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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻2号

1956年02月発行

雑誌目次

綜説

潰瘍性大腸炎,特にその外科的療法に就て

著者: 槇哲夫 ,   鳴梅弘泰

ページ範囲:P.65 - P.75

I.まえおき
 最近我々は潰瘍性大腸炎の患者に結腸切除術を施行して治癒せしめ得た2症例を経験した.本疾患は非特異性炎症が結腸粘膜を犯し,慢性の経過を辿る重篤なる疾患であるが,その本態のみならず治療法に就ても未だに種々の問題が残されている1-3).殊に本症は外国に於ては多数の報告例を見るが,我国に於ける手術報告例は未だ極めて寥々たるものがある.こゝに症例を簡述し主として本疾患に対する外科的療法に就て検討を加えて見たい.

手術後カリウム代謝の臨床

著者: 小池重義 ,   黑柳彌壽雄

ページ範囲:P.77 - P.81

§緒言
 外科侵襲と輸液の研究に於て,蛋白,水分投与の問題と共に,電解質平衡に関する検索は数多認められるが,従来カリウムの変動に就いては余り考慮されていなかつた.これはその特異とする臨床的所見を欠き,血清ガリウム濃度が10m.e.q/l以上に上昇しなければ心臓の障碍を引き起さず亦細胞膜は陽イオンを比較的透過させないと考えたからである.
 身体内のカリウム含量は平均175grで体重の0.25%を占め,この内約3grが細胞外に存する1-3).このカリウムは食餌中に1日平均3〜4gr含まれ,1〜2grのカリウムは腸内に分泌されて再吸收,肝,内臓に直接とり入れられ,そこから再び血清中に出て,筋細胞,赤血球,脳及び骨髄に吸收,カリウムは細胞境界をこえて,細胞の新陳代謝活動に関係する4).即ちカリウムイオンの存在に依つて糖合成5),組織蛋白合成6)等重要な役割をもつものである.

自律神経遮断剤を用いての麻醉法

著者: 黑田秀夫 ,   鈴木正貢 ,   牧安孝 ,   松本浩生

ページ範囲:P.83 - P.86

 最近に於ける麻酔の発達はめざましく,外科一般に寄与する所,極めて大である.特に半閉鎖式,閉鎖式全身麻酔法の発達により,今迄不可能とされていた手術が,刻々と克服されつゝあるのが現状であろう,しかしながら所謂Poor riskの患者に対する麻酔法としては,尚理想的とは云い得ない.
 こゝに於いてPoor riskの患者に対しても,安全に施行される麻酔法の必要が痛感され,1951年H. Laborit一派によつて提唱された人為冬眠が,これを幾分なりとも解決してくれたとの報告に接した.

新自律神経遮断剤コントミンPZC2の使用経験

著者: 吉田昌純 ,   野口升堂 ,   大淵竜志 ,   鮫島拓郞 ,   井出銳次 ,   瀨ノ口敬介 ,   北原淸二 ,   內田竜哉

ページ範囲:P.87 - P.91

緒言
 生体に刺戟又は侵襲が加えられると防禦或は保身反応が起る.人為冬眠はこの防禦反応の根源である神経内分泌反応,特に自律神経系を鎮静して無駄な反応による消耗を避けようとするものである.人為冬眠就中薬物冬眠(所謂フランス法)が特にこの目的の為に用いられるのであるが,我々は従来メガフェン,ラルガクティールの優秀な自律神経遮断剤の入手が不能な為に人為冬眠の遂行に挫折を来し,之等優秀な自律神経遮断剤の国産される事を要望してきた所,幸に今回吉富製薬に於て生産に成功され,我々も本年3月より実験的並に臨床的にこれを応用する事が出来た.未だ充分にその成績を追究してはいないが,今までの所ではかなり著効を得ているのでこゝに報告する次第である.

