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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科10巻6号

1955年06月発行

雑誌目次

綜説

悪性甲状腺腫の外科

著者: 佐野進 ,   柴拓 ,   大原悟樓 ,   渡辺薰

ページ範囲:P.363 - P.366

 甲状腺腫の悪性度の指標に関しては,従来屡々論議されおり,その臨床的早期診断も時に困難の事があるとされている.
 我々は桂外科教室過去20年間に於て悪性甲状腺腫80例を経験したので,これらの病理所見,臨床像,並びに手術後の遠隔成績につき統計的考察を試みた.

比較的早期胃癌切除例の遠隔成績について

著者: 平岡佳郞

ページ範囲:P.367 - P.372

I.緒言
 諸家の報ずる癌胃切除患者の多数が術後癌再発により殪れている所を見ると,癌再発因子の残遺と云う事が依然重大な問題である.胃癌の胃炎発生という立場から,残胃粘膜に存する癌素因もその一因と考えられてはいるが,癌細胞の淋巴腺転移と残胃々壁に於ける癌細胞の残存とは,胃癌切除の遠隔成績に直接影響する所大と考えられる.恩師友田教授は数年来胃全剔出術により残胃癌細胞の残留を除く可き事を強調されている.教室の辻村は胃亜全剔例の手術成績が胃全剔例に比し良好とは認め難い点から,胃亜全剔に終つた症例に於いても金剔を施行する事により残胃に癌細胞の残留を防止し得ると述べ,又教室内之浦は胃全剔出適応範囲にあると推定せられる癌胃切除例の術後遠隔成績を調査して,その成績が諸家の報ずる癌胃切除例全般の成績に比し著しく不良である事から,斯かる例では単なる胃切除では残胃に癌細胞が遺残する危険性が大で,又噴門部淋巴腺の廓清が困難な理由から胃全剔出術の適応範囲の拡張に示唆を与えている.然し乍ら癌再発因子が除去される可能性が最も大であると考えられる比較的早期胃癌の遠隔成績が如何様であるかに就ては教室に於て未だ明らかにせられていない.

レ線写眞撮影條件表について

著者: 江口健男

ページ範囲:P.374 - P.376

I.まえがき
 医療制度は従来の開業医から,最近やかましくいわれている公的医療機関へと漸次転換してきつつあることは,もはや動かし難い1つの傾向であろう.それも今までのような県に1つか2つしかないような陣容,設備のとゝのつた大病院と並んで地方の隅々にまで行きわたろうとしている市又は町立病院,および村営程度の診療所クラスのものに至るものを包含するのである.
 こういつた小規模の病院乃至診療所では,経営面の都合で充分な人的陣容がとゝのいにくゝ,外科,整形外科の区別はおろか,レ線技術者をおくことができないので,レ線写真撮影も医師自らその任に当らねばならぬことも少くない.そういう場合の役目は外科医が引き受けなければならぬことが多い.外科方面の開業医にしても経営面の都合でレ線撮影を自分自ら行つている者もずいぶん多いことであろう.

整形外科領域に於ける感應錠の應用價値

著者: 矢橋健一 ,   利根川輝男 ,   佐藤二郞

ページ範囲:P.377 - P.379

 近年各種抗生剤に依る化学療法の進歩に依り整形外科領域に於ても細菌感染症の治癒率は著しい上昇を示している.然し一面に於て,感染菌は化学療法の洗礼を受けて次第に抵抗性を獲得したものが現われて来たので,化学療法剤の選択や投与量の決定には相当に苦心を払わなければならない様になつた.従つて最近の化学療法は感染菌の化学療法剤に対する感受性を検査した後に開始するのが合理的であるが,従来の検査法では臨床上の応用には余りに煩雑の憾がないではない.
 今回感受性測定を簡単に行い得る感応錠を種々なる整形外科的感染症に応用したので,その結果に就いて述べる.

アクロマイシンの臨床應用経験—中間報告

著者: 橋本義雄 ,   彌政洋太郞 ,   津崎修 ,   後藤憲一

ページ範囲:P.381 - P.385

 オーレオマイシンとテラマイシンの両者の核をなしているテトラサイクリン(Tetracycline),即ちアクロマイシン(Achromycin)なる新抗生物質を最近Lederle研究所より分与をうけたので,私達が日常取扱う外科領域の患者に用いた2〜3の経験を中間報告的に簡単に報告する.

