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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科10巻3号

1955年03月発行

雑誌目次

綜説

いわゆる慢性関節炎について

著者: 兒玉俊夫 ,   高橋純 ,   川村次郞 ,   橫関嘉伸 ,   松本淳 ,   景山孝正 ,   植村孝秀 ,   高橋利夫

ページ範囲:P.147 - P.155

1.まえがき
 本稿は昭和29年5月に行われた第27回日本整形外科学会総会の主題として報告したものゝ要旨である.
 私たちは東大整形外科教室に於て恩師三木教授の御指導の下に昭和24年よりリウマチクリニックを設け,主として関節リウマチの診療と研究にたずさわつたが,その間の報告は昭和27年以来引き続いて日本整形外科学会総会に於て発表して来た.本稿では今年の発表内容に一部前年度のものも加えて,始めて私たちの論文を読んで載く方のために理解して戴き易いように意図した.

早期胃癌発見への一工夫

著者: 楠卓郞

ページ範囲:P.157 - P.162

1.胃癌早期発見の困難性
 胃癌の根治成績の向上が一にその早期発見にかゝつている事はいう迄もない所であるが,一口に早期胃癌といつても,その意味する所は人によつて異つている.友田教授は,i)腫瘍が小さく,胃切除により病巣の完全な除去が可能なもの,ii)胃壁以外に転移のないもの,即ち臨床的に廓清した淋巴腺に転移の認められないもの,以上の条件を満足するものを早期胃癌として定義されたが,かゝる早期胃癌の発見が極めて難事に属する事は,我々が余りにも多く経験する所である.
 例えば次に示す症例の如き,胃癌の早期発見の必要性を痛感せしめると共に,その如何に困難であるかを示す好適例と云えよう.

余の膵臓頭部十二指腸切除術に就て

著者: 今永一

ページ範囲:P.163 - P.166

 膵臓頭部,十二指腸切除術は膵臓頭部癌は勿論十二指腸癌,総輸胆管癌,幽門癌の膵臓頭部に浸潤せる場合等に行わなければならない手術であるが,本手術は手術侵襲も大で然かも黄疸を伴つて肝障碍も強い場合も多いのでそれだけでも手術成績は不良となるものであるがそれに加えて技術的にも困難な点も2,3あるので腹部疾患の手術としては最も困難なものでそれだけ又興味ある手術法である,私も本手術に興味を持ちて及ばずながらこの2,3年来本手術成績の向上に努力し技術的にも工夫を加えて今日漸く本手術に対して確信を得るに至つたので茲に私の手術方法を記述して大方諸賢の御参考に供したいと思う次第である.
 本手術に於て技術的に困難なる点を挙げると門脈剥難及び,膵管,空腸吻合術との2点である.私の工夫せる点はこの膵管と空腸との吻合術の点であるので特にこれに就て述べて見たい.先ず順序として腹壁切開法であるが私は2方法を行なつているが何れでもよい様である.即ち第1図の(a)の如く季肋弓下縁より約2cm位下部の部で横切開を行う場合と(b)の如く剣状突起より臍部までの正中線切開に加えて右横への横切開を行う場合とである.

心臓手術時の脳栓塞防止に関する研究

著者: 坪井重雄

ページ範囲:P.167 - P.171

緒言
 最近,心臓外科は長足の進歩を遂げたが,未だ或る程度の手術死亡例があり,此等を如何に防止するかと云う事が,我々心臓外科にたづさわる者の重要な研究課題と成つている.心臓手術の危険には種々なる因子が挙げられる.本教室の僧帽弁狭窄症121例中,死亡例を剖検を基礎として観察するに,第1表の如き死亡原因がある.中でも脳栓塞は極めて重要な合併症である.特に,僧帽弁狭窄症,僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の如く長期に狭窄の存在した例では常に発生し得る可能性があり,たとえ,手術直後に死亡しなくても,永久的部分麻痺を残すのも稀でない.最良の脳栓塞防止法は左心房内血栓形成を発生せしめる僧帽弁狭窄症を早期に発見し,手術を行う事であるが,早期手術が未だ一般に行われていない現在では,心内血栓を如何に処置して脳栓塞を防止するかが大きい問題として存する.其の防止法に成功するならば,此の種の手術の死亡率は明かに減少するのである.此の問題は欧米に於ても非常に関心を持ち,次の如き,各種防止法が発表されている.

