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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻4号

1956年04月発行

雑誌目次

綜説

胆道再建術々式について

著者: 鈴木礼三郞 ,   高村善郞 ,   堀野愛雄 ,   佐藤吉美 ,   原和久 ,   和賀井敬吉 ,   近衞晃賢 ,   竹村進

ページ範囲:P.215 - P.234

 胆道系,殊に肝外胆道が何等かの原因に依り通過障碍を起し胆汁排出に支障を来すと黄疸が発生する.かゝる際に胆汁の消化管内流入を企図する手術が胆道再建術であり,閉塞部位の切除が同時に施行される場合もあり,又その儘放置される場合もある.
 本手術の適応となる疾患は,胆道癌,ファーテル氏乳頭部癌,膵頭部癌,胃癌の膵頭部転移,良性胆道狭窄炎(炎症性,外傷性,良性腫瘍等),先天性胆道閉塞症,特発性総輸胆管拡張症,慢性硬化性膵炎の一部等であり,閉塞部肝側の総輸胆管,胆嚢,肝管の何れかを用い,胃,十二指腸,空腸に内胆汁瘻を造設するか,或は閉塞部を切除せし胆管の端々吻合により,鬱滞せる胆汁を消化管に流入せしめ閉塞性胆汁性黄疸を消失せしめるのであるが,本手術の要点は,縫合不全を絶対に起さず又,術後の狭窄を防ぎ且つ胆道系上行性感染を防止するにある.そこで吾々は現在教室で施行している膵頭十二指腸切除の際の胆道再建術々式,並びに他の2〜3の場合の術式を紹介し,併せて文献的考察を加えてみたいと思う.

硬膜下血腫について

著者: 鈴木二郞 ,   来生徹 ,   陳武州 ,   石橋孝雄

ページ範囲:P.235 - P.239

1.緒 言
 交通量の増加,自動車事故の激増等により最近頭部外傷は増加の一途をとり,尚幾多の問題を残すこの分野の対策は今後に俟つ所大である.現在の所,頭部外傷で脳症状が現われたものは絶対安静,持続的脳室ドレナーヂの他脱水療法等の対症療法しかなく,徒手傍観の他ないものが多いが,硬膜外,硬膜下血腫及び脳症状を伴なう陥凹骨折は是非手術に依らなければならず,その効果も大であり,特に硬膜外血腫や急性硬膜下血腫は間髪を入れず手術を行わなければならないものである.慢性硬膜下血腫は種々の検査を行ない得るが,神経学的症状がなく,精神症状を著明に現わしてくるものがあり,往々にして精神病と間違われ,全身衰弱著明となり,意識も溷濁し,羸痩甚しくなり,手術不能な迄に放置されるものがあるので,手術成績を向上せしめる為には早期発見,早期手術が必要である.今回は桂外科教室に於て経験した10例の亜急性及び慢性硬膜下血腫に就て症候学的に述べ,その治療に就ても言及したい.

整形外科領域に於けるゲンタミドンの試用経験

著者: 伊丹康人 ,   花崎豊 ,   紫芝輝之 ,   打保美津

ページ範囲:P.241 - P.251

緒言
 難治の疾患程多くの薬剤が現れ且ついつしか消え去つて行くものである.リウマチ症もOnce a rheumatoid, Always a rheumatoidと云われる如く難病中の難病であつて幾多のリウマチ剤が現れ且つ消え去つて行つた.
 然るにサルチル酸製剤によるリウマチ症治療法は脳下垂体からACTHが発見され,又コーチゾンが合成された今日に於ても50年前とその利用価値にも何等変る所がない.

橈骨遠位端骨折の無血的治療成績

著者: 木住野喜義

ページ範囲:P.253 - P.257

1.緒言
 橈骨遠位端骨折は老若男女の別なく,日常屡々遭遇する骨折の一つであつて,最近8年間に慶大整形外科外来を訪れた本骨折患者は骨折患者総数の12.19%を占める.又九大整形外科の統計によれば15.03%で全骨折の第5位に当るという.
 然るに本骨折の治療は安易に考えられ,治療成績も又等閑視されがちで,本邦に於ては予後調査の報告も少く2〜3を数えるに過ぎない.

