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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科1巻1号

1946年09月発行

雑誌目次

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外科醫の心得

著者: 大槻菊男

ページ範囲:P.1 - P.2

 實地醫學は醫學の應用であるが,醫師殊に外科醫たるものはまた心理學を心得て居つて,患者を診療するに當つてはこゝに心を致すことを忽にしてはならない。
 患者が外科醫に診を乞ひ,手術を決意する時には,極めて深刻な心理状態にあるものである。これをよく推察理解してその不要な恐怖を輕減してやるやうにつとめることは治療の目的を達成するのに缺くことのできない要素である。

頸動脈腺剔出による氣管枝喘息治療について

著者: 瀨尾貞信 ,   中山恒明

ページ範囲:P.3 - P.13

 緒言 昭和17年11月の第414囘東京外科集談會で著者らが「頸動脈腺の外科」と題してこの頸動脈腺の剔出手術が各種の疾病特に植物性神經失調に治療的效果のあることを發見し,かつ種々の動物實驗竝びに臨床的檢索の結果同手術が全く危險をともなはづ,かつ何等後遺症または副作用を惹起しないことを實證し得たのでこれを發表した。
 當時著者らはこの頸動脈腺剔出が特發性脱疽患者の,あの激痛を瞬時に消失または輕減せしめ得る事實を確認し本腺が何等かの意味において疼痛と深い關係をもつてゐるといふことを指摘した,この知見はまだ文獻上發表をみないのである。當時はごく僅少の手術例しかもたなかつたので確實に治療的效果ありとは斷言できかねた。疾患すなはち眞性癲癇,噴門痙攣,レノー氏病,「エリトロメラルギー」,「カウザルギー」または狹心症その他の心臓疾患及び氣管枝喘息等に對してその後機會あるたびに本腺剔出手術を施行し,その經過を觀察しつつ諸種檢査を施行してゐた。しかるに氣管枝喘息に對して驚異的な效果のある事實を遠隔成績により確認できたばかりでなく,その症例も20例の多きに達したのでここにその概略を發表して大方のご追試と批判を希望する次第である。

虹波の外科方面における研究成績概略

著者: 島田信勝

ページ範囲:P.15 - P.28

 緒言
 虹波の研究,ことに虹波の外科方面における研究成績に就ては學會及びその他の集會席上でたびたび報告したばかりでなく,これら研究成績の一部に就てはすでに簡單な報告書を作製して本藥品とともに諸所に配布したので一般には本問題についてかなりの關心をもたれてゐることゝ思ふ。
 余らは虹波の外科方面における研究に關しては過去滿3ケ年間にわたり種々檢討してきたが,詳細は今後逐次發表することゝし,こゝに今日までの成績を一括してその大要を述べ,後日の研究に備へる考へである。

文獻抄録

ページ範囲:P.51 - P.56

The Journal of the American medical Association
130卷3號(1946年1月19日刊)
原著
 1. Treatment of mixed infections withPenicillin. I. With special reference to theadjuvant action of Parachlorphenol (P. 121—124)
 Penicillinによる混合感染の治療特にPara-Chlorphenolの補助作用を考慮して

臨牀講義

假性膵臟嚢腫

著者: 篠井金吾 ,   春山廣臣

ページ範囲:P.29 - P.33

 戰時中特に終戰後にをける交通地獄のために多數の外傷患者が來るが,今日はそのうち診斷上難解な例を供覽しよう。
 患 者 堀内某男 29歳 會社員

臨牀例

蝦蟇腫の症状を呈したる舌下腺粘液纎維腫の1例

著者: 浦元力時

ページ範囲:P.35 - P.36

 蝦蟇腫は我々の遭遇する口腔底腫瘍のなかでは最も多いのであるが,著者は最近臨床上恰も蝦蟇腫の症状を呈した舌下腺粘液纖維腫の1例を經驗したので茲にその概要を報告する。
 患者は30歳の家婦,既往歴,兩親健在,同胞は8人で,その中第4子が肺炎,第6子が赤痢,第7子が腸チフスで死亡してゐるほかは全部健在,患者はその第3子として生れ,幼時健康,初潮は16歳で,以來ほゞ順調,19歳の時甲状腺の所が少し腫脹し,動悸,息ぎれ等が起り,醫師にバセドウ氏病らしいといはれたが,甲状腺部の腫脹は間もなく自然に癒つた。しかし動悸は今でも少し過勞をすると起るといふ。26歳の春,健康な男子と結婚,28歳の10月一兒を分娩,現在3歳で健康である。この産褥中,左滲出性肋膜炎になつたが,醫治により3ケ月位で治癒した。

所謂キユツトネル氏病の2症例について

著者: 北岡義尊

ページ範囲:P.37 - P.41

第1章 緒言
 所謂キユツトネル氏病とは慢性炎症性唾液腺腫で,非特異性慢性炎症機轉により唾液腺が腫脹,硬結を來たしたものである。唾液腺では顎下唾液腺を犯すことが最も多い,本症に關する文獻を徴するに,1896年Kuetnerが「炎症性顎下唾液腺腫瘍に就て」と題し,一論文を公にしたのが最初で我國では,明治40年,岩鳩寸三氏が,日本外科學會雜誌8囘2號にその1例を報告したのが最初のものである。而して我國に於ては,氏以來,最近舟生氏に至るまでその報告數は35例に過ぎない。
 本症が臨床上興味ある點は本症が比較的稀有なものに屬する點,及び,他疾患,就中,肉腫,或は,癌腫の如き惡性腫瘍と誤れら易い點である。

特發性總輸膽管嚢腫の1例

著者: 土岐文英

ページ範囲:P.43 - P.48

緒言
 特發性總蝓膽管嚢腫Idiopathische Choiedo—chus zyste或は,特發性總輸膽管擴張症Idiopa—thisch Choledochuserweiterungとは,總輸膽管の一種特有なる嚢腫状擴張を呈する疾患で,該擴張は,膽汁排泄障害を來す原因,例へば膽石,腫瘍炎症等による所謂潴溜嚢腫とは異り,何等認むべき原因がなく,特に總輸膽管に限局して擴張を來すものである。さほど稀有な疾患ではないが,その發生原因明ならず,診斷困難で治療もまた成績芳からず。最近本症の1例を經驗したので茲に發表し諸賢の御批判を仰がんと思ふ。

全小腸軸捻の3例

著者: 緒方道夫

ページ範囲:P.48 - P.50

 大槻外科で最近數年間に稀有な全小腸軸捻の3例を經驗したので報告する。

雜報

集會

ページ範囲:P.57 - P.61

〔外科集談會〕
〔第440囘〕20.9.28
 1. 背部打撲後に起れる膵臓嚢腫の1例 川戸一. 春山 廣臣
 2. 化骨性筋炎の1例  川戸一. 江木 俊秀

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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