肺結核の外科的早期治療

著者: 伊藤健次郞 ,   窪田博吉 ,   內藤徹郞 ,   武田淸一 ,   大和田耕一 ,   木村嘉孝 ,   井上照彥

ページ範囲:P.173 - P.181

I.外科的早期治療の必要性
 肺結核の外科的療法はこゝ数年間目まぐるしいほどの変遷と進歩を示し,虚脱療法から直達療法へと転じていつた.そして現在の見通しとしては肺切除療法が肺結核外科の主体をなすものと考えられる.
 肺切除の適応に関しては幾多の研究があるが,極く小さい病巣特に化学療法等のあとに残存する小乾酪巣を,如何に処置すべきかに関しては一定の説がない.

肺結核虚脱療法の際の対側肺汚染について

著者: 山內実

ページ範囲:P.183 - P.186

まえがき
 肺結核に対する外科的虚脱療法,あるいは直達療法をおこなう際に,対側肺へ病巣分泌物を吸引し,好ましからざる肺内合併症を惹起することに関しては,つとにOverholt,河合,篠井氏らにより注意を喚起されたところで,これが対策として手術時体位に対する工夫等が指摘されているがしかし果して実際にこれがどのような形で,どの程度に併発されるかという点に関してはまた具体的な研究報告はきわめて寥々なるものであり,いまだ充分にその重要性が強調されていない現状であるといえる.前述のごとく手術後のこの呼吸系合併症は実際問題として手術時の体位が最も重大な原因をなすものといわれているが,著者は手術前施行した気管支造影の残存造影剤が,術後X線写真上において対側肺へ移動している事実を数例において認めたが,これによつて気管内分泌物,すなわち危険性を多分にもつ分泌物も当然他側肺へ吸引され,多少なりとも肺内合併症をおこす可能性のあることを示す具体的好例と考えられるので,これについて少しく検討してみたいと思う.

Eicher型股関節用人工骨頭の試作

著者: 平川寬

ページ範囲:P.187 - P.191

 先年私はアクリル樹脂によるJudet型人工骨頭の作製法に就て述べた.
 わが教室では現在の所人工骨頭は股関節結核の切除術を行つた後の骨欠損部の補填用として応用している.股関節結核では多くの場合大腿頸部まで骨が疎鬆になつていてJudet型のものでは支持力が弱いと思われる.人工骨頭の支持力を増強するに適当と思われるEicher型に改めた. Ei—cher型では大腿頸部から骨幹の骨髄腔にまで柄が挿入されるから支持力が大きくなると考えたのである.以下私の考案したEicher型の形態や作製法の実際に就て述べる.

外科領域よりみたる結節性甲状腺腫

著者: 布施爲松 ,   太田庄司 ,   柳沢資高 ,   松岡茂 ,   浦野晃

ページ範囲:P.193 - P.197

I.臨床診断の重要性
 甲状腺の疾患は臨床的見地からのみならず病理学的見地からも極めて興味ある疾患である.余等は従来甲状腺疾患を第1表の如き臨床的分類の下に取扱つて居る.本文に於て述べる結節性甲状腺腫とは主として一側性に結節を形成し甲状腺中毒症状を示さず,稀にみる機械的障碍の他には特に症状を示さない所謂単純性結節性甲状腺腫Nontoxic nodular goiter(単甲と略記す)及び之と最も関聠性のある悪性甲状腺腫Malignant goiter(悪甲と略記す)とを指す事とする.悪甲の診断にI131等を用いる方法があるがその成績は必ずしも満足すべきものではなく,悪甲の早期診断は依然として多くの人々1,2,3)の不断の努力の対象となつて居り,従つて病歴,自覚的症状並に他覚的局所々見等のありふれた要素が今尚お臨床診断上重要な因子となつている.一般に結節性甲状腺腫の診断は治療の方針特に手術適応の決定,手術々式の選定及び予後の判定等に密接な関係があるから決して忽がせには出来ない.基底組織との癒着の有無等腫瘤それ自身の性格のみならず,非対照性の急激な増大,圧痛,大声,呼吸困難,嚥下困難,肩凝り,頭痛等を参考として詳細に観察して診断を下すわけであるが,更に手術診断,組織学的診断等を系統的に追及すれば後に記すが如くこの臨床診断が単なる便宜上のものでなく結節性甲状腺腫の特長を示す有力な資料となるのである.

