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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻5号

1956年05月発行

雑誌目次

綜説

慢性萎縮性胃炎にみられた特殊な胃疾患を中心に

著者: 島田信勝 ,   佐藤雄次郞

ページ範囲:P.295 - P.301

 原発性慢性胃炎のうち,長期に亘る胃困難症状を有し,内科的治療も奏効なく,胃粘膜の萎縮する傾向の強いものは外科的療法の適応となり得ることは度々報告したところであるが.最近これ等の慢性胃炎に手術を行い,切除胃について病理組織学的に検索したところ,慢性胃炎に伴つて種々の興味ある所見を呈した数種の胃疾患を経験した,勿論これ等の症例の大多数については,従来も一部の入々によつて注意を換起せられていた疾患であるが,慢性胃炎の外科に関連して敢えて注意の必要性を痛感したので,症例を中心に述べてみる.

主麻酔としての靜脈内点滴注入麻酔法

著者: 山田栄吉 ,   戶叶公明 ,   白石勝美 ,   吉池守

ページ範囲:P.303 - P.305

I.緒 言
 現在実施せられて居る各種手術麻酔法は既に種々の麻酔剤と共に検討されて居るが,凡そ今日の麻酔は手術に対する無痛効果以外に種々の大きな目的が包含されて居ると考えなければならない.例えば前麻酔殊に基礎麻酔に就いても患者の精神的抑制(恐怖心抑制・手術記憶衷失等々)以外にGuedelの指摘せる如く基礎代謝の低下換言すれば個体の被刺戟性,生体反応の低下に依り術中の不快なる偶発合併症の防止にも極めて重要なる意義を有する.斯かる目的で我々は基礎麻酔も所謂迷蒙状態の域を脱して深い睡眠状態に入らしめるために朝倉斌博士(前外科医長)以来オピスタン・スコラポラミン併用又はオートン・パンスコ併用を実施し最近は静脈内点滴注入麻酔を併用して甚だ良効なる結果を得つゝある(基礎麻酔の検討に就いては稿を改めて報告する予定である).斯かる折柄従来基礎麻酔として実施した静脈内点滴注入法を主麻酔としても追試して見たのでその臨床報告をする事にした.

実験的電撃傷に於ける通電電力量と組織像との関係

著者: 武藤藤太郞 ,   細見保男 ,   菅野哲司 ,   大橋正次郞 ,   藤城保男

ページ範囲:P.307 - P.308

 電撃傷の研究に関しては,Jellinek以来内外の学者により多数の研究業績が発表されている.全身症状については,島田教授並にその門下により系統的に広汎な研究が行われ詳細な報告が出されている.我々は既に第54,55回日本外科学会総会に於て報告したが,通電時に於ける血清無機燐の増大は必ずしもショック発生とは関係なく,一定量以上の通電刺戟による必発現象であつて,電流の通過せる局所の組織破壊により流血中に放出され,その結果血清無機燐の変動が通電せる局所の組織像に代つて,その傷害の程度を現すのに極めて有効であることを知つたので,その実験成績を述べる.

メッケル氏憩室・膀胱瘻—附.吾國メッケル氏憩室の総括

著者: 土屋文雄 ,   豊田泰

ページ範囲:P.309 - P.318

 吾々は膀胱腸瘻の根治手術にあたつて,これがメッケル氏憩室よりの瘻孔であつた稀有な症例に遭遇したので報告する。之は本邦第1例たるのみならず恐らく世界の文献上第3乃至第4例に相当するものである.

直視下心臓内手術の手段としての選択的脳灌流冷却並びに冠動脈灌流法

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   三技正裕 ,   浅野献一 ,   吉村享 ,   佐藤文雄

ページ範囲:P.319 - P.324

 直視下心臓内手術に関して,吾々が年来研究を続行していることは既に度々報告した所であり,その結果特に浅野の実験的研究が実を結んで選択的脳灌流冷却法の創案となり,臨床的実施に移した成績も従来の方法に比較して優秀であつて,更に研究を推進する価値のある一法であることは昨年春の日本医学会総会特別講演1)に於て発表し,又本誌上にも報告2)した通りである.その後特に本法による心房中隔欠損症6例の手術成績3),及び心室中隔欠損1例の手術成績4)を報告し,何れも死亡例なく,臨床的治癒の状況に持来すことが出来た.
 しかし本法にも臨床的実施には一定の制約があり,更にその適応を拡大すべく研究を続行した.昨年秋の日本胸部外科学会に於て,選択的脳灌流冷卸法に関して多数研究者の追試発表があり,概ねその卓越した効果は承認されたのであるが,吾々としてはむしろその不利な面,と言うか,その適応の限界について反省すべき点を卒直に報告5)し,冠動脈の動脈血灌流の併用を述べた.その後この方法を本格的に研究して臨床的実施に移し,これは単なる選択的脳灌流冷却法と人工心肺による長時間心臓開放との中間を行く一つの方法であることを確認し,以前からの吾々の念願であるFal—lot氏四徴症の根治手術を企図して,技術的に一応完了し得た.取敢えず本年1月の外科集談会で報告6)したのであるが,なおその後の経験も加えて本稿を記述し,大方の御批判を頂き度いと思う.

