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綜説
ナイトロミンの外科領域における應用
著者: 岩井芳次郞1 德山英太郞1 沢田彰1 溝田成1 塚田恵一1
所属機関: 1国立東京第一病院外科
ページ範囲:P.9 - P.15
文献購入ページに移動悪性腫瘍が遂年増加の傾向にある事は洋の東西を問わず,広く世界の趨勢である.吾が国に於ても,その死亡率は結核を凌駕して,高血圧及び脳溢血と共にその第1位を争そつている.抗生物質等の発見により乳幼児及び青少年の死亡率が低下し,国民の平均寿命が延長されゝば,されるほど癌患者は多くなるのは当然である.飜つて考えるに悪性腫瘍の治療法は今日なお暗中模索の状態にあると云うのが実状である.唯一の治療法は早期発見,根治手術であることは言を俟たない.而し根治手術に絶対の信用を置くことが出来ない以上,少くとも何等か他の治療を併用して撒布巣または転移巣を絶滅する手段を講じなければならない.たとえばBauerの報告によると種々の悪性腫瘍1,000例の外科的手術後5ヵ年以上生存者は17.9%に過ぎない.相当進歩した手術手技と早期診断法を以つてしても根治手術の永久治癒率は20%以下である.こゝに於て手術に対する補助的療法として化学療法が大きく招頭するわけである.吾々は昭和26年以来Nitrominを使用し,吉田肉腫,Methylcholanthran肉腫及びRhodamin肉腫を用いて動物実験を行い,著効を認めた.しかも毒性は著しく少くNitrogen Mustardの1/10である.
かゝる実験結果にもとついて,1951年10月頃より多数臨床例に使用するに至つた.
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