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雑誌目次

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臨床泌尿器科78巻5号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 人生100年時代の老年泌尿器科診療 企画にあたって

人生100年時代の老年泌尿器科診療 フリーアクセス

著者: 小島祥敬

ページ範囲:P.247 - P.247

 わが国は超高齢社会を迎え,泌尿器科診療において高齢者を対象とすることが多くなりました.高齢者の泌尿器科疾患に対する診療は,中高年者とは若干異なります.そこで本号では「人生100年時代の老年泌尿器科診療」と題して特集を組ませていただきました.

 総論ではまず中村先生から,高齢者がん診療ガイドラインについて概説いただきました.高齢者のがん診療においては主観的なアウトカムが必要であること,そしてより多職種によるチーム医療が重要であることを述べていただいております.一方,橘田先生からは過活動膀胱診療ガイドラインについて,高齢者治療に絞ってご執筆いただきました.高齢者特有のフレイルの問題,特に身体機能や認知機能の低下に対して気をつけるべきことを述べていただきました.

〈総論―診療ガイドライン〉

高齢者がん診療ガイドラインの概説

著者: 中村真樹 ,   久米春喜

ページ範囲:P.248 - P.252

▶ポイント

・高齢者のがん診療におけるエビデンスはまだまだ少なく,特に脆弱な高齢がん患者に対するガイドラインは皆無である.

・高齢がん患者では生存期間の延長などの客観的アウトカムに加えて主観的なアウトカム評価の重要性が大きくなる.

・高齢がん患者の診療にあたって高齢者機能評価(GA/CGA)が重要であり,多職種チームで診療にあたることが望ましい.

過活動膀胱診療ガイドライン

著者: 橘田岳也 ,   和田直樹 ,   柿崎秀宏

ページ範囲:P.254 - P.261

▶ポイント

・高齢者に対して過活動膀胱の治療を安全かつ効果的に行い,QOLを改善することができる.

・高齢者の過活動膀胱治療では,身体機能,認知機能といった生体機能の差異を十分に認識して,個々の患者に合わせた治療選択を行うことが重要である.

・身体機能が衰えている高齢者,抗コリン作用負荷の大きい患者,明らかな認知症高齢者においては,抗コリン薬の投与の際には慎重な対応が必要である.

〈疫学〉

高齢者泌尿器がんの疫学

著者: 大日方大亮 ,   狩野光男 ,   高橋悟

ページ範囲:P.262 - P.268

▶ポイント

・本邦では全国がん登録ならびに院内がん登録がある.

・全国がん登録は,がんの診断に至る過程の情報を収集し,院内がん登録は,指定された医療機関ががんと診断された後の治療経過の情報を収集する.

・高齢者泌尿器がんにおける死亡者数は増加傾向にある.

高齢者における下部尿路症状の疫学

著者: 三井貴彦

ページ範囲:P.270 - P.276

▶ポイント

・下部尿路症状(LUTS)のうち少なくとも1つの症状を有する高齢者の割合は,87.4%であった.そのうち,蓄尿症状が最も多く,続いて排尿症状,排尿後症状と続いた.

・最も影響のあるLUTSは夜間頻尿であり,続いて尿意切迫感,昼間頻尿と蓄尿症状がQOLに影響を与えていた.

・LUTSを有する高齢者の受診率は低く,今後も啓発が必要であると考えられた.

〈各論―悪性腫瘍〉

高齢者薬物療法の適応,方法,マネジメントのコツ

著者: 戸田恵有沙 ,   竹村弘司 ,   三浦裕司

ページ範囲:P.278 - P.285

▶ポイント

・高齢者は心身の機能低下や社会的背景に個人差が大きいため,PSや年齢のみで化学療法の適応を判断することが困難である.

・高齢がん患者で考えるべきこととして,予後の推測,患者の意思決定能力や価値観,患者の総合的な機能評価,化学療法により期待される効果および有害事象のリスクが挙げられる.

・高齢者に特異的なさまざまな評価ツール(CGA,G8,CARGなど)に基づいた介入を行うことで,化学療法の毒性を減少させることができることが示唆されている.

高齢者腎癌治療のポイント

著者: 加藤大悟 ,   野々村祝夫

ページ範囲:P.286 - P.290

▶ポイント

・高齢者は臓器や身体機能低下,多病など多様な背景を有している.

・心血管系および脳血管疾患などの併存疾患を有さない症例では,nephron-sparing surgeryも考慮すべきである.

