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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科10巻5号

1955年05月発行

雑誌目次

綜説

直視下心臓内手術—特に選択的脳灌流冷却法の考案,並びに本法による心房中隔欠損症手術成功3例について

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   浅野献一

ページ範囲:P.293 - P.304

序言
 著者等は約1年前,昭和29年3月20日第526回外科集談会席上,並びに本誌5月号誌上に於て直視下心臓内手術を取上げ,低体温麻酔下に実施した動物実験成績及び臨床手術成績を報告し,特に空気塞栓防止の一法として大動脈弁口バルン閉塞左心耳挿管灌注法について述べた.その後引続き各方面からこの問題を追求して苦闘を重ねて来たが,最近に至つて新しい構想の下に創案研究した方法によつて開放性心臓手術も優秀な成績を得ることが実験的にも臨床的にも略々自信をもつて明言し得る段階に達したので,こゝにその概略を発表し大方の御批判を仰ぎ度いと思う.
 なお直視下心臓内手術は各国に於いて現在興味の中心となつており,当然これに関する文献も極めて多数あるが,選択的脳灌流冷却法については吾々と独立にParkins氏の動物実験があるのみであり,臨床実施報告はまだないので,紙数の関係もあつて,特に洩れなく文献を整理掲載する煩を避けることにした.これは何れ稿を改めて詳細に報告する機会があると思う.唯その大体の趨勢は文中に織込んで記述し,又まだ文献として現われない米国内の現況も著者の一人木本が旧臘訪米中に見聞した所により適宜附記した.

冬眠麻醉下の心房中隔欠損直視手術

著者: 榊原仟 ,   織畑秀夫 ,   中山耕作 ,   市井厚吉 ,   斎藤英夫

ページ範囲:P.305 - P.322

緒言
 私達は2例の心房中隔欠損症に対し,冬眠麻酔下に血流を遮断し,心房を開き,直視のもとに欠損部縫合手術を行なつた.
 心房中隔欠損に対しては阪大小沢凱夫1)教授が昭和29年Björkの方法を用いて閉鎖手術に成功して居られる.

小児のイレウス

著者: 齊藤淏 ,   松田尚泰 ,   橫瀨武正

ページ範囲:P.323 - P.327

 小児のイレウスは成人のそれに比べて死亡率は高く,特異なものがあるのみならず,最近の少くもイレウスに対する治療方法から新しく見なおしてみる必要があると考える.筆者等は昨年日本全国175病院の過去20年間(昭和10〜28年)の経験例を集めることが出来た。その集計中の小児イレウスについてみると,全イレウス12,006例中で生後9歳までの症例は2.174例(18%),すなわち全体の大凡1/5を占めている.
 次にイレウスの各種類別にみると,小児のイレウス例中で最も多いものは腸重積症1,482例であつて,67%を占めている.癒著屈折性イレウス及び腸管内異物によるイレウス例は之につぐが,何れも僅かに7%にすぎない.

野兎病は果して急性疾患か

著者: 桂重次 ,   大原嘗一郞

ページ範囲:P.329 - P.332

 野兎病とは野兎間で致死的敗血症をおこし,人間には急性熱性疾患をもたらす細菌性疾患であることには異論のないところで,大正13年大原(八)氏が福島に於て本病を発見して以来の記録にもそのリンパ腺炎が慢性の経過をとることは記されているが「本病は原則として局所疾患なり」と主張している程に経過予後は一般に良好な疾患とされており,実際にも殆んどが急性期の野兎病のみ治療,研究の対象となつておつた.ところが著者らは最近急性期をすぎてからかなりたつて再び思いがけぬ症状で本病が始まることに注目した.その最初の症例は世界のツラレミアを含めても未だ記載されておらないもので,教室の大原らが詳述することになつているが論旨の進展上先ず略述しておく.

尿管S状結腸吻合手術例

著者: 橋本昌武 ,   渡辺彰

ページ範囲:P.333 - P.334

 尿管S状結腸吻合術は化学療法の進歩により最早や安全性を確保し,諸氏の報告例を見るが,元より主として膀胱癌の先行手術として行われたものが多い.余等は昭和26年以来5例の膀胱癌の外に膀胱多発性乳嘴腫,膀胱尿道瘻膀胱結核の各1例,計8例に対しKerr-Colby法で本手術を経験したので報告する.表示の如く自験8例中5例の膀胱癌では両側尿管S状結腸吻合と膀胱全別除の二手術を一次的に行つたもの3例(第2,4,5例)二次的に行つたもの2例(第1,3例)あるが,多発性乳嘴腫(第6例)及び外傷性尿道瘻と切開による恥骨上膀胱瘻の併有例(第7例)の2例には両側尿管S状結腸吻合のみで,膀胱には何等の手術操作を加えず,最後の第8例は左腎及び膀胱結核で既に2年4ヵ月前左腎剔出し,本年6月23日腹腔内膀胱自然破裂を来して来院,当時膀胱破裂縫合の救急手術を行い,9月22日即3ヵ月後に更めて残存右側尿管をS状結腸に吻合し,膀胱は其儘に放置したのである.而して以上8例中7例は吻合威功して治癒したが,1例(第4例)を失つた.然し本例は手術当日の死である故に死因は少くとも吻合不成功でない事は明白である.