妊娠時虫垂炎について

著者: 山城幸子

ページ範囲:P.259 - P.262

I.緒 言
 妊娠時虫垂炎は,診断も時に困難であるが殊にその予後が母体,胎児の生命に関係するためその処置に迷い勝である.
 之については古く1911年Schmidの統計的発表を初めとし,内科,外科,産婦人科的方面よりの,多くの発表がなされている.

"Benzyl-Imidazoline"に依る神経麻痺,循環障碍に対する簡易診断法について

著者: 岩橋勳 ,   井上九思 ,   藤井釗

ページ範囲:P.263 - P.266

緒 言
 吾々が,日常よく遭遇する神経麻痺,又は循環障碍に対し,従来より動脈撮影法,電気変性反応,等の検査法が行われているが,さきに,東京大学の石川氏は,イミダリンの動脈注射に依る循環障碍の診断法を発表したが,吾々は更に之を系統的に精査し,検討を加えて見た.吾々は,イミダリン1cc 40mgを,諸動脈内へ,注入し,神経麻痺,循環障碍患者の簡易診断法として,得る所大である事を認めたので,こゝに報告し,諸家の御批判を仰ぎたい.

外科領域に於ける生体内総塩基の変動に関する研究—第一報 イオン交換樹脂による総塩基定量法の簡易改良化

著者: 內田善敬

ページ範囲:P.267 - P.275

緒言
 生体内には陽イオンとして,Na,K,Ca,Mgが存在し(尿にはこの他にNH4がある),これを総称して総塩基total base1)17)と云い,各イオンの当量濃度の総和で表す.この陽イオンに対しては,等当量の陰イオンが存在し,総酸当量濃度は総塩基当量濃度により決定されるので,主としてHCO3の増減によつて両者が合致するようになつている.今血漿のイオン構成を示すと第1表の如くである.体液のイオン構成は特に細胞内外で大いに異るが,滲透圧は細胞内外両区一致している.生体内の滲透庄は総塩基で決定されると考うべきで,生体滲透圧の恒定性を保つ上から正常では血漿総塩基は常に150乃至160m Eq/lで,比較的狭い範囲を変動するのみであるとされている.又血漿総塩基は第1表の如く,その90〜93%がNaで占められているので,Naの変動に最も影響され,水分電解質特にNa平衡の指標となり,多くの生理的,病的状態で電解質平衡を完全に理解する上に欠くべからざるものである.臨床的に心臓,腎臓疾患,非経口的栄養を受けている患者,体液の異常喪失のある場合,広汎な火傷,外科的手術後の患者等の治療に当り,或は麻酔,手術の管理に際し,体液電解質の状態を知る必要が常に起つてくる.

トロンビンの止血効果について(第1報)

著者: 岩佐博 ,   劔持守 ,   松田信良 ,   吉永帰一 ,   稻葉英造 ,   古橋正吉 ,   宇田敏孝

ページ範囲:P.277 - P.280

 従来各種の局所止血剤が創製せられ,外科手術其の他に用いられ,それらの優劣について幾多の報告がある.しかし或るものは異物として長く局所に止まりて刺戟作用を有し,或いはその効果顕著ならず,好んで今日に至る迄使用せられているものは極めて少い.
 此の間にあつて,トロンビンは既に1939年Iowa大学のSeegers等により肝臓の実質性出血,骨手術時の止血容易ならざる骨髄出血に用いられて著効を治め,その後欧米各国に於いて各種臨床例に用いられている.即ち1945年Bandler等は前立腺腫瘍摘出に際し経尿道手術時に之を使用し,顕著な止血作用を認め,1949年Bernet,Cohenは食道の静脈瘤にMiller-Abbot管によるトロンビンのタンポンを行い,その出血を止め,「同年Ka—namore,Elliotは同様の治験例を報告している.更にDaly等は1949年上部胃腸管よりの出血を緩衡液並にトロンビンの経口的投与によりて治療せしめ,止血効果を報告している.