函館地方に於ける切除虫垂腔内の寄生虫学的検索

著者: 淸水亮 ,   小林眞名文 ,   藤浪健次郞

ページ範囲:P.199 - P.202

I.緒言
 最近寄生虫の蔓延,殊に蛔虫の体内浸襲甚だしく,且つ之に伴う外科的諸疾患の増加を見るので吾々は日常屡々経験される虫垂炎に就て切除虫垂腔内の内容を寄生虫学的に検索を試みた.

エーテル吸入麻醉の副作用に対する抗ヒスタミン剤の効果

著者: 飯田茂 ,   藤原省三

ページ範囲:P.203 - P.206

緒言
 元来エーテル吸入麻酔の最も不快な症候は,口腔及び気道粘膜の刺戟の結果,分泌物の増加を来し,術中に於いては頻回の吸引,術後に於いては肺合併症を惹起することは衆知のことである.吾吾はこの対策としてアトロピン及びスコポラミンを使用して来たのであるが,矢張り分泌物の多い症例に屡々遭遇した.
 最近抗ヒスタミン剤であるレスタミンを前麻酔に使用したところ,従来経験したエーテルの不快な副作用は殆ど抑制され,術中は云うに及ぼず,覚醋時の悪心及び嘔吐も減少することを得たので之に就き報告する.

症例

癌性乳腺炎について

著者: 彌永耕一

ページ範囲:P.207 - P.209

 1875年にvon Volkmann1)が乳癌の急性経過をとる一型について記述し之を癌性乳腺炎と命名した,癌性乳腺炎と云うのはその名の示す様に臨床的に炎症性の特微を有し浸潤性,瀰慢性に急速に増大する極めて悪性の乳癌である.之は外国文献には散見するが我が国では1935年に磯部氏2)が初めて本症について記載し,次で1942年に串氏3)の発表がある位で殆んどその記載がなく本症は甚だ稀な疾患とされている.さて私共は最近当教室に於て定型的と思われる本症の1例も経験したので,こゝにその概要を報告し,少しく考察を加えたいと思う.

胃潰瘍の出血死にみた肝臓所見

著者: 白石幸治郞 ,   川內正充

ページ範囲:P.211 - P.212

 胃,十二指陽潰瘍による大量の出血が時に直接致死的原因となることは周知のことである.我々は最近当教室に於てAzotemiaによる症状と思われる経過をたどつて死亡した症例を経験したが,剖検によつて新鮮胃潰瘍からの大量出血があつたことを知り,同時に肝臓に高度の実質障碍を認めた.最近胃出血と肝臓との特殊性が論じられているが,この点から本症例について考察を試みたのでこゝに報告する.

結腸放線状菌症の1例

著者: 中邑哲郞

ページ範囲:P.214 - P.216

言緒
 曩に奥島は当教室に於ける40例の放線状菌症の統計的観察を発表したが,其の後私は津田外科教室に於て臨床症状並びに諸検査によりS状部結腸癌を疑い開腹術施行の結果図らずも結腸網膜垂に膿瘍を形成した放線状菌症の1例を経験したのでこゝに報告する.

腹部に於ける大なる動脈瘤の2例

著者: 成田俊三 ,   竹田文次

ページ範囲:P.217 - P.219

 血管外科における最近の進歩は,同種乃至異種アルコール保存血管移植により異常なる注目を浴びるにいたつた.血行再建の目的で行われる血管移植す良好なる遠隔成績を納めているが,我々は在来の旧式な手術術式によつて,腹部に於ける大なる動脈瘤を全治せしめ得たので,時代に逆行するのではないが,臨床外科に役立つ方法だと思い敢て報告する.

外科保險診療の手びき・1【新連載】

適正診療と檢査

ページ範囲:P.220 - P.221

 保険診療というと外科に限らず何科に於ても何か枠の中にはめこまれた窮屈な診療のように考えられている.勿論保険診療は診療担当者と保険者との間の一種の約束診療であるから約束以外のことは例えやつてもその報酬を請求しても支払われる筈はない.この約束を解説して外科の保険診療を楽にのびのびとやつて然もこれこれのことは正当に請求しても差支えないということを例をあげながら述べてゆくのがこの手びきの目的である.試合に勝つにはルールに精通した方が有利である.そこで約束というのは何かという健康保険保険医医療担当規定というもののことである.
 これに述べてあることは大別して診療の範囲,診療方針,診療取扱手続,診療報酬の請求,の四項目である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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