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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科10巻13号

1955年12月発行

雑誌目次

綜説

食道癌根治手術々式の検討

著者: 駿河敬次郞 ,   內木豊

ページ範囲:P.975 - P.982

 1.緒言 食道癌根治手術は近年直接死亡率が激減し,比較的安全な手術となつて居るが,術後の生存率という点では,2年以上の生存率が,優秀なものでも22.3%前後で,未だ良好な成績とはいえない.著者らはその原因の一つにあげられる癌切除後の消化管再建の問題につき,臨床観察並に実験的研究を行い,新知見を得たと信ずるので,ここに報告する.

酸化クローム標識法による清化管手術後消化吸收試験の基礎的研究

著者: 佐藤博 ,   石崎省吾 ,   大津饒 ,   山本勝美 ,   柳沢文憲 ,   広田和俊 ,   田宮達男

ページ範囲:P.983 - P.988

I.緒言
 我が教室に於いては,数年来屡々発表した如く従来姑息的処置に終つた所の進行した胃癌に対して,積極的に膵脾及び大腸等,隣接浸潤臓器或は転移臓器を広範囲に合併して切除する方式を確立し,手術適応の拡大とその根治率の向上を図り,癌に対する外科的根治療法の概念を発展せしめて来た.
 扨て,斯様に広汎に臓器を切除した際,各臓器の欠損症状が消化吸收機能に如何に影響するか,又その恢復乃至補償状況の如何は,該手術の妥当性の検討の意味からも,患者の術後療法の確立,或は生命予後の裏付けの意味からも重要な問題である.

新局所麻醉剤Xylocaineについて

著者: 佐井勇二郞 ,   山本眞

ページ範囲:P.989 - P.992

いとぐち
 1905年Einhorn及びUhlfelderによつて合成されたProcaineの出現が外科的治療の発達に寄与する所が甚だ大であつた.その後も多くの局所麻酔剤が見出されたが,1954年Stockholm大学のLöfgren及びLundquistは新局所麻酔剤Xylo—caineを合成し,その作用はPro—caineに優り毒性はCocaineは勿論Patocaineより弱く,熱に対しても安定で100℃の滅菌にも変化しないといわれ,既に外国に於ては臨床的にも用いられ,その優秀性が認められている.

骨関節結核に於ける所謂Thorn Testの成績に就て

著者: 佐野耕三 ,   手島宰三 ,   中島秀典

ページ範囲:P.993 - P.996

 副腎皮質機能検査法として既にRobinson-po—werの水試験,Cultur-power試験,Wilderの脱塩試験があるが,何れも皮質障碍の結果を知るものであり,又尿中17ケトステロイド及オキシステロイドの定量は或程度迄ホルモンの分泌状態を示すものである.この点Thorn Testは或ストレスを与えて皮質の興奮を起させようとしたもので前者よりはるかに当を得たものと考えられる.
 即ち1948年ThornはACTHの特異的好酸球減少作用を確認し,ACTH Testを提唱したが更に1950年アドレナリンに依る下垂体前葉副腎皮質機能のScreening Testとして所謂ThornTestを創唱した.以来本試験は広く行われ各種疾病に機能不全の存する事が報告されている.私は少数例であるが36名の骨,関節結核患者に就き報告し,併せて2,3の文献的老察を加えた.

肺結核の外科的療法におけるグロス反應の価値

著者: 水野秀夫 ,   菅原政男 ,   柳沼眞澄

ページ範囲:P.997 - P.1000

 肺結核患者は殆んど肝機能障碍を有し,その障碍程度は病型や,予後とも密接な関係を有すると渡辺1),宮本2),山本3)氏等が報告している.われわれは胸廓威形術,肋膜外合成樹脂球充填術及び肺切除術が肺結核患者の肝機能に及ぼす影響に就て血清グロス氏反応に依り,術前,術後の反応値を測定し,さらにその予後に就て検討したので報告する.

過去26年間,名大第一外科に入院せる小児の外科的疾患に関する統計的観察

著者: 津崎修 ,   高木哲之 ,   三沢廸夫 ,   福島久夫

ページ範囲:P.1001 - P.1006

まえがき
 小児の疾患は,それが発育の道程にあり,身体精神共に未完成の中にあつて,一般成人と幾分か其のおもむきを異にする.
 小児の外科的疾患も,成人のそれに比べると,種々異つた特色を有して居り,これを統計的に観察して見る事は,小児外科にとつては,必要欠く可からざるものであるが,近年本邦に於ては,その報告を見ない.

肺切除術に於けるChloromycetin(筋注用)の使用

著者: 浅井誠

ページ範囲:P.1007 - P.1009

1.まえがき
 クロロマイセチン(以下CMと略称)の外科的疾患に対する治療効果はAltemeier1),高田2)3)等により著効を示すことが報告されている.
 従来肺結核手術時の結核菌以外の細菌による合併症の予防には,Penicillinが広く用いられ概ねその目的を達して来たが,Penicillinがあゆる方面にしかも容易に使用されてくると共に,Penicillin-allergyによる副作用やPenicillinに対する菌の感受性等の問題が強く言われる様になり,之の対策としてクロロマイセチン,オーレオマイシン,テラマイシン等の内服も考慮されるが,術後には内服の困難な場合が少くない.又外科的感染症の原因となるGram陽性菌及び陰性菌のみならず,Virus,Rickettsia等多くの菌種に対して広汎な抗菌スペクトルを有し,それらの発育を阻止する点からもCMの使用の方が効果が大であると考え,CMの血中濃度の時間的推移を測定しつゝ感染予防の目的に筋肉内注射用のCMを使用したので報告する.