心臓直視手術—後天性心臓弁膜症の直視手術に成功するまで

著者: 榊原仟 ,   織畑秀夫 ,   太田八重子 ,   中山耕作 ,   木村賢二 ,   勝原幾規子 ,   坪井重雄 ,   市井厚吉 ,   長谷健一 ,   皆川健次 ,   新井達太 ,   菅間直 ,   千葉智世 ,   高橋敬亮 ,   待山昭二 ,   富田勝己 ,   今井三喜

ページ範囲:P.325 - P.335

I.緒言
 心臓内を直視しながら手術しようというのは,心臓外科に携わる者の総ての願いである.Bige—10W1-3)が低体温を用いて心臓血流遮断時間を延長出来ることを発表して以来,吾国の多くの研究者と同様に,私達も低体温法を用いる血流遮断に関する研究を行い来つた.
 Lewis4,5),Swan6-8),Bailey9)等の臨床例に於ける成功に続いて,私達も1954年10月純型肺動脈狭窄の直視手術に成功し10)吾国では始めて心臓内直視手術の成功例を出すことが出来た.

Fallot氏四徴症の根治手術について

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   三枝正裕 ,   和田達雄 ,   浅野献一 ,   佐藤文雄 ,   常本実

ページ範囲:P.337 - P.344

Fallot氏四徴症に対する手術治療の現況
 Fallot氏四徴症に対する外科治療が1945年Blalock氏1)によつて始めて発表されて以来,その優れた効果と,ある意味での近代的心臓外科の魁としての興味はこれに集注され,その後多数の発表が相次ぐと同時に本症の標準治療法として一般に広く普及されて今日に到つている.これと同じ原理に基く1946年発表のPotts氏手術2)は,技術的な面からも前者ほど広く実施されていない、又1948年発表のBrock氏手術3)即ち狭窄肺動脈弁,切開或は狭窄円錐部切除を閉鎖性に行う心内手術操作は,特に純型肺動脈狭窄に対して標準術式として認められたが,Fallot氏四徴症に対しては危険性の点と効果の点とで一般には賛意を表する人は少ない状況にある.
 吾々は昭和27年Blalock氏手術の経験を報告4),Potts氏手術5)やBrock氏法も追試して,特に前2者の所謂短絡手術に関する諸問題を詳しく検討した6)

症例

上腕骨尺側上顆骨折片の関節内嵌入例

著者: 亀卦川滋

ページ範囲:P.345 - P.347

 上腕骨尺側上顆骨折は上腕骨下端骨折中,顆上骨折及び外顆骨折に次ぐ頻度を有するもので,上腕骨下端骨折中,10〜8%を占めると云われ,日常吾々のしばしば経験するものであるが,その骨折片の肘関節内に嵌入することは比較的稀である.すなわち井上によれば全肘関節部骨折175例中,尺側上顆骨折は11例であり,その中骨折片の関節腔内に転位し上腕骨滑車及び尺骨頭との関節間隙に嵌入せるものは2例だけである.私は最近上腕骨尺側上顆骨折で,骨折片が関節内に嵌入し,接骨師による誤まれる治療により約4週間の時日を経過して裂離骨片に尺骨半月状切痕に癒着し,その手術,整復,治療にかなりの困難を感じた症例を経験したので簡単に報告する.

座談会

欧米の最近の外科を語る

著者: 島田信勝 ,   斎藤淏 ,   中谷隼男

ページ範囲:P.349 - P.360

旅行の計画
 島田 最初に行つて来られたコースをお話願いましようか.
 斎藤 私は国際臨床外科医会がヒラデルフィアで9月12日から4日間開かれたそれに招請を受けたのと,それに出席する目的でアメリカに行つた.そこへ行く迄の間はハワイを通つて,サンフランシスコ,ロスアンゼルス,シカゴ,ミネアポリスを通つてヒラデルフィアに行き,それが済んでからワシントン,ニューヨーク,ボストン,これだけがアメリカです.

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第56回日本外科学会総会日程

ページ範囲:P.362 - P.367

時日 昭和31年4月29日,30日,5月1目
場 所   第1会場 仙台市元常盤丁    公会堂
     第2会場 仙台市定禅寺通櫓町  労働会館(第1日 午後のみ)
     第3会場 仙台市北四番丁 医学部中央講堂(第1日 午後のみ)
  第1日(4月29日,日曜日)午前(正8時より,第1会場)

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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