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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科1巻4号

1947年07月発行

雑誌目次

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化膿竈又は創の開放療法是非

著者: 中田瑞穗

ページ範囲:P.1 - P.6

 化膿性感染に關する種々の觀察と事實とは次の樣な問題を提起する。
 即ち,急性化膿性感染竈は屡々其の病状により外科的に切開し,以後切開創は當然のことゝして其の儘開放的に處置されるのであるが,此が果して最も正しい手段であるかどうかと云ふ問題である。

頸動脈腺剔出手術手技

著者: 中山恒明

ページ範囲:P.7 - P.10

 頸動脈腺の剔出が諸種の疾患に效果ある事實を當教室に於て初めて提唱したのは昭和17年11月の東京外科集談會に於てであるが其の後幾多の追試報告もあり,特發性脱疽の機質的變化高度ならざるもの,レノー病又は間歇性跛行に相當の效果を認め,又,疼痛を主訴とする種々なる神經症及び高血壓,狹心症,惡性貧血,白血病等に應用し少なくとも他の手術又は保存的療法に於て見られる效果より優れたる成果を修め得る事が實證せられた又現在多數の氣管支性喘息患者にこの頸動脈腺剔出手術を施行して居るがこの效果は實に驚くべきもので術後の直接效果より遠隔成績に於て遙かに良結果を得て居り確信を以つて現在まで行はれたあらゆる手術法を凌駕するものである事を主張出來る。そしてこの頸動脈腺は大きさが米粒の二分の一と云ふ樣な小なるものであり且又總頸動脈が内外兩頸動脈に分枝する其の分枝部の裏面にあり血管外皮中に含まれて居る。故に其の解剖學的位置の關係上から難手術の如くに考へられて居る。然しこれは局所解剖を充分に理解してをれば副損傷等をすることもなく又手術順序を適確に行へば確實に且容易に施行し得るのであつて私が行ふ場合片側の平均所用時間は10分程度である。本腺剔出手術追試者の爲に私の日常行つて居る方法を以下圖に依つて説明することとする。
 第1圖は皮膚切開を示したものでこの手術は全部局所麻醉のみで施行出來る。基礎麻醉はこれを必要としない。胸鎖乳樣筋内縁に沿うて耳殻より1乃至2cm下部より3乃至5cmの皮膚切開を行ひ,次で皮下組織並に濶頸筋を切開する。この場合手術創の中央部に外頸靜脈が現はれる場合があるがこれは多くの場合外方に剥離する事に依つて切斷する憂なく手術が遂行出來る。もしこれが手術遂行上障碍となる樣であれば切斷しても何等差支はない。

同種並に異種骨移植に對する血清の活用

著者: 河村謙二

ページ範囲:P.10 - P.13

 血清を抗原として抗體の産生を起さしめるに當つて,その抗原の種類,數量及びその用ひ方の如何によつて抗體の産生を容易に變動せしめ得ること--從つて或一種の異種蛋白に對する抗體産生を抑制したり,或は阻害したりすることが出來る。
 之はKarsner,Ecker,Daerr,Berger等の1920年及び1922年に發表した血清による「過敏性シヨック」に關する成績及び私の之に基づいた數種の「過敏性シヨック」を對照として實驗や,之を應用して行つた移植實驗の成績等から瞭にその可能性が想定せられるのである。

關節面癒著防止膜の研究

著者: 河野左宙

ページ範囲:P.13 - P.16

1. 緒言
 強直關節に對する授働手術は我邦に於ては未だ一般に廣く行はれてゐない。このことは本手術が其適應症の選定が稍々困難なること,手術が技術的に必ずしも容易ならざること,絶體的無菌手術を必要とすること,後療法に特殊の器械を要する場合あること,及び其目的とする手術關節の運動性の恢復と關節支持性の獲得の點に於て必ずしも常に滿足すべき成績が得られぬこと等が,其一般化せぬ主な原因と考へられる。
 關節成形術に關聯した課題の中で,中間挿入物の研究は蓋し最重要問題であらう。このことに關して,九大整形外科では,住田前教授の時代より其研究に着手し,同教授は主として生筋膜を中間挿入物とする手術方法をとられたが,神中教授は更に動物死膜を中間挿入物とする手術法を研究せられて今日に及んだ。現今強直關節の授働術に當つては何等かの中間挿入物が必要であることは最早や常識となつてゐる。動物死膜挿入の場合は,後療法の疼痛が比較的輕い點に於て生筋膜挿入手術に優るけれども,假令ばベア膜挿入時にみる如く其刺戟度が強いため,時に術後瘻孔形成乃至挿入膜の排出をみる場合が少くない。かゝる現状に於て,余は神中教授の提唱と指導により,教室生田氏の業績に續き,以上の缺點を補ひ得て而も新關節の再生に好影響を與ふる如き中間挿入物の製作を目論み,家兎を使用して2,3の實驗を行つた。

編集室より

ページ範囲:P.45 - P.45

 終戰直後此の種臨牀雜誌がなく一般の方々の要望に應へて季刊誌として先づ發足の計畫をし,愈々發行の域に進むに從い印刷所の關係,用紙の關係等で遲延に遲延を重ね,そのため切角貴重な玉稿をいたゞき乍ら御掲載することが出來ず,御迷惑を掛けた次第でありますが愈々茲に第1卷4號を御手許に御送りすることが出來たのも一に皆樣の御厚志によるところと御禮申上げます。
 第2卷1號よりは用紙の關係もあり,月刊として筆硯を新にして出發する豫定であります從つてこれからは原稿も次ぎ次ぎと消化致たします故此の點御含みの上どしどし御寄稿なり御氣付きの點などがありましたら御知らせの程御願ひ申上げて第1卷完結の辭と致します。

