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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻12号

1956年12月発行

雑誌目次

綜説

セロトニン.その外科的考察

著者: 澁沢喜守雄 ,   齋藤純夫 ,   細谷貞一 ,   阿部楫郞

ページ範囲:P.795 - P.819

はしがき
 胃腸粘膜のenterochromaffin細胞の分泌,ことにその生理作用に最初に注目したのは1930〜1933年の間,Cordier & Lison(1930),Lison(1931),Clara & Canal(1932),Clara(1933)らであつた.Feyrter(1934)はその分泌顆粒がformaldehyd含有液に固定されたのち,はじめて嗜銀性となることを見出している.enterochromaffin細胞といわれるものはNicolas(1890)が最初に記載して以来,研究者により種々の名称が附与され,すなわち,cellules argentaffines(Masson),chromoargentaffine Zellen(Cordier),gelbe Zellen(Schmidt,Hamperl),basalgekörnte Zellen(Clara),Cellules réductrices(Masson)などがある.

短期間前処置バセドウ氏病に於ける冬眠療法並びに冬眠麻酔下手術の経験

著者: 大原梧楼 ,   千葉孝之 ,   渡辺薰 ,   澁谷三郞 ,   米沢利英 ,   塩沢茂

ページ範囲:P.821 - P.827

緒言
 現在,バセドウ氏病に於ける人為冬眠は,術中の出血防止1)や術後バセドウクリーゼ2)或は重症バセドウ氏病の手術3)等に応用されている.しかし本疾患は極めて複雑な内分泌系及び植物神経系の失調であるが故に,その病悩期間中に於ける冬眠麻酔の時期,冬眠薬物の投与量又は脱冬眠処置等により個体の生体反応は他疾患と著しく異るものである.
 我々はバセドウ氏病の手術前準備期間を短縮する意図をもつて,メチオシール又はルゴールによる前処置を殆ど行われないバセドウ氏病4例,長期の前処置によるも症状の軽快をみないバセドウ氏病1例に,人為冬眠を行いうち2例を冬眠麻酔下に於て手術を施行し,種々の観点より考察を試みたので,動物実験の結果をあわせて報告したい.

手指火傷に対する早期植皮の問題に就いて

著者: 諸富武文 ,   久本欽也

ページ範囲:P.829 - P.836

1.緒言
 火傷時の局所治療は,他の外傷と同様先づ創傷治癒の方向にむけられた.紀元前450年Hyp—pocratesは種々なる薬剤を使用して創面の治癒を促進せしめようとする試みをなした.下つて5世紀後,Galenは色々の薬剤を試みて見て多くの示唆をなし,650年にはPaulus Ainetaは,この時代迄に使用されて来た火傷に対する薬剤につき検討し,それが収斂作用と鎮痛作用の目的にかなつた種類のものであることを述べた.Gross(1829)はTavernierの方法に従い火傷を3型に分け,夫々の損傷程度に応じた治療方法を示した.この頃迄の火傷の局所治療方法は,色々の収歛剤と鎮痛剤の使用によるもので,時代の推移と共に,以前動物からの調剤品を使用して火傷面を蔽つた所を壊死の分離速進のためにサフラン軟膏を蜂蜜でフランネル上に延したものを,貼布する様に変つたに過ぎなかつた.

血管収縮剤Neosynesinの臨床的応用—殊にペントタール麻醉時低血圧に対する効用について

著者: 大越重 ,   金子義良 ,   遠藤瑞雄 ,   佐々木偉夫

ページ範囲:P.837 - P.840

緒言
 近時手術及び麻酔法の目覚しい発展普及により,胸部及び腹部等に於ける侵襲度の高い手術が比較的容易に行われるようになつてきたが,反面それに伴い術中・術後の循環障碍の危険に遭遇することも多く,之が対策の必要性が重視されるに至つた.
 従来斯様な循環障碍の対策としては第1に輸血及び輸液による体液の補給と,第1に末梢血管収縮剤の使用により重要臓器に血量を集中せしめて上昇を計ることが行われてきた.之の血管収縮剤中交感神経末梢刺戟殊にAdrenalinやEphedrinが習慣的に多く用いられているが,本剤の効果は個人差があるのみならず,時に無反応の症例に遭遇し,或は急激な血圧下降時に速効が得られず,又反復使用により効力が逓減する等の欠点を有して居る.