特発脱疽の治療並に予後

著者: 神谷喜作 ,   岡田斌 ,   矢野嘉郞 ,   木下悅之

ページ範囲:P.387 - P.391

 我々はこれまで脱疽の治療に興味をもち,各症例につき,いろいろな治療と検索を行い,主として血栓の状態につき発表して来たが,今回は徳大附属病院及び名古屋赤十字病院において経験した特発脱疽の治療成績等につき報告する.

症例

手術による副神経外枝の損傷後に発生せる麻痺の1例とその治療成績

著者: 沢田フサ ,   相沢千代子

ページ範囲:P.393 - P.395

 頸部淋巴腺炎の手術時に副神経の外枝を損傷して発生したと思われる麻痺の1例を経験したのでその所見と治療成績を報告する,

ヘルニヤ254例中興味ある嵌頓2例に就て

著者: 淸水亮 ,   小林眞名文

ページ範囲:P.397 - P.399

1.緒言
 吾々は過去数年間に於ける各種のヘルニヤ(以下単に「ヘ」と略す)の自家症例254例を分類し其間に経験した炎症虫垂を内容とせる嵌頓「ヘ」2例を追加報告し,併せて若干の考察を試み諸賢の御叱正を乞う次第である.

筋肉ヘルニアを疑わしめた筋腱移行部における筋皮下断裂の2例

著者: 伊藤秦也 ,   前田正彥

ページ範囲:P.401 - P.404

 筋肉ヘルニアは皮下に於て筋膜が断裂し,その断裂口から筋腹が脱出するものを言うと定義されているが,実際上には余り多いものではない.我我は最近大腿前面に於ける筋肉ヘルニアではないかと考えて手術した所,大腿直筋の筋腹が腱への移行部で断裂した症例に遭遇したので報告する.また,その後上腕三頭筋に於ける相似た症例にも遭遇したので併せ報告する.

琺瑯腫の4例について

著者: 山田竜太郞 ,   千葉昭

ページ範囲:P.405 - P.407

 琺瑯腫は病理学上良性真性歯系腫瘍であるが,顎骨を破壊する事甚だしい為め臨床上重視すべき疾患であるのは言う迄もなく,其臨床報告必ずしも稀有ではないが,概して歯科方面よりのものが多い.然し本症の治療は歯科並び外科両者の協力に俟つべき点尠しとしないのであるが,余等は最近相次いで本症の例に遭遇し,協力して之を治験したので茲に報告のる.

興味ある外傷性肉腫の1例

著者: 武岡春雄

ページ範囲:P.409 - P.411

いとぐち
 外傷特に挫傷が肉腫発生の素因を成すことは,広汎な火傷面やレ線潰瘍面等から時として癌腫が発生すると同様に,古くから識られている.
 さて,従来報告されている外傷性肉腫は骨に発生しもたのが多く,軟部からの肉腫は比較的少ない.就中,薬剤注射後発生したと思われる肉腫の報告は本邦に於いては,僅かに2例を数えるに過ぎない様である.即ち,益子1)は肺炎治療の目的で注射された部に発生した上膊軟部肉腫の1例をまた,原2)はビタミンK注射後に発生したと思われる鎖骨上窩淋巴腺肉腫の1例をそれぞれ報告している.ところで,私は,最近脚気治療の目的で右上膊に数回注射を受け,その後該部に腫瘤を形成し,諸検査の結果線維肉腫であることを確認した興味ある1例を経験したので,その大要を報告し併せて,2,3の考察を加え,以て諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う.

顎下腺結石の1例

著者: 阿部懊

ページ範囲:P.413 - P.414

 唾液腺結石に関しては,多くの報告があり1926年Harrison1)の調査したる所では,1825年よりの約100年間に,375例を算じ,個人的多数報告例も散見される様である.Ivy. R. H.2)は自家経験例73例について,66例は顎下腺結石であり,7例は耳下腺結石.男女の比は25対10で男子に多かつたと云う.我国に於ける最近10年間の報告例は,約56例であり,内顎下腺結石は43例,男女の比は33対17で男に多かつた.尚大多数は耳鼻科関係の報告3,4,5,6)であり,外科医に依つて取扱われたものは5例の小数である.
 我々は触診所見過信のため2回にわたる結石摘出術を試みた症例を経験したので報告したい.

