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綜説
老人に於ける気管内麻醉
著者: 上塚昭逸1 江口健男1 井昭成1 森岡亨1 林田隆輔1
所属機関: 1熊本大学医学部第二外科
ページ範囲:P.927 - P.932
文献購入ページに移動予防医学ならびに治療医学の進歩は,感染によつて若くして失われていた多くの命を救うようになり,平均寿命は著しく上昇した.老齢人口の増加は,社会的にも大きな問題を投げかけているが,ゲロントロジーに対する臨床的立場からの関心も非常に昂まつてきている.今日では,癌を含めた老人の病気に関する医学的研究を推し進めるよりほかに,人類の平均寿命を更に延ばす方法は余り残されていないようである.その中,いずれは避けることの出来ない老人性変化は,死を以て終る生理的な変化と称してもいゝ位のものであるが,癌は医学が征服しなければならぬ病気である.しかも制癌剤の発見についての学界の真摯な努力にもかゝわらず,癌は依然外科的疾患として残されている,だが最近の外科の飛躍的進歩は,以前には不可能に近かつた積極的な大手術を,老人に対しても敢行しうるようになつた.この外科の進歩を支えるものとして,抗生物質・術前術後の処置の発達と共に,新しい全身麻酔法の普及は大きな役割を果している.
しかし,老人は解剖学的に或は生理学的に特殊な状態にあり,又特別な病理的傾向も有するので,老人の麻酔は,普通の成人とは違つた考慮を必要とする点も多い.こゝに先人の教えるところに吾々の経験を加えて,老人についての麻酔,特に全身麻酔の要点に関して述べてみる.
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