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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻13号

1956年12月発行

雑誌目次

特集 吐血と下血 綜説

吐血と下血

著者: 鈴木五郞

ページ範囲:P.871 - P.881

 吐血と言い下血という何れも患者並びに家族を驚かし或は不安に陥れ,医師にとつても亦唯事でない響きをもつ消化管の異変である.類するものに喀血がある.乍併又何等自覚する所なく長期に亘つて下血を続け甚しい慢性貧血に陥り其貧血を主訴として医家を訪うものもある.

喀血と吐血

著者: 靑柳安誠 ,   日笠賴則

ページ範囲:P.883 - P.889

 喀血にしても吐血にしても,その原因が胸部或は腹部内臓器等の,外部から簡単に見えないところに存在する上に,これ等各臓器の,疾患を異にしておりながら,喀血乃至は吐血という同一の症状を来すことが少くないので,その診断も難渋を極めることが多い.こゝでは,主として喀血または吐血なる症状を呈する疾患群について,而も診断学的立場から概述してみる.

出血と輸血・輸液

著者: 東陽一

ページ範囲:P.891 - P.900

1.出血と失血
 生体において血管が破れて危険状態に陥る場合その出血血液によつて,生命保持に直接重大関係をもつている器官が侵されるようなとき,例えば脳内出血などは別として,出血血液量が,その個体に対して,大量に過ぎて,体内循環血液量に不足を来たし,二次的に生命保持機能が不全に陥り,ショック状態を招来するのが失血である.
 昔から全血量の3分の1が失われるときは危険であるといわれているけれども,それは一つの水準を示すだけであつて,実際上には,出血時間の長短,破損血管の種類,個体の健康状態,外傷に伴う他組織・器官の損傷程度などによつても,大なり小なり相違するものである.

出血と手術

著者: 齊藤淏

ページ範囲:P.901 - P.918

まえがき
 出血があるので手術が必要となる場合は尠くない.しかし手術をすれば必ず出血がある.この間の問題をとりあげて書くこととなつた.吐血にせよ下血にせよそのために出血が確認されるので速かに診断もつけられ治療も始められるのは云うまでもない.もしそれが大出血であれば手術の可否が緊急の問題となつて来る.手術についてみても出血があるからこそ困難ともなり容易ともなる.かりに血液の色が赤くなく透明ででもあつたとしたら恐らく手術は今日ほどには進歩していなかつたであろう.うるさい位に血が眼につくし忙しそうに流れ出るからこそ多くの手術は手早く而も安全に行い得るのである.余談となるが 生体染色法が進歩して癌細胞だけが選択的に着色されたとしたらこれだけでも治療成績はグンとあがるに違いない.
 出血を主要な病態として出現する疾患は必ずしも減少しつつありとは云えない.出血・失血の病理はまだ充分に明かになつたとは云えない.出血対策ははなはだ進歩したとは云えまだまだ完成されたとは云えない.つまり血に明け暮れする外科医であることには昔も今も変りないと云いたい.

胃・十二指腸潰瘍出血について

著者: 勝屋弘辰 ,   小林節昭

ページ範囲:P.919 - P.931

まえがき
 胃,十二指腸潰瘍出血は,潰瘍穿孔及び狭窄或は癌性変化等と共に重大な潰瘍の併発症であり,古来この問題は幾多の人によつて論ぜられた.殊に出血の治療法に関しては即時手術をとなえる学者或は保存的治療を主張する学者又は両者の中間をとり或例には手術を行うが可とする者があり,その治療方針に関しては未だ完全に意見の一致をみていない.治療成績をみても各自それぞれの結果を出し,同じ治療方針で行つた治療の結果でも千差万別である1,4,6,7,14,37).このような差異の甚だしい報告がなされるのは治療方針或は方法が種々取られていて統一のないことにもよるが,その最も大きな原因は,如何なる程度のものを出血患者として取扱つたかという規準が各人各様で何等の統一がないことによると考えられる.何如に治療方針が同じでも,異つた規準の患者を取扱つてその治療成績を云々しても,その治療法の比較検討は難しいことは当然なことである.われわれが出血患者を診療する場合,最初に必要なことは出血患者の定義,規準を明確にすることである.これに従つてその治療方針も自ら明らかになつてくるであろう.