器械的刺戟によると思われる稀有なる両側鼻翼後退破裂症の1例について

著者: 半沢雄次 ,   田中了介

ページ範囲:P.415 - P.416

顔面の先天性畸形には (1)兎唇,(2)鼻部の破裂,(3)頬の斜破裂,(4)頬の横破裂,(5)上唇の正中破裂,(6)下唇の破裂
 等が挙げられるが,何れも胎生期の顔裂が何等かの原因で融合障碍を来たして閉鎖せずにその儘の状態で残つた畸形であつて,未だにその原因の究明に見るべきものがない現状である.殊に最近遺伝的素因が重要視されて来ているが,これも必ずしも決定的の段階に至つてはいない.要するに先天性の顔面の破裂発生の原因には色々の説があり,或は母親の精神的感動,栄養障碍,外傷,伝染病,異物嵌入,薪生物,又は器械的刺戟等々が称えられているが,何れも決定的なものではなく原因は種々多様にある感をもたらしめている様である.

興味ある腸閉塞症の2例

著者: 後藤悅三

ページ範囲:P.417 - P.418

 腸閉塞症は腸管疏通の極度の障害,或いは疏通停止の症状を呈する場合であつて,その閉塞症状を起す原因が機械的乃至器質的障害によるが,神経支配の変調,又は血行障害の様な機能的原因に因るかによつて,種々の場合が挙げられているが,これら種々の原因の中,果実によつて生成せられた腸石による腸閉塞症,或は乳幼児に於ける絞扼性イレウスについては,その記載も少い.そこで私はこれ等の症例に就いての経験を報告する.

外科保険診療の手びき・4

補液,輸血

ページ範囲:P.419 - P.419

 一般に手術を行うに際しては患者の状況及びそれに加わる麻酔の影響,手術的侵襲による影響に対しこれが対策として術前,術中,術後に補液,輸血が行われなければならない.戦後この補液,輸血の量は無暗に多量に過ぎた傾向にあつたが漸くその適正量が考えられ且適応症も吟味されて近時徐々に減量されてきている状況にある.輸液を施すに際しては常にその補液の量と共に質を考えることが必要で手術に際しては全身の中毒,低蛋白,アチドージス,貧血,ショック,血圧の下降,組織酸素の欠乏等が互に関連し合つている状態にあるのでこれに対して酸素の補給,蛋白の補給,解毒,血圧の上昇,流血量の増加を計らなければならないのでそれ等に最も適した液を注入する事が必要である.例えば大きな火傷に対しては体液の洩出は甚しいが血球特に赤血球の減少はなく血液は寧ろ濃縮されている状況にあるのでこれに輸血を多量行うことは有害無益であるからむしろ血漿を選ぶべきであり,又腸閉塞に対しても血球の失量は少く主としでクロールの減少が甚しいからこれ亦輸血よりはリンゲル液の大量を補液として選ぶべきである.失血に対しては勿論輸血によつて失われた血液を補足するに越した事はないが血液の急に得られない時には血漿によるのが適正である.

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集談会

ページ範囲:P.420 - P.421

第535回東京外科集談会 30.2.26.国立東京第一病院 佐藤 功,他
1)慢性非特異性限局性腸炎の再発例
 55歳男,右下腹部の鈍痛と腫瘤のため,虫垂炎の診断にて開腹,腫瘤を含めて回盲部切除,病理学的に慢性非特異性限局性腸炎と診断された.その後横行結腸に超手拳大の腫瘤を発見.回横行結腸切除術,更にその後回結腸吻合部に鶏卵大の腫瘍と同時に腸瘻を認め,その後健康.毎回の切除標本とも組織学的に非特異性慢性炎症像を呈していた.
 本症はクローン氏病に一致するが斯る慢性型は本邦には少ない.再発は腸切除不充分なるによること多く,肉眼的変化のみに頼ることは再発を招き易い.同時にロイマチス様関節痛があつた.ロイマチスと関係があると云う者(Ward von Patter等)もある.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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