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文献詳細

雑誌文献

臨床外科11巻13号

1956年12月発行

文献概要

特集 吐血と下血 綜説

出血と手術

著者: 齊藤淏1

所属機関: 1日医大

ページ範囲:P.901 - P.918

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まえがき
 出血があるので手術が必要となる場合は尠くない.しかし手術をすれば必ず出血がある.この間の問題をとりあげて書くこととなつた.吐血にせよ下血にせよそのために出血が確認されるので速かに診断もつけられ治療も始められるのは云うまでもない.もしそれが大出血であれば手術の可否が緊急の問題となつて来る.手術についてみても出血があるからこそ困難ともなり容易ともなる.かりに血液の色が赤くなく透明ででもあつたとしたら恐らく手術は今日ほどには進歩していなかつたであろう.うるさい位に血が眼につくし忙しそうに流れ出るからこそ多くの手術は手早く而も安全に行い得るのである.余談となるが 生体染色法が進歩して癌細胞だけが選択的に着色されたとしたらこれだけでも治療成績はグンとあがるに違いない.
 出血を主要な病態として出現する疾患は必ずしも減少しつつありとは云えない.出血・失血の病理はまだ充分に明かになつたとは云えない.出血対策ははなはだ進歩したとは云えまだまだ完成されたとは云えない.つまり血に明け暮れする外科医であることには昔も今も変りないと云いたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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