慢性胃炎と出血

著者: 浜口栄祐

ページ範囲:P.933 - P.950

A.吐血,下血に於いて慢性胃炎の占める地位
 急性胃出血患者のレ線検査で出血源となるべき潰瘍,癌,その他の病巣も証明できず,手術所見や剖検所見によつても不明の症例が少なくないことは昔から気付かれており,その多くのものが胃炎出血であることは一部の学者が既に指摘し,著者等13,16)も発表した.
 この方面に造詣の深いHenningやGutzeitは「胃炎の大出血は癌や潰瘍からの大出血よりその頻度が余り劣るとは考えない」とさえ云つている.しかし我国では未だこの問題に対する関心が一般に浅く,報告も少ないので,今日までの経験を主体として少しく考察を加えることとする.

食道,胃静脈瘤と出血

著者: 杉江三郞 ,   坂本啓介 ,   久保忠

ページ範囲:P.951 - P.960

 食道あるいは胃噴門部の静脈瘤はそれらの部位における粘膜下層の静脈叢が静脈瘤様に拡張膨隆したものであり,その成因としては周知の通り肝硬変症やBanti氏症状群,あるいは日本住血吸虫症等にみるいわゆる門脈圧亢進症の随伴症状としてあらわれる場合が多い.この食道,胃静脈瘤がひとたび破綻出血するとしばしば致命的な吐血を招来するばかりでなく,頻回の吐血を繰返す場合でも結局予後が不良となる点で,外科臨床の上からもひとつの重要な関心事となつている.
 またこの食道,胃静脈瘤の出血は他の疾患による出血,たとえば胃潰瘍等の吐血と鑑別診断する上にも問題となり,さらにその吐血に対する処置対策の上からは,むしろその根底に横たわる門脈圧亢進症に対する処置を同時に考慮する必要があり,あるいはまた予め吐血の防止策を構じておく必要もあるという点で実地治療上もいろいろ問題の多い領域である.

腸疾患と出血

著者: 三輪淸三

ページ範囲:P.961 - P.973

緒言
 腸内出血の問題は,吾々臨床にたずさわつている者にとつては,その専門科目が何であつても極めて重要なる問題である.と申すのは,実際的に日常遭遇する機会も頗る多く,従つて,その出血の有無を診断することの必要は申すまでもなく,その出血の因て起るところの原因をつきとめ,機を逸せず適切なる処置をなすことこそ,吾々臨床家のつとめであると思うからである.
 特に大量の出血の場合は比較的発見も容易で且つ速やかに処置され易いものであるが,小出血の場合には,うつかりすると気がつかない場合ありこれが長期にわたると重大なる結果を来すこともあるので,特に少量乍ら長期間にわたる腸出血を内科医の立場から強調いたしたい.

肝及び胆道の出血

著者: 槇哲夫 ,   対馬愼一郞

ページ範囲:P.975 - P.987

Ⅰ.まえおき
 腹腔内出血或は吐血,下血を主徴とする急性胃腸管出血は日常の診療に当つて忽かせに出来ない問題であるが,臨床診断の困難な場合も少くない.例えば出血原因並びに部位等が不明のまゝに開腹せられたり,時には診断不明のまゝ適切な治療が行われない為に死の転帰をとることすらある.吐血下血と云えば直ぐ胃,十二指腸等の出血が考えられ易いが,それが案外胆道からの出血である場合もある.我々も最近胃或は十二指腸潰瘍出血様の症状を呈した胆道系疾患に因する出血例を経験し,上部胃腸管出血を来す一疾患群としての肝・胆道疾患の重要性を痛感している.今一般論を述べる前に先づ我々の経験した5例について反省し,次で肝・胆道出血に関しての綜説を試みよう.尚本稿では肝疾患による食道静脈瘤からの出血等については触れないことゝした.