臨牀講義

乳腺腫瘍

著者: 川島健吉 ,   白石元昭

ページ範囲:P.17 - P.19

患者 後○道○ 19歳 女子 未婚
 家族歴父は62歳,母は50歳,同胞7人,皆健在であり,患者は其の第5子である。

臨牀例

視神經交叉部腫療例—結核腫

著者: 田中憲三

ページ範囲:P.20 - P.22

 兩耳側半盲を主訴とする腦腫瘍は主として壯年者に見られ色素嫌忌性腺腫,鞍部メニンジオーマ等が主であり時に視神經交叉蜘蛛膜炎も同樣の症状を呈する。又幼年者では下垂體柄部腫瘍,視神經交叉グリオーム等の際にも見ることが出來る。本例は異型ながらも術前に下垂體腺腫と診斷し手術を行つたものであるが,意外にも組織學的に視神經交叉部結核腫であることが判明したので,其の經過,診斷,剖檢所見に少なからず興味ある點があるのでこゝに報告する次第である。
 症例志○秀○ 38歳 男子 昭和21年10月23日初診向30日 入院。

胃外發育性胃癌に就て

著者: 齋藤亨

ページ範囲:P.22 - P.27

緒言
 胃癌は病理解剖學的に,又は臨牀的方面より種々なる型に分類せられて居り,其の惡性の程度,手術の豫後等も,之等の型により異り,更に場合に依つては其の診斷さへ困難なる場合が尠くない。胃癌の發育方法に就ては勿論一般癌腫と同樣に惡性腫瘍の典型として,浸潤性,轉移性に發育乃至蔓延するものであるが,胃の腺上皮又は粘膜上皮より發生した癌腫は,胃壁に於ては筋層竝に漿膜に向つて深部發育を營むと同時に胃内腔に向つても成長する(三宅,山極)ものであるが,就中淋巴管の最も多く存する粘膜下層を傳はつて擴がり易い(三宅),とせられてゐる。從て淋巴腺轉移を除いては肉眼的に腫瘍全體として觀る時その膨隆は粘膜面に向つて現はれるのが常であつて,臨牀的に胃癌分類上最も推奨せられて居るBorrmann分類も主として胃内面に於ける變化を基礎として行はれてゐるのである。
 茲に胃外發育性胃癌と稱するのは多少珍奇なる名稱であると思考せられるが,1926年Knoflach及Eichelterが肉眼的に胃内腔への發育輕微にして,反對に胃外乃至腹腔への連續的發育を營める大彎部胃癌に遭遇して,之に胃外發育性肉芽腫性癌腫Exogastrisch-wachsendes Carcinomgragulomatosum des Magensなる名稱を附したのが嚆矢である 其後昭和3年. 生方,永共は胃後壁粘膜に原發せる所謂胃外發育性胃癌の1例を報告して居るが,胃癌に關する報告多數ある中に此種報告は極めて少いのである。余は東京醫大第一外科教室に於て胃大彎部に原發し胃外發育性胃癌と稱するのを適當と思はれる胃癌の1例を經驗し,尚當教室に於て以前に經驗せられた他の1例をも併せて此處に報告し,自驗例を基礎として些か本症に關する考察を試み,大方諸賢の御叱正を仰ぎたい。

メツケル氏憩室に因る腸不通症の5例

著者: 池田正

ページ範囲:P.28 - P.33

 メツケル氏憩室(以下單に憩室と假稱する)は左迄稀なものではないと思はれるが,之が種々の疾病を伴ひ治療の對象となることは決して多くはない。本邦報告例を蒐集するに百數拾例を得た。余も亦最近經驗した憩室の5例を記載し一二の卑見を加へた。
 自家症例。

小腸軸捻轉症の3例

著者: 岩月賢一

ページ範囲:P.34 - P.37

 腸捻轉は一般にはS字状結腸に最も多く,小腸のみの軸捻轉は比較的少い。本邦に於ける諸家の報告では,機械的腸閉塞症の略々1%内外である。私は最近比較的短期間の間に3例の全小腸軸捻轉症を經驗したので,茲にその概略を報告する。

腎カルブンケルの1例

著者: 田中英俊

ページ範囲:P.37 - P.39

 腎カルプンケルは1891年Israel氏が記載して以來,幾多の症例が追加報告され,本邦に於ても25例有るが比較的稀有である。

陰莖皮角の1例

著者: 渡邊睴邦

ページ範囲:P.39 - P.41

緒言
 皮角Cornu cutaneum,(cutaneous horn,Hauthorn)とは,角質層が著明に増殖して獸角状に皮膚面りよ突出する疾患で,頭部,顔面等に好發し,陰莖に來るは比較的稀とせられてゐる。最近本症の定型的な1例を經驗したので,茲に報告する次第である。

醫學談叢

戰爭中の獨逸の想出(續)

著者: 小林一郞

ページ範囲:P.42 - P.45

1.外科特別病院報告
 大戰の初期に獨逸陸軍はProf. Wachsmuthを長とするChirurgische Sonderlazarett des OKH(Oberkommando des Heeres)を編成して東部戰線に充當した。之は外科内科,臨牀檢査科,後療法科,病理科等より成り,生理學者,化學者も參加し,東部戰線の主包帶所や,前線野戰病院に於て活溌な研究が行はれた。其の業績は1942年より43年にかけて軍醫團雜誌其他に掲載されたが,獨逸外科の水準とその進歩を窺ふに好資料と思ふのでその二三を紹介する。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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