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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科10巻12号

1955年11月発行

雑誌目次

綜説

腹部内臓皮下損傷に於ける早期補助診断の検討

著者: 飯塚積 ,   平沢進武 ,   一瀨永吉 ,   勝俣慶三 ,   川內拓郞

ページ範囲:P.911 - P.919

緒言
 腹部内臓皮下損傷の臨床は実地医家にとつて身近かな問題であり,その上実際診療を行うに当つて関心を払わなければならないことは,診断殊にどの臓器がどの程度に損傷されているかを受傷早期に知ることの困難さにある.この困難な理由に受傷機転の不明と高度の腹筋緊張とが挙げられる.外力による腹部各臓器皮下損傷の受傷機転の模型は,第1図の様でかなり診断の参考にはなるが,実際我々の経験する症例は殆んど全てが次の様に診断に悩まされる現状である.(1)我々の知りたい受傷当時の墜落,転倒,衝突等の瞬間の詳しい過程を説明出来る患者は殆どなく,(2)出血,穿孔,裂創等による腹腔内変化のための疼痛で腹筋緊張は高度となり,触診は殆んど不可能に近い.さらに(3)熱型,血圧,血液,尿等の一般検査で臨床的に推定するには,かなりの時間的経過が必要となり早期診断の時期を逸することになる.

炭鉱災害による腹部内臓損傷

著者: 重森仙藏 ,   重藤己壽夫 ,   重松加久雄

ページ範囲:P.921 - P.925

I.緒言
 産業,交通の発達と世相の変化に伴い,事故や傷害による身体損傷は,工場,鉱山,都市,農村を問わず広く発生しているが,これ等損傷の中でも腹部内臓の損傷は,直接生命に影響し,且つ急を要する損傷に属するので,外科臨床上重要な問題である.
 我々が取扱つた腹部内臓損傷例は,昭和25年6月より30年5月までの5年間に23例であるが,病院が炭鉱地帯に在る関係上,その殆んどすべてが炭鉱災害によるものである.

老人に於ける気管内麻醉

著者: 上塚昭逸 ,   江口健男 ,   井昭成 ,   森岡亨 ,   林田隆輔

ページ範囲:P.927 - P.932

1.まえがき
 予防医学ならびに治療医学の進歩は,感染によつて若くして失われていた多くの命を救うようになり,平均寿命は著しく上昇した.老齢人口の増加は,社会的にも大きな問題を投げかけているが,ゲロントロジーに対する臨床的立場からの関心も非常に昂まつてきている.今日では,癌を含めた老人の病気に関する医学的研究を推し進めるよりほかに,人類の平均寿命を更に延ばす方法は余り残されていないようである.その中,いずれは避けることの出来ない老人性変化は,死を以て終る生理的な変化と称してもいゝ位のものであるが,癌は医学が征服しなければならぬ病気である.しかも制癌剤の発見についての学界の真摯な努力にもかゝわらず,癌は依然外科的疾患として残されている,だが最近の外科の飛躍的進歩は,以前には不可能に近かつた積極的な大手術を,老人に対しても敢行しうるようになつた.この外科の進歩を支えるものとして,抗生物質・術前術後の処置の発達と共に,新しい全身麻酔法の普及は大きな役割を果している.
 しかし,老人は解剖学的に或は生理学的に特殊な状態にあり,又特別な病理的傾向も有するので,老人の麻酔は,普通の成人とは違つた考慮を必要とする点も多い.こゝに先人の教えるところに吾々の経験を加えて,老人についての麻酔,特に全身麻酔の要点に関して述べてみる.

胆剔後症候群の予防と治療

著者: 渡辺三喜男

ページ範囲:P.933 - P.938

緒言
 胆嚢剔出術は現在では安全な手術であるが,術後の愁訴は調査して見ると案外多いものであり,又多くの患者が内科医の治療に委ねられ,愁訴の原因の究明や,対策が等閑にされているきらいがないでもない.胆嚢は虫垂と異り,不要の器官でなく,一定の生理機能を営んでいる.胆嚢喪失によつて,或種の機能障碍が起ることは当然想像される.胆石手術の何の統計を見ても20%〜40%に後障碍がある.
 胆剔後の障碍に対して従来から色々の名称が与えられて来た.三宅教授は,イ)困難症,ロ)再発症,ハ)後遺症とに分類した.その他biliary dyssynergia,biliary dyskinesia,biliary dis—abiljty,postcholecystectomy syndrome等の呼称があるが,後障碍の原因は多角的で,その臨床的分析は仲々むつかしい.臨床的には機能的なもの,器質的なもの,両者の並存したもの,凡てを含めてpostcholecystectomy syndrolne「胆剔後症候群」と呼ぶのが便利である.

