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雑誌目次

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臨床泌尿器科78巻6号

2024年05月発行

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特集 泌尿器科医のための核医学―正しく理解して潮流に乗れ! 企画にあたって

泌尿器科医のための核医学―正しく理解して潮流に乗れ! フリーアクセス

著者: 志賀哲

ページ範囲:P.341 - P.341

 泌尿器科領域における核医学は,長い間,主に腎機能検査や骨シンチグラフィーに限定されていました.これらの検査は,疾患の診断や治療計画の策定において他の検査方法と組み合わせて利用されることが多く,補助的な役割に限定されていました.しかし,2016年にラジウム223(Ra-223)が保険承認されて以降,泌尿器科領域における核医学の役割に変化がみられてきています.

 2021年のI-131 MIBG治療薬承認および,前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするPETイメージングやLu-177を用いたPSMA療法の出現は,この変化を大きく後押ししています.PSMA PETは,前立腺癌の病期診断や再発検出,転移の評価において非常に有用であり,また,Lu-177 PSMA治療のコンパニオン診断薬として使われています.PSMA治療薬はPSMA PET診断薬と類似または同じ構造の薬剤にLu-177やAc-225の治療用ラジオアイソトープ(RI)を標識することにより,進行した去勢抵抗性前立腺癌に対し一定の治療効果を上げ,新たな治療選択肢として注目されています.

〈総論〉

泌尿器核医学総論

著者: 志賀哲

ページ範囲:P.342 - P.345

▶ポイント

・核医学診断・治療薬は薬剤をラジオアイソトープ(RI)で標識したものであり,診断用,治療用にそれぞれ適したRIがある.

・核医学診断の特徴は機能診断,人工知能(AI)利用,腫瘍特異性の高い薬剤を用いた画像診断である.

・核医学治療はセラノスティクスという治療戦略を用いて治療効果を高める手法が使われている.

〈従来の核医学〉

腎動態シンチグラフィー(99mTc-DTPA,99mTc-MAG3),腎静態シンチグラフィー(99mTc-DTPA)と尿路シンチグラフィー

著者: 石井士朗

ページ範囲:P.346 - P.352

▶ポイント

・腎シンチグラフィーは非侵襲的に分腎機能を測定できる検査である.

・腎動態シンチグラフィーは腎障害の分類の推定,尿路閉塞の評価,腎切除術予定患者の残存腎機能予測に有用である.

・腎静態シンチグラフィーは腎瘢痕の評価,機能腎の容量評価が可能である.

・腎シンチグラフィーの定量値は施設間差があるため,自施設での大まかな正常値を把握しておく必要がある.

泌尿器科領域の骨シンチグラフィー

著者: 堀越浩幸

ページ範囲:P.354 - P.361

▶ポイント

・骨シンチグラフィーの欠点である低解像度を補塡するために,SPECT撮影の追加やCT画像を利用する.

・Automated BSIを利用することで骨シンチグラフィーによる骨転移の治療効果判定が可能になってきている.

・骨シンチグラフィーSPECTとCTのフュージョン画像を作成することで,小病変の検出や正確な治療効果判定が可能になる.

泌尿器科領域におけるFDG-PET/CT

著者: 渡邊史郎

ページ範囲:P.362 - P.369

▶ポイント

・泌尿器系の悪性腫瘍ではFDG集積が低いときも多く,原発巣評価の有用性は限定的である.

・転移性病変,再発評価や進行性・予後の評価にFDG-PETが有用であり,患者管理に影響を与える.

・特に進行期や転移を有する症例,病理学的な異型度が高い症例ではFDG-PETを積極的に利用することが推奨される.

褐色細胞腫・パラガングリオーマに対するI-123 MIBGシンチグラフィーおよびI-131 MIBG治療

著者: 朝永博康

ページ範囲:P.370 - P.374

▶ポイント

・I-123 MIBGは検査用のシンチグラフィー撮影に用いられ,I-131 MIBGは放射性同位元素(RI)内用療法として治療に用いられる.

・MIBGは褐色細胞腫,パラガングリオーマ以外に小児神経芽腫や甲状腺髄様癌,神経内分泌腫瘍などで集積を呈する.

・放射性医薬品を用いて診断と治療が一体となった診療形態をTheranostics(セラノスティクス)と表現する.

去勢抵抗性前立腺癌に対するRa-223治療

著者: 犬伏正幸

ページ範囲:P.376 - P.382

▶ポイント

・ラジウム(Ra)-223治療に女性ホルモン製剤と骨修飾薬を併用するのが現状では良いと考えられる.

・Ra-223治療のタイミングは転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の早期が望ましいが,条件を満たせばいつでも選択できる可能性がある.

