦略をたてる.

ツリウムレーザーは結石の再発を減らすか?

著者: 志賀直樹

ページ範囲:P.206 - P.213

▶ポイント

・結石の手術が再発の原因になるといわれるが,理由の1つに微小破砕片の残存が考えられる.

・ツリウムを用いたレーザーではホルミウムと比べて低パルスエネルギー・高パルス周波数・長パルス幅が可能となり,より細かいdustができる.

・灌流でdustを効率よく排出できれば再発を減らすことが期待できるが,熱損傷(サーマルインジャリー)には厳重な注意が必要である.

感染結石への対処は?

著者: 高沢亮治

ページ範囲:P.214 - P.217

▶ポイント

・結石患者の高齢化によって,一次性・二次性の感染結石の比率が増える可能性がある.

・感染結石は周術期の感染性合併症のリスクが高いだけでなく,再発リスクも高い.

・再発予防の基本は,結石の完全除去と抗菌薬治療だが,慢性的な感染尿の除菌は難しい.

・積極的にメチオニンを摂取して尿pHを下げることで再発予防効果が期待される.

尿管ステント閉塞をどう防ぐ?

著者: 松崎純一 ,   川畑遼 ,   田尻下紘直

ページ範囲:P.218 - P.223

▶ポイント

・尿管ステントの閉塞予防には,留置期間を短縮するのが有効であり,留置しない選択肢も検討する.またforgotten stentにならないように患者側にインフォームド・コンセントが重要である.

・石灰化が少ない尿管ステントの材料はシリコンである.

・側孔の有無による石灰化の頻度は不明であり,側孔ありのステントで閉塞した場合には,側孔なしを使用するのも選択肢と思われる.

腸内細菌叢と尿路結石の関係は?―尿路結石形成に影響する腸内シュウ酸分解菌と同菌が有するシュウ酸輸送体の構造と機能

著者: 山下敦子

ページ範囲:P.224 - P.230

▶ポイント

・生体内でのシュウ酸代謝・排出には,腸内細菌であるシュウ酸分解菌が寄与している.

・シュウ酸分解菌による代謝分解により,尿路系でのシュウ酸排出量を軽減し,尿路結石形成のリスクを軽減できる可能性がある.

・シュウ酸分解菌の生育に重要なシュウ酸輸送体の機能も含めた菌生態の理解が,シュウ酸分解効率の向上と医療応用につながる.

企画にあたって

今こそ考えよう! 尿路結石の再発予防 フリーアクセス

著者: 納谷幸男

ページ範囲:P.169 - P.169

 2015年の疫学調査でわが国の上部尿路結石症患者は人口10万あたり138人と,1995年と比較し約1.6倍増加し,結石症手術件数,また外来患者数も増加しました.患者の増加は外来を圧迫するため,stone-freeとなったら,外来も終了となるでしょう.しかし,それでよいのでしょうか? 手術を必要とする結石患者は再発しやすいことを考えると,手術の際には狭窄など起こさない,再発しづらい手術を行う必要があります.また無症状の結石も将来の疼痛発作を防ぐために治療すべきでしょうか?

 ガイドラインでは再発リスクの評価に24時間蓄尿が必須とされていますが,実際には24時間蓄尿検査は普及しているとは言えません.24時間蓄尿検査は随時尿検査で代用できないのでしょうか?

書評

レジデントのための腹部エコーの鉄則[Web動画付]―亀田徹 編 フリーアクセス

著者: 矢吹拓

ページ範囲:P.232 - P.232

 現代医療において,エコーの果たす役割は年々大きくなっています.Point-of-Care Ultrasound(POCUS)などのベッドサイドエコースキルが体系化され,スマホに接続できるような小型軽量化したポケットエコーも開発され,技術革新は日進月歩です.一人一台エコーの時代も夢ではなく,医療機関によっては実現しているところもあると聞きます.ベッドサイドで手軽に検査ができ,低侵襲であることも大きな魅力で,これからますます重要性が増していくと思います.一方で,術者の技量によって検査を通して得られる情報が大きく異なるのが課題の一つです.自ら行った検査ではわからなかった所見が,上級医や検査技師によって指摘されることも少なくないでしょう.エコー技術の習熟や標準化がこれからの重要な課題です.

 『レジデントのための腹部エコーの鉄則』は,これからの腹部エコー学習の新たなバイブルとなる一冊です.この書籍の特徴は何といっても,経験豊かなスペシャリストによる「鉄則」です.エコー技術のclinical pearlともいえるこの鉄則一覧が本書の冒頭にまとめられています.

患者の意思決定にどう関わるか?―ロジックの統合と実践のための技法―尾藤誠司 著 フリーアクセス

著者: 秋山美紀

ページ範囲:P.233 - P.233

 「膵臓のがんが,肝臓のあちこちに転移してます」.今年7月,都内のがん専門病院で,母が宣告を受けた.説明を聞いた母の口から最初に出てきた言葉は,「先生,今年パスポートを10年更新したばかりなんですけど……」だった.説明した医師も,隣にいた私も意表を突かれ,しばしの沈黙となった.

 著者の尾藤誠司氏は,ロック魂を持った総合診療医であり,臨床現場の疑問に挑戦し続けるソリッドな研究者でもある.諸科学横断的な視座から探求し続けてきた研究テーマは,臨床における意思決定(注:医師決定ではなく意思決定)である.尾藤氏は約15年前に『医師アタマ―医師と患者はなぜすれ違うのか?』(医学書院,2007)を出版し,誤ったエビデンス至上主義がはびこりつつあった医学界へ一石を投じた.その数年後には一般向けに『「医師アタマ」との付き合い方―患者と医者はわかりあえるか』(中公新書クラレ,2010)という新書を出した.帯に「医師の取扱説明書」とあるとおり,患者・市民が医師の思考パターンを理解し,良好な関係を築けるような知恵が詰まったわかりやすい書籍だった.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.167 - P.167

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.238 - P.239

次々号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.240 - P.240

編集後記 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.242 - P.242

 新年早々,能登半島地震が発生しました.被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます.

 昨年の12月に,医局員と東京電力福島第一原子力発電所の視察に行ってきました.放射線量も震災当時に比べればかなり低下し,冷温停止状態になった1号機〜4号機から80mの至近距離まで防護服なしで近づくことが可能でした.世界に前例のない廃炉作業に従事している作業員の方々の懸命なご努力に胸が打たれました.その一方で,震災から13年が経ってなお瓦礫が残る1号機を目の当たりにし,爆発時の映像が蘇り感傷的な気分になりました.そして改めて震災の悲惨さを感じるとともに,福島県に対する風評被害の対策に向き合っていかなければならないと決意を新たにしました.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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