整形外科領域に於けるハイドロ・コーチゾン(コートリル)の局所使用

著者: 吉野良平 ,   中島勇 ,   林原明朗 ,   尾辻浩二 ,   村岡斌

ページ範囲:P.93 - P.96

 1949年Henchにより関節リウマチに於けるコーチゾンのすばらしい効果が報告されて以来,経皮又は経口投与した場合のコーチゾンの抗リウマチ効果は過去数年間の夥しい報告で証明されているが関節炎を起している関節腔内に直接使用した場合の記載は少ない.副腎皮質ホルモンを直接リウマチ性関節炎を起している関節内に注入したのはThornが最初の様である.彼は1950年関節リウマチ患者の膝関節にハイドロコーチゾン10mgを注入し迅速な局所効果を認めた.しかしこの局所効果と共に一般症状の改善があつたのでこの作用は全身性であつたものと考えた.同じ頃Hollander,Freyberg等はそれぞれ数例の関節リウマチの膝関節にコーチゾンを注入してみたが主観的,容観的症状に何ら一貫した変化が認められず殆んどの例に実際的な価値を認めなかつた.

テラプチクの効果について

著者: 米沢利英 ,   塩沢茂 ,   靑山千世

ページ範囲:P.97 - P.102

まえがき
 麻酔時及び外科手術時に遭遇する呼吸,循環障碍に対して従来アミノコルヂン,カンフル誘導体が用いられて来たが,最近ビスウレア誘導体がより強力な,より長時間に亘る呼吸循環機能促進作用を有することが知られ,ここにテラプチクThéraptique(N-N′-Dibutyl-N-N′-Dicarboxy-Morpholide-Ethylene diamine〔C20H38O4N4〕3cc中に45mg含有)の登場を見た.我々はこのテラプチクの効果を見るため,動物実験を行ない,更に36例の臨床経験よりその効果を確かめ得たので報告する.

テラプチクの血圧作用の実験的研究

著者: 曲直部壽夫 ,   藤本淳 ,   杉本円諦 ,   星田嘉朗 ,   佐藤安正 ,   國技亮 ,   奥信夫 ,   芝卓彌

ページ範囲:P.103 - P.105

1.緒言
 近時麻酔学,抗生物質の研究の進歩,或は各疾患の病態生理の解明と相俟つて外科手術,特に心臓外科の如き大手術も容易に行われる様になつたが,斯る手術にあたつて術中,術直後の患者の管理も亦極めて重要な問題である.斯る手術に偶発する呼吸並びに循環障碍に処する為,従来各種の薬剤が使用されて居るが,著者等は最近この目的に用いられる薬剤「テラプチク」(N-N′—Dibutyl—N-N′—Dicarboxy-Morphoid-Ethylendiamin)(以下「テ」と略す)について血圧に対する影響を犬について実験した.本実験では特に急性出血に対する本剤の動脈圧に及ぼす影響を観察した.

脳血管造影法に於けるピラセトン及びウロコリンの使用

著者: 植田隆 ,   泉汎 ,   光信昌明 ,   田中敏夫 ,   位藤昇三

ページ範囲:P.107 - P.112

 私共の教室では,脳血管造影法を実施する様になつてから,未だ日が浅いが,過去の経験を通じ最も悩まされる問題は,鮮明な像を得んとする為の努力と,副作用の強弱及び其の発現瀕度とが比例する事である.即ち造影剤の濃度を高くし,急速に注入すればする程,確実な鮮明像を得るが,それに伴う副作用が強くなるのである.
 70%ピラセトンは常に鮮明な像を得る事が出来るが,注射直後の痙攣,注射後の一過性昏睡状態を伴う事が多い.吾々は造影剤注入の直前より,チオペンタールソーダの静脈内麻酔,或はエーテル吸入麻酔を施行しているが,この様な不愉快な副作用を防止する事は出来なかつた.遂に一例(第VI例)に於て,術後昏睡状態五日間持続,凡ゆる療法を試みるも覚醒せず遂に死亡すると云う憂目を見た.

逆行性腎静脈撮影法

著者: 高島信治

ページ範囲:P.113 - P.116

緒言
 レントゲン線の発見は医学の各分野に劃期的進歩をもたらしたことは申す迄も無いが,泌尿器科学の発展も又これに負う所甚大である.即ち1906年Voelcker,Lichtenbergは始めて造影剤による逆行性腎盂撮影を試み,1923年にはRowntree,Osborne et alに依つて静注腎盂撮影法が創始され,現在に至るも必須の診断法となつている.又泌尿器科領域に於ける腎血管撮影法は腎動脈に於ては早くから種々試みられている.1925年dosSantos1)が腰部より直接大動脈を穿刺し,造影剤を注入撮影し,腎動脈撮影法として1929年に発表している.その後O.A.Nelson2,3),F.B.Wag—ner et al等により改善普及されて来た.我が国に於ても1936年市川氏4)は股動脈の外側枝からカテーテルを挿入,これより造影剤を注入し腎動脈撮影に成功している.