・Ra-223治療の効果判定(予後予測)には治療前後でのアルカリホスファターゼ(ALP)変化,前立腺特異抗原(PSA)変化,骨シンチグラフィーのbone scan index(BSI)変化が有用と思われる.

・近い将来日本で前立腺特異的膜抗原(PSMA)治療が可能になってもRa-223治療の役割はなくならない.

〈これからの核医学検査・治療〉

褐色細胞腫・パラガンクリオーマに対する211At-MABG治療

著者: 小早川雅男 ,   野村香織

ページ範囲:P.384 - P.390

▶ポイント

211At-AMBGはα線を放出する放射性同位体211Atを標識した低分子化合物であり,NETを介して褐色細胞腫・パラガングリオーマに集積する.

211Atの半減期は7.2時間であり,放出されるα線のエネルギーが高く,その飛程は数ミクロンと非常に短いことから,211At-AMBGによる強い抗腫瘍効果と非標的臓器への毒性の低減が期待されている.

・福島県立医科大学ではfirst-in-humanの第Ⅰ相臨床試験として最大耐量と推奨用量決定を目的とした用量漸増の医師主導治験を実施中である.

腎細胞癌に対する新しいPET診断薬と核医学治療薬

著者: 中井川昇

ページ範囲:P.392 - P.396

▶ポイント

・Girentuximabは淡明細胞型腎細胞癌に対するセラノスティクスとして有望視されている.

・腎細胞癌に対する新たな診断法としてMET蛋白,前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたPETが注目されている.

・第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の段階であるが,腎細胞癌に対するいくつかの核医学治療薬の開発が進められている.

前立腺癌に対するPSMA-PET

著者: 岡本祥三

ページ範囲:P.398 - P.403

▶ポイント

・PSMA-PETは前立腺に多く発現する前立腺特異的膜蛋白(PSMA)に結合するリガンドを放射性同位元素で標識し,PET製剤として用いるPET検査である.

・PSMA-PETは前立腺癌の診断能を格段に向上させ,今後の前立腺癌診療には必要不可欠な検査である.

・PSMA-PETはステージングや再発転移検索のみならず,セラノスティクスの一環としてPSMA治療の適応判断にも有用である.

前立腺癌の神経内分泌腫瘍化に対するオクトレオスキャン®およびLu-177 PRRT治療

著者: 森博史 ,   萱野大樹

ページ範囲:P.404 - P.411

▶ポイント

・神経内分泌腫瘍化した前立腺癌の診断にオクトレオスキャン®が役立つことがあるが,診断能についてまとまった報告に乏しい.

・2021年10月からソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対してルタテラ®を用いたLu-177DOTATATE治療が保険適用となった.

・神経内分泌腫瘍化した前立腺癌に対するLu-177DOTATATE治療について,治療効果や安全性などについてまとまった報告はないが,標準治療不応の場合は治療の選択肢になりうる.

前立腺癌に対するPSMA放射性リガンド治療

著者: 星誠二 ,   八木沼恵 ,   小島祥敬

ページ範囲:P.412 - P.418

▶ポイント

・前立腺特異的膜抗原(PSMA)に対する放射性リガンド治療(RLT)として,β線治療薬である177Lu-PSMA-617が複数のタキサン系抗がん薬の治療歴をもつ去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の予後を延長した.

225Ac-PSMA-RLTはα線治療薬として一部の患者へ有効性を示す報告が多いが,複数回の投与が難しい可能性があること,供給が少ないことが課題である.

・異なるα線PSMA-RLTとしてサイクロトロンによる安定合成可能な211Atによる治療薬の開発が期待される.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.339 - P.339

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.423 - P.423

編集後記 フリーアクセス

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.424 - P.424

 また誕生日を迎えてしまった.

 万人に誕生日が1年に1回しかないことはわかっているがそのスピードたるや驚くべきものがあります.ましてやコロナ禍では,振り返ってみても何をしたという記憶もなく,漫然と過ごした4年間のように感じてしまいます.小職のように定年が近づくなかで誕生日を迎える心境も複雑です.定年まで700日を切ったことも衝撃です.1日1日がものすごいスピードで過ぎていくなか,700日はあっという間に過ぎそうです.かつて自分の父親が72歳で亡くなったときに,なんとなく自分の人生は72歳と考えていました.その際に考えたのが,人生もあと10000日で,晩御飯を食べるのもあと10000食か…,ということです.10000食と考えると,1食を大事にしないとすぐに終わってしまうと思ったわけですが,今や残されたのはあと3000食です.定年まで700食です.この貴重なお昼や夜の700食をどこで誰と食べるかは大変重要です.無駄のない有効な食事をして過ごしたいものです.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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