止血剤に関する知見補遺

著者: 円山一郞 ,   秋山実

ページ範囲:P.989 - P.991

 そもそも止血剤を使用するに当つては,先ずその作用機序を熟知すると共に止血機構に関しその概念を知つておくことが必要である.即ち止血には1.血液凝固機構2.血小板の機能3.血管系の反応の3つの機構が関与し,これ等が互に協力して始めて止血が行われるものと考えられている.尚このことは出血傾向を有する者は1.血小板の減少を主とせる群2.毛細血管抵抗減弱を主とせる群3.凝固機構の変化を主とせる群4.その何れにも属しない群に分類されると云う吉植氏の研究成果からみても明らかなところである.然るに止血剤に於ては血液凝固機構に関与するものは数多く現われ,広く用いられているが,その他の機構に関与するものは僅かに存するにすぎない現状である.この時に当りAdrenochromazoneなる強力な止血作用を有する血管強化剤が現われ,これに関する報告が内外より多数に発表されているので,私共はこの製剤たるアドクノンと従来より常用されているトロムボゲン,カチーフ等とにつき出血時間,血液凝固時間,皮膚毛細血管抵抗力等の点より比較検討し,2,3興味ある所見を得たので茲に報告する.

症例

患者血清中に発見した抗M正常抗体について

著者: 田中明 ,   橫山三男 ,   堀江茂

ページ範囲:P.993 - P.996

 1928年Landsteiner及びLevineがMN式血液型を発見し1),凡ての人血球は,従来のABO式血液群とは無関係にM型,N型及びMN型の3種類に分類されることを報告した.其の後ClausenはMN型の不適合輸血によつて抗M又は抗N免疫抗体が生ずることはないと報告した2).井関等は正常家兎血清中に抗N抗体を発見し3),更に正常人血清中にも抗M抗体を発見した.次いで欧米において,正常人血清中に,抗N正常抗体を発見したという報告が出され5-7),吾国においても,飯島及び関谷が抗M正常抗体について報告した8,9).特に飯島は輸血により抗M免疫抗体が出来て,それが輸血副作用の原因になり得ると報告している.吾々も,1例の患者に,かなり高い力価を有する抗M正常抗体を見出したので報告する.
 患者は既婚婦人,38歳.昭和29年8月肺結核の診断で,肺葉切除術をうけるため宇都宮済生会病院に入院した.現疾患以外に特記すべき疾患にかゝつた事はない.輸血をうけた事はなく,流産も早産もない.子供は3人で健在している.夫も健康である.兄弟は1人発疹チフスで死亡した以外は,現在3人健在である.

手術後貧血患者にたいするヘマトンの使用経験

著者: 菅原古人 ,   中村芳男 ,   元木賢治 ,   宮崎雄二 ,   安井愼太郞 ,   鎌田幸雄 ,   松藤和彥 ,   平井広樹

ページ範囲:P.997 - P.1000

〔1〕
 胃,腸管など消化器系の疾患で,手術により術前の愁訴はまつたく消失し,術後の経過も良好でありながらなお貧血の症状を訴え,また血液所見においても二次性貧血の所見を呈するために退院がのびのびとなり,そのため日常生活への復帰がおくれている患者がある.われわれはこのような患者にたいし,ヘマトン(1錠中乾燥硫酸鉄50 mg,乾燥肝臓末30 mg,葉酸2 mg,ビタミンB122γ,ビタミンB21mg,アリナミン1mg,ビタミンC20 mg含有)を投与し貧血の治療をおこなつたところ,貧血の恢復とともに一般状態も良好となり,早急に日常生活へ復帰しえた症例をもつたので報告する.

保存血によるマラリア感染例

著者: 山內博 ,   長野武正

ページ範囲:P.1001 - P.1002

 数年来保存血の需要が著しく高まつて,大量輸血は勿論,其の輸血操作が新鮮血よりも簡単であるために従来なら新鮮血を用いた場合にも好んで保存血を用いるようになつた.従つて其の使用量は驚異的数字を示しつつある.然し保存血を使用する場合には,新鮮血と異つて幾つかの特別な注意が払われねばならない.浜口氏等2)によれば,血液は保存によつて其の諸性質が不断に変化し新鮮血の特質が次第に失われるものであるから,大量輸血と雖も新鮮血を用いた方がより効果的であることは事実であるが,実際問題として実行困難のことが極めて多い.
 幸に保存による変化は1週間以内では軽微で,1週を越えると次第に高度となり,以後,日を経るに従つて益々顕著となることが明らかにされているので,採血後1週間以内に使用すれば略々新鮮血を用いたと同等の効果が期待出来る.と同時に保存血副作用中最も警戒すべき溶血現象を回避出来ることにもなる.従つて我々は極力採血後1週間以内のものを用いるように努めて来た.