気管内挿管用滑剤並びに滑剤用局所麻痺剤について—キシロカインジエリーの使用経験をめぐって

著者: 高橋長雄 ,   岩井邦夫 ,   鈴木正明 ,   安井愼太郞 ,   木下良裕

ページ範囲:P.281 - P.287

 気管内麻酔法が我国に於ても益々広く利用されるようになり,沢山の症例が経験されるに従つて,従来あまり問題にされていなかつた諸種の部品,附帯物件の重要性が認識され見るべき改良進歩がなされつゝある.気管内挿管用滑剤も其の典型的な例であると思わる.我々の教室に於ける進歩の跡を迹つて見ても,昭和28年春頃までは単に滅菌オレフ油を気管内挿管用チューブの尖端に,わずかに塗布して,チューブを声門裂の間にギシギシと挿入するという状況であつた.同年6月アメリカ駐留軍第161病院の好意によりKYジェリーの試供を受け其の滑かな挿管時の感触に驚いたものであつた.爾来コンスターチ,精製デキストリン,アルギン酸ソーダ,ポリビニールアルコール,そして最近はカルボオキシメチールセルローズソーダを種々の濃度の単味で,或は種々の割合で配合してKYジェリーに似た特性を有するものを自家製造して使用していた.当時我々は気管内挿管用滑剤の具有すべき特性として次のものを考えていた.
 (1)気道粘膜に対して局所刺戟作用及び其の吸收による中毒作用を有しないこと. (2)充分な滑性と適度の粘性を有し,且つ過度の糊性を有しないこと. (3)滅菌操作の容易に行えるもの. (4)抜管後に喀出容易な親水性であることが望ましい.

症例

Ganglioneuromaの吟味

著者: 勝見正治 ,   眞部克巳 ,   島崎昌義

ページ範囲:P.288 - P.290

緒 言
 1870年Loretzにより交感神経節より発生したGonglioneuromが始めて報告され,1891年Ma—rchardが副腎より発生した腫瘍で胎生期自律神経系統と構造を一にするものを報告し,其の後1910年WrightによりGanglioneuromaは中枢,末梢,交感神経は勿論,神経組織の一部又は之からなつている副腎,頸動脈毬,尾骨腺及びZuckerkandl氏器官よりも発生するものであるという今日の概念が確立せられ,以来Ganglioneu—romaに関する多くの報告をみるが尚稀なものであり,我々は脊椎カリエスを疑わしめた其の1例に遭遇し詳細な組織学的検索を行なつたので報告する.

整形外科に於けるカリクレインの使用経験例

著者: 小川壽

ページ範囲:P.291 - P.293

緒 言
 四肢の外傷や疾患にとつて,その復環状態の如何は病状を左右するものであり,整形外科領域に於ては四肢循環状態の保持改善には常に多くの注意を必要としている.
 末梢血行を改善する薬剤は多数挙げられているが,カリクレインはE.K.Frey及びH.Krautにより発見された膵臓に於て作られる循環ホルモンで1926年以来詳細な報告があるが,四肢の循環障碍に有効であり,更に治癒困難な創傷,仮骨形成の遅延せる骨折等の際にも好結果が得られるとされている.その化学構造,薬理作用に就ては,その本態は未だに明らかでないが,高分子化合物で化学的性質としては,水溶性で不安定であり,酸及びアルカリ,アルコール,紫外線等により効力が失われると云う.その作用機転は,E.Werleによれば,血清中のグロブリン体Kallidinogenを酵素分解してKallidinと呼ばれるPeptidに変え,このKallidinにより血管拡張作用が現れると云う.本剤の臨床実験はE.K.Freyによつて行われ,多数の慢性及び急性の血管疾患並びに血管循環障碍を伴う疾病有効である事が明らかにされている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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