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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻3号

1956年03月発行

雑誌目次

綜説

持続的脳室ドレナージの効用

著者: 桂重次 ,   鈴木二郞

ページ範囲:P.135 - P.139

緒 言
 一昨年暮より脳圧の研究の一助として脳手術後側脳室前角,或いは後角に2.5mm径のポリエチレン管を挿入し(第1図),術後の脳圧の消長を観察したが,この方法が術後の高脳圧に対する処置という意味ばかりか,その他の点に於ても数多くの利点を有する事が次第に判つて来たので紹介して見たい.
 持続的脳室ドレナージ法の歴史は古く,1876年Lister1)が脳水腫の治療法としてこれを奨め,革命的療法と迄喧伝され,続いて1881年Wernicke,1886年Keenもこれを推奨しているが,1891年Keen2)はこの方法を行つて失敗した例を報告している.次いで1900年頃迄Pott3),Robson,Franke,Broca4),Wyes,Hahn,Dujan,Kocher,Power5),McCosk,Trinkler6)等も行つて大部分が失敗している.今世紀に入つてからは,脳手術後の高脳圧の処置としても行なわれる様になり,Werden7),Schmidt8)Ingraham9),Craw—ford10),Poppen11),F.Robinson12),Bering13),荒木14)等が夫々の器具,方法を用いて行なつて,その効果を謳つている.

胆管撮影所見より見た我国の所謂無石胆嚢炎

著者: 福島高文 ,   久保七郞 ,   津島惠輔

ページ範囲:P.141 - P.146

まえおき
 我国に於ては無石胆道疾患は極めて多く,その解明は一般臨床家の一大関心事でなければならない.それにも拘らず従来より胆道撮影は主として胆石症殊にその診断的意味で用いられていた傾向にあつた.福島1)はさきに所謂無石胆嚢炎を主とせる2,3胆道疾患に術後胆道撮影を行い,その胆管影像の所見と撮影に先立つて測定せる胆道基礎圧,及び発痛値等を総括することに依つてこれ等胆道疾患の病的生理迫求を試み,弘前医学誌上に発表した1,2).今回はその後の症例を追加し,更にそれ等症例に併用した生理的試験の成績からそれ等疾患の際のオツジ氏筋の態度に就て一層精密な検討を加えてみた.

淋巴腺結核症に対する手術—抗結核剤併用療法の検討—特にネオ・イスコチン後療法の意義について

著者: 石橋幸雄 ,   竹內彰

ページ範囲:P.148 - P.152

 近時,淋巴腺結核症に対して抗結核剤,殊にSM,PAS,INAH等を全身的或は局所的に使用した経験が数多く発表されている(島田1),田坂2),木下3),山下4),中村5),岩野6),西岡7),鈴木8)等)。之等の報告は取扱つた材料,病型などによつて多少成績に差異があるが,大体淋巴腺結核症の30〜50%位には著効を認めており,永年本症治療の王座を占めて来た照射療法も,今や急速にその立場を失いつつあるかの観があるが,実の所化学療法も現段階では従来の外科的切除療法および局所の照射療法に比較して決して劃期的な治療成績をあげているわけではなく,又その有効な治療様式についても未だ一致した見解は認められない.ひるがえつて淋巴腺結核症の病変の特殊性並びに抗結核剤の作用機序を併せ考慮する時,我々は化学療法にも自ら一定の限界があり,単独では疾病を永久に停止性とすることは出来ないことを知るのである.

骨関節結核に於ける結核菌の耐性に就て

著者: 高山瑩 ,   佐藤二郞 ,   大戶輝也 ,   三好邦達

ページ範囲:P.153 - P.159

緒 言
 我々が先に述べた如く,骨関節結核に長期の化学療法を施した場合,その主病巣内及び冷膿内の結核菌の検出率は低下し,就中,培養法に於て著しいものがある.それに伴つて培養法では陰性であるが螢光法では陽性を示す症例に屡々遭遇するようになつて来たが,かゝる結核菌の中には発病能力のあるものも存在し得るという事実を認めた.また,1年以上の長期化学療法を受けた骨関節結核の主病巣より,培養法は陰性であるが動物接種で結核菌陽性の症例を経験している.
 かゝる事実より,化学療法下の骨関節結核の主病巣内の結核菌が,抗結核化学療法剤に対し如何なる感受性を有しているかゞ誠に興味ある問題となり,また臨床上重要な問題である.