保存血に依るマラリア感染

著者: 加藤貞三郞 ,   加藤敏昌 ,   吉富久吉

ページ範囲:P.1003 - P.1004

緒言
 保存血の利用度は最近その度を昂めて来たが,それに伴つて副作用,或は事故が再三報ぜられている.その一つにマラリヤ感染が数えられるがその予後の良好なるため,従来ともすれば軽視し勝ちであつた.保存血による感染例の発表は極めて少く一層この傾向が強い.然しながら最近目立つて行われる大量輸血或は瀕死の患者には致命的なものとなる事が考えられる.茲に発表する症例も幸い早期に適切な処置をなし得て,ようやくに救い得た一例である.

縱隔内甲状腺腫の一例

著者: 兒島秀行 ,   佐藤顯治

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 近来気管内麻酔の進歩に伴い,開胸手術が比較的容易に行われる様になり,縦隔腫瘍の摘出成功例も次第に増加しつつある.吾々は胸腔内甲状腺より発生した縦隔腫瘍の摘出に成功したが,術後悪性変化のため死の転帰をとつた症例に遭遇したので,ここに報告する.

胸腔内甲状腺腫の一例

著者: 古本雅彥 ,   塩田欣栄

ページ範囲:P.1009 - P.1011

緒言
 胸腔内甲状腺腫の概念については,1883年Wö—lblerがはじめてその本質を明らかにしているが,その後欧米においては可成り多数例が報告され,又この問題について検討が加えられている.之に反し本邦での報告例は殆んどみあたらない.われわれは最近津田外科教室において,レ線学的に縦隔洞腫瘍が疑われた胸腔内甲状腺腫患者を経験したので報告する.

狹心症手術に合併せる心室細動例

著者: 堀內藤吾 ,   大原到

ページ範囲:P.1012 - P.1016

1.緒言
 外科手術に偶発する心室細動に対しては近年漸く外科医,麻酔医の間に注意が喚起されて来たが,本邦に於ては胸部外科の発達が遅れた故もあつて,その臨床報告はまだ僅か数例を数えるのみである.従つて我々の心室細動に対する知識の多くは欧米の成書や報告によりくはしく知られて居るが,実際に当つて如何に適切にしかも敏速に対処すべきかまだ充分なる訓練を経ていない.Beckは「これからの外科手術に際しては,心臓蘇生術について訓練を積んでいない外科医にはメスをとらすべきでない」とさえ極言して居る.
 我々は最近狭心症に対する胸部交感神経節切除術に際して,心室細動の発生した症例を経験したので報告する.

心嚢内出血の一例

著者: 伊藤信義 ,   岩崎陽一 ,   井上治巳

ページ範囲:P.1017 - P.1019

緒言
 心嚢内出血は甚だ稀な疾患であり,殊に突然死の原因となることが多いために,臨床家によつて診断され,経過が観察されることは殆んどない.その報告も多くは病理学者によつてなされている.
 私等は最近,膵頭部癌患者に膵頭部十二指腸合併切除を行い,後療法として8—azaguanin投与中突然心嚢内出血を来たした興味ある一例を経験した.

非青色性Fallot氏四徴症の一例

著者: 田口一美 ,   砂田輝武 ,   寺本滋 ,   松岡潔 ,   中野昭典

ページ範囲:P.1020 - P.1024

緒言
 吾々は最近,非青色性Fallot氏四徴症の一例を経験し,術前心臓カテーテル法,その他により一応本症を疑つたが,とくに吾々の症例がX線学的に心臓形態がFallot氏四徴症に類似せず,また心臓が異常に拡大し,為に診断が困難で肺動脈弁狭窄兼高位心室中隔欠損症と診断し,Brock氏手術施行後2日目心細動の為死亡したが,剖検により非青色性Fallot氏四徴症である事を確認する事が出来た.非青色性Fallot氏四徴症は,本邦では木本外科教室例に続き第2例である.欧米文献にも非常に珍らしい疾患であるので此処に報告する.