血栓性静脈炎のビタミン・E療法

著者: 眞鍋欣良

ページ範囲:P.1011 - P.1013

緒言
 ビタミン・Eの歴史は比較的新しいがEvans,Emersonがその有効成分として1936α,β—toco—pherolを次で翌年γ—tocopherolを純粋分離し更に1938Karrer等がその合成に成功して以来医療方面へのVit-E応用は急速に拡大し現在迄には多数の臨床報告が各種方面からなされている.
 扨て従来Vit-Eの生理作用として挙げられているのは,抗不妊作用並び更年期障碍の調節,生長促進,各種筋機能の保持,血管脆弱性の補正,神経系及び肝機能の保持,内分泌腺の変性防止,機能維持等で此の為に今迄主として婦人科,神経科,内科,皮膚科の領域に多く用いられて来ているが,外科領域に於てはそれ程実際には用いられていない.殊に最近増加しつゝある血栓性疾患に際しては其の生理作用から利用価値が当然考慮されながらも殆んど使用されていない現状である.

症例

右顎下腺放線状菌症の1例

著者: 志賀柳一 ,   川俣昭一

ページ範囲:P.1015 - P.1016

症例
 39歳男,農夫.約50日前,堆把場の稲の芒を右舌下皺襞部に刺し,2〜3日後,同所の疼痛を訴えて膿汁少量を排泄した.1週間後,右顎下部に栂指頭大の腫瘤を認め,圧痛及び咀嚼時,嚥下時に疼痛を訴えた.約1週間前より上記腫瘤は漸次増大したので当科入院.
 全身診査所見:体格中等度,全身所見には特記すべきことない.体温36.7℃,血沈1時間値19,2時間値31mm,血圧は最高135,最低85,赤血球数368万,血色素ザーリー90%,白血球数11800,尿に異常所見ない.

頸部神経鞘腫の1治驗例

著者: 安部堯 ,   加藤茂雄

ページ範囲:P.1017 - P.1018

 頸部の腫瘤は,その鑑別診断が難しい場合が多いが,最近私は頸部の淋巴腺結核と思つて手術を施行したところ,意外にも頸神経から発生した.その本態に関し病理学的に興味ある神経鞘腫の一例を経験したので報告する.

気管支癌を疑われた肺結核腫の1例

著者: 八田忠久

ページ範囲:P.1019 - P.1020

 胸部外科の発達に伴い,肺癌と肺の結核腫との鑑別診断が重要視され,G.J.Culver,et al 1)(1950),H. W. Mahon&J.H. Forsee2)(1950)を初め欧米並びに本邦に於ても諸家の経験による多数の報告があつて之について論及している.
 気管支癌の診断は,現在レ線検査並びに気管支鏡による諸検査の発達によつて,その80%に確診がつくといわれるが3),時には癌を否定できぬまゝに開胸,切除して,病理組織学的の決定にまつ場合が屡々起る事が多い4)

バセドー氏病を伴得る定期性四肢麻痺症の1例

著者: 日高輝男

ページ範囲:P.1021 - P.1023

緒言
 私は,最近,バセドウ氏病を伴つた.定期性四肢麻痺症の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

惡性絨毛上皮腫の脊髄硬膜外轉移の症例追加

著者: 高瀨佳久

ページ範囲:P.1025 - P.1027

 悪性絨毛上皮腫の脊椎管内への転移又は変位発生は,1909年Fischerに依り報告せられてより,Kedrierskiが1913年に報告し,本邦に於ては私の知り得たる範囲にては,東,門橋,菅野,福岡赤林,関根,飯田諸氏の報告があるのみである.私も最近同様症例を経験したので此処に御報告し併せて諸先輩の御教示を仰ぐ次第である.

急性メッケル氏憩室炎に併発した腸閉塞症の2例

著者: 辻康s平

ページ範囲:P.1029 - P.1030

 メッケル氏憩室の急性炎症は必ずしも珍らしいものではないが,急性憩室炎に由来する大網,腸管膜,腸管等との癒着から腸閉塞症を招くことは甚だ少ない.著者は最近このような2症例を経験したので,之に文献的老察を加えて補遺報告する.

顎下唾液腺混合腫瘍の1例

著者: 小池透 ,   山田史郞

ページ範囲:P.1031 - P.1033

緒言
 唾液腺中耳下腺の混合腫瘍は比較的多いものであるが,顎下唾液腺混合腫瘍は文献に徴するも比較的まれなものである。われわれはその1例を経験したのでこゝに報告する.

外科保険診療の手引・8

9月1日から改正実施された診療報酬請求点数についての解説

ページ範囲:P.1035 - P.1036

 初診料 従来は1.傷病診療中他の疾病発生するも初診料は請求することを得ず.2.第1回の初診日より30日以内に於て2回以上の初診あるも,第2回以後の初診料は請求することを得ず,とあるを第2項が次の様に改正された.2.第1回の初診日より30日以内に於て,新たに発生したる他の疾病を除くの外2回以上初診あるも第2回以後の初診料は請求することを得ず.となつた.一寸見ると分り難い文句であるが第1項は生きているので要するに例えばAという病気で初診してそれが5日間で治癒しその人が10日経つてAとは無関係なBという病気で診察をうけた場合従前は第1項によつて即ち30日以内であるからBに対する初診料は請求することが出来なかつたものが今度は請求出来るようになつた.但しAという病名で診療を継続中にBという病気が発生した場合には第1項によつて初めの初診日から何日経つていようと関係なくその初診料は請求出来ないのである.尚100床以上の綜合病院で2科以上に診察をうける場合には各科に於て初診療の請求が出来ることは従前の通りであるが各科に於ての取扱いは改正された要領によつて請求することが出来る.

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「臨床外科」第10卷 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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