骨固定材料としてのKirschner鋼線の有用性とその限界

著者: 玉置拓夫

ページ範囲:P.335 - P.341

 骨折もしくは骨切りその他,観血的に骨接合あるいは固定が要請されるとき,採択せらるべき方法材料等は決してすくなくない.Kirschner鋼線も,それらのなかから適宜撰択せらるべきひとつの方法にすぎぬが,実際上このもののしめる比重は大きい.その意味で,Kirschner鋼線が骨の固定材料として如何に,そして如何なる限度迄有用であり得るかということを吟味することは無意味でないと信ずる.
 以上のことをいとぐちとして,私達の自験例を手引とし,Kirschner鋼線の有用性とその限界について主旨弁明を行つてみたい.

チタン,ヂルコニウム,珪素,錫,銀等の組織反應に関する小見

著者: 伊丹康人 ,   伊東秦也 ,   柳瀨孝德

ページ範囲:P.343 - P.348

 結核性病巣の結合織性被包化や線維化は抗結核化学療法剤を投与しても急速に進展するものではなく,SM等の場合には結合織の増殖は結核性病巣の萎縮とは比例せず,却つて抑制される傾向さえみられる.特に骨病巣に対しては化学療法剤の影響は比較的軽微なものである.従つて化学療法下に骨病巣の切除術を施行して,一気に病勢を頓挫せしめる事は甚だ効果的療法といわねばならない.併し主病巣が除去されても残存病巣から再燃する危険性も多分にあり,又罹患肢の機能恢復という点では病巣週辺の高度の骨萎縮が後療法の上で障碍になる.斯る意味に於て病巣部並にその周辺に結合織の増殖,更に線維性肉芽の増殖を積極的に促進する何等かの方法が望まれる訳である.以上の目的の為には従来から骨移植等が盛に用いられているが,此等の移植骨は局所病巣の再燃により再び破壊される危険性がある.依つて斯様な場合にも破壊されない物質で,而も生体に悪影響を与えず線維化のみを促進するという目的に金属挿入という突飛な考えを導入して来たのが本実験の目的である.先ずチタン,ヂルコニウム,珪素,錫等の第四族金属と銀線を海猽の筋肉内に埋没して周囲の組織反応を検索し,更に海猽の人工関節結核の病巣内に挿入して同部の組織反応を観察したのでその概要を報告する.

強直性脊椎関節炎について

著者: 島田昌治 ,   荒井三千雄 ,   菊地祐夫

ページ範囲:P.349 - P.355

まえがき
 脊椎運動の制限をきたす疾患は日常かなり多く存在するが,その中できわめて特種の位置をしめているのが強直性脊椎炎Spondylitis ankylo—poetica又は強直性脊椎関節炎Spondylarthritis ankylopoeticaである.
 本疾患が全脊椎疾患に占める割合はSchmorl 0.1%,Bachmann 1.6%,Haenich 0.9%で,わずかにその1%内外をしめるにすぎないが,レ線像での脊椎形態はいわゆる竹状脊柱bambo—ospineを形威し,その完全強直は脊椎全域にとどまらず,四肢大関節もしばしば強直におとし入れてしまうことが特有とされる.四肢関節を侵襲する割合は,Geilingerによれば股関節61%,肩関節58%,膝関節44%,足関節41%,手関節18%,指関節19%,肘関節17%,顎関節17%の多きを算え,これによる機能障碍は脊椎によるものに劣らない,しかも本疾患は40歳前後,多くは30歳台の働きざかりの男子に多く,その病状の進行は患者の人生活動を次第に不能ならしめて行く.あまつさえ本症に対しては現在未だ適当なる治療法も判然としておらず,治療的予後はきわめて悪いとされている.

外傷性腕神経叢麻痺の4手術例と手術法

著者: 丸毛英二 ,   前田正彥

ページ範囲:P.357 - P.359

 最近交通機関の発達や工場の発展に伴つて,その頻度と大さを増し,之に伴つて外傷性腕神経叢麻痺の症例も増加しつつある様に思われる.腕神経叢部の解剖学的関係は重要な神経や血管が極めて複雑に分布して居り,手術には屡々困難を覚える.我々は最近例の鈍力により発生した腕神経叢麻痺患者に手術を施行したので,その手術所見と術後の経過等について述べる.

外科保險診療の手引き・3

麻醉

ページ範囲:P.360 - P.360

 局所麻酔(浸潤麻酔,伝達麻酔等)は使用麻酔薬の量が多量に達した時には特殊計算規定によることが出来るが普通は殆んど左様なことはなく総て手術の固定点数に含まれているとみて差支えない.
 腰椎麻酔,固定点数100点以下の手術に腰麻を施した時は麻酔料は20点である.例えば腰麻で内痔核の手術をした時は痔核根治術50点に腰麻料20点を加える。が胃切除術を腰麻で行つた場合は麻酔料は手術点数中に含まれているから別に請求出来ない.又腰麻にともなつて行う注射,例えば血圧下降防止のためのエフエドリン注射の如きは別に請求出来ない.

最近の外国外科

胃腸に発生した類癌(好銀性腫瘍)12例の報告

著者:

ページ範囲:P.361 - P.361

 Lubarschが1888年に他の腫瘍から区別して以来多くの報告がある.Oberndorferが1907年に初めてCarcinoidと呼んで組織学的には癌に似ているが良性な疾患とみなした.Massonは銀染色に親和性があるという理由で好銀性腫瘍と呼んだ.その後悪性のものもあることがわかり,すべて潜在的には悪性であるが発育の遅い腫瘍であると解される様になった.Carcinoidは胃腸に発生する腫瘍の約1%である.1944〜1954年の間に12のCarcinoidがみられたのでそれについて報告している.
 虫垂6,直腸3,廻腸2,胃1.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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