歯科用手用リーマを使用したる四肢末端骨骨折の新固定法に就いて

著者: 弓山忍

ページ範囲:P.939 - P.944

緒言
 近時新鮮骨折に対して,はなはだ積極的な観血的療法に依りて其の目的を達し,治療法の簡易化,治療日数の短縮,後遺症防止の諸点から従来施行せられていた治療法の諸点に改良が加えられ,骨移植,Künstherの金属釘及びKirschnerの鋼線に依る骨髄内固定法と治療面に飛躍的進歩を遂げつゝあり,又一方髄内固定鋼線,釘の材料研究も日を追つて遂次選択的改良が加えられつゝある現況である.四肢末端骨骨折に対しては,1947年より1952年に亘りWilson,Saal等に依りてKirschner鋼線に依る整復固定を試みて其の効果を挙げている現況であるが,材料選択等の諸点に於て尚一層考慮を要する点が有り,特に固定後の四肢機能恢復上からも一応見当を加えるべき点が多い.私は四肢末端骨々折に対して其の整復固定に一新法を考案し,昭和29年7月,第29回中国四国外科集談会に於て報告した如く治療面に多大なる成果を得,現在迄に約70例の多数の使用経験を見て,其の間種々なる合併症も無く,著るしい治療日数の短縮と後遺症防止に大なる成果を挙げた.長管状骨折に於ける髄内固定とは耿か其の趣きを異にし,四肢末端骨なる故に外化骨形成に依る骨癒合に多大の期待を持つ本法は,整復固定の理論上からもはなはだ意義ありて興味深いと考える.今各種部位骨折状況に対するリーマ選択と固定手技並びに其の使用効果に就いて述べる.

邦製ヨードピラセットによる関節造影法

著者: 加藤晃

ページ範囲:P.945 - P.948

 膝関節を初めとして関節腔に造影剤を注入することにより,骨組織以外の関節構成体の状態を「レ」線学的に診断しようとする試みは古来幾多の学者によつて行われて来た.
 余等は膝内障の症例の診断に当り,従来行われて来た各種診断法によつても尚不満の点の尠からざるに鑑み,最近邦製Iodopyracet(市販名Pyraceton)を使用して膝関節造影法を試みたる所.比較的良好なる成果を得たのでこゝにその大要を報告し,諸賢の御追試並びに御批判を賜りたいと思う次第である.

症例

Recklinghausen氏病にて小腸Neurofibromの穿孔性急性腹膜炎を惹起せし1例

著者: 朝倉松雄 ,   岩淵愼助 ,   岸陽一

ページ範囲:P.949 - P.953

緒言
 穿孔急性化膿性腹膜炎を惹起した小腸Neuro—fibromを有するRecklinghausen氏病の稀有な1例を経験したので報告する.

急性経過をとれる腸間膜嚢腫性リンパ管腫の一例

著者: 飯塚紀文

ページ範囲:P.955 - P.957

 腸間膜に発生する嚢腫性リンパ管腫は比較的稀な疾患である.我々は最近急性経過をとり腸管を含めた嚢腫の剔除により治癒した一例を経験したので,これを報告し,更に検討を加えて見たい.

異型頻数の痙攣発作の続いた破傷風の一治驗例

著者: 折居圭三 ,   河原宣人 ,   飯田博

ページ範囲:P.958 - P.960

緒言
 私達は最近大腿骨々折を伴つた下腿外傷の患者で異型にして頻数の痙攣発作を続発し破傷風血清の髄腔内注射にて著効を見,幸い治癒せしめた1例を経験したので以下にその症例を報告し簡単な考察を施してみたいと思う.

火傷後発生した皮膚癌の3例

著者: 山田栄 ,   中脇正美 ,   堤正二 ,   山本忠治 ,   玉重亨

ページ範囲:P.961 - P.964

まえがき
 瘢痕組織より癌の発生することは1835年Ca—sär,Hambinsにより,又我が国では1904年三橋氏により夫々初めて報告されている.さて火傷瘢痕後に発生した皮膚癌は我々の調査した所では本邦に於て既に147例を数えるが,我々も最近その3例を経験し,之に観血的治療を施行する機会を得たので報告する.

膵尾部切除術施行3週間後,急激な経過をとつて出血死した1剖檢例,殊に断端部附近のアレルギー性血管変化について

著者: 二宮貞雄 ,   岡一明 ,   大根田玄壽 ,   神部重八州

ページ範囲:P.965 - P.968

1.緒言
 膵切除術は今日屡々行われているが,それが直接の原因となつて不幸な転帰をとる事は殆んどないのが通例である.処が私等は,胃癌の診断のもとに,胃,脾全摘出術並びに膵尾部切除術を施行後,経過が順調であつたにも拘らず.術後20日目に突然膵断端からの大量出血で死亡した1例を剖検し,その出血の病理に関し興味ある知見を得たので報告する.

先天性十二指腸狹窄の一例

著者: 前田外喜男

ページ範囲:P.969 - P.973

 十二指腸は先天性腸狭窄乃至閉塞の比較的好発部位ではあるが,その報告例は内外共に甚だ少い.且その臨床診断は必ずしも容易でなく,しかも治療は緊急を要するが,生後間もない新生児を対象とするため,1914年Ernst1)が最初の手術成功例を報告して後もその成功例は極めて少い.最近私は幽門狭窄の臨床診断の下に開腹し十二指腸の狭窄を確めた1例を経験したのでここに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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