興味ある発生機作による肝皮下破裂の1例

著者: 益満義躬 ,   樋口昭司 ,   橫屋一郞 ,   田中正一三

ページ範囲:P.1025 - P.1027

緒言
 各種腹部臓器の皮下破裂は決してまれなものではないが,最近になり諸産業の発展とともにしだいにその報告例も増加している.とくに交通事故によるものが多く,今後交通量の激増が予想されることより,ますます本傷害の発生例が多くなるものと思わねばならない.しかして早期診断,早期治療がその予後を大きく左右する本症の診断にあたり,臨床的諸検査,諸症状の精査が重要なことはいうまでもないが,受傷後一定期間無症状に経過するばあいもあり,なおかつ体表面になんらの損傷もみとめられないばあいなど,本症の確診を欠き手術時期を失することもすくなくないので受傷時の状態を精知してのち,患者に対処することが大切である.
 最近われわれは飛来した土塊による右背部挫傷によつて肝右葉前縁の皮下破裂をきたした比較的稀れな発生機作をもつと思われる症例を経験治癒せしめたので,その発生機作につき考察をくわえ報告する.

高度の腹直筋離開を件う早産児臍帯ヘルニヤの一治験例

著者: 近藤芳夫 ,   石井好明 ,   加藤二郞

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 臍帯ヘルニヤはGruber,Thudichum,Lindfo—rs等に従えば概ね5000回の分娩に1回経験される奇型であるが,我々臨床家を訪れる機会は甚だ少く,我国の報告例は70例に満たず,その中,手術成功例は20例,手術死亡率は50%で,欧米に於けるZeitlin,Gross等の成績も略々同様の比率を示している.我々は最近9カ月早産児の臍帯ヘルニヤの1例を経験し生後24時間に一次的根治手術を行い救命し得たので報告する.

三胎に見られた先天性股関節脱臼

著者: 柳田隆

ページ範囲:P.1030 - P.1032

1.まえおき
 先天性股関節脱臼の遺伝問題に関連し整形外科の分野においても双生児の研究が進むにつれ,先天股脱双生児の報告も蒲原の18例,近藤らの8例,菊野の4例など,わが国においても約40例の報告が見られるが,今回私は三胎にみられた先天股脱を経験した.三胎そのものゝ分娩が稀である上に三児ともに先天股脱を伴つていることはきわめて稀であり,遺伝学的にも興味あると考えられるので,こゝに報告し,諸賢の御参考に供する次第である.

虫垂炎と併発した卵巣血腫の一例

著者: 自見松雄

ページ範囲:P.1033 - P.1033

卵巣出血は産婦人科では症例も多いと言われるが,外科でも最近症例報告が行われているが比較的少ない.局所的に虫垂と卵巣とは近接して居り発症時所訴も似ている点が多いので屡々誤診されたり,又虫垂炎で開腹して卵巣に出血を認めるという場合が多い.私は最近慢性虫垂炎があつて偶々激しい下腹痛を訴えたので手術を希望して来診した症例で,開腹して右卵巣に血腫を作つていた例を経験したのでここに追加報告する次第である

ヒルシュスプルング氏病の一治験例

著者: 佐野開三 ,   高木彬

ページ範囲:P.1034 - P.1038

 本症は結腸殊にS字状部腸管の肥大拡張と,頑固な便秘を来す幼小児疾患として,1888年Hirs—chsprung1)が初めて記載して以来,諸家により多数の報告をみているが,その成因及び治療法に関しては,定説をみないまま最近に及んでいる.1948年Whitehouse,Kernohan2)及びSwenson等3)の先天性神経節欠除説に基く根治手術のたいとうにより,治療成績も大いに上つて来た.最近吾々も8歳の男子における本症の一治験例を得たのでここに報告する.

巨大なる膝窩動脈瘤の剔出手術例

著者: 佐々木行雄 ,   相星市郞 ,   下地晋 ,   守屋万喜夫

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 近年,退行性変化,とくに血管系の病変が増加しそれとともに血管系病変の予防および修復がより積極的となつてきている.血管系病変のなかで動脈瘤について古くから文献に記載されているがその頻度は大動脈にもつとも多く,膝窩動脈,股動脈,頸動脈,鎖骨下動脈などがこれについでみられるとされているが,膝窩動脈瘤についての報告は,この30年来のわが国の文献では,20例を超えずとされている.われわれは最近きわめて巨大なる右膝窩動脈瘤を手術的に剔出,しかも手術後なんらの障碍なく治癒せしめた症例を経験したのでこれを報告するとともに,その手術法につき考察を加えた.

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「臨床外科」第11卷 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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