諸種気管内挿管に対するキシロカインの使用経験—コカイン使用との比較

著者: 新川輝康 ,   小林定道 ,   西部哲男 ,   古賀健一郞

ページ範囲:P.841 - P.844

緒言
 1943年スエーデンのLofgren及びLundquistによつて,新局所麻酔剤キシロカイン(Xylocaine)が発見されて以来,その優れた麻酔作用と幾多の薬理学的,臨床学的利点が追試,確認されて,単に局所浸潤麻酔剤として用いられるばかりでなく,更に進んで表面麻酔,脊髄麻酔,硬膜外麻酔,脊椎傍麻酔,伝達麻酔,静脈内麻酔等に広く用いられる様になり,諸外国に於いては,プロカイン,テトラカイン,コカイン,ヌペルカイン等に代つて殆んど麻酔全域に亘づて使用されている.
 一方,コカインは,古くから使用され,特にその表面麻酔作用は,他の諸種麻酔剤より優れているため,広く,安易に使用されているが,副作用として,しばしば不愉快な急性乃至慢性中毒症を起す事がある.

症例

三家族に見られた骨形成不全症の8例

著者: 岡田皖 ,   前原三郞 ,   山田進二 ,   佐々田武 ,   高舜琛 ,   眞継猛 ,   北村淸吾

ページ範囲:P.845 - P.850

 骨形成不全症(Osteogenesis imperfecta)は1833年はじめてLobstein1)−5)により特発性骨脆弱症(Osteopsathyrosis idiopathica)として記載され,1848年Vrolik1)−5)により骨形成不全症なる名称を与えられた疾患である.
 本疾患に遺伝性があることは古くから知られており,Looserは本症患者の15%に家族的出現を認め,浦山4)は本邦文献記載例105例を集めその14.3%に出現を,また池田6),7)は本邦報告の139例を蒐集して18.9%に家族的発生を認めている.

脈無し病(Pulseless Disease)の1例

著者: 田口一美 ,   多胡健吾 ,   末永泰三 ,   水田勝

ページ範囲:P.853 - P.855

緒言
 最近吾々は脈無し病の1例を経験し,逆行性大動脈撮影法によつて,その血管変化を比較的詳細に検討する事が出来,吾々の経験例が外科的に血管吻合等で治療出来ない段階にまで進行しており,特に本症の早期治療を痛感したので,こゝに報告する.
 清水教授による詳細な病態生理学的研究と外科的治療の可能性が発表せられて以来,殊に関心を深めたのもあろうが,本邦に於ける本症の報告は比較的多数にのぼつているが,不幸にしてその根治的療法によつて治療せしめ得た例は少い.特に血管外科の進歩した今日,病変の範囲が限局されている発病早期であれば,根治せしめるのは左程困難でないと考えられるのに,本例がそうであつた様に外科的治療される患者は晩期に失している感が深い.以下吾々の報告する例がこの意味で何等か寄与するところがあれば幸いである.

Hoffa氏病の1例

著者: 若杉文吉

ページ範囲:P.857 - P.859

Ⅰ緒言
 膝関節においては半月板,交叉十字靱帯,側副靱帯等の複雑な構成体が夫々に特有の病像を呈するが膝蓋腱下脂肪組織にも特異な病変の見られることがある.その一つにHoffa氏病として知られている疾患があり,膝蓋腱下脂肪組織が主として外傷により炎症性反応及び結合織の増殖肥大を起すものとされている.
 私が調査した範囲では1904年Hoffaの記載以来海外ではRost(1922),Friedrich(1927),Bircher(1927),Berger et Sicard(1931),Holldack(1933),Stack,Chasten(1949)等の報告があり,我が国では高和(1934),市山(1936),朽名(1937),徳岡(1934),諸富(1949),野田(1952)等により凡そ拾数例の報告があるが比較的稀な疾患と考えられる.

成人の腹直筋内に発見されたマンソン幼條虫

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.861 - P.863

 本邦においてマンソン条虫diphyllobothrium mansoniのplerocercoidの人体寄生の報告は少くない.宮川,安藤によれば,1882年(明治15年)Scheubeが京都で1囚徒の尿道より発見して以来,今日まで150余例の報告がなされているのであるが,その大多数が京阪神地方に見られたものである.われわれは甲状腺癌の転移かと思われた興味ある1例を経験したので,こゝに報告する.

Phenothiazine系薬物の全身麻酔に対する応用に就いて(第2報)—P391(Pacatal)を中心として

著者: 秦野滋 ,   福田邦雄 ,   田崎亟治 ,   喜々津重胤 ,   小畑龍馬 ,   田村文雄 ,   永島寬秀

ページ範囲:P.864 - P.869

1.まえがき
 Phenothiazine-derivateによる強化麻酔については,我々が第1報4)に述べたように,幾多の報告が相踵いで発表され,各種Cocktailの作用機序,病態生理,適応並びに副作用等も次第に闡明されて来ている.
 我々は1955年初頭以来,chlorpromazine(以下CPZと略),Promethazine,Diéthiazineの3つの薬物を主体とし,これにOpystan,Atropin,Procain等を加えて数種のCocktailを作り,手術の種類,部位,並びに患者に行つた術前検査の綜合結果に応じて自由に適用し,既に400余例の強化麻酔を行つて来た.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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