・特に血管新生阻害薬などの薬物療法の際は,グレード3〜4の副作用出現が多いという報告もあり,留意が必要である.

高齢者における尿路上皮癌診療

著者: 早川望 ,   菊地栄次

ページ範囲:P.292 - P.296

▶ポイント

・2019年の膀胱癌の年齢階級別罹患数は,男女ともに50代以降上昇し,そのピークは男性では70代,女性に至っては80代である.さらに上部尿路上皮癌の罹患年齢は膀胱癌よりも高齢とされている.

・尿路上皮癌では限局がんの場合手術治療に優る治療はないことから,高齢症例においても安全性を十分考慮したうえで手術加療を検討することが望ましい.

・薬物治療はいまだ検討は不十分であるものの,有効性・安全性ともに年齢による影響は報告されていない.

人生100年時代の前立腺癌診療

著者: 星誠二 ,   八木沼恵 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.298 - P.305

▶ポイント

・前立腺癌患者の治療は年齢だけでは決定できない.

・高齢者の身体・社会機能にはグラデーションがあり評価が必要である.

・高齢前立腺癌の治療には十分なエビデンスの確立が求められる.

〈各論―良性疾患〉

高齢者の尿路結石

著者: 藤田雅一郎 ,   井上貴昭

ページ範囲:P.306 - P.310

▶ポイント

・高齢者の尿路結石治療法に関しては,原則的に非高齢者と同等である.

・高齢者では若年者と比較して周術期の厳重な感染コントロールを必要とすることが多い.

・しっかりと術前評価,周術期合併症のリスク回避を行うことで治療成績の向上が得られる.

尿路感染症

著者: 安田満

ページ範囲:P.312 - P.317

▶ポイント

・高齢者の尿路感染症は複雑性尿路感染症であり,原因菌分布は幅広く薬剤耐性菌も多い.

・抗菌化学療法とともに基礎疾患の治療も行う.培養を行うとともにガイドラインに従い抗菌薬を選択し,その後適切な抗菌薬に変更やde-escalationを行う.

・高齢者では所見が得にくく診断が困難である.有熱性感染症では尿検査のみで尿路感染症と診断するのではなく,全身検索も必要である.

前立腺肥大症

著者: 大塚篤史

ページ範囲:P.319 - P.324

▶ポイント

・泌尿器科医が一般医家や他職種の人々と緊密に連携を深めることで,高齢者に対する効率的な排尿管理を実践すべきである.

・高齢男性の下部尿路症状(LUTS)の主たる原因は前立腺肥大症(BPH)であるが,その症状に影響を与える可能性のある病態・疾患は多種多様なことを認識して診療にあたる必要がある.

・身体的/精神的理由から手術を断念していた高齢BPH患者に,より低侵襲で可能な手術が登場してきたことで治療選択肢が増えた.

排尿障害に対するカテーテル管理

著者: 里地葉

ページ範囲:P.326 - P.331

▶ポイント

・排尿障害の診療ではカテーテル留置管理が本当に必要なのか常に考える癖をつける.

・カテーテル管理が必要な場合,合併症を極力減らすように注意を行う.

・寝たきり患者や認知症患者にはカテーテルフリーとなる膀胱皮膚瘻も選択肢である.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.245 - P.245

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.335 - P.335

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.336 - P.336

 新年会では,初詣がよく話題にのぼります.神社にお参りする方が多いと思いますが,中にはお寺にお参りする方もいらっしゃいます.「神社が好きかそれともお寺が好きか」と聞くと,ある傾向が見えてきます.2022年10月号の編集後記で話題にしたように,ほとんどの女性は神社のほうが好きと答えます.しかし,男性はばらつきます.次に「京都が好きかそれとも奈良が好きか?」という問いでは,男女の別なく,ほぼ京都が選ばれます.しかし中には,神社好きで奈良好き,寺好きで奈良好きの少数派がいらっしゃいます.前者は最もレアで,古代のロマンに憧れる,古事記の読書歴がある方です.後者はまず間違いなく仏像好きです.

 年が明けて出席したすべての新年会でこのネタを披露しました.寺好きで奈良好きは2名で,予想通り仏像好きでした.一人は70代男性医師,もう一人は30代のキャリア女性でした.おすすめスポットを聞いたところ,共通した答えが「東京国立博物館の法隆寺宝物館」だったのは驚きでした.早速訪れたことは言うまでもありません.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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