綜説
経皮的経肝門脈カテーテル
著者:
齊藤昂1
芦沢淸成1
藤田孟1
所属機関:
1弘前医大副島外科
ページ範囲:P.93 - P.102
文献購入ページに移動
1929 Forssman1)が細い輸尿管カテーテルを自分の左正中静脈から右心に挿入した事に端を発した血管カテーテルは1941 Courrnand2)等により普及され,近年特に抗生物質やカテーテル製造技術の進歩によつて目覚しい発展をなしている.心房,心室は勿論の事,肺動脈,心冠状動静脈,肝静脈,腎動静脈,脳血管等,その他身体各所の血管内に挿入され,これら臓器の人体生理及び病態生理の研究に多大の業績を治めている事は何人も認むる所である.しかしながら門脈系に対しては直接,経皮的にカテーテルを挿入し種々の操作を行う云う事は従来不可能とされてきた.然し1944Warren and Brannon3)による肝静脈カテーテルによつて肝及び門脈循環の諸相が研究され,Bradley4-7), Meyer8),上田,美甘,木本門下の優れた報告があるけれども上田教授が云われる如く広い肝臓病学の領域は未だに大部分が暗黒にとざされている.こゝにこれ等の肝静脈カテーテルと相俟つて直接,門脈内にカテーテルを経皮的に挿入する事が可能となるなら多分に興味のある結果が生れてくるものと思う.術前術後に於ける肝の物質代謝の究明,肝及び腸管の病態生理や門脈循環の血液学的諸面に於ても一段と解明される点が決して少なくないであろう.