ナイトロミンによる腸管癒着防止に就て

著者: 劉四朗 ,   久野一郞 ,   劉善夫 ,   中田久夫

ページ範囲:P.161 - P.168

1.まえがき
 開腹術に際し侵襲が腸管に及ぶと,腸管に癒着現象が見られる.この腸管が癒着し易い事は炎症の拡大防止に大いに貢献するが,一方これが原因となつて閉塞性乃至絞扼性イレウスを惹起し,手術を必要とする事は非常に多い.第54回外科学会宿題報告で斎藤教授は,大病院,教室19年間(昭10〜昭28年)のイレウスの集計を発表して居られるが,イレスウ総数12,614例中,手術後イレウスは3,180例を占めている.この他にイレウス症状を惹起しない迄も,術後の癒着障碍に悩む者を加えれば,その数は莫大なものになるであろう.この様な事実は,開腹術後の癒着による障碍が如何に多いかを物語つている.従つてこの癒着防止の問題は,我々外科医の屡々遭遇するものであり,しかも困難を感じるものゝ一つであるので,古くから本邦及び欧米で多数の研究があるが,確実効果的な手段がない所から,今日も尚盛んに論議され研究されているのが現状である.

膵臟疾患に於ける血清及び尿カタラーゼの意義

著者: 神谷喜作 ,   早瀨友博 ,   黑岩常泰 ,   三浦友旻

ページ範囲:P.169 - P.174

 膵臓疾患が外科的治療の広い対象となたつことは誰しも認めるところである.しかし膵臓疾患の診断の困難なることは依然未解決である.従来その診断法の一つとして,血清並びに尿中のアミラーゼの変動に基づく各種アミラーゼの定量法が広く行われ,就中Wohlgemuth法は一般検査室でよく用いられている方法である.
 然るに,最近,築山・梅田氏等はWohlgemuth法によるアミラーゼの測定値は,疾病の経過に一致せず,発病後極めて早期に正常値に戻る傾向があり,発病後相当時日を経過した場合には診断的価値が少いといつている.そこで,このような場合でも,尚診断的価値を有する方法として,血清並びに尿中のカタラーゼの定量が提唱されている.

特発性脱疽に対する塩酸「プロカイン」靜注療法

著者: 岩森茂 ,   亀田仡 ,   池田多可志 ,   落久保幸夫 ,   芦山辰朗

ページ範囲:P.175 - P.177

緒 言
 特発性脱疸(以下特脱と略)即ちThrombo—angitis Obliteransは既にBurger等多数の学者により其病因論が明かにされておるとは言え,尚今日に多くの疑問を残す30歳前後の男性に多い難治な末梢血管疾患である.
 本疾患の治療に関しては,古くから種々の方法が試みられ或は賞用され或は廃棄されて来ている.

Chlorpromazine(Wintermin)による術後疼痛の除去

著者: 陸川容亮 ,   行実直美 ,   高橋司

ページ範囲:P.179 - P.183

緒 言
 手術後の疼痛は通常1〜2日間の僅かな期間にも拘わらず患者の肉体的精神的恢復に及ぼす影響は過小視出来難い問題である.それ故に現在まで多数の薬剤と投与法が本目的に応用せられ,日常利用するに事欠かない程ではあるが,尚此の種の研究が試みられているのは,「副作用がなく何れの症例にも完全に除痛効果を挙げる」と云う簡明な目的にすら合致する適当な薬剤が(或は投与法)数少いからである.
 術後の疼痛が手術創の大小とは平行しないのは勿論であるが,その強さ持続等は手術部位,範囲,手技の巧拙,患者の疼痛に対する敏感度,忍耐力使用薬剤に対する適合性,年齢,性別等の諸要約により全く多種多様であつて,多くの症例に奏効する方法でも必ず効果不満足の症例に遭遇することは屡々経験する所である.

各種疼痛に対するアミピロの効果に就て

著者: 德岡俊次 ,   重富正三

ページ範囲:P.185 - P.190

 ピラツオロン系の解熱剤であるアミノピリンは非アルカロイド性の鎮痛剤としても亦有用であつて,1929年Schottmüllerは急性ロイマに対してアミノピリンの大量投与が疼痛除去に著効を奏することを知つた.しかしアミノピリンは水に難溶な為に,胃腸障碍を伴うことの多い経口投与に俟たねばならないという欠点がある.従つてアミノピリンの非経口投与については今日迄多数の研究がなされてきた.
 1952年京都大学薬学科及び薬理学教室で高橋,荻生両教授等によつてジアルキルアチル誘導体であるアミノプロピロンが創製されたが,毒性の少い本剤は疼痛刺戟閾値を上昇せしめ,アミノピリンの溶解度を増すのみでなく,アミノピリンと併用すれば相乗的鎮痛作用を発揮するという幾多の利点を持つものといわれる1)2)3)4)

