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文献詳細

雑誌文献

総合リハビリテーション50巻1号

2022年01月発行

特集 リハビリテーションにおける臨床倫理と合理的配慮

障害者雇用や復職における合理的配慮と個人情報保護

辻 洋志1 小島 健一2

1南森町CH労働衛生コンサルタント事務所 2鳥飼総合法律事務所

pp.41-48

文献概要

雇用の分野での合理的配慮にかかわる主な関連法令の歴史と背景

 合理的配慮とは,障害のある人とない人が平等に人権を享受し行使できるよう,一人ひとりの障害に応じて発生する社会的障壁を取り除くための,個別の調整や変更のことである.1990年に米国で制定された障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act:ADA)をきっかけに広まったreasonable accommodationをルーツとしている.

 ADAは,その後に制定された世界各国の障害差別禁止法のモデルとなるとともに,2006年に国際連合(国連)総会で採択された障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)のモデルにもなっている1).同条約は障害者に関する初めての国際条約であり,障害者の人権および基本的自由の享有を確保し,障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として,障害者の権利の実現のための措置などについて規定している.国連で採択された主要人権条約で初めて合理的配慮の言葉が登場し,第2条で合理的配慮を定義するとともに,障害者差別禁止,苦情処理・紛争解決援助などについても立法的措置を含む適切な措置を義務付けた.

参考文献

1)長谷川珠子:障害者雇用と合理的配慮—日米の比較法研究.pp24-26,日本評論社,2018
2)厚生労働省:令和2年 障害者雇用状況の集計結果.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16030.html(2021年9月14日アクセス)
3)辻 洋志,他:治療就労両立・障害者雇用における産業医・産業保健スタッフによる合理的配慮支援の流れ.産衛誌63:21-26,2021
4)厚生労働省:障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ & A第2版.2015.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000123072.pdf(2021年9月14日アクセス)
5)Paul W, Lezzlie H:The Medical and Legal Aspects of Return to Work Decision Making. Talmage JB, Melhorn JM(eds):A Physician's Guide to Return to Work. pp102-104, AMA Press, Chicago, 2005
6)David D:Fitness for Duty. Guidotti TL, et al(eds):Occupational Health Services:A Practical Approach, 2nd Ed. pp287-293, Routledge, London, 2013
7)辻 洋志,他:治療就労両立,障害者雇用における合理的配慮:先行する米国との比較から考察する今後の産業医の役割.日職災医誌67:231-239,2019
8)Talmage JB, Talmage MH, Hyman MH:How to Think About Work Ability and Work Restrictions:Risk, Capacity, and Tolerance. AMA Guides to the Evaluation of Work Ability and Return to Work, 2nd ed. pp9-21, AMA Press, Chicago, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1340

印刷版ISSN:0386-9822

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