症例

先天性総輸胆管拡張症の1例

著者: 市川茂夫

ページ範囲:P.117 - P.118

 本症はDouglas 1852年以来原因不明のまま特発性の名が冠せられ比較的稀な疾患とされて来た.Shallow,渡辺等は先天性要因大なる疾患として先天性総輸胆管拡張症Congenital CysticDilatation of the Common Bile Ductなる名称を提唱し,一般化する傾向にある.
 本症は若年者に多く30歳を超えて発病するものは極めて少い.私は壮年者における本症に遭遇したのでここに報告する.

20%及び10%サリチルアミド(サリアミン)注射による治療経験

著者: 小野泰一郞 ,   下尾廸生

ページ範囲:P.119 - P.122

 神経痛及びロイマチス性疾患に対しては,従来極めて多くの薬物的及び理学的療法が試みられているが,本疾患に対する治療法の多様性は,本疾患の治療の困難な事を示すものと云わねばならない.薬物的療法としては,従来サリチル酔製剤が広く使用されているが,本剤使用に当つてその療法の目的を充分に達するに足る量を使用する場合には,悪心,嘔吐,耳鳴,眩暈,頭痛等の不快な副作用を起す事が多い.本剤の斯る副作用を除去し,その鎮痛,解熱作用を向上せしめんとする試みは,種々報告されているが,近来米英に於いてサリチルアミドの研究報告が行われ,その優秀な治療成績に対して諸家の臨床的興味が払われるに至つた.
 今回我々は吉富製薬より,20%及び10%サリアミン注射液の提供を受け,臨床応用を試みる機会を得たので,その症例の2,3を示して成績の概要を述べ,考察を加えることゝする.

多発性骨髄腫の1例

著者: 土橋秀孝 ,   向井力

ページ範囲:P.123 - P.128

緒言
 多発性骨髄腫は1845年William,McIntyreが骨髄から原発せる腫瘍を始めて記載し,同年11月にBence-Jonesが動物の尿よりBence-Jones氏蛋白体なる物を発見し,本疾患にも之が出現を見る事を提唱した.その後1864年Virchowが骨髄系造血組織に原発する腫瘍のある事を認め,之を骨髄腫と命名した.然し之が病理解剖学的或は血液学的本態の把握に混頓としていたが,その後1873年Rustitzkyが本疾患の一例を報告し,且Dalrympleが病理組織学的に初めて記載し,次いで1889年Kahlerが此の種疾患を8年に亘り臨床的病理学的に観察し,其の詳細な報告を行つて此処に多発性骨髄腫の存在を確立するに至つた.為に本患疾は一名又Kahler氏病とも云われている.欧米の文献に依れば現在迄に425例を数え,本邦に於ては約65例余を数えるのみで比較的稀な疾患に属するものであるが,我々も亦外傷に依る骨折及び神経痛として誤診しX線所見,血液像及び死後肋骨標本切除に依り始めて多発性骨髄腫と判明せる高年男子の一例を経験したので茲に報告する共と,文献的考察をなし諸賢の御批判御指導を仰ぐ次第である.

原爆罹災者を母体とする先天性巨大臍帶ヘルニアの1例

著者: 黑田秀夫 ,   鈴木正貢 ,   國頭隆

ページ範囲:P.129 - P.130

 最近吾々は,10年前に広島に於て,原子爆弾に罹患し,原子症の為に,死生の間をさまよつた婦人を,母体とする.高度の臍帯ヘルニア児を経験したので,茲に報告する.

大網捻轉症の2例

著者: 北角昌也 ,   菊池一男

ページ範囲:P.131 - P.133

まえがき
 急性腹部症のうち稀にみられるものの一つに大網捻転症がある.Aimesに依ると文献上1858年Marchetteに依つて初めて報告されたと云うことである.本症には特有の症状がないために術前の診断は甚だむずかしい.外国においては多数の症例が発表されているが,吾が国においては今日迄僅かに15例が報告されているに過ぎない.最近吾々は両教室に於て各1例ずつを経験したので,ここに併せて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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