慢性多発関節リュウマチに対するイルガピリン坐薬の効果

著者: 淸水源一郞 ,   提島孝 ,   米井中 ,   綿谷茂彌

ページ範囲:P.191 - P.194

 イルガピリンがいわゆるリュウマチ性疾患の治療剤として有力な薬剤である事は多くの報告によつても知られるし,又実地医家の大多数によつて認められている.特に慢性関節リユウマチの治療にCortisonと並んで有力な治療剤である事も又良く知られた事実である.しかしながら本剤が一般に広く用いられるにつれて,不愉快な副作用も又多く訴えられ,或は又不注意な使用法により神経麻痺,皮下膿瘍形成,或は又筋膜壊死等の重症なる障害を来すことが皆無ではない.慢性関節リユウマチの治療は本疾患の特性上極めて長期にわたる持続的投与が要求される為イルガピリン療法に際しても種々の投与方法が発表されているが吾々は今回イルガピリン坐薬を入手したので本坐薬が慢性関節リユウマチにどの程度有効であるか,又副作用はどうか,他のイルガピリン剤に比して効果はどうか等の諸点について検討を加えた.

症例

下顎骨陳旧性骨欠損に対する自家遊離骨膜骨片移植の経験

著者: 手島宰三 ,   中島秀典 ,   德高良造

ページ範囲:P.195 - P.200

緒 言
 下顎部の強度開放骨折や骨腫瘍の剔出後生じた下顎骨陳旧性骨欠損部に対して,従来から骨移植による補填成形法が応用されて居り,決して珍らしい事ではない.本症は口腔外科と整形外科の境界疾患であつて,整形外科医と歯科医が協力する事によつて満足な成果を得る事が出来るものである.又日常屡々経験する症例では無いから所謂慣れない手術なる為に所期の目的を充分に達し得ない事がある.本手術にも所謂「こつ」がある訳である.此の様な意味で我々の乏しい経験と考察を発表して,将来下顎骨欠損部の成形的補填術を実施するに際して参考になれば幸甚である.又骨移植法に関して現今尚諸問題があるが,その概念を簡単に論じた.

受傷後約20年を経過した膝蓋骨仮関節の1例

著者: 松島哲也

ページ範囲:P.201 - P.204

緒言
 Brunsに由れば膝蓋骨々折は,肩胛骨,胸骨の骨折に次いで,其の頻度は少いとされて居るが,Barton,Hector Cameron,Joseph Lister以来,種々,其の観血的療法も開拓され,骨片に離開のある時には早期観血的骨接合術が,最も普遍的,且つ最良な方法とされて居る.私は最近,14歳の時より36歳の現在迄,22年間,右膝蓋骨仮関節の状態にて,日常起居動作は勿論,軍務に服して支那大陸を転戦し,復員後は坑内夫として労働に従事し,何等の支障も無かつた1例を経験したので,本症例に於ける2,3の検査所見を報告する.

嚥下困難を伴う汎発性鞏皮症の1例

著者: 大島昌 ,   山下九三夫

ページ範囲:P.205 - P.208

 鞏皮症に就ての記載は,Alibert(1817)がSclèrémieと呼び,Gintac(1847)がSclerodermieと呼んで以来,数多く見られる.其の成因に就ては遺伝,感染,,アレルギー,神経,内分泌説と多くの変遷を経て来たにも拘らず,今日もなお不明である.1936年Selyeの汎適応症候群の提唱以後本症は非特異性防禦反応の失調に由来する疾患群の一つとして,再検討されるようになつた.最近の見解に依れば,本症は,単なる皮膚病ではなく膠原病の一つで,血管結合織の系統的な疾患であり,自律神経又は内分泌障碍より,末梢循環障碍結合織の新陳代謝障碍を来し,遂には結合織の崩壊,弾力線維の変性,膠原組織の膨化を来すと解されて居る.吾々は,最近嚥下障碍を主訴とした汎発性鞏皮症の1例に対し,種々の方面から治療を試みたので報告する.

骨嚢腫の像を呈した外傷性上皮嚢腫の1例

著者: 大橋規男

ページ範囲:P.209 - P.211

 外傷性上皮嚢腫は,角化層の厚い手掌や手指の屈曲側に発生することが多いが,骨嚢腫の像を呈することは稀である.私は骨嚢腫の像を呈した外傷性上皮嚢腫の1例を経験したので報告する.

外科保険診療の手びき・9

業務上の事故について

ページ範囲:P.212 - P.213

 保険診療を行うに当つて船員保険を除いては業務上の事故は健保診療としては取扱わないことになつている.患者或は事業主の不注意から?々業務上の事故が健保診療として取扱われ後になつてそれが分り診療担当者はそれに要した治療費を返還し改めて基準局或は事業主に請求し直すという厄介なことが起るから初めからよく事故の原因を確め業務上外の区別を判つきりして診療をはじめなければならない.然らばどういう事故が業務上であり或は業務外であるかは時に判断に苦しむ場合もあるが保険局長からの通牒によつて大体の基準を知つていることは必要なことである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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